【BYD ATTO3 新型試乗】中国発の「e-SUV」、日本にマッチするサイズ感に質感も上々…会田肇
中国を代表するEVメーカーとして成長したBYDが、ついに乗用車のEVで日本デビューを果たすことになった。その第一弾となるのがe-SUV『ATTO3(アットスリー)』だ。発売は2023年1月を予定。それを前に、すでに発表済みの豪州仕様に一足早く公道で試乗することができた。
リン酸鉄バッテリーを採用した専用の「e-Platform 3.0」採用
BYDは1995年に中国・広東省深圳で産声を上げた若い会社だ。当初は二次電池を提供するサプライヤーとしていたが、その電池事業で培ったノウハウを活かして2008年12月には量産型プラグインハイブリッド車を発売。その後、大型バスやタクシーなどの商用車両でのEVにも参入し、日本国内においてはすでに7割のシェアに達しているという。
そのBYDが日本市場向けに乗用車のEVとして最初に投入するのがATTO3である。中国でのデビューは2022 年2月。BYDが独自開発した「ブレードバッテリー」を搭載したEV専用プラットフォーム「e-Platform 3.0」を採用し、航続距離は485km(WLTC値)を達成。高い安全性を保ちながら、フラットな床面がもたらす広い車内空間と440リットルの荷室容量を実現した。すでにシンガポールやオーストラリアでも好評を得ているという。
試乗当日はATTO3について簡単な説明がされた。それによると独自開発した「ブレードバッテリー」には、安全で耐久性が高いリン酸鉄バッテリーを採用しているという。また、低重心かつロングホイールベースとすることで、伸びやかなデザインと広々とした車室内を実現してもいる。車名である「ATTO3」の意味は、物理学で測定可能な最短のスケール“アト秒”に因んでおり、俊敏で若々しさをイメージしたそうだ。
日本の道路事情にマッチしたサイズ感。質感も上々
写真では極めてオーソドックスなデザインかと感じていたが、実車を前にすると想像以上に斬新さにあふれているのがわかる。サイドビューは波打つような脹らみを持たせ、それが光の放ち方を変化。そこにクリスタルな意匠がアクセントとして存在感を伝えてくる。全長は4455mm×全幅1875mm×全高1615mmという、少し幅は広めだが、SUVらしい程良いサイズ感で日本の道路事情にもマッチしそうな印象を受けた。
車内は前席にたっぷりとしたサイズ感のパワー機構付きハイバックシートが装備される。ダッシュボードはジムで鍛える筋肉質を表現した独特のデザイン。そのデザインはコンソールボックスの蓋にも引き継がれ、そこにダンベルをモチーフにしたシフトノブがコンソールに配置される。質感も上々だ。また、ベンチレーターもしっかりとしたリング形状のデザインで、まさにフィットネスジムの雰囲気がそのまま再現されているかのようだ。
また、ユニークだったのはオーディオ用スピーカーだ。ドア中央部にはドアノブを一体化したミッドレンジスピーカーが組み込まれ、ドア下部のウーファーユニットから収納スペースにはベースの弦をイメージしたゴム製ワイヤーも張られていた。しかも、この弦をを弾くとボロロンと音が鳴る。この遊び心いっぱいの雰囲気にはつい心が躍ってしまう。
一方でインターフェースは、全体として小さめなものが多い。速度やバッテリー状態を示すメーターはステアリングの奥に見えるレイアウトで、センターにある12.8インチのディスプレイに比べるとかなりコンパクトだ。アイコンや文字表示は小さめで、高齢者に入りつつある筆者にとって、これを走行中に視認するのも少し辛い気がした。また、センターにあるディスプレイも、タテにも回転する機構が付いているものの、ほぼタブレットが鎮座している印象で、ここに表示される内容もまた小さめに感じた。
テレマティクス系の装備は豪州仕様にままだったため、ナビゲーションは表示できず。それでも車内イルミネーションの色合いを変えたり、Apple CarPlay、AndroidAutoへの対応は可能になっていた。同乗した説明員によれば、これらは日本仕様として用意されるまでに変更される可能性はあるかもしれないとのことだった。
