【三菱 eKクロスEV 新型試乗】軽自動車とBEVの相性は、間違いなく良い…中村孝仁
BEVを取り巻く環境、認識は大きく変わった
三菱自動車の独自調査によれば、軽自動車ユーザーの実に9割は、1日の走行距離が50kmに満たないという。にもかかわらず『eKクロスEV』は、180km(WLTCモード)の航続距離を確保しているのだから十分である。
軽自動車の使い勝手を考えれば確かにその通りで、日常的に50kmとは言わないが100km走れれば、特別なドライブを別にすれば航続距離としては十分のように思える。個人的に実に認識不足であったが、三菱は2021年まで『i-MiEV(アイミーブ)』を生産していたそうだ。ご存じの通りアイミーブはリチウムイオンの2次電池を採用した初の量産BEVとして2009年から生産されていたモデル。私の周りにも複数のアイミーブ・ユーザーがいたが、バッテリーの持ちが悪いと不満を私にぶつけていたのを覚えている。しかも売却したくても補助金をもらっている関係から4年間は売却できず、最終的には満充電しても精々70km程度しか走れなかったと愚痴をこぼしていた。
そのアイミーブ、細々ながら改良を重ねて最終的にはそうしたバッテリーの劣化を招かない対策を講じて昨年まで生産され、12年間の生産期間中に1万2000台ほどが生産されたという。つまりざっくり年間1000台という計算だ。翻って新しいeKクロスのBEVは、5月20日の発表から7月3日までの1か月半で既に4559台の受注を受けているそうだから、BEVを取り巻く環境も、BEVに対する認識もアイミーブが投入された時とは大きく異なると言える。実際BEVに対してトラウマのあった筆者自身も、BEVに対する認識は正直言って大きく変わった。
ただそうは言っても、欧州などが推し進める完全EV化には基本的に反対というか無理があると思っており、EVは選択手段の一つだという考え方の方が合理的だと感じている。つまり、使う側がその目的に応じてBEVを選べばよいわけで、〇〇年までにすべてのモデルをBEVにするといった一部メーカーの戦略には疑問を禁じ得ないのだが、きっとユーザーは賢いからどうしても内燃機関の付いたモデルが良いとなれば、長年お付き合いがあったメーカーでも、そこに別れを告げて別な選択肢を選ぶのだと思う。
ガソリン車+210kgでも意に介さない性能
そんな中で本格的BEVの軽自動車が誕生したわけだが、eKクロスEVは実に快適で軽快な走りを披露する。特に発進から、あるいはパーシャルからの加速で急を要するようなときアクセルを踏み込むと、非力な軽自動車はどうしてもエンジンが唸りがちになる。こうした状況におけるeKクロスEVは実に力強く、そして言葉は適切ではないが豪快な加速をしてくれる。ガソリンエンジンのeKクロスの最も重い車両が870kg。対するEVモデルは1080kgあるから実に210kgも重いのだが、そんな重量増は全く意に介さない性能を持っている。
メーターパネルには7インチの液晶ディススプレイが埋め込まれていて、好みに応じて複数の表示方法を選ぶことができる。今回は乗り出した状態から変えることができず、終始クルマが引き渡された状態で走行したのだが、文字と数字だけが羅列された表示は少々煩雑で読み取りづらかった。
軽自動車とBEVの相性は間違いなく良い
結論から言って走行距離が初めから多いとわかっているユーザーは別だが、三菱調べの9割のユーザーならBEVの方がお勧めである。理由はガソリン車にはない滑らかな走りと静粛性、それに快適性を有していることがあげられる。
今回試乗した上級グレードの「P」の場合、車両本体価格が293万2600円でこれにメーカーオプションとディーラーオプションを加えた総額は336万6572円と結構な額になるが、国からの補助金や自治体の補助金などを獲得できれば場合によってここから100万円以上安くなる。それでもまだ少々高いと言わざるを得ないが、ならばグレードを引き下げれば車両本体価格は50万円少々安くなるから、東京都など自治体の補助が手厚いところでは200万円を切って購入できることになる。それならガソリンモデルと大差ない。
軽自動車とBEVの相性は間違いなく良く、お勧めできる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
