「パフォーマンスダンパー」をテストドライバーが検証、「乗り心地」と「揺れの抑制」効果は実感できるのか?
「パフォーマンスダンパー」をご存知だろうか。トヨタ、レクサス、ホンダなどに純正採用され、操縦安定性や乗り心地、振動騒音を低減するものとして、アフターパーツでの取り扱いも拡大している画期的なパーツだ。これを開発しているのが、バイクメーカーのヤマハ発動機。現在はクルマだけでなく、バイクへの採用も拡大している。このパフォーマンスダンパー、数値的なスペック向上は事実だとしても果たしてその効果をドライバー、ライダーは体感できるのか。
今回、プロレーサーでテストライダー・ドライバーを務める丸山浩氏が、パフォーマンスダンパーを装着したトヨタ『クラウン』、日産『セレナ』、そしてヤマハ『MT-25』に試乗し、検証をおこなった。
◆「効果は確実にある!」と言い切るのは難しい?
今回、パフォーマンスダンパーをテストし、その効果のほどを確かめる機会を得た。試乗の方法は、装着車両と非装着車両を乗り換えるスタイル。私としては、まったくの同一車両で装着/非装着の違いを確かめたかったのだが、そう簡単に脱着はできないとのことで、諦めざるを得なかったのがまずは残念だ。
そもそもヤマハ・パフォーマンスダンパーは、2001年の「クラウン・アスリートVX」に搭載されて以来、軽自動車から高級車まで200万本を展開しているそうだ。簡単に言えば、車やバイクの車体に装着する「衝撃吸収器」。ヤマハの車体制振技術を導入し車体の無駄な振動を抑え、より気持ちのいい走りを実現するパーツだという。
今回のテスト車のクラウンにはフロントバンパー奥とトランクに、セレナにはフロント&リアバンパーの奥にそれぞれパフォーマンスダンパーが装着されていた。まずはクラウンで装着車と非装着車の2台用意して乗り比べると、パフォーマンスダンパーの効果は確実にある…、といった「絶対言い切り」は難しい。しかしギャップ通過時に車体に伝わってくる音が「ドスン」から「ドン」になった……。振動が車体に残るような不快な余韻がなくなったような気がする。
微妙とはいえ、確実に違いを感じるのだが、それがパフォーマンスダンパーの恩恵なのか、それとも車両の個体差に起因するものなのかが、正確な評価を行うテストドライバーとして確実に言い切るには、やはりテスト条件を揃えたいところ。
テストにあたっては、装着車両と非装着車両のタイヤ銘柄や製造年月までチェックさせてもらった。クラウンは同じだったが、同じ日にテストしたセレナは、2台でタイヤの製造年月が異なっていた。本音を言えば、異なる2台でテストするならオイル銘柄やその交換タイミングでも静粛性は変わる。私が感じたパフォーマンスダンパーの効果は、タイヤや油脂類の差や車両の個体差が気になってしまうレベルであり、誰しもが体感しているタイヤやオイル交換後の上質感を感じさせてくれるようなものだった。
◆「乗り心地」と「ムダな揺れを抑える」は両立できるか
時間的には数十分のテストで的確な効果を述べることは難しいが、できるだけ先入観を捨て、車両の個体差を加味しながらパフォーマンスダンパーを評価すると、例え微妙ではあってもその違いは出る。クラウンやセレナでテストした結果、乗り心地を維持したまま無駄な揺れが抑えられていた。
本来サスペンション本体、および足まわりのゴムブッシュ類、スタビライザーの働きで「乗り心地」と「ムダな揺れを抑える」を同時に実現することは相反するセッティングになる。ムダな揺れを抑えたいなら、サスペンションの減衰を強め、またエンジン、足まわりのゴムブッシュは強化、もしくはピロボール化する。当然、前後のサスペンションに装着されるスタビライザー定数をあげることも安定性化に役立つ。しかし確実に乗り心地が悪くなるだろう。
