【シトロエン C4 新型試乗】速さもドラマチックさもないが、気持ちいい…中村孝仁
2月にチョイ乗りして、1か月も過ぎればほとぼりが冷めてじっくり乗れるかと思いきや、とんでもない人気のシトロエン『C4』。3か月たってようやく少し余裕が出てお借りすることができた。
まさに引く手あまたなのか、2月のチョイ乗りの時には走行距離が2500kmに届いてなかったクルマが、今回お借りしたら1万kmに届きそうな9700kmを指していた。チョイ乗りの時も、そして今回のように5日間も試乗してみた結果も、その印象は全く変わることはなかった。
いつまでも揺られていたい感覚
昔からシトロエンはこと乗り心地に関しては相当な拘りを持っていた。例えば『2CV』の開発の時など、かごに卵ををいっぱい入れて、それを後部座席に乗せて卵が割れずに走るかどうかのテストなどを行っていた(映像に残っている)。揺れるのだが、ガツンと言う強い揺れが来ないところがシトロエンの特徴である。
そんな乗り心地へのこだわりの究極形が「ハイドロニューマチック」だった。1955年に登場した『DS』に装備されていたガスとオイルによる独特なサスペンションシステムである。ただし、複雑な機構はコストとメンテナンスを要求した。ハイドロニューマチックも時代とともに進化したのだが、コストがかかることに変わりはなく、2015年に販売停止となった『C5』を最後にこのシステムは終焉を迎えた。
しかし、何とかこのハイドロ系の乗り味を再現しようと、より開発費と生産コストがかからず、メンテナンス性の良い新たなメカニズムは水面下で開発が続けられ、完成したのが「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション」と呼ばれる機構である。通常のダンパーにセカンダリーダンパーを組み込んだ機構で、これを初めて日本市場で導入したのは確か『C5エアクロス』だったと記憶するが、その当時は対して大きな感銘は受けなかった。しかし、徐々に修正が加えられてきたのか、今回試乗したC4では相当にうまく仕上げられているという印象を受けた。
一言でいうならそれは「揺りかご」である。赤ちゃんは寝かしつけるときに母親なり、あるいはそれに代わる人が抱っこしながら揺する。揺りかごも同じ。ゆったりとした振動が加えられるのは、人間にとって心地よいのだろうか。もちろんクルマだから、寝てしまってはまずいわけだが、このプログレッシブ・ハイドローリック・クッションの独特の揺れは、個人的には気持ちいいと感じ、いつまでも揺られていたい感覚に陥った。そのいつまでも揺られていたいという感覚はイコールいつまでも乗っていたいに繋がる。少なくとも今、日本市場で提供される多くのシトロエンにはこの感覚がある。
決して速いわけでも、ドラマチックなハンドリングがあるわけでもない。とにかく走り出してすぐに、とても快適だと感じるはずである。そのうち体がクルマに同調してくると、その気持ち良さはまさに母親の腕の中の気持ち良さなのかもしれない。そんな気持ち良さはとっくに忘れた年齢なのだが、たぶんそんな感覚なのだと思う。だからその揺れをいつまでも楽しんでいたいと思うわけである。楽しい運転というよりも気持ちいい運転なのだろう。
必要十分な装備と「なんで?」なシート
今回の試乗車は1.5リットルのターボディーゼルを搭載した「シャイン」という上級グレードのモデル。因みにディーゼルはこのシャインだけの設定で、ガソリンエンジン搭載車には下級グレードの「フィール」というモデルが用意されるが、そちらは受注生産となる。そしてディーゼルのモデルはお値段345万円~となっていて、基本的に必要な装備はすべて完備しているといってよいと思う。
もっともナビは付いておらず、Apple CarPlayもしくはAndroid Autoを接続してスマホのナビアプリを使う。まあ、これで不満を感じたことはないし、地図の更新は車載ナビよりも確実に早いから、便利と言えば便利である。
シャインには電動アシストシートも付いているが電動化されているのは背もたれの角度調整と、座面の高さ調整のみで、前後のスライドは手動。「なんで??」である。装備的に不満を感じたのはこれだけ。価格的には頑張った方ではないかと思う。
燃費はかなりよい。今回の試乗では高速走行が少なかったにもかかわらず18.2km/リットルという好結果を得た。近年のクルマにはコースティング機能と言って、アクセルオフでエンジンをアイドリング状態にする機能があり、C4にもそれが付いていた。ガソリンと比較して軽油の安い日本市場で、ディーゼルは長距離を走る人には大きな恩恵を与える。
ドライブモードもエコ、ノーマル、スポーツをチョイスできる。クルマによってはモードを切り替えても大した差を感じないものもあるが、C4のドライブモードはかなりメリハリがあって、存在価値も大きいと感じた。
