【マツダ ロードスター 990S 新型試乗】この楽しさを知らずに人生を終えるのはもったいない…岩貞るみこ
試乗のポイントは「楽しいか否か」
2021年末の商品改良のタイミングで、特別仕様車として加わった『ロードスター990S』である。車両重量が1t切りの990kg。とことん軽さと走りにこだわり、運動学に基づいた車体姿勢制御技術であるKPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)が組み込まれた。
試乗のポイントは、ただ一点。楽しいか否かである。いくら高度な技術が組み込まれようと、どれだけ走りがすごかろうと、楽しくなくてはロードスターではないからだ。
運転席に座り、ドアを閉める。幌で作られたトップ独特の外の音が車内に入ってくる遮音性のなさにわくわく感のスイッチが入る。シートに座ったと同時に的確な運転フォームが自然と作られる。もはや見慣れたカーナビは、通常あるべきところになく、運転に集中せよと言われているようだ。
行きたいと感じただけで、クルマが向かっていく
マニュアルシフトの短いシフトレバーをくいっと入れて走り出すと、低い着座位置ならではの景色が繰り広げられる。とにかく低い。路面にある情報のすべてが次から次へと目の前につきつけられて、野性が呼び戻される気分である。もうこの時点で、楽しいが止まらない。口元は緩みっぱなしだ。
ずっしりと手応えのあるハンドル。同様に足に反発してくる重いアクセルペダル。自分で力を入れないと思い通りには動かない。すべてはドライバーの意思が尊重されているのだ。コーナーでは、目で見ただけでその方向に進んでいく。
いや、違う。これはもっと早い。そう、行きたいと感じただけで、クルマが向かっていく感覚なのである。これは自動運転か?AIセンサーが私の思考を読み取っているのか?乗り手の気持ちを感じ取り、自ら進んでいく様は、まさに人馬一体なのである。
これまで感じたことのない異次元のコーナリング
コーナリングの安定感は半端ない。自分を軸にぎゅっと曲がる様子は、これまで感じたことのない異次元の感覚。少し間違えば怖いとも思える挙動を、実に見事な安定感のなかでやってのける。ちょっと待って。こんな楽しくていいのか、おい。
結論。誕生から33年たち、さまざまな技術が組み込まれ、機械にのせられているんじゃないかと疑ったけれど、ロードスターはやっぱり人間中心だ。自分の走りたいという思いを増幅させてくれるクルマ。990Sは、この楽しさを知らずに人生を終えるのがもったいないと思える一台なのである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。最新刊は「世界でいちばん優しいロボット」(講談社)。
2021年末の商品改良のタイミングで、特別仕様車として加わった『ロードスター990S』である。車両重量が1t切りの990kg。とことん軽さと走りにこだわり、運動学に基づいた車体姿勢制御技術であるKPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)が組み込まれた。
試乗のポイントは、ただ一点。楽しいか否かである。いくら高度な技術が組み込まれようと、どれだけ走りがすごかろうと、楽しくなくてはロードスターではないからだ。
運転席に座り、ドアを閉める。幌で作られたトップ独特の外の音が車内に入ってくる遮音性のなさにわくわく感のスイッチが入る。シートに座ったと同時に的確な運転フォームが自然と作られる。もはや見慣れたカーナビは、通常あるべきところになく、運転に集中せよと言われているようだ。
行きたいと感じただけで、クルマが向かっていく
マニュアルシフトの短いシフトレバーをくいっと入れて走り出すと、低い着座位置ならではの景色が繰り広げられる。とにかく低い。路面にある情報のすべてが次から次へと目の前につきつけられて、野性が呼び戻される気分である。もうこの時点で、楽しいが止まらない。口元は緩みっぱなしだ。
ずっしりと手応えのあるハンドル。同様に足に反発してくる重いアクセルペダル。自分で力を入れないと思い通りには動かない。すべてはドライバーの意思が尊重されているのだ。コーナーでは、目で見ただけでその方向に進んでいく。
いや、違う。これはもっと早い。そう、行きたいと感じただけで、クルマが向かっていく感覚なのである。これは自動運転か?AIセンサーが私の思考を読み取っているのか?乗り手の気持ちを感じ取り、自ら進んでいく様は、まさに人馬一体なのである。
これまで感じたことのない異次元のコーナリング
コーナリングの安定感は半端ない。自分を軸にぎゅっと曲がる様子は、これまで感じたことのない異次元の感覚。少し間違えば怖いとも思える挙動を、実に見事な安定感のなかでやってのける。ちょっと待って。こんな楽しくていいのか、おい。
結論。誕生から33年たち、さまざまな技術が組み込まれ、機械にのせられているんじゃないかと疑ったけれど、ロードスターはやっぱり人間中心だ。自分の走りたいという思いを増幅させてくれるクルマ。990Sは、この楽しさを知らずに人生を終えるのがもったいないと思える一台なのである。
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岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。最新刊は「世界でいちばん優しいロボット」(講談社)。
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