【メルセデスAMG SL 新型試乗】そのすべてに“新時代の到来”を思わせる完成度…野口優
メルセデスベンツの『SL』と聞いて感情が高まる世代にあたる筆者にとって、そのニューモデルの誕生は期待しかなった。というのも、新型はブランド名に“メルセデスAMG”を掲げているように『GTシリーズ』などと同様、超高性能を得意とする開発陣が手掛け、シャシーも一新、伝説のレーシングカーである『300SL』譲りのパナメリカーナグリルで主張するなどすべてが刷新されたところに、歴代のSLが見せてきた以上の強い意思を感じてならなかったからだ。
◆ソフトトップに+2シート、SLらしさが前面に
まず、なんと言っても最初に目につくのがルーフにソフトトップを採用したことだろう。5代目(R230型)から続いたバリオルーフと呼ばれる電動メタルトップは機能性や安心感が高かったとはいえ、高級車としては保守的に映り、重量も重いのが難点に思えていたからソフトトップの復活は大賛成。それに、SL(スーパーライト)の名にも相応しく、カラーによっては洒落ていて粋だ。開閉に要する時間は約15秒と素早く、走行中の作動も60km/hまで可能としているからその造りは相当こだわっているのは間違いない。
復活という意味では、+2シートも歓迎したい部分。昔のSLのように、あくまでも緊急用という極小サイズだから大人が座ることはほぼ不可能だが、バッグなど荷物の置き場として有り難いスペースが設けられている。これこそSLらしさをインテリアで感じる部分かもしれない。
◆ついにSLもダウンサイジングの時代か
今回、日本に上陸したモデルは「SL43」。最新のAMGをよく知る人ならお察しだろうが、搭載されるエンジンは、「C43」などと同様の2リットル直列4気筒ターボである。
「ついにSLもダウンサイジングの時代か……」と、“SL=V8”を連想する世代にとっては些かイメージもダウンしそうだが、最高出力は381ps、最大トルク480Nmと必要にして十分。だが、この手のスポーツモデルをお好みの層にとっては数値的にはそれほど響かないかもしれないし、昨今は競合車も多い。しかし、メルセデスに限らず、最近の新型エンジンの多くは数値と印象が比例しないものが多いから、これだけで判断できないのも事実だ。
M139と呼ばれるこの直列4気筒ターボエンジンは、F1由来のエレクトリック・エキゾーストガス・ターボチャージャーを市販車でははじめて採用しているのが特徴。タービンとコンプレッサーの間に設置された電気モーターが電子制御でターボチャージャーの軸を駆動してコンプレッサーを動かすため、本来なら過給しないような低回転域でも過給し、アクセルオフやブレーキング時などでもブーストを維持するため、ターボラグと無縁な状態で強力な加速を継続する。
ちなみにこのターボチャージャーは、マイルドハイブリッドとしても機能する48V電気システムによるもので、スタートストップ機能の他、回生ブレーキによる高効率化も行われる。これもSLとって大きなトピックと言えるだろう。
◆とにかく軽快!「これ本当にSLなのか?」
その走りは、筆者にとっては衝撃的だった。とにかく軽快!「これ本当にSLなのか?」と疑いたくなるほど、常に俊敏で軽さを伴う印象だ。エンジンもレスポンスに優れ鋭く、低回転域から扱いやすさを実感する。ただ、高回転域に近づくとやや鈍り始め、さすがにかつてのV8のようなパワー感を期待してはいけないと痛感。さらに言えば、速いとはいえ、良くも悪くも4気筒であることは隠せない印象だった。
まぁ、これは時代の流れから考えれば仕方がないが、それでも大きな不満にも感じないという、低~中回転域での実用性を考慮すれば差し引きゼロと思えたのは本当だ。0-100km/h加速は4.9秒、最高速度は275km/hと謳われているから十分に速いのは確かである。
シャシー周りの完成度も、さすがはメルセデスと唸るほど。新たに開発された前後5リンク式のサスペンションシステムは、リンクとステアリングナックル、ハブキャリアなどに鍛造アルミニウムを使用しているだけにバネ下重量が抑えられていることから軽快感を生む理由に繋がっている。またプレッシャーリリーフバルブを各ダンパーに2個ずつ与えられた電子制御アダプティブダンパーは、伸び側も縮み側も無段階に制御するため、多少荒れた路面でもあってもビクともしない。ましてやAMGダイナミクスと呼ばれる制御システムによるコーナリング時の安定感も見事で、快適性もそのまま維持するという、褒めずにはいられないほどの仕上がりだった。
