【アルファロメオ ステルヴィオ Ti 新型試乗】往年の名車の名も、今やベースグレードに…中村孝仁
アルファロメオ『ステルヴィオ』にディーゼルエンジンが搭載されて日本に導入されたのは2019年のことだった。そして同じディーゼルは今往年のアルファロメオの名車と同じ「Ti」の名で販売される。
このTiが日本に導入されたのは2022年の3月。エンジンは従来のディーゼルと同じ2.2リットル直4ターボディーゼルである。ステランティス傘下のVMモトーリが生産するこのエンジンは、ステランティス系の多くのモデルで使われるエンジンではあるが、流石はアルファロメオ。この『ジュリア』/ステルヴィオ系のエンジンのみ、ブロックがダイキャストアルミ製で他のエンジンは鋳鉄ブロックが使われているのだ。
それにしてもかつての高性能版のグレード名だったTiも今やベースグレードに格下げで、同じディーゼル搭載車でもTiにはLSDの装備がなかったりストラットタワーバーが省かれていたりと、走りのイメージは少し変わる可能性がある。
◆キレッキレになったステアフィール
2019年当時から装備も変わった。とりわけADAS系は充実し、エクステリアではルーフレールが姿を消してすっきりとした印象に変貌している。前回(と言っても3年前)ディーゼルに乗った時は18インチのタイヤを装着していたが、今はガソリン仕様同様20インチが装着されていた。それだからというわけでもないだろうが、当時少しマイルドと感じたステアフィールはやはり相当にキレッキレである。
ただこのステアリング、扱い方によってクルマの挙動がだいぶ変わる。低速で大人しく走っている場合は実に従順で一般的ファミリカーレベルに扱い易い。ところが、ステアリングへの入力を速めてやると急激に過激になる。そして高速域では直進させるのに少し気を使う必要があって、長距離では疲れやすいという印象を得た。
こうした性格付けはアルファのアルファたる所以というか、スポーツドライビングに適した設定となっているので、人によってはやはり運転しにくいと感じるかもしれない。
◆ドライブモード次第でスポーツカーの雰囲気に
以前とエンジンが少し違うところは、コーステイング機能を持ったこと。(以前はなかったはずだが)アクセルオフにするとエンジン回転はアイドリングに戻る。高速などではそんなわけだから空走期間を長くとれるので燃費には優しくなる。これにドライブモード“DNA”のAを組み合わせてやれば、きっと燃費は上がるのかもしれない。
ただ、その組み合わせの走りはやはりステルヴィオには似合わない。高速ならまだしも、低速域でアクセルオフを頻繁にやるとアイドリングになるときは良いが、アクセルオンにしたりあるいはブレーキングなどの場合に突然エンジン回転が立ち上がり、いわゆるエンジンブレーキが突如介入してくるような走りは正直鬱陶しいと思った。
このDNA、デフォルトはナチュラル、即ちNであるから、A(アドバンスド・エフィシェンシー)にしたりD(ダイナミック)をチョイスするにはノブを回す必要があるわけだが、このモードはいずれも顕著に走りの違いがある。Aは前述の通りで加速の立ち上がりももっさりとするし、何よりパワー感がない。高速を定常スピードで流しているような時はこれでよいが、いざ前車を追い越そうなどとアクセルに力を込めたところで車速が一向に上がらないという印象を受ける。
Nはまあ日常使いにはこれが適していて力強さもその一端を味わうことができるが、ライバルメーカーのディーゼルと比較してとんがった性格を味わえるかと言えば、そんなことはないレベル。そして最後のDに放り込んでやるとまさに水を得た魚というか、相当なやんちゃぶりを発揮してくれるから、キレッキレのステアリングと共に、まさにスポーツカーに乗っている雰囲気を味わえる。
◆グラチェロと共通でも乗り味は全く違う
それにしてもジョルジョプラットフォームはジープ『グランドチェロキー』と共有。なので足回りは同じだろうと腹下をのぞき込んでみると、フロントサスペンションのロワーアームの取り回しが違っていたり、リアは構造こそ同じようだが、やはりロワーアームがジープは鋳鉄なのに対し、アルファはアルミ製と言った違いを見せる。
乗り味はやはりディーゼルであってもアルファの方がぐっとスポーティーである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務めるほか、テレビ東京の番組「開運なんでも鑑定団」では自動車関連商品の鑑定人も務める。
