【ヒョンデ ネッソ 新型試乗】燃料電池車ってこんな感じなのね…中村孝仁
昨年7月くらいから販売が始まったヒョンデのZEV(ゼロエミッション車)。車種ごとの数値は出ていないが、昨年だけでおおよそ500台ほどの販売があったそうだ。もっともその大半は電気自動車(BEV)の『IONIQ5(アイオニック5)』だということで、今回の試乗車である燃料電池車の『NEXO(ネッソ)』はまだまだ道半ばのようである。
ところで燃料電池車に乗ったのは四半世紀ぶりのこと。実は日本の市販燃料電池車である『ミライ』には乗ったことがない。四半世紀前の1998年に乗ったのは、メルセデスがプロトタイプで作ったNeCarという当時の『Aクラス』をベースにしたモデルと、フォードがこれまたプロトタイプとして作った『トーラス』ベースのモデルだった。どちらも恐ろしく静かでスムーズ。当時は実に未来を感じさせるモデルだった。その後この燃料電池は触媒に使う白金の問題を始め、市販化のハードルは高かったのだが、それを打ち破ったのがトヨタのミライ。そしてヒョンデは2019年からこのネッソを市販化している。
◆メカニカルな部分での静粛性は極めて高いが
JAIA(日本自動車輸入組合)のメディア向け試乗会はメーカーにもよるが、ヒョンデの場合は既に起動されていて、あとはギアをセレクトして走り出すだけ…という状態でクルマを受け取った。そんなわけだから起動時がどういう感じであるかは不明だが、少なくともいったん走り出してしまうと、疑似的なモーターの音を出したりする電気自動車よりもはるかに静粛性が高く、ほぼ無音で走り始めた。右ハンドル車ながらウィンカーレバーはコラムの右側に付く日本車と同じ仕様とされているから、日本車からの乗り換えでこの部分に戸惑うことはない。
ただ、メカニカルな部分での静粛性は極めて高いのだが、それを阻害するのがタイヤである。Ventus S1 evo2 SUVという名のハンコック製。サイズは245/45R19。実はこのタイヤVentus S1というところまではテスラの『モデルY』と一緒。あちらはevo3でしかもEV用というところが異なるのだが、乗り味はどちらも一緒でざらつき感が強いし、路面が少しでも荒れるるとロードノイズもかなり大きめに進入してしまうから、せっかくの静粛性が勿体ない。市場価格を調べてみると結構お安めのタイヤ。
褒めるわけではないが、この後に乗ったBYDの『ATTO3』はコンチネンタル製エココンタクト6を履いていて、そのスムーズさや静粛性などは正直段違い。やはり最後の路面とのコンタクトはケチらない方が良いという見本だった。因みに試乗したコースはネッソもATTO3も全く同じ場所を走っている。
◆ボディのしっかり感や質感は十分
ボディ全体のしっかり感や質感は十分に高く、こうした点では今やヨーロッパや日本、アメリカなど自動車先進国を自負するメーカーたちはその優位性は持っていない。
ドライブモードはエコもしくはノーマルがチョイスできる。ノーマルをチョイスすればかなり俊敏な走りが可能になるので、スポーツモードは不要かな?とも思えた。一方のエコモードは通常の走行には何ら不都合は感じなかったものの、勾配のある上り坂では加速に物足りなさを感じることがあった。
メーターのディスプレイは液晶表示だが表示自体は保守的(他のディスプレイ方法もありそうだが80分の試乗では試せなかった)だと思ったものの、ウィンカーを出すとそのスピードメーター(左)やパワーモードメーターとでも言おうか、エコあるいはチャージなどと書かれた丸形のメーターに、クルマのサイドを映し出すカメラ映像が表示される。これはテスラなどでもやっているが、デジタル化された良さで、ぎりぎりに寄せたい場合などは便利である。
◆776万8300円、正直なところ相当に高い
一充填で820kmも走れるというのは燃料電池の強みかもしれないが、問題はその充填の施設がどれだけあるかということ。この辺りも鶏が先か卵が先かという話になってしまう。新しい動力源はそれを動かすための燃料をいかに容易くスピーディーに調達できるかという問題を抱える。ここはまだまだ石油由来の燃料には勝てない。
総じて快適なクルマだという印象が強い。因みにお値段は試乗車で776万8300円也。正直なところ相当に高いという印象。補助金頼みが強い。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
