スバル XV 新型試乗 雪深い場所でこそ絶大な信頼あり!スバルのDNAが凝縮されたXV…河西啓介
◆思い出すのはスバル・レオーネ
スバル『XV』。僕は今のスバルのラインナップの中で、じつはいちばん好きかもしれない。XVは『インプレッサ』をベースに車高を上げることで悪路走破性を高めたクロスオーバー・モデルだが、僕はもともとワゴンタイプのクルマが好きなことがひとつ。そして車高を上げたことで醸し出される、“カスタムしちゃってる感”がカッコいいというのがひとつ。その点、乗用車とクロカンヨンクの折衷というか、最初からいいとこ取りした感じのSUVは、そのぶん割り切りが悪い感じがして、じつはあんまりグッとこないのである。
というのは単なる僕の好みなのでとくに参考にはならないと思うが、もうひとつ言わせてもらうなら、XVは「サイズがちょうどいい」のも好みである。全長4485mm×全幅1800mm×全高1550mm。大きすぎず小さすぎず。正直いえば、幅はもう少し狭いといいが、現代のクルマに求められる要件(安全性とか)を満たすためには仕方ないのだろう。とはいえ最低地上高200mmを確保しながら、全高を立体駐車場OKサイズに収めているのは素晴らしい。
先に“クロスオーバー”と言ったが、もとより乗用車に四輪駆動システムを組み合わせたクルマの元祖はスバル『レオーネ』である(諸説あるかもしれませんが)。そういう意味では、車格やサイズ感も含め、レオーネ的なるスバル4WDのDNAを最もストレートに受け継いでいるのはXVと言っていい。そういうわけで僕はXVに対してかなり好感を持っているのである。
◆燃費より“楽しさ”重視のスバル的ハイブリッド
今回はそんなXVの最新モデルに乗り、青森の八甲田山を目指した。「スバル車の雪道性能を試す」というのがその目的なのだが、果たしてそのためには絶好のコンディションだった。八甲田山周辺は、世界的に見ても有数の豪雪地帯なのである。もう雪はモリモリだった。
試乗したのは2リットル4気筒の水平対向エンジンに電気モーターを組み合わせた「e-BOXER」モデル、装備も最も充実した「アドバンス」だ。e-BOXERはスバル流のハイブリッドだが、とはいえトヨタ『プリウス』的なシステムとはちょっと違う。ざっくりと言うなら“電動アシスト自転車”をイメージするといいかもしれない。発進、加速、登坂時など、ぐっと力がほしいときにモーターが加勢してくれる、いわゆるマイルドハイブリッドだ。なので燃費は期待するほどではないが、カタログ燃費は1.6リットルガソリンエンジン搭載モデルの15.8km/Lに対し19.2km/L(ともにJC08モード)と、約2割の向上で、別に悪いわけではない。
いっぽうスバルが「新感覚の走りの楽しさを実現したパワーユニット」と謳うのは看板に偽りなしで、ドライバーがほしいときにほしいパワーを「ちょい足し」してくれるの、走りは適度にパワフルかつスムーズ、だから楽しい。その性格を理解すれば、燃費については納得できるだろう。
◆延々と続く“雪の回廊”で
今回の試乗は青森の市街から八甲田山へと向かった。距離にすれば片道30kmほどだが、とにかく雪が深い。山に入ると道の両側に5m以上はあろうかという雪の壁が現れる。延々と続く、まさに雪の回廊である。当然、道幅がとても狭く見えるし、一面真っ白な景色の中を走り続けていると、次第に車両感覚も曖昧になってくる。
雨の中、荒れた道、そして雪。条件が厳しいほど、そのクルマの“素性”がよくわかるものだ。僕らふつうのドライバーでも、乾いた舗装路を走っているときには感じとれなかったクルマの挙動が、とてもよくわかるようになる。グリップがどうだとかサスペンションがこうだとか、たとえ分析的にわからなかったとしても、安心して運転できる感じとか、なんだかフワフワする感じとか、そういう感覚はわかるものだ。
そういう意味で、深い雪道でもXVはとても安心して運転できた。さらに言うなら、雪道ドライビングを楽しむことすらできた。その理由を探るとすれば、まずは低重心のボクサーエンジンがもたらす安定性、スバルのお家芸である四輪駆動の(モーターのアシストも統合した)制御技術、大きすぎないボディサイズ、そして200mmの最低地上高による走破性の高さも大きい。ちなみにXVは4輪の駆動力やブレーキなどを統合的に制御してハードな路面状況に対応する「X-MODE」を備えている。路面に応じて「SNOW・DIRT」および「DEEP SNOW・MUD」の2モードから選択できるが、今回は「SNOW・DIRT」モードを選んで走った。
