【マツダ CX-60 試乗】新世代自動車にかけるマツダの本気度を見た…中谷明彦
マツダは現在の自動車市場環境は「100年に一度の変革期」にあると捉え、今後のビジョンを明確に示す商品構成の中核と成るべく「ラージ商品群」を新開発し登場させる。今回、その試作車であるプロトタイプに試乗する機会が提供された。
プロトタイプからでもわかる室内の“演出”
「ラージ商品群」とはその名の示す通り、従来のモデルよりも車体寸法が大きく、エンジンなどパワートレインも刷新される。従来の『CX−5』や『CX-8』など、フロント横置きエンジン搭載車を「スモール群」と定義。ラージ群はエンジンが縦置きに搭載されることが最大の特徴といえる。
用意されたプロトタイプ車は『CX-60』の商品名で販売される予定のモデルで、外観は特殊ラッピングでカモフラージュされているが、ボディシェル形状はCX-5に似通っている。
しかし、そのボディサイズは明らかに一回り大きい。全長4740mm、全幅1890mm、全高1685mm、ホイールベース2870mmのディメンションは現行CX-5の数値に対し165mm長く、50mm幅広で、ホイールベースは170mmも長い。一方全高は5mm低くなっていて、クロスオーバーSUVとして低重心で走行性能の向上を図っていることが伺える。マツダはこのCX-60はミッドサイズSUVと表現。この後さらに大きなラージSUVも展開されるというロードマップが示されている。
コクピットに乗り込む。プロトタイプは左ハンドル仕様で、このラージ商品群は欧州や北米、中国などで欧州のプレミアムブランドに対抗する意図で企画されているのであろうことが伺える。
プロトタイプということで室内の大部分がマスキングされ、またシボなども含め試作品で組み上げられているため質感の云々は評価できないが、幅広いセンターコンソールや小径のステアリングなど室内の大きさ、広さを演出していることが伝わってくるのだ。
6気筒ディーゼル+MHEVの相性は
エンジンを始動。最初に搭乗したのは3.3リットル 6気筒のディーゼルターボエンジン+48Vマイルドハイブリッド(MHEV)を縦置きに搭載したモデルだ。欧州車を中心にエンジンの小型化、排気量の低減などダウンサイジング化が主流の中にあって排気量やシリンダー数を拡大する手法は時代の流れに反しているように見える。しかし、マツダは内燃機関の高効率な燃焼を実現するためにマルチシリンダー化と大きな燃焼室が不可欠という自社の研究開発結果から今回の組み合わせに辿り着いている。
2段エッグ形状という卵を二つ並べたような断面を持つ特殊形状のピストンヘッドと高精度の燃料噴射制御を組み合わせ、極めて高い燃焼効率を獲得できたという。加えて電動モーターをエンジンと新開発の8速AT間に配置し、トルコンレスという高効率なパワートレインを構築している。
6気筒ゆえエンジンの回転バランスが極めて優れ、アイドリング状態でもエンジン振動は極めて少ない。クリープはMHEVの電動モーターから引き出し、走り始めはハイブリッド(HV)らしい電動のスムーズさが活かされている。アクセルの踏み増しと速度向上でエンジン側のクラッチが繋がり、通常走行域はエンジン主体で走らされている。さらに強力な加速を引き出そうとアクセルを踏み込むと高回転域で効果が引き出されるターボ過給が威力を発揮。けたたましいほどの加速力を引き出せる。この動力性能はマツダが得意とするAWDシステムにより路面に伝達されるので駆動力ロスがなく、挙動が安定しているのだ。
コーナー区間においてはリニアなステアリング特性と安定した車体姿勢で大きな車体のライントレースを高度に保っている。ややリアのロールが大きく感じられるが、それは今後さらに磨き上げられる部分といえるだろう。
フロントはダブルウィッシュボーンサスペンション、リアはフルマルチリンクのサスペンションが新開発され、高いロードホールディングとサスペンション剛性を実現。またエンジンを縦置きレイアウトしたことで前輪の転舵角度が増し、車体寸法が大きくなっているのもかかわらず、最小旋回半径は小さく取り回し性に優れているのだ。
