【DS 9 新型試乗】まるでポーパシング現象?な乗り心地も視点を変えれば…中村孝仁
DSオートモビルのフラッグシップとして誕生したのが『DS 9』である。搭載されるエンジンは225psの1.6リットル、ピュアテック4気筒ターボ。他に同じエンジンにモーターを備えたPHEV仕様もあるが、今回試乗したのは前者の方だ。
600万円台前半から買えるDセグメント
3サイズは全長4940×全幅1855×全高1460mm。ホイールベースは2895mmである。このサイズ感からライバルを探し出すと思い浮かぶのは、メルセデスベンツ『Eクラス』、BMW『5シリーズ』、そしてアウディ『A6』あたり。そしてボルボでいうなら『S90』というところだ。ライバルの最も安いモデルでも最低価格が700万円台の中盤以上。そこへ行くとDS 9のガソリンモデルは600万円台前半から用意されていて、サイズ的ライバルから比べると100万円ほどお安い。
しかもちゃんとPHEVの用意もある(アウディは今のところない)。逆にボルボはハイブリッドしか用意されない。ガソリン、ディーゼル、ハイブリッドが用意されるのはメルセデスとBMW。そしてライバルのPHEVもしくはハイブリッド(メルセデスはマイルドハイブリッド)は一様にお高い。というわけで値段勝負ならばDS 9は断然お買い得となる。
とまあ、ここまではDS 9、いいじゃないか…となるわけだが、今回500km弱試乗してみて感じたのは、同じDセグメントでも乗り味はこうも違うか!ということであった。
ポーパシング現象のよう?な乗り心地も視点を変えれば
DS 9にはアクティブスキャンサスペンションと呼ばれる、前方の路面をカメラで読み取り、凹凸に応じて最適なサスペンションの状況を作り出す…という仕組みが装備される。これはかつてメルセデスが『Sクラス』に導入して速攻やめたシステム。具合が悪いのは視界が不良になると作動しないということで、その視界不良には夜も含まれるから1日のうち半分は機能しないということである。
それはともかくとして、ことコンフォートという面ではかなり気を使った節があって、少なくとも良好な路面においては抜群のコンフォートを見せる(まあ当たり前)…というか感じさせる。ところが、路面が少し劣悪だったり、あるいはちょいとばかり攻めた走りをしようと思うとどうもいただけない。このクルマ、印象としてはかなりブッシュコンプライアンス(ちょっと専門的だが要はゴムによる振動吸収力)を多めにとっている走りなのだ。
それだけでなく、EMP2と呼ばれるこのクルマに使われているプラットフォームは当然ある程度のサイズまでは伸ばしたり縮めたりはできるのだが、ここまで大きなボディ(というかホイールベース)に使われている例はなく、商用車ならまだしもセダン系ではちょいとデカすぎて役不足感も感じてしまう。しかもEMP2と一口に言っても日々進化しているわけで、最新はジェネレーション3のものが採用されているが、DS 9は一時代前のジェネレーション2なのである。
というわけで、ブッシュコンプライアンスの多めな乗り心地は路面から比較的大きめな入力が入った時にボディ全体がブルンと揺れ、シャキっと一発ではその揺れが収束しない。もう一つ気になったのは首都高速の高架部分のように路面の継ぎ目が断続的に続くような状況ではクルマが上下動を繰り返し、振動周波数がそれにシンクロしてしまったような場合は上下動が止まらない。まるで今F1で大騒ぎされているポーパシング現象のようである。
ただ、思うにDSは半ば確信犯的にこのセッティングを採用している印象も否めない。というのも最近デビューした『DS 4』でもこの傾向がみられるからである。恐らくはとことんハーシュネスを小さくしようとしたセッティングを採用しているようで、高速移動が中心のヨーロッパでは好まれないセッティングと思われるのだが、このクルマがワールドプレミアされた場所を考えると、主要市場はそっち?(どことは言わないが)ということになって、メインマーケットの要望を取り入れた結果なのかとも感じてしまうのだ。
この走りの印象はかつての剛性のない骨格だと全体が揺すられて決して気持ちの良いものではないが、今はそれなりに剛性が確保されているので後は好みの問題ともいえる。だから、気にはなったが同乗していたパッセンジャーに言わせればとても快適だそうだから、要はドライブしている「かつての走り屋」の印象がそうなだけで、視点を変えるとたぶん快適なのである。でも百歩譲って、ドライブモードのスポーツは要らない。というのが正直な感想である。
上質感漲る調度はライバルと一線を画す
一方で内外装のラグジャリーな雰囲気はサイズ的ライバルをはるかに凌ぐセンスの良さを持っていることは紛れもない事実。少しデザインコンシャス過ぎて、センターコンソールに集められたパワーウィンドースイッチの使いづらさは少々辟易した。シートは極めて快適で、片道200kmぐらいなら疲れ知らず(乗り心地の影響もあるかもしれない)。それにどこを取って上質感漲る調度は他のライバルと明確に一線を画している。伝統的なフランスの〇〇とか、パリの〇〇などことさらに強調しないでもその良さは十分に伝わると思う。
日本市場はまだデビューしたばかり。最初のマイナーチェンジあたりで走りが変わってくれれば文句なしなのだが…。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
