【ホンダ シビックe:HEV 新型試乗】「走りを諦めない」ホンダらしいハイブリッドだ…島崎七生人
昨年8月に1.5リットル直噴ターボが登場し、とくに6速MTのピュアで爽快な走りに魅了させられた新型ホンダ『シビック』。そのシリーズ第2弾として加わったのが、今回の「e:HEV」ハイブリッドモデルだ。
トヨタのハイブリッドとは違う、2モーターの進化系
ホンダが持っていた従来のハイブリッドシステムのうち、2モーターハイブリッドシステムのi-MMDを進化させるなどして集約させた形がe:HEVという。ちなみにこのハイブリッド技術はゼロエミッション電動車への応用拡大や、2030年段階でグローバルで6割を想定した車両は、このe:HEVを基軸に展開を図るという重要なシステムでもある。
今回『シビック』に搭載されるe:HEVは“中型車用”として開発されたもの。具体的にはバッテリーの機能部品統合化、PCUの小型や高出力化、静粛性向上、そしてモーターの低振動や低騒音化などがポイントだ。併せてエンジンは新開発の2リットル直噴を搭載。コチラも高電圧化、多段噴射などの技術で熱効率を最大限(最大熱効率41%という)に高め、これまでの不得意とされていた高回転、高出力領域での性能を高めたうえ、次の排ガス規制にも対応。新開発の電動コンポーネントとの組み合わせにより、最新のe:HEVらしいポテンシャルを発揮するものとしている。環境性能を踏まえた“圧倒的な燃費”と、操る楽しさを実現する“上質・爽快な走り”の2つがポイントだ。
とりわけエンジンとモーターの最適な使い分けはe:HEVが得意とするところだという。街中など通常の領域は1モーターないしは、もうひとつのモーターをエンジンで発電しながら使っての2モーター走行。他方、中・高速領域の巡航ではクラッチ(メカ伝達)によりエンジンを直結としエンジンドライブを実行する。エンジンとモーターを動力源として混流させるトヨタのシリーズパラレル方式に対して、モーターとエンジンの役割分担を完全に分けているところがe:HEVの最大の特徴だ。
モーターとエンジンの使い分けが洗練されている
今回はクローズドコースでの試乗だったが、第一印象は非常によかった。とくにクルマの走りを総じて見たときの自然さ、スムースさ、上質さが、こちらの期待を大きく上回っていたところは嬉しく思った。甚だ上から目線の物言いであるが、爽快なガソリン車に対しe:HEVは、「学業は得意でもスポーツは不得手な感じのクルマなんじゃない?」といったイメージがまったくなく、ガソリン車と同ベクトルの爽快な走りを堪能させてくれる点がいい。
特にモーターとエンジンを使い分ける(エンジン走行時にモーターアシストも入る)そのオペレーションが洗練されており、走らせていて「あ、今エンジンが始動した」「あ、モーターに戻った」といった折々で不自然な感触を意識することがまったくない。実際のところかなりの領域をモータードライブでこなすクルマ……の印象だが、1度走り出してしまえば、ハイブリッド車であることを意識させない自然なパワーフィールが味わえる。
スポーティなガソリン車と、上級感のあるe:HEV
気持ちよさと快適性をハイバランスさせたドライビングダイナミクスの仕上がりぶりも上々。ガソリン車のあのスポーティ感に対し、より上級感のある心地よさが走りに担保されているところがいい。聞けばガソリン車に対し車重は前後均等に全体でほぼ+100kg、重心高も下がって(ガソリン車ー10mm)おり、バネ、ダンパーはそれに合わせて、よりダンパーを動かせるチューニングが施されているとのこと。装着されるミシュランタイヤも専用開発だ。
またステアリングもギヤ比、ハードウエアなどは共通ながら、EPSのチューニングはやや重めにし、ハイブリッドの精密なパワー制御に合わせ、小入力時もしっかりと効かせるようにしたという。フル電子制御のブレーキもペダルを戻す際に制動力がリニアに残るタッチにこだわったそうだ。そういった話を聞けば、とにかく「なるほど」と納得させられるのが実車の走りっぷりで、とにかくしっとりと落ち着いた挙動と、ステアリングを切ればごくスムースにクルマが向きを変えてくれるし、目地を通過した際のショック、音の緩和とその前後のボディの揺れの小ささは快適性の高さにおおいに貢献している。
「走りを諦めないメーカー」のハイブリッド
そういえば音のギミックも入っていて、加速時などにまるでガソリン車のようなブゥーーン!というサウンドがスピーカーから流れる。そのボリュームはほどよく抑えられたもので、決して煩わしくは感じない。制御系ではカーナビと連携させて、目的地をセットした状態であれば、ルート上の下り坂などを先読みしe:HEVシステムを協調させる機能なども。細かいところでは、エレクトリックギヤセレクターのボタンの操作感(押したときの反力アップ)やRボタンへの“滑り止め”の追加といった配慮もされていた。
“母なるボディ”だそうで、ボディ骨格は構造用接着剤の採用部位を広げるなどし、とにかく高剛性ボディとしていることも磨かれた走りの基礎になっている。「タイプR」も控えているはずだが、「走りを諦めないメーカー」として、環境性能と走りの一番いいところにバランスポイントをもってきて仕上げられたのが今回のe:HEVモデルだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
