【スバル アウトバック 雪上試乗】「4輪駆動」と「ワゴン」の組み合わせはスバルの宝物…渡辺慎太郎
今年の冬は全国的に近年稀に見る積雪量だった。それでも東北や北海道にお住まいの方からすれば、全国ネットのNHKニュースのトップが「東京に5cmの積雪」だったりすると、おそらく「そんな積雪量で大騒ぎかよ」と鼻で笑っておられたに違いない。都内在住者のひとりとしてはまったくお恥ずかしい限りである。
「雪に慣れていないから」とはいうものの、ノーマルタイヤのままでスタックしたり事故を起こすクルマが後を絶たない現状は、「慣れてない」では済まされない問題とも思っている。4輪駆動もスノーモードもスタッドレスタイヤも、これらすべてはクルマを「滑らせない」ための技術であり、タイヤがグリップを失い滑り出したら最後、ドライバーにもクルマにも、もはやどうにもできないのである。どうやら雪道に関わるクルマの装備の数々は、滑ってからでもどうにかしれくれると思っている方が少なくないようである。
4輪駆動にしても、今やそのタイプはさまざまだ。「ヨンク」といっても通常のほとんどは前輪駆動になっているパートタイム4駆(あるいはオンデマンド4駆)もあればフルタイム4駆もあるし、フルタイムといっても前後駆動力配分が固定や可変のシステムが存在する。「4WD」や「AWD」などのエンブレムが付くクルマを運転する場合は、それがどんなシステムなのかを知っておいたほうがいいと思う。
実は3種類も存在するスバルの「シンメトリカルAWD」
スバルの4輪駆動システムは「シンメトリカルAWD」と呼ばれているけれど、これだって実は3種類も存在する。機械式LSDと電子制御式LSDと組み合わされて41:59の駆動力配分を基本とする「DCCD(ドライバーズ・コントロール・センター・デフ)方式AWD」、センターデフにより45:55の駆動力配分をベースとして走行状況に応じてこれを連続可変制御する「VTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD」、そして今回試乗した『アウトバック』や『フォレスター』などにも装備される、60:40を基本として駆動力配分を可変する「アクティブトルクスプリットAWD」である。油圧式の多板クラッチにより前後の駆動力を、ブレーキを摘まむことでLSDと同等の働きをする方式で左右の駆動力を、それぞれ適宜配分している。
こういう仕事をしているので、フツーの都内在住の方よりは雪道を走る機会が(おそらく)多いものの、雪国の皆さんほどの経験は持ち合わせていないから、今でもやっぱりスノードライブは緊張するし慎重にもなる。今シーズンもいろんな4輪駆動のシステムを雪上で試したが、中でもスバルのアクティブトルクスプリットAWDはもっとも安全かつ安定的に走行できたシステムのひとつだった。
刻々と変わる路面をものともしない『アウトバック X-BREAK EX』
取材先の福島県裏磐梯周辺は、まとまった積雪の後に気温が急上昇した時で、路面はドライ、ウエット、シャーベット、アイス、そして圧雪など次から次へと状況が変化するという、ヨンクのテストをするにはある意味ベストコディションだった。試乗車はアウトバックの「X-BREAK EX」だ。
ヨンクどうこうを語る以前に、アウトバックの頼もしいところは213mmというたっぷりした最低地上高が確保されている点にある。どんなに素晴らしい4輪駆動システムを搭載していても、腹を擦ってしまってはどうしようもないからだ。案の定、道路の所々には雪の轍が出来ていて、それでもよほど溝の深い轍でなければ、アウトバックはそのまま走行を続けることができる。ちなみにアプローチ/ランプブレークオーバー/デパーチャーの各アングルもしっかり確保されているので、平坦路から登坂路へのアプローチなどでも安心だ。
刻々と路面状況が変わっていくのに、アウトバックはそれをものともせず安定した走りを見せる。X-BREAK EXでは2モード用意されている(Limited EXでは1モード)「X-MODE(Xモード)」は、ノーマルの他にSNOW/DIRTとDEEP SNOW/MUDが選べるのだけれど、ヨコハマ・アイスガードのスタッドレスタイヤとの組み合わせでは、今回のような状況ではノーマルでもほとんど問題なく走破できた。一部アイスバーンのところでわずかにタイヤがグリップを失う兆候を見せたのでSNOW/DIRTに切り替えたところ、再びスタビリティの高い走りとなった。
「4輪駆動」と「ワゴン」の組み合わせはスバルの宝物
走っている姿は極めて安定しているけれど、それを実現するためにシステムは前後左右の駆動力配分をせっせとせわしなく随時可変させているわけで、でもそれはドライバーにはほとんどわからない。徹底的に黒子に徹した機能である。こういうパラメーターは当然のことながら人間であるエンジニアが構築しているのだけれど、スバルが長年培ってきた経験と実績による膨大なデータを元にしているはず。だからスバルの4輪駆動システムに絶大なる信頼が寄せられるのだ。
多くの国産メーカーがワゴンタイプのモデルの開発をやめてしまったけれど、スバルは唯一、今でも多彩なバリエーションのワゴンを提供し続けている。だからラゲッジルームの使い勝手には、微に入り細を穿つ気配りが随所にうかがえる。経験値に裏打ちされた「4輪駆動システム」と「ワゴン」は他のメーカーが欲しくてもそう簡単には手に入れることの出来ない、スバルの宝物なのである。
渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター
