【アウディ e-tron GT 新型試乗】電動化への移行を真剣に考える時が来た…野口優
遂にというか、ようやくと記すのが適しているのか定かではないが、いよいよ本格的にはじまった自動車の電動化。
プレミアムブランドも例に漏れず、一刻も早い脱炭素社会の実現へと動き出しているが、ひとりのクルマ好きとしては、やはり電気自動車は受け入れるべきだと思っている反面、本当に楽しめるのか?という一点について常に葛藤があるのは事実。ガソリンをばら撒き続けてきた昭和世代なら尚さらそう思うはずだ。
見た目からして、素直にカッコイイ
そんなことを思っていた矢先に「アウディ スポーツ サーキット テスト ドライブ」と称されたプレス向けのイベントの中で、アウディ『e-tron GT クワトロ』を富士スピードウェイで試せるという機会に恵まれた。他には、最新の『RS3セダン』や『RS6アバント』、ミッドシップの『R8』と強者揃いの中で唯一のフル電動車だから、モヤモヤとしていた心を整理するにもうってつけ。しかも事実上の姉妹車であるポルシェ『タイカン』には乗っていたものの、e-tronはまだ未体験だったから、この日が来るのを非常に楽しみにしていた。
全長4990×全幅1965×全高1415mmというボディサイズに、アウディらしい前衛的なフォルムをまとうe-tron GTに対する筆者の第一印象は、タイカンよりも好ましく、パワフルなイメージ。デザイン的にもこの4ドア グランツーリスモはエレガントさも持ち合わせ、昨今における過渡期の1台としては見た目からして受け入れやすく、素直にカッコイイと思えた。
試乗前に気になったのはその重量
e-tron GTは、前後に1基ずつ電気モーターを備え、クワトロ=4WDで駆動するというのもアウディらしいところかもしれない。駆動用リチウムイオンバッテリーの総電力は93.4kW、800Vシステムを備え、最高出力390kW、最大トルク640Nmを発揮するものの、車重は2280kgと決して軽いとは言えないが、しかし可能な限り重量を抑えようと、細部に渡り軽量化が図られているから電動化への第一歩としては褒めてあげたいほどの努力が見え隠れする。
とはいえ、試乗前にその重量が気になって仕方なかった。何故なら以前タイカンに乗った際、十分以上の加速を見せる一方で、常に“重い!”と自重を感じたからだ。この重さが電気自動車の印象を悪くする理由で、ガソリン大好き世代にとってはすぐには移行できないと思わせる最大の要因。ましてやサーキットなど、もってのほか!だと思うこともあったからコースインするまでは不安と期待が交差していた。
悪くない、速い!よく曲がる!
ところが、サーキットで見せたe-tron GTに良い意味で裏切られる結果に……。悪くない、速い!よく曲がる!と、わずか2周という限られた中でもあっという間に好印象になっていった。特に印象的なのは、旋回中のシャシー性能とハンドリング。可変ダンパーに従来のスプリングを組み合わせたスタンダードな仕様であるにも関わらず、追従性に優れ、狙ったラインを描きやすく、ボディコントロールも見事なほどフラットな姿勢を保つ。上位グレードの『RS e-tron GT』であればエアサス仕様だからさらに良いと思うが(こちらの試乗が叶わなかったのが残念無念!)、これで十分だろうと思えたのは本当だ。
もちろん、アウディが長年培ってきた自慢のクワトロシステムも電動化にも活かされ、状況に応じて100対0から0対100まで可変させるうえ、その反応速度もこれまでの機械式と比べて約5倍もの速さで実行するというから、こうしたサーキットでも安定して攻められるのだろう。
BEVでもサーキットを楽しめる
しかも懸念していた重さに関しても、サーキットの場合は加速の鋭さもあって忘れさせてくれたのが意外な収穫。0-100km/h加速は4.1秒と公表されているが、サーキットで得られた体感ではそれ以上に感じられるし、電動車ならではのワープするかのような加速感がかえって面白く、乗り続ければクセになりそうな予感さえしてきた。
さらにブレーキ性能もこの重さに対しても十分な効きを見せるから、思う存分に攻めることができた。ただ、富士スピードウェイの最終コーナーのような減速後、直ちに加速体制に入ろうとした瞬間は、さすがに重いと感じてしまったのが、今回唯一の難点だろう。
それでも、こうしたBEV=電動車のスポーツモデルであればサーキットのような場所でも楽しめるのは確かだと痛感。フル充電で534km、30分の急速充電では最大250km以上の走行も可能というのも現実的かつ十分だ。そろそろ筆者も電動化への移行を真剣に考える時が来たと思わせてくれた試乗だった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
野口 優|モータージャーナリスト1967年 東京都生まれ。1993年に某輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。後に三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務し、2008年から同誌の編集長に就任。2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。25年以上にも渡る経験を活かしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動中。