逆もまたしかりだ。しかしパフォーマンスダンパーの効果は、その両方のメリットを実現する働きだ。乗り心地を犠牲にせずに、ムダな揺れや動きを抑制する。これがあれば、車の車体開発時の車体剛性、そしてセッティングを根本から考え直しても良いくらいだ。
ちなみにパフォーマンスダンパーの謳い文句に「ドアを閉める音が上質になります」と書かれている。これならばテストしやすい。乗らなくても、2台を並べて「バムッ」「バムッ」。何度も横で開け閉めをするが、ここはさすがクラウン、どちらも上質極まりない開閉音であり、その違いを表現することはなかなか難しかった。
◆クルマ以上に繊細、バイクは直進安定性に効果が
そして近年パフォーマンスダンパーはバイク用もラインアップされている。二輪レースファンなら、2003年にノリックこと阿部典史さんがヤマハ『YZR-M1』でテストしていたことを覚えている方もいるかもしれない。バイクの場合は、エンジンと車体を締結する形で装着され、より安定した走りを実現する狙いだ。
テストは、車同様にパフォーマンスダンパーが装着されたMT-25と非装着車を乗り換えながらテスト走行を繰り返し乗り換えていく。車で感じられるギャップ通過時の収まりの良さは車ほど感じない。どちらかと言えば、ハンドリングの安定性に影響を感じさせる。直線を走っているときに、わざと小刻みにステアリングを揺さぶってみる。するとパフォーマンスダンパー装着車は、非装着車に比べ、車体をしならせるような揺り返しが少ない。直進安定性が高まっていたようだ。
バイクの場合、ダンパー装着箇所を車体の何処にもって行くかは相当に繊細。車以上の難しさがあるのではないか。ヤマハの開発者との会話をまとめると、パフォーマンスダンパーを装着すると車体のしなりが多少なりとも抑制され、安定性が増す方向に作用する。
しかし、ただ装着すればいいというものではない。装着位置や形態によっては、必要な箇所の動きが抑制されてしまい、“ハンドリングが重くなる”など、思わしい効果が得られないこともあるのだとか。レーシングマシンのセッティングパーツのような、繊細で高度な煮詰めが必要といった様子だった。
また軽量で安価なバイクの場合、相対的にパフォーマンスダンパーの重量が少なからず影響するし、コストパフォーマンスは、車より低下してしまう。また、スペースがないため、装着できる場所も限られる。それだけに車種ごとに綿密なテストを繰り返しながら、最適な装着方法を模索しなければならない。
それでもバイク用ラインナップを着実に増やしている。車での効果がレクサスに認められているパフォーマンスダンパーだけに、バイク用も今後、さらなる開発とラインナップの拡充に期待したいところだ。
丸山浩|プロレーサー、テストライダー・ドライバー
1988年から2輪専門誌のテスターとして活動する傍ら、国際A級ライダーとして全日本ロード、鈴鹿8耐などに参戦。97年より4輪レースシーンにもチャレンジ。スーパー耐久シリーズで優勝を収めるなど、現在でも2輪4輪レースに参戦し続けている。また同時にサーキット走行会やレースイベントをプロデュース。地上波で放送された「MOTOR STATION TV」の放送製作を皮切りに、ビデオ、DVD、BS放送、そして現在はYouTubeでコンテンツを制作、放映している。また自ら興したレースメンテナンス会社、株式会社WITH MEの現会長として、自社製品、販売車両のテストライド、ドライブを日々行っている。身長は168cm。
今回、プロレーサーでテストライダー・ドライバーを務める丸山浩氏が、パフォーマンスダンパーを装着したトヨタ『クラウン』、日産『セレナ』、そしてヤマハ『MT-25』に試乗し、検証をおこなった。
◆「効果は確実にある!」と言い切るのは難しい?