立ち上がりから力強いスムーズな加速。乗り心地も良い
走り出すと、クォーンと少し大きめの接近警報音が伝わってきた。道路に出てアクセルを踏み込むと、スタートから大トルクを発揮する電動車だけに加速はとても力強い。静かだし、その加速力がどこまでもエンドレスでつながっていくようだ。発表されているモーター出力/トルクはそれぞれ150kW/310Nmで、0-100km/h 7.1秒。走行した印象を踏まえれば充分に納得できるスペックと言えるだろう。
ドライブモードは、ノーマル/エコノミー/スポーツの3モードで、スポーツモードではそのパフォーマンスがフルに体感できる。その一方でエコノミーにすると明らかに電力を抑えた走りになるが、それでも通常走行なら不足ない走りを見せる。乗り心地は若干フワついた印象はあるが、乗り心地は上々だ。路面の段差も突き上げ感はほとんどなく、e-Platform 3.0の高剛性設計が効果を発揮していると言っていいだろう。
一方でステアリングはやや緩慢な印象で、コーナーでは若干多めにステアリングを切ることを強いられる印象だ。ただ、操舵感は軽めにできており、ボディの見切りの良さも手伝って、駐車を含む市街地での操作は楽に行えそうだ。
アジア勢のEV攻勢が日本のEV市場の大きな刺激に
乗用車のEVで日本に初参入するBYDは、2023年中にこのATTO3を含め、多彩なライフスタイルに合わせたe-Compact『DOLPHIN(ドルフィン)』、最新技術を結集したハイエンドなe-Sedan『SEAL(シール)』の計3車種を投入する。いずれも価格は未発表だが、説明員によれば日本市場で競争力のある価格帯になる見込みだという。韓国ヒョンデに続き、相次ぐアジア勢のEV攻勢は日本のEV市場にとって大きな刺激となることは間違いないだろう。
■5つ星評価(一般道のみ)
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
会田 肇|AJAJ会員
1956年・茨城県生まれ。明治大学政経学部卒。大学卒業後、自動車専門誌の編集部に所属し、1986年よりフリーランスとして独立。主としてカーナビゲーションやITS分野で執筆活動を展開し、それに伴い新型車の試乗もこなす。自身の体験を含め、高齢者の視点に立った車両のアドバイスを心掛けていく。
リン酸鉄バッテリーを採用した専用の「e-Platform 3.0」採用
BYDは1995年に中国・広東省深圳で産声を上げた若い会社だ。当初は二次電池を提供するサプライヤーとしていたが、その電池事業で培ったノウハウを活かして2008年12月には量産型プラグインハイブリッド車を発売。その後、大型バスやタクシーなどの商用車両でのEVにも参入し、日本国内においてはすでに7割のシェアに達しているという。
そのBYDが日本市場向けに乗用車のEVとして最初に投入するのがATTO3である。中国でのデビューは2022 年2月。BYDが独自開発した「ブレードバッテリー」を搭載したEV専用プラットフォーム「e-Platform 3.0」を採用し、航続距離は485km(WLTC値)を達成。高い安全性を保ちながら、フラットな床面がもたらす広い車内空間と440リットルの荷室容量を実現した。すでにシンガポールやオーストラリアでも好評を得ているという。
試乗当日はATTO3について簡単な説明がされた。それによると独自開発した「ブレードバッテリー」には、安全で耐久性が高いリン酸鉄バッテリーを採用しているという。また、低重心かつロングホイールベースとすることで、伸びやかなデザインと広々とした車室内を実現してもいる。車名である「ATTO3」の意味は、物理学で測定可能な最短のスケール“アト秒”に因んでおり、俊敏で若々しさをイメージしたそうだ。
日本の道路事情にマッチしたサイズ感。質感も上々