◆そのすべてに新時代の到来を思わせる完成度
SLはその時代を象徴するほど常に存在感は高かったが、今回の新型はそのすべてに新時代の到来を思わせる完成度であることは確か。かつてSLに憧れていた世代にとっては戸惑うフィーリングかもしれないが、これが時代というものだし、内容からすればこの1648万円(税込)というプライスに見合うだけの条件は揃っている。
このあとリアアクスルステアを備えたAWDシステムを採用するV8モデルが日本に導入されるかは定かではないが、SL43が見せるこの軽快感は他では絶対に味わえないだろう。それほど身のこなしが独特で、新しい魅力に気づかせてくれた1台だと思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
野口 優|モータージャーナリスト
1967年 東京都生まれ。1993年に某輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。後に三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務し、2008年から同誌の編集長に就任。2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。25年以上にも渡る経験を活かしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動中。
◆ソフトトップに+2シート、SLらしさが前面に
まず、なんと言っても最初に目につくのがルーフにソフトトップを採用したことだろう。5代目(R230型)から続いたバリオルーフと呼ばれる電動メタルトップは機能性や安心感が高かったとはいえ、高級車としては保守的に映り、重量も重いのが難点に思えていたからソフトトップの復活は大賛成。それに、SL(スーパーライト)の名にも相応しく、カラーによっては洒落ていて粋だ。開閉に要する時間は約15秒と素早く、走行中の作動も60km/hまで可能としているからその造りは相当こだわっているのは間違いない。
復活という意味では、+2シートも歓迎したい部分。昔のSLのように、あくまでも緊急用という極小サイズだから大人が座ることはほぼ不可能だが、バッグなど荷物の置き場として有り難いスペースが設けられている。これこそSLらしさをインテリアで感じる部分かもしれない。
◆ついにSLもダウンサイジングの時代か
今回、日本に上陸したモデルは「SL43」。最新のAMGをよく知る人ならお察しだろうが、搭載されるエンジンは、「C43」などと同様の2リットル直列4気筒ターボである。
「ついにSLもダウンサイジングの時代か……」と、“SL=V8”を連想する世代にとっては些かイメージもダウンしそうだが、最高出力は381ps、最大トルク480Nmと必要にして十分。だが、この手のスポーツモデルをお好みの層にとっては数値的にはそれほど響かないかもしれないし、昨今は競合車も多い。しかし、メルセデスに限らず、最近の新型エンジンの多くは数値と印象が比例しないものが多いから、これだけで判断できないのも事実だ。
M139と呼ばれるこの直列4気筒ターボエンジンは、F1由来のエレクトリック・エキゾーストガス・ターボチャージャーを市販車でははじめて採用しているのが特徴。タービンとコンプレッサーの間に設置された電気モーターが電子制御でターボチャージャーの軸を駆動してコンプレッサーを動かすため、本来なら過給しないような低回転域でも過給し、アクセルオフやブレーキング時などでもブーストを維持するため、ターボラグと無縁な状態で強力な加速を継続する。
ちなみにこのターボチャージャーは、マイルドハイブリッドとしても機能する48V電気システムによるもので、スタートストップ機能の他、回生ブレーキによる高効率化も行われる。これもSLとって大きなトピックと言えるだろう。
◆とにかく軽快!「これ本当にSLなのか?」
その走りは、筆者にとっては衝撃的だった。とにかく軽快!「これ本当にSLなのか?」と疑いたくなるほど、常に俊敏で軽さを伴う印象だ。エンジンもレスポンスに優れ鋭く、低回転域から扱いやすさを実感する。ただ、高回転域に近づくとやや鈍り始め、さすがにかつてのV8のようなパワー感を期待してはいけないと痛感。さらに言えば、速いとはいえ、良くも悪くも4気筒であることは隠せない印象だった。
