【BMW 330e 新型試乗】PHEVながら“あの頃”のスポーツセダンに回帰した…中村孝仁

  • BMW 330e
前回このBMW『330e』と呼ばれるモデルに乗ったのは2016年のこと。当時は我が家に充電設備がなく、何とかうまく乗れる方法はないかと思案したものだった。あれからもう7年。その330eは新しくなった。内外装の変更だけでなくバッテリーの積載量も変わりモーターの出力も向上している。

◆似て非なるクルマに仕上がった
まあ、似て非なるという言葉が適切かどうかはわからないが、まさに似て非なるクルマに仕上がっている。充電設備が家にない時は何とかバッテリーにたまっている電気を維持しようとしてチャージモードという負荷のかからない時に積極的にエンジンで充電をするモードを使うことで、電気消費を抑える走りをして、それが極意だと話をした。

まあそれも一つの方法だが、エンジンを用いて充電をすれば当然ながら燃料消費が増えることになって、ある意味では本末転倒。だから結論から言って電気自動車(BEV)にしてもPHEVにしても有効に活用するとしたらやはり自宅に充電設備がないとダメということになる。ダメというのはもしかすると購入を検討している人に誤解を与えるかもしれないので、「PHEVをPHEV車らしく使うためには」ということにしておく。

さて、新しい『3シリーズ』である。まあPHEVの仕様は2020年に変更が行われて以来変わっていないが、内外装は2022年9月に変更を受けた。とりわけ内装は全く新しい大型のデイスプレイによるメーター及びインフォテイメント表示となり、12.3インチのメーターパネルと14.9インチのコントロールディスプレイが一体化して湾曲した大型のメーターディスプレイとなった。

内燃エンジンの仕様は『320i』と全く同じだが、これに加えて80kw、250Nmのモーターが加わるからシステム出力としては292ps、420Nmとなる。あと、ハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能が付加されているのも目新しい。

お値段はついに700万円の大台を超えて710万円となってしまったが、昨今の半導体問題やウクライナ問題など諸事情を考慮すればそれも致し方なしなのだろうか。それにしても自動車が高くなったと感じるのは私だけではないと思う。

◆PHEVでありながらスポーツセダンを存分に味わえる
3年前から我が家に充電設備が付いたものだから、正直PHEVだろうがBEVだろうが、電気残量を気にしながら走る必要が全くないのは嬉しい限り。というかこれでようやく真っ当に電気の走りをエンジョイできる。

330eにはスポーツ、ハイブリッド、それにEVという3つのモードが備わっている。簡単にいえばスポーツはエンジン主役、EVは当たり前だがモーター主役。そしてハイブリッドは最初がモーター主役で電池残量が減ってくるとエンジン主役に代わる。が、そうは言ってもハイブリッドは電池が満タンならほぼモーターが主役でエンジンが顔を出すシーンはぐっとアクセルを踏み込んだ時や高速走行時、さらには上り坂など限定的。高速でも負荷を減らせば主役はモーターである。

調べてみたら最後に3シリーズセダンに乗ったのは2020年。つまりG20の3シリーズが出た直後のことで、当時の写真を並べてみるとメーターパネルとシフトレバー周辺のデザイン変更が目に付いた。2020年時点ではシフトレバーは通常のスティックタイプ。これが今回は小さなスイッチタイプのレバーに変わってすっきりだが、ダイヤル式 iDriveは残っていて、『2シリーズアクティブツアラー』のようなディスプレイタッチスタイルではない。個人的にはダイヤル式iDriveが好みである。

重さのせいもあるのだろうか(このサイズのセダンで2トン超えだ!)乗り味には少し変化がある。従来3シリーズは軽快な動きと快適な乗り心地を身上としていたが、どっしり感はあるものの、今回はまさにスポーツセダンのそれという昔ながらの3シリーズの印象が強い。つまりそれなりの硬さを持った乗り心地と正確無比&シャープなハンドリングを身上とし、快適なセダンというイメージは薄れた。その方面はメルセデスに任せたとでも言いたげで、このところBMWのスポーツ性回帰が顕著である。

これはキャラクターの明確さを印象付けるという点で好ましいと思う。PHEVでありながらスポーツセダンを存分に味わえるモデルだった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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