【ルノー カングー 新型試乗】第一印象は「まさしくカングー!」乗り心地の進化に驚き…島崎七生人
先代の登場から13年5か月、インポーターによる初代の日本市場投入からおよそ21年。カーライフをエンジョイするユーザーから圧倒的な支持を集めるルノー『カングー』の第3世代が遂にお目見えした。
ご存知のとおり、もともとカングーはLCV(Light Commercial Vehicle=小型商用車)をベースに乗用車として仕立てられたクルマだが、新型では「LCV要素と乗用車要素のそれぞれの基本性能をレベルアップ。さらに乗用車としての快適性、上質さを大幅に上げ、乗用車的な要素の割合をより高めた」(ルノー・ジャポン)という。
もちろんバックグラウンドにあるLCVの高い堅牢性、高い機能性は、欧州の厳しいプロユースの基準を満たすもの。「何100万回のドア開閉テストが行なわれ、地球10周、15周の走行テストも実施した」(同)のだそう。ちなみに新型は、ルノー/日産/三菱のアライアンスにより開発されたCMF-C/Dプラットフォームを新たに採用。630億円が投じられたというフランス・モブージュのカングー専用工場で作られる。
◆第一印象は「まさしくカングー!」
昨年の“カングー・ジャンボリー”でお披露目済みだから、そこで見たという方も多いかもしれない。筆者は今回の試乗が実車との初対面の場だったが、第一印象は「まさしくカングー!」であり胸を撫で下ろしているところ。実は本国で発表となってからのこの2年あまり、オフィシャルフォトのメッキの加飾を多用したフロントマスクが目に焼き付いてて以来、まさか日本で大人気のミニバン(=具体的には日産セ●ナ)に寄せた訳ではないよな!?……と気掛かりで眠れなかったほど。
ところが実車はグリル部分の加飾の使い方も控えめにし(=グリル内部の2本のメッキの横桟はブラックになっている)、しかも日本市場向けに、非商用車ながら黒い樹脂色バンパー+センターキャップの仕様もわざわざ用意されるという配慮も。こうしたスノッブな精神(?)が新型でも受け継がれたところが何といってもいい。
先代はAピラーがグイッと曲線的なフォルムが特徴だったが、新型はAピラーがストンと直線的にフードまで落とされやや普通にはなったが、車外から全体を眺めていると、コロンと箱形のどう見てもカングーにしか見えない佇まいだ。ちなみに日本では人気色のジョンアグリュム(イエロー)は今回もしっかりと設定される。
◆“デカングー”と言われた2代目登場時と比べたら
一方で気になるボディサイズは、全長4490mm、全幅1860mm、全高1810mmで、先代に対し210mm長く30mmだけ幅広くなった。最小回転半径は5.6mで従来より数値上は0.2m大きくなっている。が、これも“デカングー”といわれた2代目登場時に較べたら変わらないも同然といったところ。少なくとも取り回しに苦労するようなことはない。
またカングーならではのダブルバックドアは新型でも健在。従来通り90度まで開けてリンク部分のストッパーを外せばさらに180度までフルオープンにできる。ラゲッジスペースは正真正銘のスクエアな形状が自慢で、理屈抜きの使いやすそうな仕上がり。容量も従来に対し+115~132リットルの775~2800リットルが確保されている。
インテリアは時代分の進化が見られる。インパネも樹脂一体成形だった先代に対し、現代的な質感とデザインになった。空調ダイヤルを回してみると、クチクチクチッと緻密で上質なクリック感も味わえる。後席は3脚独立式で折り畳みも可能で、例によってしっかりとした着座感に作ってある。スライドドアについては、よりスムースな操作感にしたとのことだが、開け閉めした際の堅牢なタッチはいささかも失われていない。
◆完全に乗用車の走りっぷりになった
走りもカングーらしい世界観が受け継がれている。60タイヤとストロークのあるサスペンションのおかげでホッコリと懐の深い乗り味は保たれており、しかも新型ではピッチングやロールによる姿勢変化がより抑えられたことで、目線が揺れないフラットな乗り心地になったのは進化した部分だ。プラットフォームの一新で、先代までは商用車のイメージが遠くにあったが、新型は上質で快適な完全に乗用車の走りっぷりになっている。
パワーユニットは1.3リットルのガソリンターボ(131ps/24.5kgm)と1.5リットルのディーゼルターボ(116ps/27.5kgm)の2タイプの設定で、いずれも7速EDCの組み合わせ。乗り較べてみるとEDCの制御が的確なせいか、どちらのエンジンであっても絶対性能に不満がなく、同じようにカングーらしい意のままに走らせられる(走ってくれる)実力の持ち主に思えた。
なお安全運転(駐車)支援関係の機能も、日本導入のルノー車では初めてエマージェンシーレーンキープアシスト(車線中央維持支援)とブラインドスポットインターベンション(後側方車両検知警報)の2つが追加され、さらに内容が充実した。カジュアルでシンプルな道具感が持ち味のカングーだが、安心、安全に関しての魅力も新型ではさらに高められたという訳だ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