とにかく新しいC4は乗っていて気持ちがいい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
まさに引く手あまたなのか、2月のチョイ乗りの時には走行距離が2500kmに届いてなかったクルマが、今回お借りしたら1万kmに届きそうな9700kmを指していた。チョイ乗りの時も、そして今回のように5日間も試乗してみた結果も、その印象は全く変わることはなかった。
いつまでも揺られていたい感覚
昔からシトロエンはこと乗り心地に関しては相当な拘りを持っていた。例えば『2CV』の開発の時など、かごに卵ををいっぱい入れて、それを後部座席に乗せて卵が割れずに走るかどうかのテストなどを行っていた(映像に残っている)。揺れるのだが、ガツンと言う強い揺れが来ないところがシトロエンの特徴である。
そんな乗り心地へのこだわりの究極形が「ハイドロニューマチック」だった。1955年に登場した『DS』に装備されていたガスとオイルによる独特なサスペンションシステムである。ただし、複雑な機構はコストとメンテナンスを要求した。ハイドロニューマチックも時代とともに進化したのだが、コストがかかることに変わりはなく、2015年に販売停止となった『C5』を最後にこのシステムは終焉を迎えた。
しかし、何とかこのハイドロ系の乗り味を再現しようと、より開発費と生産コストがかからず、メンテナンス性の良い新たなメカニズムは水面下で開発が続けられ、完成したのが「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション」と呼ばれる機構である。通常のダンパーにセカンダリーダンパーを組み込んだ機構で、これを初めて日本市場で導入したのは確か『C5エアクロス』だったと記憶するが、その当時は対して大きな感銘は受けなかった。しかし、徐々に修正が加えられてきたのか、今回試乗したC4では相当にうまく仕上げられているという印象を受けた。
一言でいうならそれは「揺りかご」である。赤ちゃんは寝かしつけるときに母親なり、あるいはそれに代わる人が抱っこしながら揺する。揺りかごも同じ。ゆったりとした振動が加えられるのは、人間にとって心地よいのだろうか。もちろんクルマだから、寝てしまってはまずいわけだが、このプログレッシブ・ハイドローリック・クッションの独特の揺れは、個人的には気持ちいいと感じ、いつまでも揺られていたい感覚に陥った。そのいつまでも揺られていたいという感覚はイコールいつまでも乗っていたいに繋がる。少なくとも今、日本市場で提供される多くのシトロエンにはこの感覚がある。
決して速いわけでも、ドラマチックなハンドリングがあるわけでもない。とにかく走り出してすぐに、とても快適だと感じるはずである。そのうち体がクルマに同調してくると、その気持ち良さはまさに母親の腕の中の気持ち良さなのかもしれない。そんな気持ち良さはとっくに忘れた年齢なのだが、たぶんそんな感覚なのだと思う。だからその揺れをいつまでも楽しんでいたいと思うわけである。楽しい運転というよりも気持ちいい運転なのだろう。
必要十分な装備と「なんで?」なシート
今回の試乗車は1.5リットルのターボディーゼルを搭載した「シャイン」という上級グレードのモデル。因みにディーゼルはこのシャインだけの設定で、ガソリンエンジン搭載車には下級グレードの「フィール」というモデルが用意されるが、そちらは受注生産となる。そしてディーゼルのモデルはお値段345万円~となっていて、基本的に必要な装備はすべて完備しているといってよいと思う。
もっともナビは付いておらず、Apple CarPlayもしくはAndroid Autoを接続してスマホのナビアプリを使う。まあ、これで不満を感じたことはないし、地図の更新は車載ナビよりも確実に早いから、便利と言えば便利である。
シャインには電動アシストシートも付いているが電動化されているのは背もたれの角度調整と、座面の高さ調整のみで、前後のスライドは手動。「なんで??」である。装備的に不満を感じたのはこれだけ。価格的には頑張った方ではないかと思う。
燃費はかなりよい。今回の試乗では高速走行が少なかったにもかかわらず18.2km/リットルという好結果を得た。近年のクルマにはコースティング機能と言って、アクセルオフでエンジンをアイドリング状態にする機能があり、C4にもそれが付いていた。ガソリンと比較して軽油の安い日本市場で、ディーゼルは長距離を走る人には大きな恩恵を与える。
ドライブモードもエコ、ノーマル、スポーツをチョイスできる。クルマによってはモードを切り替えても大した差を感じないものもあるが、C4のドライブモードはかなりメリハリがあって、存在価値も大きいと感じた。
とにかく新しいC4は乗っていて気持ちがいい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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