【ヒョンデ アイオニック5 新型試乗】「右ウインカー」からも感じる日本市場への本気度…会田肇
12年ぶりに日本市場へ再参入する韓国の現代(ヒョンデ)自動車が、その主力モデルとして投入するのがバッテリーEV(BEV)の『アイオニック5』だ。予約は5月からスタートし、7月よりデリバリーされるが、その前に試乗する機会を得た。そこで感じたことをレポートしたい。
独創的なデザインと圧倒的広さを持つ車内空間
アイオニック5を前にすると、その斬新なデザインに思わず目を奪われる。そのスタイリングは、巨匠ジョルジェット・ジウジアーロが手がけ、1974年にトリノ モーターショーで発表された「ポニー コンセプト」のDNAを引き継いだもので、これは過去と現在、そして未来をつなぐ「タイムレスバリュー」というコンセプトから生まれている。
どこなくランチア『デルタ』を彷彿させるデザインともなっており、逆Z型のプレスラインを持ったサイドビューは一度見たら忘れられない独創性を伝えてくる。また、前後のランプデザインには、画像の最小単位であるデジタルピクセルにアナログな感性を加えた「パラメトリックピクセル」を取り入れてユニークさを表現。特にリアエンドは方眼をあしらった個性豊かなデザインとなっている。
ボディサイズは全長4635×全幅1890×全高1645mm。極端に短いオーバーハングとも相まって、ホイールベースは3mにも及ぶ。これはバッテリーをフロアに置いた純EVプラットフォーム(E-GMP)だからこそ実現できたもので、この結果、クラスを超える圧倒的に広い車内空間をもたらしている。
アイオニック5に搭載されるバッテリーは、58.0kWhと72.6kWhの2種類。モーターは標準仕様ではリアのみに搭載し、AWDではフロントとリアに二つのモーターが装備される。充電機能はCHAdeMO急速充電システムと普通充電に対応した。90kW級の急速充電器を使えば32分で10%から80%までの充電が可能だという。72.6kWhのバッテリーを搭載した仕様での航続距離は618km(WLTCモード)。
今回はこの高出力の72.6kWhの標準仕様を撮影禁止という条件の下、路面が整備された限定エリア内で試乗した。
カーナビやウインカーレバーなど日本仕様にローカライズ
運転席に座ってまず感じるのが前後左右とも実に広々としていることだ。クルマの四隅がしっかりと把握でき、ロングホイールベースであることを忘れさせるような取り回しの良さを実感できる。コックピットは大型で見やすい12.3インチのナビゲーション+12.3インチのフル液晶デジタルメーターを2つ並べて設置。物理スイッチは必要最低限に抑えるなど未来感覚にあふれている。そのデザインは素材からして高品質で、手で触れた感触がとても居心地いい。
ネッソと違い、カーナビもゼンリン製地図を採用して日本仕様にローカライズされていた。さらに日本仕様にはドライブレコーダー機能も内蔵される。このあたりからもアイオニック5に対するヒョンデの力の入れようが伝わってくる。
シフトセレクターはステアリングの右側に配置された電動式シフトダイヤルを採用する。ドライバーから直視できる位置にあり、レバーの太さも適度で、切り替えたときのクリック感もしっかりしている。その確実な操作感が好印象だった。また、ウインカーレバーも右側に配置して日本のユーザー向けに配慮したことも見逃せない。
日本仕様のドライバーズ・シートには、全グレードにレッグレストやランバーサポートまで電動で調整できる「リラクゼーションコンフォートシート」を採用した。これは充電時にくつろいで車内待機できるよう配慮したものだという。140mm幅のスライド機構を採用したセンターコンソールは後席乗員にも使いやすいように配慮した。
強烈な加速力と安定した姿勢制御にEVらしさを実感
まずは路面が整備された限定エリアで走ってみた。アクセルを踏み込むと最高出力225kW/最大トルク605Nmのビッグトルクが強烈な加速を生み出し、トラクションの制御も巧さとも相まって気付けばあっという間に高速領域に達していた。その俊足ぶりは感動ものだ。ステアリングの操舵感は安定感があり、重さが適度。グリップ力も充分に高い。フロアにバッテリーを収めたことによる低重心設計とも相まって姿勢制御もきわめて安定しており、安心してコーナリングを通過することができた。高速領域でのノイズレベルも低く、その意味では実に快適な走行ができたと言っていいだろう。
一方、この限定エリアから移動時に公道を走行してみると、サスペンションがかなりタイトであることに気付いた。段差の突き上げも大きめで、決して心地良いとは言えない。これで日本のユーザーに受け入れられるのか。そんな不安をヒョンデ・ジャパンにぶつけると、この時に試乗した車両はサスペンションがイギリス仕様のままで日本仕様ではもっとしなやかな味付けになるとのこと。このあたりは、日本仕様が準備でき次第あらためて体験してみたいと思う。
電動車オンリーで日本市場へ再参入を果たしたヒョンデだが、アイオニック5はその主力モデルと位置付ける。ディーラーを用意せず、自社サイトでのオンライン販売に特化した。そのため、車両選びから試乗予約、見積もり、注文、決済、配送情報の確認まですべてをオンラインで完結できる「One ID」と呼ばれるサービスを用意した。購入後のメンテナンスについても、このIDに基づき、全国の協力整備工場で対応することになっている。
なお、ZEVに特化したリアルな体験拠点として、試乗や購入相談、点検、整備がワンストップで提供する「Hyundaiカスタマーエクスペリエンスセンター」を2022年夏に神奈川県横浜市に開業予定。また、個人間シェアリング「Anyca」ではこのアイオニック5を東京都/神奈川県に100台を配備する。有料とはなるが、少し長めに試乗したい人にはオススメのサービスとなるだろう。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
