【フィアット 500e 新型試乗】インテリアのあの個性、センスはどこへ行った?…島崎七生人
「遂に」というべきか「やっと」というべきか、フィアット初となる電気自動車『500e』が上陸を果たした。ちなみに従来型、つまりICE(内燃機関)モデルは当面は併売され、とくに2気筒ツインエアは、事実上、日本専用モデルになるという。
EVでも“超”の字がつく扱いやすさはキープ
実車に対面したエクステリアの第一印象は、これまで写真やビデオで見てきた受け止めに反して、違和感、拒絶感はまったくなかった。『500』のツインエアと較べると全長と全幅がどちらも+60mm(覚えやすい!)、全高+15mm、そしてホイールベースは+20mmの2320mmの設定。さすがに最小回転半径はICEの4.7mから5.1mに拡大したが、無闇なボディサイズの拡大は行われず、しかも相変わらず5ナンバーサイズに収まっており、“超”の字がつく扱いやすさはキープされた。
ADAS関連のセンサーでも収まっているのかどうか未確認だが、フロントの超巨大な500のエンブレムが見慣れるかどうかは未知数だが(個人の感想です)……。本国にある1+2ドアの(そのまま右ハンドル化しての)導入は、左側通行の日本では使用上、安全上の判断から無いという。
従来型オーナー視点ではインテリアにモヤモヤ…
一方でインテリアは、従来型オーナー(一応、1.2とツインエアの2台に乗った)の立場を振りかざして言わせていただくと、ちょっとモヤモヤした気分が残った。
もちろん悪くはないのだが、どうもモヤモヤするので試乗後に調べてみたら、シルバーの加飾パネルでグルっとインパネをひと括りにしたあたりのデザインと雰囲気がトヨタ『アクア』に酷似している。近代化、進化させたかったのは理解できるが、多少不便でも、クラシカルな“NUOVA 500”のモチーフを絶妙なさじ加減で再現した従来型のあの個性、センスはどこへ行ってしまったのか。もっともこのモダンさにも、いずれ慣れるのかどうか。
ステアリングポストがチルトだけでなくテレスコピックの調整が可能になったり、レクサスのようにドアオープンは電気スイッチになっていたり、さらに運転席の高さとリクライニングの調整はドア側のレバーで行なうようになり“多少は”やりやすくなっていたりはする。ドアを閉める際に手をかけるポケットの底にMADE IN TORINOの文字とともにNUOVA 500がいて、そこにも目が行くが、実はその手をかける部分の形状(ディンプル付き)が手をかけやすい形状になったのは、従来型からの進化のトップ3に入れていいかもしれない。
全幅の拡大の割には室内の幅方向のゆとりは、よく言えば従来どおりのイメージで、何か必要があれば従来型同様、助手席側のドアへは運転席に座ったままでも軽く手が届く。またバッテリーを床下に仕込んであるため、ドアを開けて外から眺めるとサイドシル部分の厚みは見ただけでもあるが、床面が持ち上げられたことによる圧迫感はまったくない。
目をつむっていても「チンクだ」とわかる乗り味
走りは、動力性能面ではさすがにICEとの差を見せつけられる。とにかく強力で息継ぎのないスムースな加速は、たとえば筆者が日頃乗っているツインエアの、エンジン特性、変速パターンを注意深く見極め、エンジン、ミッション系の不可避な振動、共振をなだめながら走っているのとは対極的だ。
その一方で乗り味は、案外、デビュー以来これまでほとんど変わらなかったICE車との比較でも、あまり変化(進化)を感じない。走行中に感じるピッチングやコーナリング姿勢は、目をつむって乗っていても「あ、チンクだね」と言い当てる自信すらある。車重が1300kg台に増え(ICE車は990~1050kg)、その対応を考えたサスペンション設定だとは思うが、車重を乗り味に活かせるかどうか、タイヤもサイズアップしているが、もし自分で乗った場合、タイヤ空気圧で何がどれくらい是正できるかどうか興味深い。
電気自動車で唯一という“オープン”のソフトトップ自体は、多分、従来の『500c』とモノが同じはずで、閉まる際にも同じパチッ!という音が立つ。ハッチバックよりオープンのほうが、ボディ剛性の向上が実感できる。このタイミングでキーフォブも“新型”になった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
EVでも“超”の字がつく扱いやすさはキープ