このTiが日本に導入されたのは2022年の3月。エンジンは従来のディーゼルと同じ2.2リットル直4ターボディーゼルである。ステランティス傘下のVMモトーリが生産するこのエンジンは、ステランティス系の多くのモデルで使われるエンジンではあるが、流石はアルファロメオ。この『ジュリア』/ステルヴィオ系のエンジンのみ、ブロックがダイキャストアルミ製で他のエンジンは鋳鉄ブロックが使われているのだ。
それにしてもかつての高性能版のグレード名だったTiも今やベースグレードに格下げで、同じディーゼル搭載車でもTiにはLSDの装備がなかったりストラットタワーバーが省かれていたりと、走りのイメージは少し変わる可能性がある。
◆キレッキレになったステアフィール
2019年当時から装備も変わった。とりわけADAS系は充実し、エクステリアではルーフレールが姿を消してすっきりとした印象に変貌している。前回(と言っても3年前)ディーゼルに乗った時は18インチのタイヤを装着していたが、今はガソリン仕様同様20インチが装着されていた。それだからというわけでもないだろうが、当時少しマイルドと感じたステアフィールはやはり相当にキレッキレである。
ただこのステアリング、扱い方によってクルマの挙動がだいぶ変わる。低速で大人しく走っている場合は実に従順で一般的ファミリカーレベルに扱い易い。ところが、ステアリングへの入力を速めてやると急激に過激になる。そして高速域では直進させるのに少し気を使う必要があって、長距離では疲れやすいという印象を得た。
こうした性格付けはアルファのアルファたる所以というか、スポーツドライビングに適した設定となっているので、人によってはやはり運転しにくいと感じるかもしれない。
◆ドライブモード次第でスポーツカーの雰囲気に
以前とエンジンが少し違うところは、コーステイング機能を持ったこと。(以前はなかったはずだが)アクセルオフにするとエンジン回転はアイドリングに戻る。高速などではそんなわけだから空走期間を長くとれるので燃費には優しくなる。これにドライブモード“DNA”のAを組み合わせてやれば、きっと燃費は上がるのかもしれない。
ただ、その組み合わせの走りはやはりステルヴィオには似合わない。高速ならまだしも、低速域でアクセルオフを頻繁にやるとアイドリングになるときは良いが、アクセルオンにしたりあるいはブレーキングなどの場合に突然エンジン回転が立ち上がり、いわゆるエンジンブレーキが突如介入してくるような走りは正直鬱陶しいと思った。
このDNA、デフォルトはナチュラル、即ちNであるから、A(アドバンスド・エフィシェンシー)にしたりD(ダイナミック)をチョイスするにはノブを回す必要があるわけだが、このモードはいずれも顕著に走りの違いがある。Aは前述の通りで加速の立ち上がりももっさりとするし、何よりパワー感がない。高速を定常スピードで流しているような時はこれでよいが、いざ前車を追い越そうなどとアクセルに力を込めたところで車速が一向に上がらないという印象を受ける。
Nはまあ日常使いにはこれが適していて力強さもその一端を味わうことができるが、ライバルメーカーのディーゼルと比較してとんがった性格を味わえるかと言えば、そんなことはないレベル。そして最後のDに放り込んでやるとまさに水を得た魚というか、相当なやんちゃぶりを発揮してくれるから、キレッキレのステアリングと共に、まさにスポーツカーに乗っている雰囲気を味わえる。
◆グラチェロと共通でも乗り味は全く違う
それにしてもジョルジョプラットフォームはジープ『グランドチェロキー』と共有。なので足回りは同じだろうと腹下をのぞき込んでみると、フロントサスペンションのロワーアームの取り回しが違っていたり、リアは構造こそ同じようだが、やはりロワーアームがジープは鋳鉄なのに対し、アルファはアルミ製と言った違いを見せる。
乗り味はやはりディーゼルであってもアルファの方がぐっとスポーティーである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務めるほか、テレビ東京の番組「開運なんでも鑑定団」では自動車関連商品の鑑定人も務める。
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