「SNOWモード」は雪道だけじゃもったいない!ホンダ『ZR-V』の4WDは雪上での“違和感のなさ”がスゴイ
ホンダ『ZR-V』を雪上で走らせた。まだ発売前というのに、街中や高速道路を走らせてもらったと思えば今度は雪上。試乗記のティザーと考えても盛り沢山といった感じだ。ホンダ広報に聞いても発売のこんな手前からメディアに複数回乗ってもらうのは初めてではないかと言う。確かに国産車では珍しい。輸入車ではかつてあったかもしれないが。
試乗は山形駅を起点に蔵王方面で行われた。メインに走らせたのはe:HEV(ハイブリッド)+4WD。ガソリン車の4WDとe:HEVのFWDはそれぞれ30分程度雪上を体感した。
試乗車のグレードはすべて上級の「Z」だが、おさらいするとその下に「X」がある。パワーソースはe:HEVが2リットル直噴式ガソリンエンジン+2モーターで、ガソリン車が1.5リットルターボユニットという内容だ。タイヤはブリヂストンのスタッドレス『BLIZZAK VRX2』。標準と同じ18インチとなる。
◆「違和感のなさ」に軸を置いたZR-Vの4WD
メインで走らせたe:HEV+4WDの雪上走行は常時安定していた。今回のZR-Vではリアへのトルク配分を高めたことで、前後バランスが高まったように思える。そして、ドライブモードを“SNOW”に合わせると、さらにアクセルに対しジェントルな動きでドライバーのコントロール下におさまる。
トルク配分の制御とタイヤを駆るバランスがいい。ホンダは4WDをプロペラシャフトを使って機械的に行っている。もちろん電子制御だが、前後に独立したモーターを設置し協調制御するEV的システムとは異なる。先にリリースしている『ヴェゼル』と同じ手法だ。
機械的に動かす理由は制御の緻密性と違和感のない操作性を重んじたからだろう。「ステアリングをこう切ってアクセルをこのくらい踏むと車体はこうなる」的な挙動が手に取るようにわかる。雪上のような低ミュー路においてこれは大切なこと。こういった状況下で一番恐れるのは想定外の動きだからだ。
◆e:HEVのFWD、ガソリンの4WDとの違いは
そしてそれをもう少しワイルドにしたのがe:HEVのFWDで、さらに制御を緩くしたのがガソリンの4WDとなる。どちらもフロントだけである程度の雪道なら十分トラクションをかけられるが、e:HEVの4WDよりは当然安定性は薄れる。雪でフロントタイヤが横にズルっと半回転すると危うさが顔を覗かせた。特にガソリン車に関しては車体が軽いため反応は早い。ただ腕のあるドライバーにとっては楽しさが倍増するだろう。
蔵王の中継地点にはパイロンを立てたショートコースが用意されていたためそこでいろいろと試した。FWDはトラクションコントロールスイッチを切ると瞬間的に大きくリアタイヤが流れ出し、ドリフトし始める。がしかしそこからしっかり立て直せるのがいい。トラクションをかけ続けるとアンダーステアが強まり直進性を高めてくれる。この辺も想定内の動きなので何も臆することはない。e:HEVの4WDはアンダーステアの出るタイミングが早い分、よりクルマは安定する。
◆「SNOWモード=雪道」と限定するのはもったいない
というのが今回の雪上試乗。『シビック』と同じプラットフォームを持ったZR-Vは総合的にバランスよくできている。というか、昨年この時期にヴェゼルを雪上で試した時と同じくらい好印象である。
提案としては“SNOW”モードの制御がいいのでこれを“低ミュー路”とか、“スリッピーゾーン”といった意味合いの言葉に変えたらと思った。というのも、雪道だけでなく雨の時や濡れた枯れ葉の多い道で効果を発揮するからだ。
頭の柔らかい人はもともとそうして使っているのだろうが、そうでないと「SNOW=雪道」と限定してしまいがち。これはもったいない。せっかく安全性を高める装備が付いているのならそれを多用しない話はない。
