自動車部の学生が氷上で日産車を振り回す!本命はGT-R&Zかと思いきや…?

長野県立科町にある湖、女神湖で毎年冬に行われる日産自動車のメディア向け氷上試乗会、「NISSAN Intelligent Winter Drive」。数多くの自動車評論家やプロドライバーが集まるイベントだが、レスポンスから参加したのはアルバイトの大学生。極寒の女神湖で、学生たちは何を感じ取ってきたのか。そして日産車の魅力、性能は、現代の若者にも伝わったのか…?

◆編集長「日産が氷上試乗会をやるんだけど、行く?」
編集長より、レスポンスの大学生アルバイトに対して新たなる指令が下った。「日産の氷上試乗会に参加し、試乗記を書くこと」。レスポンス試乗記といえば、名だたる評論家の方々があらゆる自動車をレポートする、執筆本誌屈指の人気コンテンツである。

一方我々、チームアルバイトの3名は、一応大学で「自動車部」という部活に入っているものの所詮は素人。普通の大学生より車に乗る時間は多いが、東京に住んでいると雪道を走る経験などほとんどできない。果たしてそんなことで試乗記が書けるのか…と思う一方、言い換えればこれほどユーザー目線に近いライターも少ない(はず)。果たして読者のお眼鏡にかなうレポートができるのか、ビクビクしながら会場へ向かった。

◆最新のEVは意外と普通の乗り味?
やってきたのは長野・女神湖。本来は農業用に作られた人造湖で、湖面が凍結する冬には連日のように走行会が行われている。今回の試乗会は、日産の技術を氷上で体感してもらう、という趣旨のもの。話題の『サクラ』や新型『エクストレイル』はもちろん、学生にとっては憧れの『GT-R』や『フェアレディZ』も試乗できる。

我々が最初に体験したのはEVの『アリア』。パワートレインとシャシーの統合制御を行う「e-4ORCE」を搭載しており、今回の試乗会でも目玉となるモデルだ。氷上初体験ということで恐る恐る踏み出したが、意外にもすんなりと運転することができた。アクセルを踏めばしっかり加速し、抜けばしっかり減速する。雪上では雑にブレーキを踏むとロックしてしまうので、アクセルオフだけで減速ができる安心感は大きい。また、ハンドルを切れば思い通りのラインをトレースしてくれることもあり、速度域が低い状態であればそこまで普段の運転と変わらないと感じた。

◆雪壁に吸い込まれるGT-Rの中で、アリアの凄さに気付く
続いてGT-Rに乗ってみる。クルマ好きの学生としてはむしろこっちが本命かもしれない。せっかくなのでアクセルを踏んでみたが、ここで違和感を覚えた。回転数は上がっているのだが、速度が上がらない。氷上なのでタイヤがスリップするのは当たり前なのだが、先ほどのアリアが滑らかに加速したので、その事実を失念していたのである。アリアに試乗している時は気付かなかったが、実はものすごい制御が行われていたのかと実感した。

コーナーに差し掛かると、改めてe-4ORCEの威力を実感した。少しでも速度感を誤るとアンダーステアを出すGT-Rに対し、アリアは「多少厳しいか?」と思うスピードでもスッと頭が入る。オーバーステアになった時も、GT-Rが無力に雪壁へと吸い込まれていく一方で、アリアは頑張れば立て直せるほどの安定感を見せていた。

もちろん、GT-Rも熟練の技があれば自由自在に氷上を走れることは間違いないし、意図的に制御を少なくして走ったので、コントロールが難しかったという側面もある。一方で、アリアは学生程度の力量であっても、ほぼ思い通りに動かすことができ、EV × e-4ORCEの懐の深さをしみじみと感じた。

◆緻密な制御は電気自動車の強み
続いて試乗したのはエクストレイル。「e-POWER」を搭載するハイブリッド車だが、こちらもe-4ORCEを介した制御が入っており、氷上でも安定感ある運転をすることができた。ただ、アリアと比べると若干暴れ気味であり、少し介入の度合いが弱い。後から開発本部の方に話を聞いたところ、両者の味付けは狙って変えているという。

電動化技術の強みの1つが、駆動輪1つ1つに対して直接制御を行えるという点だ。従来の内燃機関車では、方式を問わず車輪を接続するシャフトを通じて駆動力を伝えるため、1つの車輪に対して介入することには物理的な制約が存在する。一方で、駆動輪とモーターが直結しているEVであれば、今まで以上に緻密な介入が可能だ。

驚いたのは、e-4ORCEの設定がないモデルであっても、電動車は氷上で高い安定感を見せたことだ。特にサクラは、助手席で体感した筆者が「e-4ORCEの2台と遜色ないのでは…」と感じてしまうほど。より過酷な条件であればe-4ORCEとの差が生まれるのかもしれないが、運転を担当したバイト2号氏も、「最近の軽はすごい」と素直に感心していた。

◆「まるで競技車両のよう」だったノートe-POWER
バイト2号氏が「印象的だった」と語るもう1台が『ノートe-POWER』だ。学生日本一のタイトルを保有し、バイト3名の中では1番運転が上手い2号氏は、ノートで定常円に挑戦。アクセルとハンドルを軽く調整するだけでパイロンの近くをぴたりと周り、「まるで競技用の車の動き」のようだったという。

もう1人のバイト、理論家の3号氏もノートでスラロームに挑戦。急ハンドルを入れても駆動力の補正が入り、狙ったところに車体を持っていくことができたという。外周路でわざとアクセルを全開にしてみた時も、制御を探る様子もなく滑らかに加速していたことが印象に残っているとのこと。

雪道はもちろん、EVのハンドルを握ることすら今回のイベントが初体験だった学生アルバイト3名。普段触れることのない最新の車に触れて、その技術を存分に体感してきた。と、同時に、食わず嫌いをしていたふしがあるEV、電動車の魅力に、遅ればせながら気付かされてしまったのであった。

[提供元:レスポンス]レスポンス