ご存知のとおり、もともとカングーはLCV(Light Commercial Vehicle=小型商用車)をベースに乗用車として仕立てられたクルマだが、新型では「LCV要素と乗用車要素のそれぞれの基本性能をレベルアップ。さらに乗用車としての快適性、上質さを大幅に上げ、乗用車的な要素の割合をより高めた」(ルノー・ジャポン)という。
もちろんバックグラウンドにあるLCVの高い堅牢性、高い機能性は、欧州の厳しいプロユースの基準を満たすもの。「何100万回のドア開閉テストが行なわれ、地球10周、15周の走行テストも実施した」(同)のだそう。ちなみに新型は、ルノー/日産/三菱のアライアンスにより開発されたCMF-C/Dプラットフォームを新たに採用。630億円が投じられたというフランス・モブージュのカングー専用工場で作られる。
◆第一印象は「まさしくカングー!」
昨年の“カングー・ジャンボリー”でお披露目済みだから、そこで見たという方も多いかもしれない。筆者は今回の試乗が実車との初対面の場だったが、第一印象は「まさしくカングー!」であり胸を撫で下ろしているところ。実は本国で発表となってからのこの2年あまり、オフィシャルフォトのメッキの加飾を多用したフロントマスクが目に焼き付いてて以来、まさか日本で大人気のミニバン(=具体的には日産セ●ナ)に寄せた訳ではないよな!?……と気掛かりで眠れなかったほど。
ところが実車はグリル部分の加飾の使い方も控えめにし(=グリル内部の2本のメッキの横桟はブラックになっている)、しかも日本市場向けに、非商用車ながら黒い樹脂色バンパー+センターキャップの仕様もわざわざ用意されるという配慮も。こうしたスノッブな精神(?)が新型でも受け継がれたところが何といってもいい。
先代はAピラーがグイッと曲線的なフォルムが特徴だったが、新型はAピラーがストンと直線的にフードまで落とされやや普通にはなったが、車外から全体を眺めていると、コロンと箱形のどう見てもカングーにしか見えない佇まいだ。ちなみに日本では人気色のジョンアグリュム(イエロー)は今回もしっかりと設定される。
◆“デカングー”と言われた2代目登場時と比べたら
一方で気になるボディサイズは、全長4490mm、全幅1860mm、全高1810mmで、先代に対し210mm長く30mmだけ幅広くなった。最小回転半径は5.6mで従来より数値上は0.2m大きくなっている。が、これも“デカングー”といわれた2代目登場時に較べたら変わらないも同然といったところ。少なくとも取り回しに苦労するようなことはない。
またカングーならではのダブルバックドアは新型でも健在。従来通り90度まで開けてリンク部分のストッパーを外せばさらに180度までフルオープンにできる。ラゲッジスペースは正真正銘のスクエアな形状が自慢で、理屈抜きの使いやすそうな仕上がり。容量も従来に対し+115~132リットルの775~2800リットルが確保されている。
インテリアは時代分の進化が見られる。インパネも樹脂一体成形だった先代に対し、現代的な質感とデザインになった。空調ダイヤルを回してみると、クチクチクチッと緻密で上質なクリック感も味わえる。後席は3脚独立式で折り畳みも可能で、例によってしっかりとした着座感に作ってある。スライドドアについては、よりスムースな操作感にしたとのことだが、開け閉めした際の堅牢なタッチはいささかも失われていない。
◆完全に乗用車の走りっぷりになった
走りもカングーらしい世界観が受け継がれている。60タイヤとストロークのあるサスペンションのおかげでホッコリと懐の深い乗り味は保たれており、しかも新型ではピッチングやロールによる姿勢変化がより抑えられたことで、目線が揺れないフラットな乗り心地になったのは進化した部分だ。プラットフォームの一新で、先代までは商用車のイメージが遠くにあったが、新型は上質で快適な完全に乗用車の走りっぷりになっている。
パワーユニットは1.3リットルのガソリンターボ(131ps/24.5kgm)と1.5リットルのディーゼルターボ(116ps/27.5kgm)の2タイプの設定で、いずれも7速EDCの組み合わせ。乗り較べてみるとEDCの制御が的確なせいか、どちらのエンジンであっても絶対性能に不満がなく、同じようにカングーらしい意のままに走らせられる(走ってくれる)実力の持ち主に思えた。
なお安全運転(駐車)支援関係の機能も、日本導入のルノー車では初めてエマージェンシーレーンキープアシスト(車線中央維持支援)とブラインドスポットインターベンション(後側方車両検知警報)の2つが追加され、さらに内容が充実した。カジュアルでシンプルな道具感が持ち味のカングーだが、安心、安全に関しての魅力も新型ではさらに高められたという訳だ。
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