となると、新しいネーミングは“SNOW & RAIN”かな。思わず南佳孝の「SCOTCH AND RAIN」という歌が浮かんだ。
九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。東京・自由が丘出身。
試乗は山形駅を起点に蔵王方面で行われた。メインに走らせたのはe:HEV(ハイブリッド)+4WD。ガソリン車の4WDとe:HEVのFWDはそれぞれ30分程度雪上を体感した。
試乗車のグレードはすべて上級の「Z」だが、おさらいするとその下に「X」がある。パワーソースはe:HEVが2リットル直噴式ガソリンエンジン+2モーターで、ガソリン車が1.5リットルターボユニットという内容だ。タイヤはブリヂストンのスタッドレス『BLIZZAK VRX2』。標準と同じ18インチとなる。
◆「違和感のなさ」に軸を置いたZR-Vの4WD
メインで走らせたe:HEV+4WDの雪上走行は常時安定していた。今回のZR-Vではリアへのトルク配分を高めたことで、前後バランスが高まったように思える。そして、ドライブモードを“SNOW”に合わせると、さらにアクセルに対しジェントルな動きでドライバーのコントロール下におさまる。
トルク配分の制御とタイヤを駆るバランスがいい。ホンダは4WDをプロペラシャフトを使って機械的に行っている。もちろん電子制御だが、前後に独立したモーターを設置し協調制御するEV的システムとは異なる。先にリリースしている『ヴェゼル』と同じ手法だ。
機械的に動かす理由は制御の緻密性と違和感のない操作性を重んじたからだろう。「ステアリングをこう切ってアクセルをこのくらい踏むと車体はこうなる」的な挙動が手に取るようにわかる。雪上のような低ミュー路においてこれは大切なこと。こういった状況下で一番恐れるのは想定外の動きだからだ。
◆e:HEVのFWD、ガソリンの4WDとの違いは
そしてそれをもう少しワイルドにしたのがe:HEVのFWDで、さらに制御を緩くしたのがガソリンの4WDとなる。どちらもフロントだけである程度の雪道なら十分トラクションをかけられるが、e:HEVの4WDよりは当然安定性は薄れる。雪でフロントタイヤが横にズルっと半回転すると危うさが顔を覗かせた。特にガソリン車に関しては車体が軽いため反応は早い。ただ腕のあるドライバーにとっては楽しさが倍増するだろう。
蔵王の中継地点にはパイロンを立てたショートコースが用意されていたためそこでいろいろと試した。FWDはトラクションコントロールスイッチを切ると瞬間的に大きくリアタイヤが流れ出し、ドリフトし始める。がしかしそこからしっかり立て直せるのがいい。トラクションをかけ続けるとアンダーステアが強まり直進性を高めてくれる。この辺も想定内の動きなので何も臆することはない。e:HEVの4WDはアンダーステアの出るタイミングが早い分、よりクルマは安定する。
◆「SNOWモード=雪道」と限定するのはもったいない
というのが今回の雪上試乗。『シビック』と同じプラットフォームを持ったZR-Vは総合的にバランスよくできている。というか、昨年この時期にヴェゼルを雪上で試した時と同じくらい好印象である。
提案としては“SNOW”モードの制御がいいのでこれを“低ミュー路”とか、“スリッピーゾーン”といった意味合いの言葉に変えたらと思った。というのも、雪道だけでなく雨の時や濡れた枯れ葉の多い道で効果を発揮するからだ。
頭の柔らかい人はもともとそうして使っているのだろうが、そうでないと「SNOW=雪道」と限定してしまいがち。これはもったいない。せっかく安全性を高める装備が付いているのならそれを多用しない話はない。
となると、新しいネーミングは“SNOW & RAIN”かな。思わず南佳孝の「SCOTCH AND RAIN」という歌が浮かんだ。
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