ディーゼル以上にシャープな加速のPHEV
次にPHEVモデルを試す。こちらは同じプラットフォームに2.5リットル 直4ガソリンエンジン+高出力電動モータープラグインハイブリッド(PHEV)にトルコンレス8速ATを組み合わせ縦置きレイアウトで搭載。同じく4輪駆動のAWDとしている。
大容量のリチウムイオンバッテリーを車体フロア下にレイアウトし、欧州の認証形式でWLTCモード燃費がEVコンバインモードで66km/リットルに達するという。
PHEVらしく走り始めから100km/h以上までEVで走行でき、日常に生活領域の大半をEVとして使用できるが、フルパワーではシステム最高出力として300馬力オーバーを実現している。実際にフル加速を試すとディーゼルターボ以上にパワフルでシャープな加速を体感した。バッテリーの搭載位置を下げて低重心化を図ったことで重量のネガティブを相殺し、ハンドリング面も安定性が高く、またモーターのトルクピックアップに優れていて動きは軽快だ。
新世代自動車にかけるマツダの本気度
世の中がBEVに向かって突き進むなか、マツダは冷静に現状のインフラや技術、生産設備などを総合的に勘案しラージ商品群を構成した。未来はBEVかもしれないが、その過渡期である現在を正しく認識に、現状に相応しい商品をユーザーに提供する姿勢は大いに評価できる。
それにしても新技術をフルに導入し、ラインアップを拡充させるなど、新世代自動車にかけるマツダの本気度がラージ商品群から感じ取れるのだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
中谷明彦|レース&テストドライバー/自動車関連コンサルタント
大学在学中よりレーサー/モータージャーナリストとして活動。1988年全日本F3選手権覇者となるなど国内外で活躍。1997年よりドライビング理論研究会「中谷塾」を開設、2009年より東京大学と自動車新技術の共同研究に取組む。自動車関連の開発、イベント運営など様々な分野でのコンサルタントも行っている。
プロトタイプからでもわかる室内の“演出”
「ラージ商品群」とはその名の示す通り、従来のモデルよりも車体寸法が大きく、エンジンなどパワートレインも刷新される。従来の『CX−5』や『CX-8』など、フロント横置きエンジン搭載車を「スモール群」と定義。ラージ群はエンジンが縦置きに搭載されることが最大の特徴といえる。
用意されたプロトタイプ車は『CX-60』の商品名で販売される予定のモデルで、外観は特殊ラッピングでカモフラージュされているが、ボディシェル形状はCX-5に似通っている。
しかし、そのボディサイズは明らかに一回り大きい。全長4740mm、全幅1890mm、全高1685mm、ホイールベース2870mmのディメンションは現行CX-5の数値に対し165mm長く、50mm幅広で、ホイールベースは170mmも長い。一方全高は5mm低くなっていて、クロスオーバーSUVとして低重心で走行性能の向上を図っていることが伺える。マツダはこのCX-60はミッドサイズSUVと表現。この後さらに大きなラージSUVも展開されるというロードマップが示されている。
コクピットに乗り込む。プロトタイプは左ハンドル仕様で、このラージ商品群は欧州や北米、中国などで欧州のプレミアムブランドに対抗する意図で企画されているのであろうことが伺える。
プロトタイプということで室内の大部分がマスキングされ、またシボなども含め試作品で組み上げられているため質感の云々は評価できないが、幅広いセンターコンソールや小径のステアリングなど室内の大きさ、広さを演出していることが伝わってくるのだ。
6気筒ディーゼル+MHEVの相性は
