43度バンク200km/hで崩れた自信、大学自動車部員がWRX同乗体験【スバルテックツアー】

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スバルテックツアー」と題されたメディア向けのイベントが、栃木県佐野市のスバル研究実験センターにて開催された。自動車情報メディア『レスポンス』からは大学自動車部に所属している学生アルバイトが参加。普段は立ち入ることのできないセンター内からのレポートをお届けする。

スバルテックツアーは、スバルの安全思想や技術を体感してもらう目的で、これまでに複数回開催されている。「走行安全編」というテーマの今回は、「走りを極めれば安全になる」という考えのもと生み出された最新技術を、実際の走行を通じて体験する。既に公開されている前編では、新型『クロストレック』やBEV『ソルテラ』の試乗を通して、近年のスバルが特に力を入れている「動的質感」の向上を感じ取った。今回お届けする後編では、スバルのエンジニア育成プログラム『SUBARU Driving Academy』を中心にご紹介しよう。

◆テストドライバーはいない? スーパーエンジニアを育成する「SDA」
クロストレックとソルテラ、無事に2本の試乗プログラムを終えたアルバイト2名。続いてのイベントはスバルのエンジニア育成プログラム「SUBARU Driving Academy」(以下SDA)についてのプレゼンテーション。スバルではテストドライバーという職種は存在せず、開発車両をエンジニア自ら評価する。評価と開発を分業せずに一貫して行うことで、スバルならではの強みを生み出しているという。

「ドライバーの評価能力以上のクルマは生まれない」という思想から生まれたのが、このSDAである。エンジニアに運転スキルを身に付けさせることによって、ドライバーとしての評価能力を高めることが目標の1つだ。この活動の結果、実際にクルマをテストし、自分の頭で考え、試乗時に発生した物理現象を数式化することが出来るいわば「スーパーエンジニア」が生まれるという寸法なのである。

SDAの活動は市販車開発だけに留まらない。近年はレースにまで活動範囲を広げることによって、スバルのモータースポーツとエンジニアの成長へと繋げている。2022年のスーパー耐久シリーズには、様々な開発部門から実に100名を超えるエンジニアと共に参戦。モータースポーツの現場では、同時多発的に発生する問題を非常に短いサイクルで解決することが求められる。厳しい環境の中で、若手のエンジニアはより多くの開発経験を短期間のうちに積むことができるようになるのだという。

◆瞬き厳禁! 200km/h以上の世界
さて、エンジニアがテスト走行を自ら行うとはいえ、いきなり全員が開発車両に乗れるわけではない。免許取り立ての初心者が、いきなり200km/hで走って事故を起こせば本末転倒である。そこでスバルは、5段階のテストコースライセンスを定めた。自身が取得したライセンスに応じて、自身が行える評価の領域や最高速度が変わってくるというわけだ。

このプログラムでは、「SDAインストラクター」が運転する『WRX』に同乗できるという。5段階のライセンスの最上級である「特殊」ライセンス保持者のうち、さらに一握りの最上級がインストラクターと呼ばれる存在だ。スバルの中で頂点と呼ぶに相応しいのスゴ腕ドライバーたちである。そんな彼らの運転体験を直前にして、アルバイト2名は余裕綽々。これでも大学自動車部員、わずかとはいえモータースポーツの経験があるから、それなりの自信があったのだ。走行開始から30秒後、自信は見事に崩れ去った。

スバル研究実験センターをぐるりと囲うように作られた楕円状の「高速周回路」。全長4.3km、最大バンク角は43度。すり鉢状に設けられたバンクの効果により、ハンドルをニュートラル(まっすぐの状態)にしたまま最高速度200km/hで周回することが可能だ。この時、車内では何が起こるのか。

コースインと同時にアクセル全開、10秒ほどで一気に200km/hのスピードに到達する。その速度のままバンクコーナーへと進入、遠心力の影響で体全体がシートに張り付く。抑えつける力があまりにも大きく、頭の血が下半身へ下りていく感覚さえ覚えた。この状況下で全くハンドルや速度をブレさせずに何十周もしてしまうのだから、凄まじい精神力である。

その後、200km/hからのフルブレーキや、バンクを使用しないコーナーリング等、公道では絶対に行わないような体験をさせていただいた。ドライバーも当然凄いが、ハンドルやペダルを操作すれば、想像したとおりに動くスバル車の安定感にも驚いた。小雨で路面が濡れている状況にもかかわらず、である。限界に近い速度域で再現性のある走行が出来るのは、しっかりと作られたクルマだという証拠。当たり前のことを高い次元で当たり前に出来るスバル車の出来には、改めて感心させられた。

あれほど自信をもって同乗体験を申し出たにもかかわらず、走行後、涼しい顔のインストラクターさんを横目にヘトヘトに疲れ切ってしまったのは秘密である。

◆エンジニアの多様性を取り入れたクルマ作り
同乗走行では、SDAが擁する最高峰のドライバーの技術と、限界に近い状態での車両の挙動を体験することができた。

興味深かったのは、「ライセンス」の試験がどのように行われるかという説明だ。最高峰のドライバー、というと、いわゆる「速い」ドライバーを想像しがちだ。しかし試験で求められるのは速さではなく正確性。具体的にいえば、SDAインストラクターは、200km/h程度の高速域で、4.3kmの周回コースを、1周あたりコンマ数秒の誤差で20周以上走行することができるのだという。まるで機械のような精密さ、軸のブレなさが、「評価能力の高い」ドライバーなのだ。

また驚くことに、召集されるSDAの研修生は、それぞれ全く違う部署から選ばれたエンジニア。エンジンやフレームなど、クルマの動作に直接関係する部署からはもちろん、アイサイトのような先進安全に携わる部署からのエンジニアもこのプログラムに参加していた。一貫した車づくりの姿勢は、このような部署間の横のつながりを意識した人選からも感じられる。

◆広告だけでは伝わらない魅力がある
今回のツアーで、スバルが強く主張する「安全思想」について身をもって体験することが出来た。スバルが売りにしている技術は、文言だけでは良さに納得しにくいものもあり、体験して初めてその素晴らしさを実感できるものが多かった。皆さんも試乗する機会がある際には、実際に体で味わい、数値だけでは分からないスバル車の良さに気付いていただきたい。

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[提供元:レスポンス]レスポンス