実車に対面したエクステリアの第一印象は、これまで写真やビデオで見てきた受け止めに反して、違和感、拒絶感はまったくなかった。『500』のツインエアと較べると全長と全幅がどちらも+60mm(覚えやすい!)、全高+15mm、そしてホイールベースは+20mmの2320mmの設定。さすがに最小回転半径はICEの4.7mから5.1mに拡大したが、無闇なボディサイズの拡大は行われず、しかも相変わらず5ナンバーサイズに収まっており、“超”の字がつく扱いやすさはキープされた。
ADAS関連のセンサーでも収まっているのかどうか未確認だが、フロントの超巨大な500のエンブレムが見慣れるかどうかは未知数だが(個人の感想です)……。本国にある1+2ドアの(そのまま右ハンドル化しての)導入は、左側通行の日本では使用上、安全上の判断から無いという。
従来型オーナー視点ではインテリアにモヤモヤ…
一方でインテリアは、従来型オーナー(一応、1.2とツインエアの2台に乗った)の立場を振りかざして言わせていただくと、ちょっとモヤモヤした気分が残った。
もちろん悪くはないのだが、どうもモヤモヤするので試乗後に調べてみたら、シルバーの加飾パネルでグルっとインパネをひと括りにしたあたりのデザインと雰囲気がトヨタ『アクア』に酷似している。近代化、進化させたかったのは理解できるが、多少不便でも、クラシカルな“NUOVA 500”のモチーフを絶妙なさじ加減で再現した従来型のあの個性、センスはどこへ行ってしまったのか。もっともこのモダンさにも、いずれ慣れるのかどうか。
ステアリングポストがチルトだけでなくテレスコピックの調整が可能になったり、レクサスのようにドアオープンは電気スイッチになっていたり、さらに運転席の高さとリクライニングの調整はドア側のレバーで行なうようになり“多少は”やりやすくなっていたりはする。ドアを閉める際に手をかけるポケットの底にMADE IN TORINOの文字とともにNUOVA 500がいて、そこにも目が行くが、実はその手をかける部分の形状(ディンプル付き)が手をかけやすい形状になったのは、従来型からの進化のトップ3に入れていいかもしれない。
全幅の拡大の割には室内の幅方向のゆとりは、よく言えば従来どおりのイメージで、何か必要があれば従来型同様、助手席側のドアへは運転席に座ったままでも軽く手が届く。またバッテリーを床下に仕込んであるため、ドアを開けて外から眺めるとサイドシル部分の厚みは見ただけでもあるが、床面が持ち上げられたことによる圧迫感はまったくない。
目をつむっていても「チンクだ」とわかる乗り味
走りは、動力性能面ではさすがにICEとの差を見せつけられる。とにかく強力で息継ぎのないスムースな加速は、たとえば筆者が日頃乗っているツインエアの、エンジン特性、変速パターンを注意深く見極め、エンジン、ミッション系の不可避な振動、共振をなだめながら走っているのとは対極的だ。
その一方で乗り味は、案外、デビュー以来これまでほとんど変わらなかったICE車との比較でも、あまり変化(進化)を感じない。走行中に感じるピッチングやコーナリング姿勢は、目をつむって乗っていても「あ、チンクだね」と言い当てる自信すらある。車重が1300kg台に増え(ICE車は990~1050kg)、その対応を考えたサスペンション設定だとは思うが、車重を乗り味に活かせるかどうか、タイヤもサイズアップしているが、もし自分で乗った場合、タイヤ空気圧で何がどれくらい是正できるかどうか興味深い。
電気自動車で唯一という“オープン”のソフトトップ自体は、多分、従来の『500c』とモノが同じはずで、閉まる際にも同じパチッ!という音が立つ。ハッチバックよりオープンのほうが、ボディ剛性の向上が実感できる。このタイミングでキーフォブも“新型”になった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
最新ニュース
-
-
スバル『WRX』の高性能モデル「tS」、2025年初頭より米国で発売へ
2024.11.30
-
-
-
2倍の速さで自動駐車! メルセデスベンツのパーキングアシストが性能向上
2024.11.29
-
-
-
「超イケてる!」ホンダの本格SUV『パスポート』発表に日本導入を期待する声
2024.11.29
-
-
-
BMW『X3』新型はマイルドHV、Mパフォーマンスも…価格は798万~998万円
2024.11.29
-
-
-
レクサス、日本の伝統工芸に現代技術を融合…アート作品展開催中
2024.11.29
-
-
-
トヨタ『スープラ』生産終了へ、435馬力の最終モデルを発表
2024.11.29
-
-
-
トヨタ『RAV4』が一部改良、FF廃止で全車4WDに
2024.11.29
-
最新ニュース
MORIZO on the Road