【BMW 7シリーズ 海外試乗】フラッグシップでありドライバーズカー。『i7』はひとつの理想型だ…石井昌道
BMWのフラグシップサルーン、 『7シリーズ』がフルモデルチェンジを受けた。7代目となる新型は日本でも2022年7月1日に発表されており受注も開始。間もなく納車も開始されるが、一足先に米カリフォルニア・パームスプリングで試乗してきた。
◆贅を尽くしたショーファードリブンだが、ドライバーズカーでもあるはず
フラッグシップだけあって、いつの時代も最新技術や目新しい装備、新機軸のデザインなどが投入される7シリーズだが、今度の新型もトピックスには事欠かない。まず目をひくのがフロントマスクだ。古くは左右それぞれ丸目2灯の計4灯だったヘッドライトだったが、いまでは環状のシグネチャーを2回繰り返すツイン・サキュラーとして伝統を引き継いでおり、新型7シリーズではここにスワロフスキー製クリスタルを用いている。大型のキドニーグリルは縁が夜間に光るようになっていて、これでもかというほど主張の強い顔つきだ。
プロポーションはクーペライクなどではなく、伝統的なサルーンそのもので、すべてのモデルが従来のロングホイールベース仕様。全長5391mm、ホイールベース3215mmと長大で、いかに後席を重視しているかがわかるだろう。そこには8K対応、31インチの巨大なBMWシアター・スクリーンが備わる。後部座席にシェードを閉じれば、まさにシアター。エグゼクティブ・ラウンド・シートを選択すれば助手席を前方に押しやって足を伸ばし、42度ものリクライニングで、この上なくくつろげる空間になる。贅沢を極めたショーファードリブンとなっているが、BMWなのだからドライバーズカーでもあるはずだ。
新型7シリーズのパワートレーンは多種多様で、トップモデルは電気自動車の『i7』。グローバルではプラグインハイブリッド、ガソリン/ディーゼルのマイルドハイブリッドが用意されるが、日本導入モデルは前後アクスルにモーターを搭載して4WDとした「i7 xDrive60」、ガソリンの3.0リットル直列6気筒ターボである「740i」、ディーゼルの3.0リットル直列6気筒ターボの「740d」となっている。今回試乗に用意されたモデルは「i7 xDrive60」とガソリン4.4リットルV型8気筒ツインターボの「760i xDrive」の2車で、後者は日本に導入されないが、目新しいi7との比較対象という意味もあって760i xDriveのステアリングも握った。
◆3215mmのロングホイールベースとは信じられないほど俊敏な動き
V8ツインターボはトルクに余裕があるゆえ、普通に走らせているかぎりは2000rpm前後で事足りて静粛性が保たれてエンジンの存在をほとんど感じさせない。その一方でアクセルを踏み込めばサウンドが盛り上がり、待ってましたとばかりに弾けるような加速を披露する。そのホットなフィーリングは、よく出来た内燃機関ならではのもので、思わず頬がほころぶ。
シャシー性能も秀逸だ。21インチの大径タイヤを履いているのにゴツゴツ感はなく、荒れた路面でもしなやかな足さばきで常に快適。それでいてソフトすぎない適度に引き締まった感覚があってスポーティな走りをも堪能させてくれそうな予感があるのがBMWらしいところだ。実際にワインディングロードでは3215mmものロングホイールベースであることが信じられないぐらいに俊敏な動きだった。
ステアリング操作に対する正確性も高いので道幅が狭いツイスティなコーナーでも自信を持って走れる。そういった場面でも嫌な硬さはないのだが、ロールは極めて少なくフラットライド。エアサスペンション、可変式のダンパー、スタビライザーなどが高度なシャシー性能を支えているのだが、なかでもアクティブ・ロール・コンフォート機能がコーナーでの安心感に繋がっているようだ。
i7に乗り換えると760i以上に静かだった。エンジンがないのだから当たり前ではあるが、その分、耳につきやすくなるロードノイズ・パタンノイズや風切り音なども徹底的に封じ込められていてじつに心地いい。『iX』も静粛性の高さに驚かされたが、それと同等だ。
0−100km/h加速は4.7秒で760i xDriveの4.2秒にはかなわないのだが、電気モーターならではのレスポンスの良さで同等以上のパフォーマンスに感じられ、ドライバビリティのでは上回る。加速・減速を自在に操れる感覚が高いのだ。
◆i7はひとつの理想型と言える
それ以上に驚きなのはシャシー性能だ。760i xDriveでもコーナリング性能はクラス随一だが、低重心かつ慣性マスの少ない電気自動車だからさらに高みにある。760i xDriveはコーナーで速度を高めていくと、わずかにアンダーステア気味に感じられるが、i7は常にスムーズに曲がっていく。限界がどこにあるのか想像つかないぐらいだ。
さらに、快適性でも差があった。荒れた路面を走らせると760i xDriveはプルプルとした微振動が感知されることがあるが、i7では皆無。エンジンマウントの揺動がプルプルの要因だろう。単体で乗っている限りは760i xDriveでも十二分に快適だが、電気自動車のi7と乗り比べてしまうと差を感じてしまうのだ。
内燃機関の躍動的な加速は魅力だが、冷静に比較するとパワートレーンでもシャシー性能でも電気自動車のほうが実力は高いと言わざるを得ない。高級車らしい快適性、ハンドリングなどで有利なのだ。フラッグシップサルーンでありながらドライバーズカーとしても名高い7シリーズとの相性は抜群。i7はひとつの理想型と言えるのだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
石井昌道|モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストに。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイクレースなどモータースポーツへの参戦も豊富。ドライビングテクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。
