【スバル フォレスター 雪上試乗】アメリカで愛される理由は“わかりやすさ”にある…渡辺慎太郎
1980年代の後半にアメリカに住んでいたことがあった。山も海もないオハイオ州で、でもホンダの工場があったから『アコード』や『シビック』はよく見かけた。それと同じくらい目に付いたのが同じ日本車のスバルだった。
その当時のスバルは、特にアメリカの中部から東部にかけてのエリアで、医者や弁護士といった高いスキルと社会的地位を有する人に好んで選ばれていたから、まだクルマに疎い自分にとってのスバルのイメージはスマートでクリーンだった。ところが帰国してあらためて日本でのスバルを見渡してみると、1990年代初頭は『レガシィ』がWRCへ本格参戦したり『インプレッサ』が登場するなど、どちらかといえばヨンクでガツガツ走る泥臭いイメージで、アメリカとのギャップにちょっと驚いた記憶がある。
いまでも北米ではスバル車とよく遭遇するし、中でも頻繁に出逢うのは『フォレスター』である。それもそのはずで、2021年の米国におけるスバルの新車販売台数のトップは15万4723台のフォレスターだった。コロナ禍などの影響により前年比ではマイナスとなり、15万4623台の『アウトバック』に僅差で辛くも勝ったものの、スバルの最量販車種は近年ずっとフォレスターがその地位を守っている。
フォレスターがアメリカで愛される理由
フォレスターがアメリカ人に愛される理由はいくつかあるけれど、彼らにとっては絶妙なそのボディサイズもそのひとつである。日本仕様のフォレスターのボディサイズは全長4640mm、全幅1815mm、全高1715(ルーフレール装着車とX-BREAKは1730mm)。これはアウトバックより230mm短く60mm幅が狭く、でも45mm背が高い。さらに、最低地上高はフォレスターのほうが7mm高い。つまりフォレスターは前後左右方向に小さいものの天地方向に高く、ロードクリアランスもアウトバックより確保されていることになる。
取り回しがよくラフロードでの走破性が(アウトバックよりも)高く室内も天地方向に余裕がるというのがフォレスターの特徴で、これが都市部を中心としたライフスタイルを送るアメリカ人にとって、ボディは小さいけれど室内は広く運転もしやすいという魅力に映っているのだと想像する。
今回の取材ではアウトバックも同行していたのだけれど、フォレスターに乗り換えて室内が狭いと感じることはなく、むしろこっちのほうが余裕があるように思える。天地方向にスペースがあると視覚的にも感覚的にも人は「広い」と感じやすいのかもしれない。特にリヤシート周りには大人ふたりが座っても十分な空間が確保されていて、これならばロングドライブでも快適に過ごせるだろう。
重心の低さを痛感した
シンメトリカルAWDやX-MODEの機能はアウトバックとまったく同一だから、路面のミューがどんどん変わるような状況下でも安心してドライブできる。車高の低いアウトバックではそれほど感じなかったのに、フォレスターに乗って痛感したのは重心の低さである。全高が高いフォレスターのほうがアウトバックよりおそらく重心は高いだろうけれど、パワートレインが低い位置に鎮座している様が特にステアリングを左右に切り返す場面などで伝わってくる。
これこそが、エンジンの全高が低い水平対向エンジンの真骨頂で、車高の高いクルマほど、水平対向エンジンのメリットは効果的に享受できるのである。
そもそも“シンメトリカル”とは、縦置きにした4気筒水平対向エンジンからトランスミッションとプロペラシャフトを介してリヤデフに至るまでが低い位置で一直線になっていて、それを中心に左右に4つのタイヤが配置されていることを示している。クルマの部品の中で重量のあるパワートレインや駆動系が低く収まっているパッケージはスバルならではだ。
“わかりやすい”のが支持される理由のひとつ
ステアリングレスポンスがよくスッキリとした乗り味のアウトバックに対して、フォレスターは全般的にゆったりとした乗り味である。それでも操縦性は正確だし、アウトバックよりホイールベースが75mm短いのに直進安定性は悪くなく、乗り心地も快適だった。何よりフォレスターのほうが軽快感も感じられる。実はアウトバックより120kgも軽いのである。試乗車のフォレスターは「SPORT」だったので、1.8リットルの水平対向4気筒を含むパワートレインの構造とスペックは同行したアウトバックとまったく同じ。100kg以上の重量差は軽快感のみならず瞬発力ももたらしてくれた。
フォレスターのゆったりとした乗り味や瞬発力といった特徴もまた、何かと“わかりやすい”特徴を好むアメリカ人に支持される理由のひとつになっているのかもしれない。アウトバックよりも車両本体価格が安いというもっとも“わかりやすい”点も、もちろんそうだと思う。
渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター
1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。
その当時のスバルは、特にアメリカの中部から東部にかけてのエリアで、医者や弁護士といった高いスキルと社会的地位を有する人に好んで選ばれていたから、まだクルマに疎い自分にとってのスバルのイメージはスマートでクリーンだった。ところが帰国してあらためて日本でのスバルを見渡してみると、1990年代初頭は『レガシィ』がWRCへ本格参戦したり『インプレッサ』が登場するなど、どちらかといえばヨンクでガツガツ走る泥臭いイメージで、アメリカとのギャップにちょっと驚いた記憶がある。
いまでも北米ではスバル車とよく遭遇するし、中でも頻繁に出逢うのは『フォレスター』である。それもそのはずで、2021年の米国におけるスバルの新車販売台数のトップは15万4723台のフォレスターだった。コロナ禍などの影響により前年比ではマイナスとなり、15万4623台の『アウトバック』に僅差で辛くも勝ったものの、スバルの最量販車種は近年ずっとフォレスターがその地位を守っている。
フォレスターがアメリカで愛される理由
フォレスターがアメリカ人に愛される理由はいくつかあるけれど、彼らにとっては絶妙なそのボディサイズもそのひとつである。日本仕様のフォレスターのボディサイズは全長4640mm、全幅1815mm、全高1715(ルーフレール装着車とX-BREAKは1730mm)。これはアウトバックより230mm短く60mm幅が狭く、でも45mm背が高い。さらに、最低地上高はフォレスターのほうが7mm高い。つまりフォレスターは前後左右方向に小さいものの天地方向に高く、ロードクリアランスもアウトバックより確保されていることになる。
取り回しがよくラフロードでの走破性が(アウトバックよりも)高く室内も天地方向に余裕がるというのがフォレスターの特徴で、これが都市部を中心としたライフスタイルを送るアメリカ人にとって、ボディは小さいけれど室内は広く運転もしやすいという魅力に映っているのだと想像する。
今回の取材ではアウトバックも同行していたのだけれど、フォレスターに乗り換えて室内が狭いと感じることはなく、むしろこっちのほうが余裕があるように思える。天地方向にスペースがあると視覚的にも感覚的にも人は「広い」と感じやすいのかもしれない。特にリヤシート周りには大人ふたりが座っても十分な空間が確保されていて、これならばロングドライブでも快適に過ごせるだろう。
重心の低さを痛感した
シンメトリカルAWDやX-MODEの機能はアウトバックとまったく同一だから、路面のミューがどんどん変わるような状況下でも安心してドライブできる。車高の低いアウトバックではそれほど感じなかったのに、フォレスターに乗って痛感したのは重心の低さである。全高が高いフォレスターのほうがアウトバックよりおそらく重心は高いだろうけれど、パワートレインが低い位置に鎮座している様が特にステアリングを左右に切り返す場面などで伝わってくる。
これこそが、エンジンの全高が低い水平対向エンジンの真骨頂で、車高の高いクルマほど、水平対向エンジンのメリットは効果的に享受できるのである。
そもそも“シンメトリカル”とは、縦置きにした4気筒水平対向エンジンからトランスミッションとプロペラシャフトを介してリヤデフに至るまでが低い位置で一直線になっていて、それを中心に左右に4つのタイヤが配置されていることを示している。クルマの部品の中で重量のあるパワートレインや駆動系が低く収まっているパッケージはスバルならではだ。
“わかりやすい”のが支持される理由のひとつ
ステアリングレスポンスがよくスッキリとした乗り味のアウトバックに対して、フォレスターは全般的にゆったりとした乗り味である。それでも操縦性は正確だし、アウトバックよりホイールベースが75mm短いのに直進安定性は悪くなく、乗り心地も快適だった。何よりフォレスターのほうが軽快感も感じられる。実はアウトバックより120kgも軽いのである。試乗車のフォレスターは「SPORT」だったので、1.8リットルの水平対向4気筒を含むパワートレインの構造とスペックは同行したアウトバックとまったく同じ。100kg以上の重量差は軽快感のみならず瞬発力ももたらしてくれた。
フォレスターのゆったりとした乗り味や瞬発力といった特徴もまた、何かと“わかりやすい”特徴を好むアメリカ人に支持される理由のひとつになっているのかもしれない。アウトバックよりも車両本体価格が安いというもっとも“わかりやすい”点も、もちろんそうだと思う。
渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター
1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。
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