【試乗】「小さくても高級」は日本で受け入れられるか? 日産 ノートオーラ
◆日本ではあまり馴染みがない「小さい高級車」
高級車は大きくあるべき…という考えとは別に、コンパクトながらも高級感を満載…というクルマも世の中では求められている。
大きく時代をさかのぼれば、バンデン・プラ『プリンセス』やルノー『5バカラ』などがそうしたモデルだ。日本でいうと1998年にトヨタが試乗投入した『プログレ』や、2006年に同じくトヨタから販売された『ブレイド』などがプレミアムコンパクトの部類に入る。また、アウディ『A1』やメルセデスベンツ『Aクラス』、BMW『1シリーズ』なども同様だ。日本ではあまり馴染みのないジャンルだが、そこに日産が『ノートオーラ』で参入した。
2019年の東京モーターショーで披露された日産の新世代EV『アリア』を彷彿とさせるエクステリアはプレミアムコンパクトにふさわしいもの。ノートに比べ40mm広げられた全幅も手伝って、高級感と力強さがアップしている。ツイード調の表皮を被せたダッシュパネルや木目調パネル、ツイード調表皮もしくは革の3層構造シート(レザーエディション専用装備)とインテリアは上質な仕上がりとなっている。また、ヘッドレストにスピーカーをビルトインしたBOSEサウンドドシステムなどもセットオプションとして用意されている。
ノートに比べ車重はFFで40kg、4WDで30kg重いが、フロントモーターは20馬力、20Nmのスペックアップ(4WD車のリヤモーターはノートと同一スペック)が行われている。このパワーユニットのスペックアップによって車重増加分は十分にカバーできるということであった。
◆ノートと大きく違いを感じるのは静粛性
まずはFFから試乗を開始。試乗会場となったのは日産自動車の追浜工場に隣接する「グランドライブ」。かつてのテストコースを利用したクローズドコースだ。スタート地点からゆっくりとコースに入りいったん停止、そこからアクセルをグッと踏み込むとキュッとタイヤを鳴らしてグイグイと強い加速をしていく。加速感はノートよりも少し力強い感じを受ける。
ノートと大きく違いを感じるのは静粛性の部分。ノートではエンジンが始動した際のノイズが大きく3気筒エンジンさを感じてしまうのだが、ノートオーラにはその感覚がかなり薄められている。この部分を薄くするだけで十分に高級感が高まる。
試乗コースにはスラロームも設けられて、ハンドリングのシャープさのチェックができた。ノートのタイヤサイズは185/65R15だが、ノートオーラのタイヤは205/50R17と2サイズも太く、ステアリングの操作に対してしっかりと反応しシャープな動きを示す。扁平率65%から50%への低減は乗り心地の悪化を招かないかと心配したが、タイヤ銘柄がノートではエコピアであったのに対し、ノートオーラではトランザとなっていて、乗り心地の悪化をタイヤ銘柄でカバーしている。
◆走って楽しいのは4WDだ
4WDモデルは車重アップが30kgにとどまっているが、もともとの重量が重い。そのため4WDのほうが走りは不利かと思えばそうでなかった。走って楽しいのは4WDだ。ノートオーラには「エコ」、「スポーツ」、「ノーマル」という3つのドライブモードがある。このうち、スポーツモードの味付けがFFと4WDで異なる。スポーツモードの場合、FFに比べて4WDはより強い加速度が得られる設定となっている。
また、走行レンジはDとBがある。レンジ違いはアクセルを戻した際の減速Gに影響を与える。DレンジではFFと4WDの最大減速力に差はないが、Bレンジ(エコモードもしくはスポーツモード)の場合はFFが最大0.18Gの減速度となるが4WDの場合は最大0.2Gの減速度が得られる。
このセッティングどおり、走りがもっともアクティブなのが大きな加速度が得られる4WDでのドライブモード「スポーツ」&減速Gが大きな「Bレンジ」。この組み合わせで走るとキビキビした走りとなる。グランドライブには坂を上りながら切り返しを行うS字カーブと平坦なS字カーブがあるが、どちらのS字カーブでもアクセルワークを上手に使って荷重を移動しつつ、クルマの向きをグッと変えてやることができる。FFでもこの動きはするのだが、よりキリッと引き締まった動きになるところがおもしろい部分だ。
◆プレミアムコンパクトとして乗るのであれば
ノートオーラはエントリーモデルの「G・FF」が261万300円、トップエンドの「G FOUR レザーエディション4WD」が295万7900円。ノート同様にプロパイロットはナビなどとセットオプションで約40万円、G FOUR レザーエディション4WDの場合はおおよそ350万円程度となる。
ノートでは高いオプションはおかしいと考えたが、プレミアムコンパクトとして乗るのであれば高額支払いもいい、というのが私の考え。そもそもこのカメラを使う装備はノートオーラ専用にて、ノートは安価なACCを装備したほうがユーザーフレンドリーだろう。普通のコンパクトに乗りたいならノートを選べば十分で、プレミアムコンパクトという特別感が欲しい人が高額出費をするのはいいと思う。
最後に付け加えておくと、ノートオーラの車名からもわかるようにノートをベースとしたモデルだが、日産のホームページではほぼ「オーラ」という表示。カタログも「AURA」がメインに使われ、「ノート」や「NOTE」の文字はあまり見かけない。日産はどうやらノートとは違うクルマだというイメージづけをしたいようだ。だが、車名としてはノートオーラなので、自販連の通称名別順位ではノートに算入される。日産はオーラの名でユーザーには新型車をアピール、登録台数ではノートとして算入されるという一石二鳥をねらっているのかもしれない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。