トヨタのハイブリッドとは違う、2モーターの進化系
ホンダが持っていた従来のハイブリッドシステムのうち、2モーターハイブリッドシステムのi-MMDを進化させるなどして集約させた形がe:HEVという。ちなみにこのハイブリッド技術はゼロエミッション電動車への応用拡大や、2030年段階でグローバルで6割を想定した車両は、このe:HEVを基軸に展開を図るという重要なシステムでもある。
今回『シビック』に搭載されるe:HEVは“中型車用”として開発されたもの。具体的にはバッテリーの機能部品統合化、PCUの小型や高出力化、静粛性向上、そしてモーターの低振動や低騒音化などがポイントだ。併せてエンジンは新開発の2リットル直噴を搭載。コチラも高電圧化、多段噴射などの技術で熱効率を最大限(最大熱効率41%という)に高め、これまでの不得意とされていた高回転、高出力領域での性能を高めたうえ、次の排ガス規制にも対応。新開発の電動コンポーネントとの組み合わせにより、最新のe:HEVらしいポテンシャルを発揮するものとしている。環境性能を踏まえた“圧倒的な燃費”と、操る楽しさを実現する“上質・爽快な走り”の2つがポイントだ。
とりわけエンジンとモーターの最適な使い分けはe:HEVが得意とするところだという。街中など通常の領域は1モーターないしは、もうひとつのモーターをエンジンで発電しながら使っての2モーター走行。他方、中・高速領域の巡航ではクラッチ(メカ伝達)によりエンジンを直結としエンジンドライブを実行する。エンジンとモーターを動力源として混流させるトヨタのシリーズパラレル方式に対して、モーターとエンジンの役割分担を完全に分けているところがe:HEVの最大の特徴だ。
モーターとエンジンの使い分けが洗練されている
今回はクローズドコースでの試乗だったが、第一印象は非常によかった。とくにクルマの走りを総じて見たときの自然さ、スムースさ、上質さが、こちらの期待を大きく上回っていたところは嬉しく思った。甚だ上から目線の物言いであるが、爽快なガソリン車に対しe:HEVは、「学業は得意でもスポーツは不得手な感じのクルマなんじゃない?」といったイメージがまったくなく、ガソリン車と同ベクトルの爽快な走りを堪能させてくれる点がいい。
特にモーターとエンジンを使い分ける(エンジン走行時にモーターアシストも入る)そのオペレーションが洗練されており、走らせていて「あ、今エンジンが始動した」「あ、モーターに戻った」といった折々で不自然な感触を意識することがまったくない。実際のところかなりの領域をモータードライブでこなすクルマ……の印象だが、1度走り出してしまえば、ハイブリッド車であることを意識させない自然なパワーフィールが味わえる。
スポーティなガソリン車と、上級感のあるe:HEV
気持ちよさと快適性をハイバランスさせたドライビングダイナミクスの仕上がりぶりも上々。ガソリン車のあのスポーティ感に対し、より上級感のある心地よさが走りに担保されているところがいい。聞けばガソリン車に対し車重は前後均等に全体でほぼ+100kg、重心高も下がって(ガソリン車ー10mm)おり、バネ、ダンパーはそれに合わせて、よりダンパーを動かせるチューニングが施されているとのこと。装着されるミシュランタイヤも専用開発だ。
またステアリングもギヤ比、ハードウエアなどは共通ながら、EPSのチューニングはやや重めにし、ハイブリッドの精密なパワー制御に合わせ、小入力時もしっかりと効かせるようにしたという。フル電子制御のブレーキもペダルを戻す際に制動力がリニアに残るタッチにこだわったそうだ。そういった話を聞けば、とにかく「なるほど」と納得させられるのが実車の走りっぷりで、とにかくしっとりと落ち着いた挙動と、ステアリングを切ればごくスムースにクルマが向きを変えてくれるし、目地を通過した際のショック、音の緩和とその前後のボディの揺れの小ささは快適性の高さにおおいに貢献している。
「走りを諦めないメーカー」のハイブリッド
そういえば音のギミックも入っていて、加速時などにまるでガソリン車のようなブゥーーン!というサウンドがスピーカーから流れる。そのボリュームはほどよく抑えられたもので、決して煩わしくは感じない。制御系ではカーナビと連携させて、目的地をセットした状態であれば、ルート上の下り坂などを先読みしe:HEVシステムを協調させる機能なども。細かいところでは、エレクトリックギヤセレクターのボタンの操作感(押したときの反力アップ)やRボタンへの“滑り止め”の追加といった配慮もされていた。
“母なるボディ”だそうで、ボディ骨格は構造用接着剤の採用部位を広げるなどし、とにかく高剛性ボディとしていることも磨かれた走りの基礎になっている。「タイプR」も控えているはずだが、「走りを諦めないメーカー」として、環境性能と走りの一番いいところにバランスポイントをもってきて仕上げられたのが今回のe:HEVモデルだ。
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