【マツダ ロードスター 990S 新型試乗】同じ990kgでも「S」とは違う!走りへのこだわり…諸星陽一
マツダ『ロードスター』に「990S」という特別仕様車が設定された。990という数字は車重を表現。つまり、車重990kgという軽量モデルというわけである。
1989年に初代モデルであるユーノス・ロードスターが登場してからすでに30年以上が経過しているが、ロードスターの芯はぶれることがなく現在に至っている。その芯の部分をより太く、より明確にしたモデルが今回登場した特別仕様車の990Sだといえる。
同じ990kgの「S」との違いは
ベースとなったのはもっとも軽量な仕様となる「S」グレードだ。990Sの車重が990kgであることに「?」と思った方はなかなか鋭く、ロードスターに詳しい方だろう。というのも、ベースのSも車重は990kgなのだ。にも関わらず、990kgをウリにするのにはワケがある。
Sグレードはノーマルのブレーキキャリパーを用いるが、990Sはフロントにブレンボキャリパーと大型ローター、リヤブレーキはキャリパーサイズは同一だがローター径をアップしている。この状態で重量増となっているのだが、ホイールをレイズの鍛造タイプに変更することで1本あたり800g、3本で3.2kgの軽量化するなどして、トレードオフとしている。
また990Sをはじめ、2021年12月のマイナーチェンジ以降のロードスターには、キネマティック・ポスチャー・コントロール(KPC)と呼ばれる制御装置が装備された。KPCはGベクタリングコントロールのFR版のようなもの。ロードスターのリヤサスペンションは、制動力が働くとアンチリフト力が働くジオメトリーに設計されている。簡単に言えば制動力が働くとリヤタイヤが地面に押しつけられるようにサスペンションのアームが配置されている。そこで、コーナリング中にリヤ内側輪を微制動することで接地性を上げようという考えだ。
安定感が増したコーナリング
さて、久しぶりのNDロードスターのドライブである。1速、2速とゆっくりと流した状態からアクセルを踏み込んでいくと軽快にエンジン回転が上がっていく。加速感に関してはノーマルのSグレードとの差を感じることはないが、フロントにブレンボキャリパーがおごられたこともあり制動力はグッとアップしている。
軽量なモデルでフロントキャリパーを大型化すると、ブレーキバランスが悪くなることもあるが、現代の自動車メーカーが行なった改良だ、そんな心配はなくしっかりとバランスを保ち、制動力のみが強化されている印象だ。ブレーキタッチも悪くなく、減速のためのブレーキング、荷重移動のためのブレーキングともに求めるものが得られる。
コーナリングに関しては安定感が増している印象を受ける。今までもコーナリング中に内側輪にブレーキを掛けるという制御は存在した。それらの多くは内輪を減速させることでより曲がりやすくする方法だ。極端な話をすれば戦車のコーナリングのように内側輪の回転を止めてしまえば、グッと曲がっていくというようなものだ。KPCはそうした制御とは発想が異なり、あくまでも内側輪の浮き上がりを防止するという考えだ。
KPGの制御はDSCをカットすると同時にカットされるので、比べることができるのだが、感度がいい人ならコーナリング時の安定感の違いを感じることができるだろう。とはいえ、DSCをカットして走る意味はまったくなく、普通にドライブするのであれば、深く考えることなくDSCオンのまま安定して走ればいい。
リヤスタビライザーもLSDもないが
990Sはリヤスタビライザーが装着されず、デフもLSDではなくオープンデフとなっている。スポーツタイプといえば、スタビライザーを太くしてLSDの効きを強くして……というのが当たり前のチューニングであったが、じつはスタビライザーがなくリヤのサスペンションが左右しっかりと独立して動くというのは乗り心地もよければコントロール性もいい。スタビライザーはイン側タイヤの浮き上がりを防止する機能はあるが、せっかくの独立懸架のいいところをスポイルする面もある。KPCはLSDを装着してもその機能が働かなくなるわけではなく、きちんと機能するというのもうれしい部分だ。
もし、今ロードスターを買うとしたらこの990Sが一番のおすすめとなるのは間違いない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。