三菱自動車の独自調査によれば、軽自動車ユーザーの実に9割は、1日の走行距離が50kmに満たないという。にもかかわらず『eKクロスEV』は、180km(WLTCモード)の航続距離を確保しているのだから十分である。
軽自動車の使い勝手を考えれば確かにその通りで、日常的に50kmとは言わないが100km走れれば、特別なドライブを別にすれば航続距離としては十分のように思える。個人的に実に認識不足であったが、三菱は2021年まで『i-MiEV(アイミーブ)』を生産していたそうだ。ご存じの通りアイミーブはリチウムイオンの2次電池を採用した初の量産BEVとして2009年から生産されていたモデル。私の周りにも複数のアイミーブ・ユーザーがいたが、バッテリーの持ちが悪いと不満を私にぶつけていたのを覚えている。しかも売却したくても補助金をもらっている関係から4年間は売却できず、最終的には満充電しても精々70km程度しか走れなかったと愚痴をこぼしていた。
そのアイミーブ、細々ながら改良を重ねて最終的にはそうしたバッテリーの劣化を招かない対策を講じて昨年まで生産され、12年間の生産期間中に1万2000台ほどが生産されたという。つまりざっくり年間1000台という計算だ。翻って新しいeKクロスのBEVは、5月20日の発表から7月3日までの1か月半で既に4559台の受注を受けているそうだから、BEVを取り巻く環境も、BEVに対する認識もアイミーブが投入された時とは大きく異なると言える。実際BEVに対してトラウマのあった筆者自身も、BEVに対する認識は正直言って大きく変わった。
ただそうは言っても、欧州などが推し進める完全EV化には基本的に反対というか無理があると思っており、EVは選択手段の一つだという考え方の方が合理的だと感じている。つまり、使う側がその目的に応じてBEVを選べばよいわけで、〇〇年までにすべてのモデルをBEVにするといった一部メーカーの戦略には疑問を禁じ得ないのだが、きっとユーザーは賢いからどうしても内燃機関の付いたモデルが良いとなれば、長年お付き合いがあったメーカーでも、そこに別れを告げて別な選択肢を選ぶのだと思う。
ガソリン車+210kgでも意に介さない性能
そんな中で本格的BEVの軽自動車が誕生したわけだが、eKクロスEVは実に快適で軽快な走りを披露する。特に発進から、あるいはパーシャルからの加速で急を要するようなときアクセルを踏み込むと、非力な軽自動車はどうしてもエンジンが唸りがちになる。こうした状況におけるeKクロスEVは実に力強く、そして言葉は適切ではないが豪快な加速をしてくれる。ガソリンエンジンのeKクロスの最も重い車両が870kg。対するEVモデルは1080kgあるから実に210kgも重いのだが、そんな重量増は全く意に介さない性能を持っている。
メーターパネルには7インチの液晶ディススプレイが埋め込まれていて、好みに応じて複数の表示方法を選ぶことができる。今回は乗り出した状態から変えることができず、終始クルマが引き渡された状態で走行したのだが、文字と数字だけが羅列された表示は少々煩雑で読み取りづらかった。
軽自動車とBEVの相性は間違いなく良い
結論から言って走行距離が初めから多いとわかっているユーザーは別だが、三菱調べの9割のユーザーならBEVの方がお勧めである。理由はガソリン車にはない滑らかな走りと静粛性、それに快適性を有していることがあげられる。
今回試乗した上級グレードの「P」の場合、車両本体価格が293万2600円でこれにメーカーオプションとディーラーオプションを加えた総額は336万6572円と結構な額になるが、国からの補助金や自治体の補助金などを獲得できれば場合によってここから100万円以上安くなる。それでもまだ少々高いと言わざるを得ないが、ならばグレードを引き下げれば車両本体価格は50万円少々安くなるから、東京都など自治体の補助が手厚いところでは200万円を切って購入できることになる。それならガソリンモデルと大差ない。
軽自動車とBEVの相性は間違いなく良く、お勧めできる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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