1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。
「雪に慣れていないから」とはいうものの、ノーマルタイヤのままでスタックしたり事故を起こすクルマが後を絶たない現状は、「慣れてない」では済まされない問題とも思っている。4輪駆動もスノーモードもスタッドレスタイヤも、これらすべてはクルマを「滑らせない」ための技術であり、タイヤがグリップを失い滑り出したら最後、ドライバーにもクルマにも、もはやどうにもできないのである。どうやら雪道に関わるクルマの装備の数々は、滑ってからでもどうにかしれくれると思っている方が少なくないようである。
4輪駆動にしても、今やそのタイプはさまざまだ。「ヨンク」といっても通常のほとんどは前輪駆動になっているパートタイム4駆(あるいはオンデマンド4駆)もあればフルタイム4駆もあるし、フルタイムといっても前後駆動力配分が固定や可変のシステムが存在する。「4WD」や「AWD」などのエンブレムが付くクルマを運転する場合は、それがどんなシステムなのかを知っておいたほうがいいと思う。
実は3種類も存在するスバルの「シンメトリカルAWD」
スバルの4輪駆動システムは「シンメトリカルAWD」と呼ばれているけれど、これだって実は3種類も存在する。機械式LSDと電子制御式LSDと組み合わされて41:59の駆動力配分を基本とする「DCCD(ドライバーズ・コントロール・センター・デフ)方式AWD」、センターデフにより45:55の駆動力配分をベースとして走行状況に応じてこれを連続可変制御する「VTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD」、そして今回試乗した『アウトバック』や『フォレスター』などにも装備される、60:40を基本として駆動力配分を可変する「アクティブトルクスプリットAWD」である。油圧式の多板クラッチにより前後の駆動力を、ブレーキを摘まむことでLSDと同等の働きをする方式で左右の駆動力を、それぞれ適宜配分している。
こういう仕事をしているので、フツーの都内在住の方よりは雪道を走る機会が(おそらく)多いものの、雪国の皆さんほどの経験は持ち合わせていないから、今でもやっぱりスノードライブは緊張するし慎重にもなる。今シーズンもいろんな4輪駆動のシステムを雪上で試したが、中でもスバルのアクティブトルクスプリットAWDはもっとも安全かつ安定的に走行できたシステムのひとつだった。
刻々と変わる路面をものともしない『アウトバック X-BREAK EX』
取材先の福島県裏磐梯周辺は、まとまった積雪の後に気温が急上昇した時で、路面はドライ、ウエット、シャーベット、アイス、そして圧雪など次から次へと状況が変化するという、ヨンクのテストをするにはある意味ベストコディションだった。試乗車はアウトバックの「X-BREAK EX」だ。
ヨンクどうこうを語る以前に、アウトバックの頼もしいところは213mmというたっぷりした最低地上高が確保されている点にある。どんなに素晴らしい4輪駆動システムを搭載していても、腹を擦ってしまってはどうしようもないからだ。案の定、道路の所々には雪の轍が出来ていて、それでもよほど溝の深い轍でなければ、アウトバックはそのまま走行を続けることができる。ちなみにアプローチ/ランプブレークオーバー/デパーチャーの各アングルもしっかり確保されているので、平坦路から登坂路へのアプローチなどでも安心だ。
刻々と路面状況が変わっていくのに、アウトバックはそれをものともせず安定した走りを見せる。X-BREAK EXでは2モード用意されている(Limited EXでは1モード)「X-MODE(Xモード)」は、ノーマルの他にSNOW/DIRTとDEEP SNOW/MUDが選べるのだけれど、ヨコハマ・アイスガードのスタッドレスタイヤとの組み合わせでは、今回のような状況ではノーマルでもほとんど問題なく走破できた。一部アイスバーンのところでわずかにタイヤがグリップを失う兆候を見せたのでSNOW/DIRTに切り替えたところ、再びスタビリティの高い走りとなった。
「4輪駆動」と「ワゴン」の組み合わせはスバルの宝物
走っている姿は極めて安定しているけれど、それを実現するためにシステムは前後左右の駆動力配分をせっせとせわしなく随時可変させているわけで、でもそれはドライバーにはほとんどわからない。徹底的に黒子に徹した機能である。こういうパラメーターは当然のことながら人間であるエンジニアが構築しているのだけれど、スバルが長年培ってきた経験と実績による膨大なデータを元にしているはず。だからスバルの4輪駆動システムに絶大なる信頼が寄せられるのだ。
多くの国産メーカーがワゴンタイプのモデルの開発をやめてしまったけれど、スバルは唯一、今でも多彩なバリエーションのワゴンを提供し続けている。だからラゲッジルームの使い勝手には、微に入り細を穿つ気配りが随所にうかがえる。経験値に裏打ちされた「4輪駆動システム」と「ワゴン」は他のメーカーが欲しくてもそう簡単には手に入れることの出来ない、スバルの宝物なのである。
渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター
1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。
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