プレミアムブランドも例に漏れず、一刻も早い脱炭素社会の実現へと動き出しているが、ひとりのクルマ好きとしては、やはり電気自動車は受け入れるべきだと思っている反面、本当に楽しめるのか?という一点について常に葛藤があるのは事実。ガソリンをばら撒き続けてきた昭和世代なら尚さらそう思うはずだ。
見た目からして、素直にカッコイイ
そんなことを思っていた矢先に「アウディ スポーツ サーキット テスト ドライブ」と称されたプレス向けのイベントの中で、アウディ『e-tron GT クワトロ』を富士スピードウェイで試せるという機会に恵まれた。他には、最新の『RS3セダン』や『RS6アバント』、ミッドシップの『R8』と強者揃いの中で唯一のフル電動車だから、モヤモヤとしていた心を整理するにもうってつけ。しかも事実上の姉妹車であるポルシェ『タイカン』には乗っていたものの、e-tronはまだ未体験だったから、この日が来るのを非常に楽しみにしていた。
全長4990×全幅1965×全高1415mmというボディサイズに、アウディらしい前衛的なフォルムをまとうe-tron GTに対する筆者の第一印象は、タイカンよりも好ましく、パワフルなイメージ。デザイン的にもこの4ドア グランツーリスモはエレガントさも持ち合わせ、昨今における過渡期の1台としては見た目からして受け入れやすく、素直にカッコイイと思えた。
試乗前に気になったのはその重量
e-tron GTは、前後に1基ずつ電気モーターを備え、クワトロ=4WDで駆動するというのもアウディらしいところかもしれない。駆動用リチウムイオンバッテリーの総電力は93.4kW、800Vシステムを備え、最高出力390kW、最大トルク640Nmを発揮するものの、車重は2280kgと決して軽いとは言えないが、しかし可能な限り重量を抑えようと、細部に渡り軽量化が図られているから電動化への第一歩としては褒めてあげたいほどの努力が見え隠れする。
とはいえ、試乗前にその重量が気になって仕方なかった。何故なら以前タイカンに乗った際、十分以上の加速を見せる一方で、常に“重い!”と自重を感じたからだ。この重さが電気自動車の印象を悪くする理由で、ガソリン大好き世代にとってはすぐには移行できないと思わせる最大の要因。ましてやサーキットなど、もってのほか!だと思うこともあったからコースインするまでは不安と期待が交差していた。
悪くない、速い!よく曲がる!
ところが、サーキットで見せたe-tron GTに良い意味で裏切られる結果に……。悪くない、速い!よく曲がる!と、わずか2周という限られた中でもあっという間に好印象になっていった。特に印象的なのは、旋回中のシャシー性能とハンドリング。可変ダンパーに従来のスプリングを組み合わせたスタンダードな仕様であるにも関わらず、追従性に優れ、狙ったラインを描きやすく、ボディコントロールも見事なほどフラットな姿勢を保つ。上位グレードの『RS e-tron GT』であればエアサス仕様だからさらに良いと思うが(こちらの試乗が叶わなかったのが残念無念!)、これで十分だろうと思えたのは本当だ。
もちろん、アウディが長年培ってきた自慢のクワトロシステムも電動化にも活かされ、状況に応じて100対0から0対100まで可変させるうえ、その反応速度もこれまでの機械式と比べて約5倍もの速さで実行するというから、こうしたサーキットでも安定して攻められるのだろう。
BEVでもサーキットを楽しめる
しかも懸念していた重さに関しても、サーキットの場合は加速の鋭さもあって忘れさせてくれたのが意外な収穫。0-100km/h加速は4.1秒と公表されているが、サーキットで得られた体感ではそれ以上に感じられるし、電動車ならではのワープするかのような加速感がかえって面白く、乗り続ければクセになりそうな予感さえしてきた。
さらにブレーキ性能もこの重さに対しても十分な効きを見せるから、思う存分に攻めることができた。ただ、富士スピードウェイの最終コーナーのような減速後、直ちに加速体制に入ろうとした瞬間は、さすがに重いと感じてしまったのが、今回唯一の難点だろう。
それでも、こうしたBEV=電動車のスポーツモデルであればサーキットのような場所でも楽しめるのは確かだと痛感。フル充電で534km、30分の急速充電では最大250km以上の走行も可能というのも現実的かつ十分だ。そろそろ筆者も電動化への移行を真剣に考える時が来たと思わせてくれた試乗だった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
野口 優|モータージャーナリスト1967年 東京都生まれ。1993年に某輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。後に三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務し、2008年から同誌の編集長に就任。2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。25年以上にも渡る経験を活かしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動中。
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