エンジンを始動。最初に搭乗したのは3.3リットル 6気筒のディーゼルターボエンジン+48Vマイルドハイブリッド(MHEV)を縦置きに搭載したモデルだ。欧州車を中心にエンジンの小型化、排気量の低減などダウンサイジング化が主流の中にあって排気量やシリンダー数を拡大する手法は時代の流れに反しているように見える。しかし、マツダは内燃機関の高効率な燃焼を実現するためにマルチシリンダー化と大きな燃焼室が不可欠という自社の研究開発結果から今回の組み合わせに辿り着いている。
2段エッグ形状という卵を二つ並べたような断面を持つ特殊形状のピストンヘッドと高精度の燃料噴射制御を組み合わせ、極めて高い燃焼効率を獲得できたという。加えて電動モーターをエンジンと新開発の8速AT間に配置し、トルコンレスという高効率なパワートレインを構築している。
6気筒ゆえエンジンの回転バランスが極めて優れ、アイドリング状態でもエンジン振動は極めて少ない。クリープはMHEVの電動モーターから引き出し、走り始めはハイブリッド(HV)らしい電動のスムーズさが活かされている。アクセルの踏み増しと速度向上でエンジン側のクラッチが繋がり、通常走行域はエンジン主体で走らされている。さらに強力な加速を引き出そうとアクセルを踏み込むと高回転域で効果が引き出されるターボ過給が威力を発揮。けたたましいほどの加速力を引き出せる。この動力性能はマツダが得意とするAWDシステムにより路面に伝達されるので駆動力ロスがなく、挙動が安定しているのだ。
コーナー区間においてはリニアなステアリング特性と安定した車体姿勢で大きな車体のライントレースを高度に保っている。ややリアのロールが大きく感じられるが、それは今後さらに磨き上げられる部分といえるだろう。
フロントはダブルウィッシュボーンサスペンション、リアはフルマルチリンクのサスペンションが新開発され、高いロードホールディングとサスペンション剛性を実現。またエンジンを縦置きレイアウトしたことで前輪の転舵角度が増し、車体寸法が大きくなっているのもかかわらず、最小旋回半径は小さく取り回し性に優れているのだ。
ディーゼル以上にシャープな加速のPHEV
次にPHEVモデルを試す。こちらは同じプラットフォームに2.5リットル 直4ガソリンエンジン+高出力電動モータープラグインハイブリッド(PHEV)にトルコンレス8速ATを組み合わせ縦置きレイアウトで搭載。同じく4輪駆動のAWDとしている。
大容量のリチウムイオンバッテリーを車体フロア下にレイアウトし、欧州の認証形式でWLTCモード燃費がEVコンバインモードで66km/リットルに達するという。
PHEVらしく走り始めから100km/h以上までEVで走行でき、日常に生活領域の大半をEVとして使用できるが、フルパワーではシステム最高出力として300馬力オーバーを実現している。実際にフル加速を試すとディーゼルターボ以上にパワフルでシャープな加速を体感した。バッテリーの搭載位置を下げて低重心化を図ったことで重量のネガティブを相殺し、ハンドリング面も安定性が高く、またモーターのトルクピックアップに優れていて動きは軽快だ。
新世代自動車にかけるマツダの本気度
世の中がBEVに向かって突き進むなか、マツダは冷静に現状のインフラや技術、生産設備などを総合的に勘案しラージ商品群を構成した。未来はBEVかもしれないが、その過渡期である現在を正しく認識に、現状に相応しい商品をユーザーに提供する姿勢は大いに評価できる。
それにしても新技術をフルに導入し、ラインアップを拡充させるなど、新世代自動車にかけるマツダの本気度がラージ商品群から感じ取れるのだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
中谷明彦|レース&テストドライバー/自動車関連コンサルタント
大学在学中よりレーサー/モータージャーナリストとして活動。1988年全日本F3選手権覇者となるなど国内外で活躍。1997年よりドライビング理論研究会「中谷塾」を開設、2009年より東京大学と自動車新技術の共同研究に取組む。自動車関連の開発、イベント運営など様々な分野でのコンサルタントも行っている。
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