今回、パフォーマンスダンパーをテストし、その効果のほどを確かめる機会を得た。試乗の方法は、装着車両と非装着車両を乗り換えるスタイル。私としては、まったくの同一車両で装着/非装着の違いを確かめたかったのだが、そう簡単に脱着はできないとのことで、諦めざるを得なかったのがまずは残念だ。
そもそもヤマハ・パフォーマンスダンパーは、2001年の「クラウン・アスリートVX」に搭載されて以来、軽自動車から高級車まで200万本を展開しているそうだ。簡単に言えば、車やバイクの車体に装着する「衝撃吸収器」。ヤマハの車体制振技術を導入し車体の無駄な振動を抑え、より気持ちのいい走りを実現するパーツだという。
今回のテスト車のクラウンにはフロントバンパー奥とトランクに、セレナにはフロント&リアバンパーの奥にそれぞれパフォーマンスダンパーが装着されていた。まずはクラウンで装着車と非装着車の2台用意して乗り比べると、パフォーマンスダンパーの効果は確実にある…、といった「絶対言い切り」は難しい。しかしギャップ通過時に車体に伝わってくる音が「ドスン」から「ドン」になった……。振動が車体に残るような不快な余韻がなくなったような気がする。
微妙とはいえ、確実に違いを感じるのだが、それがパフォーマンスダンパーの恩恵なのか、それとも車両の個体差に起因するものなのかが、正確な評価を行うテストドライバーとして確実に言い切るには、やはりテスト条件を揃えたいところ。
テストにあたっては、装着車両と非装着車両のタイヤ銘柄や製造年月までチェックさせてもらった。クラウンは同じだったが、同じ日にテストしたセレナは、2台でタイヤの製造年月が異なっていた。本音を言えば、異なる2台でテストするならオイル銘柄やその交換タイミングでも静粛性は変わる。私が感じたパフォーマンスダンパーの効果は、タイヤや油脂類の差や車両の個体差が気になってしまうレベルであり、誰しもが体感しているタイヤやオイル交換後の上質感を感じさせてくれるようなものだった。
◆「乗り心地」と「ムダな揺れを抑える」は両立できるか
時間的には数十分のテストで的確な効果を述べることは難しいが、できるだけ先入観を捨て、車両の個体差を加味しながらパフォーマンスダンパーを評価すると、例え微妙ではあってもその違いは出る。クラウンやセレナでテストした結果、乗り心地を維持したまま無駄な揺れが抑えられていた。
本来サスペンション本体、および足まわりのゴムブッシュ類、スタビライザーの働きで「乗り心地」と「ムダな揺れを抑える」を同時に実現することは相反するセッティングになる。ムダな揺れを抑えたいなら、サスペンションの減衰を強め、またエンジン、足まわりのゴムブッシュは強化、もしくはピロボール化する。当然、前後のサスペンションに装着されるスタビライザー定数をあげることも安定性化に役立つ。しかし確実に乗り心地が悪くなるだろう。
逆もまたしかりだ。しかしパフォーマンスダンパーの効果は、その両方のメリットを実現する働きだ。乗り心地を犠牲にせずに、ムダな揺れや動きを抑制する。これがあれば、車の車体開発時の車体剛性、そしてセッティングを根本から考え直しても良いくらいだ。
ちなみにパフォーマンスダンパーの謳い文句に「ドアを閉める音が上質になります」と書かれている。これならばテストしやすい。乗らなくても、2台を並べて「バムッ」「バムッ」。何度も横で開け閉めをするが、ここはさすがクラウン、どちらも上質極まりない開閉音であり、その違いを表現することはなかなか難しかった。
◆クルマ以上に繊細、バイクは直進安定性に効果が
そして近年パフォーマンスダンパーはバイク用もラインアップされている。二輪レースファンなら、2003年にノリックこと阿部典史さんがヤマハ『YZR-M1』でテストしていたことを覚えている方もいるかもしれない。バイクの場合は、エンジンと車体を締結する形で装着され、より安定した走りを実現する狙いだ。
テストは、車同様にパフォーマンスダンパーが装着されたMT-25と非装着車を乗り換えながらテスト走行を繰り返し乗り換えていく。車で感じられるギャップ通過時の収まりの良さは車ほど感じない。どちらかと言えば、ハンドリングの安定性に影響を感じさせる。直線を走っているときに、わざと小刻みにステアリングを揺さぶってみる。するとパフォーマンスダンパー装着車は、非装着車に比べ、車体をしならせるような揺り返しが少ない。直進安定性が高まっていたようだ。
バイクの場合、ダンパー装着箇所を車体の何処にもって行くかは相当に繊細。車以上の難しさがあるのではないか。ヤマハの開発者との会話をまとめると、パフォーマンスダンパーを装着すると車体のしなりが多少なりとも抑制され、安定性が増す方向に作用する。
しかし、ただ装着すればいいというものではない。装着位置や形態によっては、必要な箇所の動きが抑制されてしまい、“ハンドリングが重くなる”など、思わしい効果が得られないこともあるのだとか。レーシングマシンのセッティングパーツのような、繊細で高度な煮詰めが必要といった様子だった。
また軽量で安価なバイクの場合、相対的にパフォーマンスダンパーの重量が少なからず影響するし、コストパフォーマンスは、車より低下してしまう。また、スペースがないため、装着できる場所も限られる。それだけに車種ごとに綿密なテストを繰り返しながら、最適な装着方法を模索しなければならない。
それでもバイク用ラインナップを着実に増やしている。車での効果がレクサスに認められているパフォーマンスダンパーだけに、バイク用も今後、さらなる開発とラインナップの拡充に期待したいところだ。
丸山浩|プロレーサー、テストライダー・ドライバー
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