写真では極めてオーソドックスなデザインかと感じていたが、実車を前にすると想像以上に斬新さにあふれているのがわかる。サイドビューは波打つような脹らみを持たせ、それが光の放ち方を変化。そこにクリスタルな意匠がアクセントとして存在感を伝えてくる。全長は4455mm×全幅1875mm×全高1615mmという、少し幅は広めだが、SUVらしい程良いサイズ感で日本の道路事情にもマッチしそうな印象を受けた。
車内は前席にたっぷりとしたサイズ感のパワー機構付きハイバックシートが装備される。ダッシュボードはジムで鍛える筋肉質を表現した独特のデザイン。そのデザインはコンソールボックスの蓋にも引き継がれ、そこにダンベルをモチーフにしたシフトノブがコンソールに配置される。質感も上々だ。また、ベンチレーターもしっかりとしたリング形状のデザインで、まさにフィットネスジムの雰囲気がそのまま再現されているかのようだ。
また、ユニークだったのはオーディオ用スピーカーだ。ドア中央部にはドアノブを一体化したミッドレンジスピーカーが組み込まれ、ドア下部のウーファーユニットから収納スペースにはベースの弦をイメージしたゴム製ワイヤーも張られていた。しかも、この弦をを弾くとボロロンと音が鳴る。この遊び心いっぱいの雰囲気にはつい心が躍ってしまう。
一方でインターフェースは、全体として小さめなものが多い。速度やバッテリー状態を示すメーターはステアリングの奥に見えるレイアウトで、センターにある12.8インチのディスプレイに比べるとかなりコンパクトだ。アイコンや文字表示は小さめで、高齢者に入りつつある筆者にとって、これを走行中に視認するのも少し辛い気がした。また、センターにあるディスプレイも、タテにも回転する機構が付いているものの、ほぼタブレットが鎮座している印象で、ここに表示される内容もまた小さめに感じた。
テレマティクス系の装備は豪州仕様にままだったため、ナビゲーションは表示できず。それでも車内イルミネーションの色合いを変えたり、Apple CarPlay、AndroidAutoへの対応は可能になっていた。同乗した説明員によれば、これらは日本仕様として用意されるまでに変更される可能性はあるかもしれないとのことだった。
立ち上がりから力強いスムーズな加速。乗り心地も良い
走り出すと、クォーンと少し大きめの接近警報音が伝わってきた。道路に出てアクセルを踏み込むと、スタートから大トルクを発揮する電動車だけに加速はとても力強い。静かだし、その加速力がどこまでもエンドレスでつながっていくようだ。発表されているモーター出力/トルクはそれぞれ150kW/310Nmで、0-100km/h 7.1秒。走行した印象を踏まえれば充分に納得できるスペックと言えるだろう。
ドライブモードは、ノーマル/エコノミー/スポーツの3モードで、スポーツモードではそのパフォーマンスがフルに体感できる。その一方でエコノミーにすると明らかに電力を抑えた走りになるが、それでも通常走行なら不足ない走りを見せる。乗り心地は若干フワついた印象はあるが、乗り心地は上々だ。路面の段差も突き上げ感はほとんどなく、e-Platform 3.0の高剛性設計が効果を発揮していると言っていいだろう。
一方でステアリングはやや緩慢な印象で、コーナーでは若干多めにステアリングを切ることを強いられる印象だ。ただ、操舵感は軽めにできており、ボディの見切りの良さも手伝って、駐車を含む市街地での操作は楽に行えそうだ。
アジア勢のEV攻勢が日本のEV市場の大きな刺激に
乗用車のEVで日本に初参入するBYDは、2023年中にこのATTO3を含め、多彩なライフスタイルに合わせたe-Compact『DOLPHIN(ドルフィン)』、最新技術を結集したハイエンドなe-Sedan『SEAL(シール)』の計3車種を投入する。いずれも価格は未発表だが、説明員によれば日本市場で競争力のある価格帯になる見込みだという。韓国ヒョンデに続き、相次ぐアジア勢のEV攻勢は日本のEV市場にとって大きな刺激となることは間違いないだろう。
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