会田 肇|AJAJ会員
1956年・茨城県生まれ。明治大学政経学部卒。大学卒業後、自動車専門誌の編集部に所属し、1986年よりフリーランスとして独立。主としてカーナビゲーションやITS分野で執筆活動を展開し、それに伴い新型車の試乗もこなす。自身の体験を含め、高齢者の視点に立った車両のアドバイスを心掛けていく。
独創的なデザインと圧倒的広さを持つ車内空間
アイオニック5を前にすると、その斬新なデザインに思わず目を奪われる。そのスタイリングは、巨匠ジョルジェット・ジウジアーロが手がけ、1974年にトリノ モーターショーで発表された「ポニー コンセプト」のDNAを引き継いだもので、これは過去と現在、そして未来をつなぐ「タイムレスバリュー」というコンセプトから生まれている。
どこなくランチア『デルタ』を彷彿させるデザインともなっており、逆Z型のプレスラインを持ったサイドビューは一度見たら忘れられない独創性を伝えてくる。また、前後のランプデザインには、画像の最小単位であるデジタルピクセルにアナログな感性を加えた「パラメトリックピクセル」を取り入れてユニークさを表現。特にリアエンドは方眼をあしらった個性豊かなデザインとなっている。
ボディサイズは全長4635×全幅1890×全高1645mm。極端に短いオーバーハングとも相まって、ホイールベースは3mにも及ぶ。これはバッテリーをフロアに置いた純EVプラットフォーム(E-GMP)だからこそ実現できたもので、この結果、クラスを超える圧倒的に広い車内空間をもたらしている。
アイオニック5に搭載されるバッテリーは、58.0kWhと72.6kWhの2種類。モーターは標準仕様ではリアのみに搭載し、AWDではフロントとリアに二つのモーターが装備される。充電機能はCHAdeMO急速充電システムと普通充電に対応した。90kW級の急速充電器を使えば32分で10%から80%までの充電が可能だという。72.6kWhのバッテリーを搭載した仕様での航続距離は618km(WLTCモード)。
今回はこの高出力の72.6kWhの標準仕様を撮影禁止という条件の下、路面が整備された限定エリア内で試乗した。
カーナビやウインカーレバーなど日本仕様にローカライズ
運転席に座ってまず感じるのが前後左右とも実に広々としていることだ。クルマの四隅がしっかりと把握でき、ロングホイールベースであることを忘れさせるような取り回しの良さを実感できる。コックピットは大型で見やすい12.3インチのナビゲーション+12.3インチのフル液晶デジタルメーターを2つ並べて設置。物理スイッチは必要最低限に抑えるなど未来感覚にあふれている。そのデザインは素材からして高品質で、手で触れた感触がとても居心地いい。
ネッソと違い、カーナビもゼンリン製地図を採用して日本仕様にローカライズされていた。さらに日本仕様にはドライブレコーダー機能も内蔵される。このあたりからもアイオニック5に対するヒョンデの力の入れようが伝わってくる。
シフトセレクターはステアリングの右側に配置された電動式シフトダイヤルを採用する。ドライバーから直視できる位置にあり、レバーの太さも適度で、切り替えたときのクリック感もしっかりしている。その確実な操作感が好印象だった。また、ウインカーレバーも右側に配置して日本のユーザー向けに配慮したことも見逃せない。
日本仕様のドライバーズ・シートには、全グレードにレッグレストやランバーサポートまで電動で調整できる「リラクゼーションコンフォートシート」を採用した。これは充電時にくつろいで車内待機できるよう配慮したものだという。140mm幅のスライド機構を採用したセンターコンソールは後席乗員にも使いやすいように配慮した。
強烈な加速力と安定した姿勢制御にEVらしさを実感
まずは路面が整備された限定エリアで走ってみた。アクセルを踏み込むと最高出力225kW/最大トルク605Nmのビッグトルクが強烈な加速を生み出し、トラクションの制御も巧さとも相まって気付けばあっという間に高速領域に達していた。その俊足ぶりは感動ものだ。ステアリングの操舵感は安定感があり、重さが適度。グリップ力も充分に高い。フロアにバッテリーを収めたことによる低重心設計とも相まって姿勢制御もきわめて安定しており、安心してコーナリングを通過することができた。高速領域でのノイズレベルも低く、その意味では実に快適な走行ができたと言っていいだろう。
一方、この限定エリアから移動時に公道を走行してみると、サスペンションがかなりタイトであることに気付いた。段差の突き上げも大きめで、決して心地良いとは言えない。これで日本のユーザーに受け入れられるのか。そんな不安をヒョンデ・ジャパンにぶつけると、この時に試乗した車両はサスペンションがイギリス仕様のままで日本仕様ではもっとしなやかな味付けになるとのこと。このあたりは、日本仕様が準備でき次第あらためて体験してみたいと思う。
電動車オンリーで日本市場へ再参入を果たしたヒョンデだが、アイオニック5はその主力モデルと位置付ける。ディーラーを用意せず、自社サイトでのオンライン販売に特化した。そのため、車両選びから試乗予約、見積もり、注文、決済、配送情報の確認まですべてをオンラインで完結できる「One ID」と呼ばれるサービスを用意した。購入後のメンテナンスについても、このIDに基づき、全国の協力整備工場で対応することになっている。
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