【ダイハツ ロッキー 新型試乗】ダイハツがハイブリッドで独り立ちした…中村孝仁
ダイハツの独り立ち
ダイハツがハイブリッドを出した。当然トヨタのTHSがベースと考えていたのだが、いざ試乗会に赴くと思わぬ答えが返ってきた。
「うちで一番大きなモデルがこの辺りなんです。だから、ハイブリッドやるにしても下に展開することを考えると、THSの選択肢はなかなか難しいんです」とはダイハツ開発陣の弁だった。で、どうしたのか?何と独自のハイブリッドシステムを作り上げた。それが今回の『ロッキー』の「e-SMART HYBRID」である。
そしてエンジンも新開発だ。はっきり言ってしまえば将来的に色々と転用はあるだろうが、要するにこのハイブリッド用に作り上げたというわけ。だからチューンも独特で、兎に角熱効率を高くすることを最大の目標としていた。出来上がったのは熱効率40%という高い値を達成した1.2リットル直列3気筒である。
そしてそのシステムはスペース効率なども勘案してシリーズ方式とされた。つまりは日産のe-POWERと同じで、エンジンは駆動のためではなく発電に使われる。そしてそのエンジンで発電された電気は0.75kwhという小さなリチウムイオンバッテリーに貯められて、前輪を駆動する。カットボディを見てみると、そのリチウムイオンバッテリーは後席下にレイアウトされ、ついでに12Vの通常バッテリーまでリアにお引越ししていた。
何故通常バッテリーまでリアに移動されたかというと、エンジンの横にはコントロールモジュールがでんと居座り、バッテリーを置くスペースがなくなったため、やむなくのお引越しとなったわけだが、このおかげで同じエンジンを搭載するガソリン仕様とは走りの印象がまるで違っていたことを報告しておこう。
時代が変わればペダルにも名前がつく
e-POWERと同じシリーズハイブリッドということは、当然ながらワンペダルドライブも期待してしまう。ダイハツはそれをスマートペダルと名付けた。まあ最近はペダルも偉くなったもので、ダイハツではスマートペダルだし、トヨタは『アクア』で快感ペダルと名付けている。要するに名前がついた。時代が変わるとペダルにも名前がつくということだ。
このスマートペダルはダッシュボードの右下にスイッチがあり、それを押すことでメーター内にグリーンのS-PDLという文字が点灯して起動。この状態だとかなりのワンペダルドライブを可能にしている。一方でこれを切れば普通の走りになって減速Gが小さい走りになる。
それにしてもたった0.75kwhという小さなバッテリーではさぞかし頻繁にエンジンがかかって、せっかくのハイブリッドらしい静粛性の高い走りは期待できないかな?と思って乗ってみるとこれがまたまた大きく裏切られた。
さすがに信号から流れに乗ってスタートするような時は、3気筒がうなりを上げて室内にもその音がかなりのボリュームで入ってくるのだが、定常走行になるとそれがすっと消える。そして街中でよく体験するような30~40km/h程度でゆっくり流している時などは、バッテリー駆動だけで行けるのだ。
WLTCの燃費は28.0km/リットルなのだそうだ。そんなことを気にせず全然普通に走っていたのだが、ふとした時にメーターを見てみると車載コンピューターによる燃費が何と28.6km/リットルを指していたので思わず写真を撮った。なんでも電気自動車を走り慣れたドライバー(モータージャーナリストだが)が挑戦した結果は37.0km/リットルを表示したそうだから、これは相当な低燃費が期待できる。
エンジンも新開発してこのお値段なら、納得できる
不満な点がないわけではない。やはりエンジンかかかった時の室内騒音は結構なものだ。ダイハツは遮音効果を上げるべく床下などに遮音材を貼っているのだが、やはり気になった。特にガソリンエンジン車の方が静かと感じてしまったので、単刀直入にその部分の質問をぶつけたところ、ガソリン車は端からエンジンがかかってリニアにその音が高まる為耳が慣れてしまうのに対し、ハイブリッドはエンジンが突然かかったり止まったりを繰り返すから、そのかかったときの大きさが却って人間にとっては音が大きく感じてしまうのだとか。
確かに言われてみると低速でモーター走行している時はとても静かで、逆にエンジンが発電を始めるとやかましく感じた。
リチウムイオンバッテリーの重さを聞くのを忘れてしまったが、これに通常のバッテリーを加えたらその重さは相当なものだ。なのでガソリン車とは重量バランスが異なり、かつ同じ「プレミアムG」というグレード同士を比べるとHEVモデルの方が90kg重い。そのほとんどはバッテリーのはずだから、バランスが違うのは当たり前。やはりHEVの方がよりしっとりとした乗り味を持っている。
因みに一番豪華なモデルのHEVでもお値段は234万7000円。これは1リットルターボを搭載したモデルの231万8200円とほぼ同等だ。といってもあちらは4WDでこちらはFWDの違いがある。
でも新たなハイブリッドシステムを作り上げ、エンジンも新開発してこのお値段なら、全然納得できるし、走りも十分満足のいくものだった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度 ★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