まぁ、これは時代の流れから考えれば仕方がないが、それでも大きな不満にも感じないという、低~中回転域での実用性を考慮すれば差し引きゼロと思えたのは本当だ。0-100km/h加速は4.9秒、最高速度は275km/hと謳われているから十分に速いのは確かである。
シャシー周りの完成度も、さすがはメルセデスと唸るほど。新たに開発された前後5リンク式のサスペンションシステムは、リンクとステアリングナックル、ハブキャリアなどに鍛造アルミニウムを使用しているだけにバネ下重量が抑えられていることから軽快感を生む理由に繋がっている。またプレッシャーリリーフバルブを各ダンパーに2個ずつ与えられた電子制御アダプティブダンパーは、伸び側も縮み側も無段階に制御するため、多少荒れた路面でもあってもビクともしない。ましてやAMGダイナミクスと呼ばれる制御システムによるコーナリング時の安定感も見事で、快適性もそのまま維持するという、褒めずにはいられないほどの仕上がりだった。
◆そのすべてに新時代の到来を思わせる完成度
SLはその時代を象徴するほど常に存在感は高かったが、今回の新型はそのすべてに新時代の到来を思わせる完成度であることは確か。かつてSLに憧れていた世代にとっては戸惑うフィーリングかもしれないが、これが時代というものだし、内容からすればこの1648万円(税込)というプライスに見合うだけの条件は揃っている。
このあとリアアクスルステアを備えたAWDシステムを採用するV8モデルが日本に導入されるかは定かではないが、SL43が見せるこの軽快感は他では絶対に味わえないだろう。それほど身のこなしが独特で、新しい魅力に気づかせてくれた1台だと思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
野口 優|モータージャーナリスト
1967年 東京都生まれ。1993年に某輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。後に三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務し、2008年から同誌の編集長に就任。2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。25年以上にも渡る経験を活かしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動中。
最新ニュース
-
-
「クルマファンを増やす」ため茨城のトヨタディーラーが結集! その核となる「茨城ワクドキクラブ」が目指す先
2024.11.19
-
-
-
NISMOフェスティバル、ブランド40周年で富士スピードウェイに歴代レーシングカー集結 12月1日開催
2024.11.19
-
-
-
レクサスの3列シート大型SUV『TX』に「Fスポーツハンドリング」追加
2024.11.19
-
-
-
トムス、キッズEVカート無料体験イベント開催、全日本カート選手権EV部門最終戦で
2024.11.18
-
-
-
アキュラ、新型コンパクトSUV『ADX』発表…1.5リットルVTECターボ搭載
2024.11.18
-
-
-
イチオシ機能の“実効空力”は本物なのか? ホンダアクセス「モデューロ」が30周年!
2024.11.18
-
-
-
ロータリー搭載計画もあった、2代目『シルビア』の“クリスタルな輝き”【懐かしのカーカタログ】
2024.11.18
-
最新ニュース
-
-
「クルマファンを増やす」ため茨城のトヨタディーラーが結集! その核となる「茨城ワクドキクラブ」が目指す先
2024.11.19
-
-
-
レクサスの3列シート大型SUV『TX』に「Fスポーツハンドリング」追加
2024.11.19
-
-
-
NISMOフェスティバル、ブランド40周年で富士スピードウェイに歴代レーシングカー集結 12月1日開催
2024.11.19
-
-
-
トムス、キッズEVカート無料体験イベント開催、全日本カート選手権EV部門最終戦で
2024.11.18
-
-
-
アキュラ、新型コンパクトSUV『ADX』発表…1.5リットルVTECターボ搭載
2024.11.18
-
-
-
イチオシ機能の“実効空力”は本物なのか? ホンダアクセス「モデューロ」が30周年!
2024.11.18
-
MORIZO on the Road