アウディ RS Q3スポーツバック 新型試乗 まさに時代が生み出したスポーツカー…中村孝仁

  • アウディ RS Q3スポーツバック
アウディに無くてはならない5気筒エンジン

昨年後半から今年にかけてアウディのモデル投入攻勢が凄い。ざっと数えてみただけでも昨年9月から今までに10車種以上のニューモデルもしくは追加モデルが発売されている。

そんな中、昨年12月に発売となった『RS Q3スポーツバック』に試乗した。この試乗会は主としてRSモデルを中心に集めた試乗会で、数あるモデル(昨年から今年にかけて発売されたもの)の中から乗りたいものをチョイスして2台選べるという企画で、僕が選んだ2台のうちの1台がこれだった。

昨年9月にオリジナルの『Q3スポーツバック』に試乗した時から、このスタイルの良さはお気に入りだったが、新たなRSにはもう一つアウディにとっては無くてはならないといっても過言ではないフレーバーが加わったから、その魅力は個人的に倍化したわけである。そのフレーバーとは言わずと知れたアウディの5気筒エンジンだ。

◆絶妙としか言いようがないパワー、サウンド、サイズ


クワトロが世に出た時からアウディの5気筒エンジンには定評があった。時代が変わり今は横置きとなったこのエンジンは、9年連続で2~2.5リットルのカテゴリーにおけるエンジンオブザイヤーに選出された優れモノなのである。因みに5気筒の伝統は1976年に始まるから、すでに45年の長い歴史を持つ。

そのパフォーマンスもさることながら、やはり何と言っても魅力的なのはその独特なエンジンサウンドである。加速の度にアウディに乗っていることを実感できるこのサウンドは、改めてクルマは五感で乗るものということを強烈に印象付けた。パフォーマンスは何と400psに届き、最大トルクも480Nm!しかも1950~5850rpmという極めて広い回転域でこの数値を発生し続ける。

狭い道路だったので、その実力を全開で発揮させることはできなかったが、少し踏んだだけでもそのパワーが並みのものではないことはすぐにわかる。そして何度も書くが、そのサウンドだ。これを聞きたくて不必要にパドル操作でギアを低く保ち、エンジン回転を上げる走りに終始した。

その身のこなし。爆発的なパワー。常に路面キャッチして離さないクワトロの走り。そして何より全長4505×全幅1855×全高1555mmというサイズ感は、決して小さくはないものの、さりとてこのパフォーマンスにはコンパクトさを感じさせるもので、絶妙としか言いようがない。

◆まさに時代が生み出したスポーツカー


その昔、走りを堪能しようと思ったらチョイスはスポーツカーしかなかった。車高が低く、流麗なスタイルで、重心高も低く、運動能力に長けていた。今、そのスポーツカーに乗って雑踏に入ると周囲から見降ろされる存在で、何となく気恥ずかしさすら感じてしまう。

時代が求めるボディ形状はSUV。そのSUVを何とかスポーティーに見せられないかという視点から誕生したクーペ風SUV。アウディ流ならスポーツバックであるが、このボディにクワトロの走りと5気筒TSFIのハイパフォーマンスを組み合わせたRS Q3スポーツバックは、まさに時代が生み出したスポーツカーといっても過言ではない。

僅かなアクセルの動きに反応して1730kgのボディを前へ進めるそのパワーは湧き上がるというか、盛り上がるというか、まさに怒涛の加速力だ。メータークラスター内にはトルクやパワーをパーセンテージで表示するディスプレイが備わるが、そんなものを見ている暇はない。

最近いわゆるステップATの進化が目覚ましく、渋滞内でクラッチの断続を強いられる、アウディ風に言うとSトロニックと呼ばれるDCTは、一時の勢いがないのだがこんなクルマに搭載するとそれが大いに活きる。

◆一台あれば快適なドライブからスポーツドライブまで


また、試乗車にはオプションがてんこ盛りで、その中で特にセラミックブレーキとRSダンピングコントロールサスペンションはお薦めのアイテムだと感じた。

特に後者はドライブセレクトによってダイナミック、エフィシェンシー、コンフォート、オートと走行モードを変えられるが、単にダンピング性能を変えるのみならず、エクゾーストサウンドからステアリングの重さまで変更でき、さらにステアリングの右に付くRSモードによって2種のオリジナルモードの設定が可能になっている。単にコンフォートを選ぶと、非常に快適な走行が味わえ、一方でダイナミックでは卓越した運動性能と豪快なパフォーマンスを愉しむことが出来る。

加えてSトロニックでSモードを選択すれば、パドルを操作しなくてもアクティブブリッピングを効かせながら、適切なギアを勝手にセレクトしてくれるから、お任せのスポーツドライビングも可能と、まさに万能。これ一台あれば快適なドライブからスポーツドライブまで幅広く楽しむことが出来る。

こういうクルマに乗ると、つくづく自動車は単にA地点からB地点に人を運ぶだけの乗りモノでないことを痛感し、クルマに乗る愉悦を感じさせてもらえる。スポーツカーは欲しいが使い勝手が悪いし、どうも気恥ずかしい…そんなユーザーにはまさに時代の寵児、アウディRS Q3スポーツバックがお勧めだ。欲しくてたまらない1台である。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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