日産 ノート 新型試乗 e-POWERらしい個性はトーンダウンしたが…中村孝仁
◆大胆な方向へと舵を切った3代目ノート
近頃街中を走るとだいぶ新しい『ノート』を見かけるようになった。『リーフ』に似た面構えだから、ちょっと間違うこともある。いずれにせよ、外観から見る限りは随分と立派になったように見える。
ところがサイズ的に言うと全長で55mm、ホイールベースで20mm小さくなっている。全幅は従来と変わらずだから、要するに小型化しているのだ。それでいながら立派に見えるということは、デザインの勝利…と言えなくもない。
初代から数えて3代目に当たる今回のノート、大胆な方向へと舵を切った。それはガソリン車を排除してe-POWERのみの設定としたことだ。もっとも先代では7割がe-POWERだったそうだから、近年の電動化狂想曲の時代背景を考えればそれでも良いのだろうが、価格的にはだいぶ敷居が高くなった点がどう転ぶかは少々心配なところもある。
◆最高峰グレードの価格にちょっと引いた
さて、今回試乗したのはFWDモデルの最高峰、「X」というグレードだ。車両単体価格は消費税込みで218万6800円なのだが、試乗車はこれに85万1400円のメーカーオプションと、17万3056円のディーラーオプションが乗るから、その価格は実に321万1256円也。
さすがにちょっと引いた。これに諸経費を加えれば乗り出し価格は350万円ぐらいだろうか。やはり今時のクルマは高い。まあ、ディーラーオプションの方は正直ほとんどなくても良いが、メーカーオプションの方は削りたくないものが多いので、妥協したところで車両価格は290万円ぐらいのような気がする。
◆ワンペダルドライブ、個性として残した方が良かったのでは
値段の話はともかくとして、今度のノートがどう変わったかである。先代はe-POWERというシリーズハイブリッドの機構もさることながら、ワンペダルドライブという新たな運転方法でずいぶんと楽しい思いをしたことが記憶に残っているのだが、残念なことに今回のモデルはそのワンペダルドライブはできない。
何故かというとまずクリープをつけたこと。もう一つはアクセルオフでの減速Gを緩めたことによる。話によると、急減速すること(そりゃいきなりアクセルオフにすればワンペダルの場合は急減速する)で頭が揺すられて酔い易いというユーザーからのコンプレインに対処した結果だそうだ。
しかし、そのワンペダルが面白くてノートを購入したユーザーもはっきり言えば相当数存在するはず。そうした顧客はもしかしたらそのワンペダルが出来なくなったことによって、ノートから離れていく可能性だってある。
もちろん逆に普通のガソリンモデルのような運転感覚になったことで、新規ユーザーの獲得に繋がることも考えられるのだが、今の世の中、評価されていたキャラをトーンダウンさせてより一般的というか、普通のキャラにする没個性化にははっきり言えば賛成できない。やはり個性は個性として残しておいた方が良かったのではないだろうか。
◆上質な走り、先進性も大幅アップ
とは言うものの、走りそのものは上質になった。運動性能的にも音振対策的にも、だ。とりわけ発電のためにかかっていたエンジン音はだいぶ消音化されている印象が強いのだが、それは世界初と言われる、ロードノイズが大きくなったと判断するとエンジンをかける制御の恩恵もあるだろう。いずれにせよ全体的に消音化の取り組みが大きいように思う。
運動性能と乗り心地に関しては滑らかな操舵性能と、きっちりと仕事をしているサスペンション(特にリア)の効果が大きい。決してスポーティな走りだとは思わないが、上質感は伝わる。これに対してインテリアは先進性こそ感じられるのだが、使っているプラスチック素材はことごとくハードプラスチックで、残念ながら上質な印象はない。
緩やかにされたという減速Gだが、そうは言ってもエコもしくはスポーツにしておけばそれなりに減速Gは普通のクルマよりも高い。言い忘れたが走行モードはエコ、ノーマル、スポーツの3種あり、ノーマルはほとんどアクセルオフで減速Gが体感できないが、エコとスポーツはそれなり。
メーター内に、リアのブレーキランプが点灯するとディスプレイにそれを示す表示がある。0.13Gでブレーキランプが点灯し、0.07Gで解除となる。だから、ペダル操作にもよるが、オンオフを繰り返すようなドライビングパターンのドライバーだと、かなり頻繁にブレーキランプが点灯する結果になる。だから、ノートユーザーはアクセル操作をスムーズに行う必要もある。
クルマとしての走りは先代と比較してずっと上質に変わり、先進性も大幅にアップしている。もっともそれを感じさせるプロパイロット、ナビシステムなどはセットオプションで44万2200円と高額。そこには他にカメラで映し出すルームミラーやブラインドスポットモニターなどの安全装備、さらにはETC2.0ユニットなども含まれている。
いずれにせよ、ワンペダルのキャラがトーンダウンしたことが個人的にはとても残念だった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