◆雪道で出会う“スバル率”の高さ
今回の雪道ドライブの目的地としたのは八甲田山にある「酸ヶ湯」だった。名前のとおりとても強い酸性の湯が特徴で、山奥にあるにも関わらず1年中多くの人が訪れる有名な温泉だ。混浴と聞いておおいに楽しみにしていたのだが(笑)、なんと道中での撮影に時間を割きすぎて、温泉に入る時間がなくなる(!)という大失敗を冒してしまった…。遠からず、かならずリベンジ!しようと思っている。
じつは今回のドライブで気づいたことがあるのだが、それは雪の壁に囲まれた八甲田の山道ですれ違ったクルマの“スバル率”の高さだ。ある程度気にしていたから……ということもあるだろうが、それを差し引いてもやはりとても多いと感じた。やはりこの雪深いこの時期に山を訪れるような人にとって、スバル車は絶大な信頼を得ているのだろうと思った次第である。
かくいう僕はといえば、今やとくに積極的にウィンタースポーツを楽しんでいる訳ではないが、雪道を軽快に走るXVのハンドルを握っているとなんだかとても頼もしく思えて、もしこのXVを愛車としたら、スキー熱が復活したりして…とか、“冬キャン”してみたいんだよなぁ…などと夢想するのであった。なるほどXVはなかなかのライフスタイル・カーなのである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
河西啓介|編集者/モータージャーナリスト
自動車雑誌『NAVI』編集部を経て、出版社ボイス・パブリケーションを設立。『NAVI CARS』『MOTO NAVI』『BICYCLE NAVI』の編集長を務める。現在はフリーランスとして雑誌・ウェブメディアでの原稿執筆のほか、クリエイティブディレクター、ラジオパーソナリティ、テレビコメンテーターなどとしても活動する。
スバル『XV』。僕は今のスバルのラインナップの中で、じつはいちばん好きかもしれない。XVは『インプレッサ』をベースに車高を上げることで悪路走破性を高めたクロスオーバー・モデルだが、僕はもともとワゴンタイプのクルマが好きなことがひとつ。そして車高を上げたことで醸し出される、“カスタムしちゃってる感”がカッコいいというのがひとつ。その点、乗用車とクロカンヨンクの折衷というか、最初からいいとこ取りした感じのSUVは、そのぶん割り切りが悪い感じがして、じつはあんまりグッとこないのである。
というのは単なる僕の好みなのでとくに参考にはならないと思うが、もうひとつ言わせてもらうなら、XVは「サイズがちょうどいい」のも好みである。全長4485mm×全幅1800mm×全高1550mm。大きすぎず小さすぎず。正直いえば、幅はもう少し狭いといいが、現代のクルマに求められる要件(安全性とか)を満たすためには仕方ないのだろう。とはいえ最低地上高200mmを確保しながら、全高を立体駐車場OKサイズに収めているのは素晴らしい。
先に“クロスオーバー”と言ったが、もとより乗用車に四輪駆動システムを組み合わせたクルマの元祖はスバル『レオーネ』である(諸説あるかもしれませんが)。そういう意味では、車格やサイズ感も含め、レオーネ的なるスバル4WDのDNAを最もストレートに受け継いでいるのはXVと言っていい。そういうわけで僕はXVに対してかなり好感を持っているのである。
◆燃費より“楽しさ”重視のスバル的ハイブリッド
今回はそんなXVの最新モデルに乗り、青森の八甲田山を目指した。「スバル車の雪道性能を試す」というのがその目的なのだが、果たしてそのためには絶好のコンディションだった。八甲田山周辺は、世界的に見ても有数の豪雪地帯なのである。もう雪はモリモリだった。