高級車は大きくあるべき…という考えとは別に、コンパクトながらも高級感を満載…というクルマも世の中では求められている。
大きく時代をさかのぼれば、バンデン・プラ『プリンセス』やルノー『5バカラ』などがそうしたモデルだ。日本でいうと1998年にトヨタが試乗投入した『プログレ』や、2006年に同じくトヨタから販売された『ブレイド』などがプレミアムコンパクトの部類に入る。また、アウディ『A1』やメルセデスベンツ『Aクラス』、BMW『1シリーズ』なども同様だ。日本ではあまり馴染みのないジャンルだが、そこに日産が『ノートオーラ』で参入した。
2019年の東京モーターショーで披露された日産の新世代EV『アリア』を彷彿とさせるエクステリアはプレミアムコンパクトにふさわしいもの。ノートに比べ40mm広げられた全幅も手伝って、高級感と力強さがアップしている。ツイード調の表皮を被せたダッシュパネルや木目調パネル、ツイード調表皮もしくは革の3層構造シート(レザーエディション専用装備)とインテリアは上質な仕上がりとなっている。また、ヘッドレストにスピーカーをビルトインしたBOSEサウンドドシステムなどもセットオプションとして用意されている。
ノートに比べ車重はFFで40kg、4WDで30kg重いが、フロントモーターは20馬力、20Nmのスペックアップ(4WD車のリヤモーターはノートと同一スペック)が行われている。このパワーユニットのスペックアップによって車重増加分は十分にカバーできるということであった。
◆ノートと大きく違いを感じるのは静粛性
まずはFFから試乗を開始。試乗会場となったのは日産自動車の追浜工場に隣接する「グランドライブ」。かつてのテストコースを利用したクローズドコースだ。スタート地点からゆっくりとコースに入りいったん停止、そこからアクセルをグッと踏み込むとキュッとタイヤを鳴らしてグイグイと強い加速をしていく。加速感はノートよりも少し力強い感じを受ける。
ノートと大きく違いを感じるのは静粛性の部分。ノートではエンジンが始動した際のノイズが大きく3気筒エンジンさを感じてしまうのだが、ノートオーラにはその感覚がかなり薄められている。この部分を薄くするだけで十分に高級感が高まる。
試乗コースにはスラロームも設けられて、ハンドリングのシャープさのチェックができた。ノートのタイヤサイズは185/65R15だが、ノートオーラのタイヤは205/50R17と2サイズも太く、ステアリングの操作に対してしっかりと反応しシャープな動きを示す。扁平率65%から50%への低減は乗り心地の悪化を招かないかと心配したが、タイヤ銘柄がノートではエコピアであったのに対し、ノートオーラではトランザとなっていて、乗り心地の悪化をタイヤ銘柄でカバーしている。
◆走って楽しいのは4WDだ
4WDモデルは車重アップが30kgにとどまっているが、もともとの重量が重い。そのため4WDのほうが走りは不利かと思えばそうでなかった。走って楽しいのは4WDだ。ノートオーラには「エコ」、「スポーツ」、「ノーマル」という3つのドライブモードがある。このうち、スポーツモードの味付けがFFと4WDで異なる。スポーツモードの場合、FFに比べて4WDはより強い加速度が得られる設定となっている。
また、走行レンジはDとBがある。レンジ違いはアクセルを戻した際の減速Gに影響を与える。DレンジではFFと4WDの最大減速力に差はないが、Bレンジ(エコモードもしくはスポーツモード)の場合はFFが最大0.18Gの減速度となるが4WDの場合は最大0.2Gの減速度が得られる。
このセッティングどおり、走りがもっともアクティブなのが大きな加速度が得られる4WDでのドライブモード「スポーツ」&減速Gが大きな「Bレンジ」。この組み合わせで走るとキビキビした走りとなる。グランドライブには坂を上りながら切り返しを行うS字カーブと平坦なS字カーブがあるが、どちらのS字カーブでもアクセルワークを上手に使って荷重を移動しつつ、クルマの向きをグッと変えてやることができる。FFでもこの動きはするのだが、よりキリッと引き締まった動きになるところがおもしろい部分だ。
◆プレミアムコンパクトとして乗るのであれば
ノートオーラはエントリーモデルの「G・FF」が261万300円、トップエンドの「G FOUR レザーエディション4WD」が295万7900円。ノート同様にプロパイロットはナビなどとセットオプションで約40万円、G FOUR レザーエディション4WDの場合はおおよそ350万円程度となる。
ノートでは高いオプションはおかしいと考えたが、プレミアムコンパクトとして乗るのであれば高額支払いもいい、というのが私の考え。そもそもこのカメラを使う装備はノートオーラ専用にて、ノートは安価なACCを装備したほうがユーザーフレンドリーだろう。普通のコンパクトに乗りたいならノートを選べば十分で、プレミアムコンパクトという特別感が欲しい人が高額出費をするのはいいと思う。
最後に付け加えておくと、ノートオーラの車名からもわかるようにノートをベースとしたモデルだが、日産のホームページではほぼ「オーラ」という表示。カタログも「AURA」がメインに使われ、「ノート」や「NOTE」の文字はあまり見かけない。日産はどうやらノートとは違うクルマだというイメージづけをしたいようだ。だが、車名としてはノートオーラなので、自販連の通称名別順位ではノートに算入される。日産はオーラの名でユーザーには新型車をアピール、登録台数ではノートとして算入されるという一石二鳥をねらっているのかもしれない。
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