600万円台前半から買えるDセグメント
3サイズは全長4940×全幅1855×全高1460mm。ホイールベースは2895mmである。このサイズ感からライバルを探し出すと思い浮かぶのは、メルセデスベンツ『Eクラス』、BMW『5シリーズ』、そしてアウディ『A6』あたり。そしてボルボでいうなら『S90』というところだ。ライバルの最も安いモデルでも最低価格が700万円台の中盤以上。そこへ行くとDS 9のガソリンモデルは600万円台前半から用意されていて、サイズ的ライバルから比べると100万円ほどお安い。
しかもちゃんとPHEVの用意もある(アウディは今のところない)。逆にボルボはハイブリッドしか用意されない。ガソリン、ディーゼル、ハイブリッドが用意されるのはメルセデスとBMW。そしてライバルのPHEVもしくはハイブリッド(メルセデスはマイルドハイブリッド)は一様にお高い。というわけで値段勝負ならばDS 9は断然お買い得となる。
とまあ、ここまではDS 9、いいじゃないか…となるわけだが、今回500km弱試乗してみて感じたのは、同じDセグメントでも乗り味はこうも違うか!ということであった。
ポーパシング現象のよう?な乗り心地も視点を変えれば
DS 9にはアクティブスキャンサスペンションと呼ばれる、前方の路面をカメラで読み取り、凹凸に応じて最適なサスペンションの状況を作り出す…という仕組みが装備される。これはかつてメルセデスが『Sクラス』に導入して速攻やめたシステム。具合が悪いのは視界が不良になると作動しないということで、その視界不良には夜も含まれるから1日のうち半分は機能しないということである。
それはともかくとして、ことコンフォートという面ではかなり気を使った節があって、少なくとも良好な路面においては抜群のコンフォートを見せる(まあ当たり前)…というか感じさせる。ところが、路面が少し劣悪だったり、あるいはちょいとばかり攻めた走りをしようと思うとどうもいただけない。このクルマ、印象としてはかなりブッシュコンプライアンス(ちょっと専門的だが要はゴムによる振動吸収力)を多めにとっている走りなのだ。
それだけでなく、EMP2と呼ばれるこのクルマに使われているプラットフォームは当然ある程度のサイズまでは伸ばしたり縮めたりはできるのだが、ここまで大きなボディ(というかホイールベース)に使われている例はなく、商用車ならまだしもセダン系ではちょいとデカすぎて役不足感も感じてしまう。しかもEMP2と一口に言っても日々進化しているわけで、最新はジェネレーション3のものが採用されているが、DS 9は一時代前のジェネレーション2なのである。
というわけで、ブッシュコンプライアンスの多めな乗り心地は路面から比較的大きめな入力が入った時にボディ全体がブルンと揺れ、シャキっと一発ではその揺れが収束しない。もう一つ気になったのは首都高速の高架部分のように路面の継ぎ目が断続的に続くような状況ではクルマが上下動を繰り返し、振動周波数がそれにシンクロしてしまったような場合は上下動が止まらない。まるで今F1で大騒ぎされているポーパシング現象のようである。
ただ、思うにDSは半ば確信犯的にこのセッティングを採用している印象も否めない。というのも最近デビューした『DS 4』でもこの傾向がみられるからである。恐らくはとことんハーシュネスを小さくしようとしたセッティングを採用しているようで、高速移動が中心のヨーロッパでは好まれないセッティングと思われるのだが、このクルマがワールドプレミアされた場所を考えると、主要市場はそっち?(どことは言わないが)ということになって、メインマーケットの要望を取り入れた結果なのかとも感じてしまうのだ。
この走りの印象はかつての剛性のない骨格だと全体が揺すられて決して気持ちの良いものではないが、今はそれなりに剛性が確保されているので後は好みの問題ともいえる。だから、気にはなったが同乗していたパッセンジャーに言わせればとても快適だそうだから、要はドライブしている「かつての走り屋」の印象がそうなだけで、視点を変えるとたぶん快適なのである。でも百歩譲って、ドライブモードのスポーツは要らない。というのが正直な感想である。
上質感漲る調度はライバルと一線を画す
一方で内外装のラグジャリーな雰囲気はサイズ的ライバルをはるかに凌ぐセンスの良さを持っていることは紛れもない事実。少しデザインコンシャス過ぎて、センターコンソールに集められたパワーウィンドースイッチの使いづらさは少々辟易した。シートは極めて快適で、片道200kmぐらいなら疲れ知らず(乗り心地の影響もあるかもしれない)。それにどこを取って上質感漲る調度は他のライバルと明確に一線を画している。伝統的なフランスの〇〇とか、パリの〇〇などことさらに強調しないでもその良さは十分に伝わると思う。
日本市場はまだデビューしたばかり。最初のマイナーチェンジあたりで走りが変わってくれれば文句なしなのだが…。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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