◆贅を尽くしたショーファードリブンだが、ドライバーズカーでもあるはず
フラッグシップだけあって、いつの時代も最新技術や目新しい装備、新機軸のデザインなどが投入される7シリーズだが、今度の新型もトピックスには事欠かない。まず目をひくのがフロントマスクだ。古くは左右それぞれ丸目2灯の計4灯だったヘッドライトだったが、いまでは環状のシグネチャーを2回繰り返すツイン・サキュラーとして伝統を引き継いでおり、新型7シリーズではここにスワロフスキー製クリスタルを用いている。大型のキドニーグリルは縁が夜間に光るようになっていて、これでもかというほど主張の強い顔つきだ。
プロポーションはクーペライクなどではなく、伝統的なサルーンそのもので、すべてのモデルが従来のロングホイールベース仕様。全長5391mm、ホイールベース3215mmと長大で、いかに後席を重視しているかがわかるだろう。そこには8K対応、31インチの巨大なBMWシアター・スクリーンが備わる。後部座席にシェードを閉じれば、まさにシアター。エグゼクティブ・ラウンド・シートを選択すれば助手席を前方に押しやって足を伸ばし、42度ものリクライニングで、この上なくくつろげる空間になる。贅沢を極めたショーファードリブンとなっているが、BMWなのだからドライバーズカーでもあるはずだ。
新型7シリーズのパワートレーンは多種多様で、トップモデルは電気自動車の『i7』。グローバルではプラグインハイブリッド、ガソリン/ディーゼルのマイルドハイブリッドが用意されるが、日本導入モデルは前後アクスルにモーターを搭載して4WDとした「i7 xDrive60」、ガソリンの3.0リットル直列6気筒ターボである「740i」、ディーゼルの3.0リットル直列6気筒ターボの「740d」となっている。今回試乗に用意されたモデルは「i7 xDrive60」とガソリン4.4リットルV型8気筒ツインターボの「760i xDrive」の2車で、後者は日本に導入されないが、目新しいi7との比較対象という意味もあって760i xDriveのステアリングも握った。
◆3215mmのロングホイールベースとは信じられないほど俊敏な動き
V8ツインターボはトルクに余裕があるゆえ、普通に走らせているかぎりは2000rpm前後で事足りて静粛性が保たれてエンジンの存在をほとんど感じさせない。その一方でアクセルを踏み込めばサウンドが盛り上がり、待ってましたとばかりに弾けるような加速を披露する。そのホットなフィーリングは、よく出来た内燃機関ならではのもので、思わず頬がほころぶ。
シャシー性能も秀逸だ。21インチの大径タイヤを履いているのにゴツゴツ感はなく、荒れた路面でもしなやかな足さばきで常に快適。それでいてソフトすぎない適度に引き締まった感覚があってスポーティな走りをも堪能させてくれそうな予感があるのがBMWらしいところだ。実際にワインディングロードでは3215mmものロングホイールベースであることが信じられないぐらいに俊敏な動きだった。
ステアリング操作に対する正確性も高いので道幅が狭いツイスティなコーナーでも自信を持って走れる。そういった場面でも嫌な硬さはないのだが、ロールは極めて少なくフラットライド。エアサスペンション、可変式のダンパー、スタビライザーなどが高度なシャシー性能を支えているのだが、なかでもアクティブ・ロール・コンフォート機能がコーナーでの安心感に繋がっているようだ。
i7に乗り換えると760i以上に静かだった。エンジンがないのだから当たり前ではあるが、その分、耳につきやすくなるロードノイズ・パタンノイズや風切り音なども徹底的に封じ込められていてじつに心地いい。『iX』も静粛性の高さに驚かされたが、それと同等だ。
0−100km/h加速は4.7秒で760i xDriveの4.2秒にはかなわないのだが、電気モーターならではのレスポンスの良さで同等以上のパフォーマンスに感じられ、ドライバビリティのでは上回る。加速・減速を自在に操れる感覚が高いのだ。
◆i7はひとつの理想型と言える
それ以上に驚きなのはシャシー性能だ。760i xDriveでもコーナリング性能はクラス随一だが、低重心かつ慣性マスの少ない電気自動車だからさらに高みにある。760i xDriveはコーナーで速度を高めていくと、わずかにアンダーステア気味に感じられるが、i7は常にスムーズに曲がっていく。限界がどこにあるのか想像つかないぐらいだ。
さらに、快適性でも差があった。荒れた路面を走らせると760i xDriveはプルプルとした微振動が感知されることがあるが、i7では皆無。エンジンマウントの揺動がプルプルの要因だろう。単体で乗っている限りは760i xDriveでも十二分に快適だが、電気自動車のi7と乗り比べてしまうと差を感じてしまうのだ。
内燃機関の躍動的な加速は魅力だが、冷静に比較するとパワートレーンでもシャシー性能でも電気自動車のほうが実力は高いと言わざるを得ない。高級車らしい快適性、ハンドリングなどで有利なのだ。フラッグシップサルーンでありながらドライバーズカーとしても名高い7シリーズとの相性は抜群。i7はひとつの理想型と言えるのだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
石井昌道|モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストに。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイクレースなどモータースポーツへの参戦も豊富。ドライビングテクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。
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