ところで燃料電池車に乗ったのは四半世紀ぶりのこと。実は日本の市販燃料電池車である『ミライ』には乗ったことがない。四半世紀前の1998年に乗ったのは、メルセデスがプロトタイプで作ったNeCarという当時の『Aクラス』をベースにしたモデルと、フォードがこれまたプロトタイプとして作った『トーラス』ベースのモデルだった。どちらも恐ろしく静かでスムーズ。当時は実に未来を感じさせるモデルだった。その後この燃料電池は触媒に使う白金の問題を始め、市販化のハードルは高かったのだが、それを打ち破ったのがトヨタのミライ。そしてヒョンデは2019年からこのネッソを市販化している。
◆メカニカルな部分での静粛性は極めて高いが
JAIA(日本自動車輸入組合)のメディア向け試乗会はメーカーにもよるが、ヒョンデの場合は既に起動されていて、あとはギアをセレクトして走り出すだけ…という状態でクルマを受け取った。そんなわけだから起動時がどういう感じであるかは不明だが、少なくともいったん走り出してしまうと、疑似的なモーターの音を出したりする電気自動車よりもはるかに静粛性が高く、ほぼ無音で走り始めた。右ハンドル車ながらウィンカーレバーはコラムの右側に付く日本車と同じ仕様とされているから、日本車からの乗り換えでこの部分に戸惑うことはない。
ただ、メカニカルな部分での静粛性は極めて高いのだが、それを阻害するのがタイヤである。Ventus S1 evo2 SUVという名のハンコック製。サイズは245/45R19。実はこのタイヤVentus S1というところまではテスラの『モデルY』と一緒。あちらはevo3でしかもEV用というところが異なるのだが、乗り味はどちらも一緒でざらつき感が強いし、路面が少しでも荒れるるとロードノイズもかなり大きめに進入してしまうから、せっかくの静粛性が勿体ない。市場価格を調べてみると結構お安めのタイヤ。
褒めるわけではないが、この後に乗ったBYDの『ATTO3』はコンチネンタル製エココンタクト6を履いていて、そのスムーズさや静粛性などは正直段違い。やはり最後の路面とのコンタクトはケチらない方が良いという見本だった。因みに試乗したコースはネッソもATTO3も全く同じ場所を走っている。
◆ボディのしっかり感や質感は十分
ボディ全体のしっかり感や質感は十分に高く、こうした点では今やヨーロッパや日本、アメリカなど自動車先進国を自負するメーカーたちはその優位性は持っていない。
ドライブモードはエコもしくはノーマルがチョイスできる。ノーマルをチョイスすればかなり俊敏な走りが可能になるので、スポーツモードは不要かな?とも思えた。一方のエコモードは通常の走行には何ら不都合は感じなかったものの、勾配のある上り坂では加速に物足りなさを感じることがあった。
メーターのディスプレイは液晶表示だが表示自体は保守的(他のディスプレイ方法もありそうだが80分の試乗では試せなかった)だと思ったものの、ウィンカーを出すとそのスピードメーター(左)やパワーモードメーターとでも言おうか、エコあるいはチャージなどと書かれた丸形のメーターに、クルマのサイドを映し出すカメラ映像が表示される。これはテスラなどでもやっているが、デジタル化された良さで、ぎりぎりに寄せたい場合などは便利である。
◆776万8300円、正直なところ相当に高い
一充填で820kmも走れるというのは燃料電池の強みかもしれないが、問題はその充填の施設がどれだけあるかということ。この辺りも鶏が先か卵が先かという話になってしまう。新しい動力源はそれを動かすための燃料をいかに容易くスピーディーに調達できるかという問題を抱える。ここはまだまだ石油由来の燃料には勝てない。
総じて快適なクルマだという印象が強い。因みにお値段は試乗車で776万8300円也。正直なところ相当に高いという印象。補助金頼みが強い。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★
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1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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