1989年に初代モデルであるユーノス・ロードスターが登場してからすでに30年以上が経過しているが、ロードスターの芯はぶれることがなく現在に至っている。その芯の部分をより太く、より明確にしたモデルが今回登場した特別仕様車の990Sだといえる。
同じ990kgの「S」との違いは
ベースとなったのはもっとも軽量な仕様となる「S」グレードだ。990Sの車重が990kgであることに「?」と思った方はなかなか鋭く、ロードスターに詳しい方だろう。というのも、ベースのSも車重は990kgなのだ。にも関わらず、990kgをウリにするのにはワケがある。
Sグレードはノーマルのブレーキキャリパーを用いるが、990Sはフロントにブレンボキャリパーと大型ローター、リヤブレーキはキャリパーサイズは同一だがローター径をアップしている。この状態で重量増となっているのだが、ホイールをレイズの鍛造タイプに変更することで1本あたり800g、3本で3.2kgの軽量化するなどして、トレードオフとしている。
また990Sをはじめ、2021年12月のマイナーチェンジ以降のロードスターには、キネマティック・ポスチャー・コントロール(KPC)と呼ばれる制御装置が装備された。KPCはGベクタリングコントロールのFR版のようなもの。ロードスターのリヤサスペンションは、制動力が働くとアンチリフト力が働くジオメトリーに設計されている。簡単に言えば制動力が働くとリヤタイヤが地面に押しつけられるようにサスペンションのアームが配置されている。そこで、コーナリング中にリヤ内側輪を微制動することで接地性を上げようという考えだ。
安定感が増したコーナリング
さて、久しぶりのNDロードスターのドライブである。1速、2速とゆっくりと流した状態からアクセルを踏み込んでいくと軽快にエンジン回転が上がっていく。加速感に関してはノーマルのSグレードとの差を感じることはないが、フロントにブレンボキャリパーがおごられたこともあり制動力はグッとアップしている。
軽量なモデルでフロントキャリパーを大型化すると、ブレーキバランスが悪くなることもあるが、現代の自動車メーカーが行なった改良だ、そんな心配はなくしっかりとバランスを保ち、制動力のみが強化されている印象だ。ブレーキタッチも悪くなく、減速のためのブレーキング、荷重移動のためのブレーキングともに求めるものが得られる。
コーナリングに関しては安定感が増している印象を受ける。今までもコーナリング中に内側輪にブレーキを掛けるという制御は存在した。それらの多くは内輪を減速させることでより曲がりやすくする方法だ。極端な話をすれば戦車のコーナリングのように内側輪の回転を止めてしまえば、グッと曲がっていくというようなものだ。KPCはそうした制御とは発想が異なり、あくまでも内側輪の浮き上がりを防止するという考えだ。
KPGの制御はDSCをカットすると同時にカットされるので、比べることができるのだが、感度がいい人ならコーナリング時の安定感の違いを感じることができるだろう。とはいえ、DSCをカットして走る意味はまったくなく、普通にドライブするのであれば、深く考えることなくDSCオンのまま安定して走ればいい。
リヤスタビライザーもLSDもないが
990Sはリヤスタビライザーが装着されず、デフもLSDではなくオープンデフとなっている。スポーツタイプといえば、スタビライザーを太くしてLSDの効きを強くして……というのが当たり前のチューニングであったが、じつはスタビライザーがなくリヤのサスペンションが左右しっかりと独立して動くというのは乗り心地もよければコントロール性もいい。スタビライザーはイン側タイヤの浮き上がりを防止する機能はあるが、せっかくの独立懸架のいいところをスポイルする面もある。KPCはLSDを装着してもその機能が働かなくなるわけではなく、きちんと機能するというのもうれしい部分だ。
もし、今ロードスターを買うとしたらこの990Sが一番のおすすめとなるのは間違いない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
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パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。
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