ダイハツがハイブリッドを出した。当然トヨタのTHSがベースと考えていたのだが、いざ試乗会に赴くと思わぬ答えが返ってきた。
「うちで一番大きなモデルがこの辺りなんです。だから、ハイブリッドやるにしても下に展開することを考えると、THSの選択肢はなかなか難しいんです」とはダイハツ開発陣の弁だった。で、どうしたのか?何と独自のハイブリッドシステムを作り上げた。それが今回の『ロッキー』の「e-SMART HYBRID」である。
そしてエンジンも新開発だ。はっきり言ってしまえば将来的に色々と転用はあるだろうが、要するにこのハイブリッド用に作り上げたというわけ。だからチューンも独特で、兎に角熱効率を高くすることを最大の目標としていた。出来上がったのは熱効率40%という高い値を達成した1.2リットル直列3気筒である。
そしてそのシステムはスペース効率なども勘案してシリーズ方式とされた。つまりは日産のe-POWERと同じで、エンジンは駆動のためではなく発電に使われる。そしてそのエンジンで発電された電気は0.75kwhという小さなリチウムイオンバッテリーに貯められて、前輪を駆動する。カットボディを見てみると、そのリチウムイオンバッテリーは後席下にレイアウトされ、ついでに12Vの通常バッテリーまでリアにお引越ししていた。
何故通常バッテリーまでリアに移動されたかというと、エンジンの横にはコントロールモジュールがでんと居座り、バッテリーを置くスペースがなくなったため、やむなくのお引越しとなったわけだが、このおかげで同じエンジンを搭載するガソリン仕様とは走りの印象がまるで違っていたことを報告しておこう。
時代が変わればペダルにも名前がつく
e-POWERと同じシリーズハイブリッドということは、当然ながらワンペダルドライブも期待してしまう。ダイハツはそれをスマートペダルと名付けた。まあ最近はペダルも偉くなったもので、ダイハツではスマートペダルだし、トヨタは『アクア』で快感ペダルと名付けている。要するに名前がついた。時代が変わるとペダルにも名前がつくということだ。
このスマートペダルはダッシュボードの右下にスイッチがあり、それを押すことでメーター内にグリーンのS-PDLという文字が点灯して起動。この状態だとかなりのワンペダルドライブを可能にしている。一方でこれを切れば普通の走りになって減速Gが小さい走りになる。
それにしてもたった0.75kwhという小さなバッテリーではさぞかし頻繁にエンジンがかかって、せっかくのハイブリッドらしい静粛性の高い走りは期待できないかな?と思って乗ってみるとこれがまたまた大きく裏切られた。
さすがに信号から流れに乗ってスタートするような時は、3気筒がうなりを上げて室内にもその音がかなりのボリュームで入ってくるのだが、定常走行になるとそれがすっと消える。そして街中でよく体験するような30~40km/h程度でゆっくり流している時などは、バッテリー駆動だけで行けるのだ。
WLTCの燃費は28.0km/リットルなのだそうだ。そんなことを気にせず全然普通に走っていたのだが、ふとした時にメーターを見てみると車載コンピューターによる燃費が何と28.6km/リットルを指していたので思わず写真を撮った。なんでも電気自動車を走り慣れたドライバー(モータージャーナリストだが)が挑戦した結果は37.0km/リットルを表示したそうだから、これは相当な低燃費が期待できる。
エンジンも新開発してこのお値段なら、納得できる
不満な点がないわけではない。やはりエンジンかかかった時の室内騒音は結構なものだ。ダイハツは遮音効果を上げるべく床下などに遮音材を貼っているのだが、やはり気になった。特にガソリンエンジン車の方が静かと感じてしまったので、単刀直入にその部分の質問をぶつけたところ、ガソリン車は端からエンジンがかかってリニアにその音が高まる為耳が慣れてしまうのに対し、ハイブリッドはエンジンが突然かかったり止まったりを繰り返すから、そのかかったときの大きさが却って人間にとっては音が大きく感じてしまうのだとか。
確かに言われてみると低速でモーター走行している時はとても静かで、逆にエンジンが発電を始めるとやかましく感じた。
リチウムイオンバッテリーの重さを聞くのを忘れてしまったが、これに通常のバッテリーを加えたらその重さは相当なものだ。なのでガソリン車とは重量バランスが異なり、かつ同じ「プレミアムG」というグレード同士を比べるとHEVモデルの方が90kg重い。そのほとんどはバッテリーのはずだから、バランスが違うのは当たり前。やはりHEVの方がよりしっとりとした乗り味を持っている。
因みに一番豪華なモデルのHEVでもお値段は234万7000円。これは1リットルターボを搭載したモデルの231万8200円とほぼ同等だ。といってもあちらは4WDでこちらはFWDの違いがある。
でも新たなハイブリッドシステムを作り上げ、エンジンも新開発してこのお値段なら、全然納得できるし、走りも十分満足のいくものだった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度 ★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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