近頃街中を走るとだいぶ新しい『ノート』を見かけるようになった。『リーフ』に似た面構えだから、ちょっと間違うこともある。いずれにせよ、外観から見る限りは随分と立派になったように見える。
ところがサイズ的に言うと全長で55mm、ホイールベースで20mm小さくなっている。全幅は従来と変わらずだから、要するに小型化しているのだ。それでいながら立派に見えるということは、デザインの勝利…と言えなくもない。
初代から数えて3代目に当たる今回のノート、大胆な方向へと舵を切った。それはガソリン車を排除してe-POWERのみの設定としたことだ。もっとも先代では7割がe-POWERだったそうだから、近年の電動化狂想曲の時代背景を考えればそれでも良いのだろうが、価格的にはだいぶ敷居が高くなった点がどう転ぶかは少々心配なところもある。
◆最高峰グレードの価格にちょっと引いた
さて、今回試乗したのはFWDモデルの最高峰、「X」というグレードだ。車両単体価格は消費税込みで218万6800円なのだが、試乗車はこれに85万1400円のメーカーオプションと、17万3056円のディーラーオプションが乗るから、その価格は実に321万1256円也。
さすがにちょっと引いた。これに諸経費を加えれば乗り出し価格は350万円ぐらいだろうか。やはり今時のクルマは高い。まあ、ディーラーオプションの方は正直ほとんどなくても良いが、メーカーオプションの方は削りたくないものが多いので、妥協したところで車両価格は290万円ぐらいのような気がする。
◆ワンペダルドライブ、個性として残した方が良かったのでは
値段の話はともかくとして、今度のノートがどう変わったかである。先代はe-POWERというシリーズハイブリッドの機構もさることながら、ワンペダルドライブという新たな運転方法でずいぶんと楽しい思いをしたことが記憶に残っているのだが、残念なことに今回のモデルはそのワンペダルドライブはできない。
何故かというとまずクリープをつけたこと。もう一つはアクセルオフでの減速Gを緩めたことによる。話によると、急減速すること(そりゃいきなりアクセルオフにすればワンペダルの場合は急減速する)で頭が揺すられて酔い易いというユーザーからのコンプレインに対処した結果だそうだ。
しかし、そのワンペダルが面白くてノートを購入したユーザーもはっきり言えば相当数存在するはず。そうした顧客はもしかしたらそのワンペダルが出来なくなったことによって、ノートから離れていく可能性だってある。
もちろん逆に普通のガソリンモデルのような運転感覚になったことで、新規ユーザーの獲得に繋がることも考えられるのだが、今の世の中、評価されていたキャラをトーンダウンさせてより一般的というか、普通のキャラにする没個性化にははっきり言えば賛成できない。やはり個性は個性として残しておいた方が良かったのではないだろうか。
◆上質な走り、先進性も大幅アップ
とは言うものの、走りそのものは上質になった。運動性能的にも音振対策的にも、だ。とりわけ発電のためにかかっていたエンジン音はだいぶ消音化されている印象が強いのだが、それは世界初と言われる、ロードノイズが大きくなったと判断するとエンジンをかける制御の恩恵もあるだろう。いずれにせよ全体的に消音化の取り組みが大きいように思う。
運動性能と乗り心地に関しては滑らかな操舵性能と、きっちりと仕事をしているサスペンション(特にリア)の効果が大きい。決してスポーティな走りだとは思わないが、上質感は伝わる。これに対してインテリアは先進性こそ感じられるのだが、使っているプラスチック素材はことごとくハードプラスチックで、残念ながら上質な印象はない。
緩やかにされたという減速Gだが、そうは言ってもエコもしくはスポーツにしておけばそれなりに減速Gは普通のクルマよりも高い。言い忘れたが走行モードはエコ、ノーマル、スポーツの3種あり、ノーマルはほとんどアクセルオフで減速Gが体感できないが、エコとスポーツはそれなり。
メーター内に、リアのブレーキランプが点灯するとディスプレイにそれを示す表示がある。0.13Gでブレーキランプが点灯し、0.07Gで解除となる。だから、ペダル操作にもよるが、オンオフを繰り返すようなドライビングパターンのドライバーだと、かなり頻繁にブレーキランプが点灯する結果になる。だから、ノートユーザーはアクセル操作をスムーズに行う必要もある。
クルマとしての走りは先代と比較してずっと上質に変わり、先進性も大幅にアップしている。もっともそれを感じさせるプロパイロット、ナビシステムなどはセットオプションで44万2200円と高額。そこには他にカメラで映し出すルームミラーやブラインドスポットモニターなどの安全装備、さらにはETC2.0ユニットなども含まれている。
いずれにせよ、ワンペダルのキャラがトーンダウンしたことが個人的にはとても残念だった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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