【メルセデスAMG C43 海外試乗】電動ターボのお手並み拝見、正真正銘の「ワンマン、ワンエンジン」…渡辺慎太郎

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半導体問題やウクライナ情勢など、これでもかと次々ふりかかるさまざまな苦境によって世界的にデリバリーが遅れてはいるものの、メルセデスベンツの現行『Cクラス』は順調な売れ行きを示しているという。2021年2月にオンラインでCクラス史上初となるセダンとワゴンを同時発表、夏にはプラグインハイブリッドモデル、秋にはオールテレインを追加し、異例の早さでラインナップの拡充が図られている。そしてこのたび、待望のAMG仕様が登場した。メルセデス『AMG C43 4MATIC』である。

正真正銘の「ワンマン、ワンエンジン」
この車名には注目すべきポイントがふたつ含まれている。ひとつめは「43」。これまでのAMGの43は3リットルのツインターボエンジンを搭載していたが、そのユニットはAMGによるチューニングが施されていたものの、AMGのエンジン工場で組み立てられるいわゆる「ワンマン、ワンエンジン」ではなく、よってエンジンカバーにサイン入りのネームプレートがなかった。しかしC43のエンジンは今度こそ正真正銘の「ワンマン、ワンエンジン」となる。

M139型と呼ばれる1991ccの直列4気筒ターボエンジンは、AMGの『A45』や『CLA45』などにも積まれているが、ご存知のようにAクラスのエンジンは横置き。これを縦置きにしてCクラスのボンネットに収めている。最高出力は408ps/6750rpm、最大トルク500Nm/5000rpmを発生、BSG仕様(AMGでは「RSG」仕様と言う)なので状況に応じて14psのブーストが上乗せされる。直噴とポート噴射を併用するツインインジェクションはA45などと同様。決定的に異なるのはターボの仕組みである。

C43のそれは電動ターボだ。ターボのコンプレッサーとタービンを繋ぐ軸上に48Vで駆動するターボを設置。これにより全回転域でのレスポンスを大幅に向上している。ユニークなのは、このモーターが基本的に常に駆動しているという点だ。アクセルペダルから足を離しても、ブレーキペダルに踏み換えても、モーターが回り続けることで一定のブースト圧を維持できるので、どのような状態からでもダイレクトなレスポンスが得られる理屈である。

人気のCクラス、AMGの流儀を踏襲
車名にまつわるもうひとつのポイントは、「4MATIC」。C43は4輪駆動がデフォルトでFRは現時点で用意されていない。また前後駆動力配分が随時可変する「4MATIC+」でもないので、前後の駆動力は31:69のやや後輪寄りの固定式となる。なお、組み合わされるトランスミッションは、湿式多板クラッチを用いるAMGスピードシフトMCT 9G。ISG仕様ではなくBSG仕様にしたのは、このトランスミッションを使いたかったから。ISG仕様だと湿式多板クラッチの位置にモーターが組み込まれてしまうからである。

AMGライドコントロールサスペンションは金属ばねと電制ダンパーを組み合わせたもの。形式自体は前後ともノーマルのCクラスと同じだが、リヤアクスルにはサスペンションのジオメトリー変化を積極的に使いコンプライアンスステアを誘発するエラスト・キネマティックを採用するなど、AMG独自のセッティングとなる。リアアクスルステアリングが標準で装備され、100km/hまでは逆位相に最大2.5度、100km/h以上では同位相に最大0.7度、後輪が操舵する。

外観は、フロントグリルに縦方向のクロームバーを配したり、リヤにディフューザーを配置するなど、これまでのAMGの流儀を踏襲している。ホイールは18インチが標準、19インチと20インチがオプションで用意されている。

意外にも第一印象は「剛性感の高さ」
とにかく今回は電動ターボのお手並み拝見と走り出したものの、最初に「ん?」となったのはボディやシャシー全般の剛性感の高さだった。プレス向け資料にはその辺りのことがまったく書かれてなかったのだけれど、ボンネットを開けたらタワーバーがしっかりと左右のサスペンション取り付け部を繋いでいた。感覚的には他にも前後アクスル近辺のボディ側に補強が入っているように思えた。

そもそも現行Cクラスの剛性感にまったく不満はないものの、C43ではさらにしっかり頑強になっている印象を受ける。こうなると、当然のようにサスペンションが想定通りの働きをしっかりこなすので乗り心地がよく、ダイレクト感のある操縦性ももれなくついてくる。一般的には60km/h付近で逆位相と同位相を切り替える後輪操舵のセッティングも、90km/h辺りでの車線変更時に逆位相が気になるのではと想像していたがさにあらず。全般的に大きく出しゃばる制御ではなかった。ただし、AMGダイナミックセレクトのドライブモード次第で微妙に味付けが異なった。

期待を裏切らない強烈な加速感
電動ターボの恩恵は、特に減速してからの再加速時に強く体感できる。事前説明の通り、アクセルペダルを踏んでいなくても一定のブースト圧を保持しているから、再び踏み込んだときのレスポンスは確かにいい。排ガスがまだ十分に送られてこない低回転域でも効果を発揮しているようだが、この領域ではBSGによるモーターのサポートも働いているので、正直なところターボかモーターか、どちらに助けてもらっているのかよくわからない場面もあった。スペック上での最大トルクの発生回転数が5000rpmと高めでも、電動ターボのおかげで「下のほうがスカスカ」なんてことはまったくなかった。

加速感は期待を裏切らない強烈なもので、それには4MATICもひと役買っていると思う。スタビリティを確保しつつエンジンパワーを無駄にしないためには、やっぱり4輪駆動は有効なのである。

渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター
1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。

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