試乗したのは2リットル4気筒の水平対向エンジンに電気モーターを組み合わせた「e-BOXER」モデル、装備も最も充実した「アドバンス」だ。e-BOXERはスバル流のハイブリッドだが、とはいえトヨタ『プリウス』的なシステムとはちょっと違う。ざっくりと言うなら“電動アシスト自転車”をイメージするといいかもしれない。発進、加速、登坂時など、ぐっと力がほしいときにモーターが加勢してくれる、いわゆるマイルドハイブリッドだ。なので燃費は期待するほどではないが、カタログ燃費は1.6リットルガソリンエンジン搭載モデルの15.8km/Lに対し19.2km/L(ともにJC08モード)と、約2割の向上で、別に悪いわけではない。
いっぽうスバルが「新感覚の走りの楽しさを実現したパワーユニット」と謳うのは看板に偽りなしで、ドライバーがほしいときにほしいパワーを「ちょい足し」してくれるの、走りは適度にパワフルかつスムーズ、だから楽しい。その性格を理解すれば、燃費については納得できるだろう。
◆延々と続く“雪の回廊”で
今回の試乗は青森の市街から八甲田山へと向かった。距離にすれば片道30kmほどだが、とにかく雪が深い。山に入ると道の両側に5m以上はあろうかという雪の壁が現れる。延々と続く、まさに雪の回廊である。当然、道幅がとても狭く見えるし、一面真っ白な景色の中を走り続けていると、次第に車両感覚も曖昧になってくる。
雨の中、荒れた道、そして雪。条件が厳しいほど、そのクルマの“素性”がよくわかるものだ。僕らふつうのドライバーでも、乾いた舗装路を走っているときには感じとれなかったクルマの挙動が、とてもよくわかるようになる。グリップがどうだとかサスペンションがこうだとか、たとえ分析的にわからなかったとしても、安心して運転できる感じとか、なんだかフワフワする感じとか、そういう感覚はわかるものだ。
そういう意味で、深い雪道でもXVはとても安心して運転できた。さらに言うなら、雪道ドライビングを楽しむことすらできた。その理由を探るとすれば、まずは低重心のボクサーエンジンがもたらす安定性、スバルのお家芸である四輪駆動の(モーターのアシストも統合した)制御技術、大きすぎないボディサイズ、そして200mmの最低地上高による走破性の高さも大きい。ちなみにXVは4輪の駆動力やブレーキなどを統合的に制御してハードな路面状況に対応する「X-MODE」を備えている。路面に応じて「SNOW・DIRT」および「DEEP SNOW・MUD」の2モードから選択できるが、今回は「SNOW・DIRT」モードを選んで走った。
◆雪道で出会う“スバル率”の高さ
今回の雪道ドライブの目的地としたのは八甲田山にある「酸ヶ湯」だった。名前のとおりとても強い酸性の湯が特徴で、山奥にあるにも関わらず1年中多くの人が訪れる有名な温泉だ。混浴と聞いておおいに楽しみにしていたのだが(笑)、なんと道中での撮影に時間を割きすぎて、温泉に入る時間がなくなる(!)という大失敗を冒してしまった…。遠からず、かならずリベンジ!しようと思っている。
じつは今回のドライブで気づいたことがあるのだが、それは雪の壁に囲まれた八甲田の山道ですれ違ったクルマの“スバル率”の高さだ。ある程度気にしていたから……ということもあるだろうが、それを差し引いてもやはりとても多いと感じた。やはりこの雪深いこの時期に山を訪れるような人にとって、スバル車は絶大な信頼を得ているのだろうと思った次第である。
かくいう僕はといえば、今やとくに積極的にウィンタースポーツを楽しんでいる訳ではないが、雪道を軽快に走るXVのハンドルを握っているとなんだかとても頼もしく思えて、もしこのXVを愛車としたら、スキー熱が復活したりして…とか、“冬キャン”してみたいんだよなぁ…などと夢想するのであった。なるほどXVはなかなかのライフスタイル・カーなのである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
河西啓介|編集者/モータージャーナリスト
自動車雑誌『NAVI』編集部を経て、出版社ボイス・パブリケーションを設立。『NAVI CARS』『MOTO NAVI』『BICYCLE NAVI』の編集長を務める。現在はフリーランスとして雑誌・ウェブメディアでの原稿執筆のほか、クリエイティブディレクター、ラジオパーソナリティ、テレビコメンテーターなどとしても活動する。
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