【スズキ ソリオ 新型試乗】マイルド/フルハイブリッドの違いは「コスパ」と「乗り味」にあり…中村孝仁
一方でエンドユーザーにとってはこれらの装置をおせっかいと感じる人と、そうでない人もいるうえ、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)など積極的に使わなければ宝の持ち腐れ的要素のアイテムも含まれるため、認知度が低いのではないかと推察された。
ただ、この種の装備はあくまでも運転支援であって、それがあれば例えば「ぶつからない」即ち危険に即して車両が止まってくれるという類のものではなく、被害を軽減できても撲滅することは出来ないものである。
こうした内容の機能が最近はほぼ標準装着となってきている関係もあってか、車両の価格がじわじわと上昇しているのはご存じの通りである。今回試乗したソリオ ハイブリッドはソリオのモデルレンジの最上級モデル。いったん途絶えていたフルハイブリッドを復活させたものだ。もっともフルハイブリッドと言っても他銘柄の電動走行を常時行えるものではなく、電気の介入は限定的でマイルドハイブリッドに毛が生えた程度の機能と捉える方が良い。
◆「マイルドハイブリッド」と「フルハイブリッド」の違い
それにしても外観上はどこで見分けるのかさっぱり見当がつかなかった。何故ならどちらのモデルもエンブレムはソリオ ハイブリッドとなっているからである。ようやく理解したのは、フルハイブリッドのエンブレムはハイブリッドの文字の背景が黒となっているのに対し、マイルドの方はシルバーとなっているところ。恐らくこれ以外には見分けるポイントはないように思えた。
マイルドハイブリッドとフルハイブリッドの違いは、後者の方が駆動用の専用モーターを備え、それをシングルクラッチの5速AGSとドッキングさせたメカニカルトレーンを持つのに対し、マイルドの方はいわゆるISG(モーター機能付き発電機)を装備するだけで、これが駆動をアシストすることはほとんどない…という点。後者のトランスミッションはCVTであるというのも大きな違いの一つである。
AGSはシングルクラッチの自動変速であるが、モーターのアシストがない場合はトルク変動が大きく、変速の度にドライバーやパッセンジャーの頭が前後に揺すられて不快であるが、この変速時にモーターがアシストをすることでそのネガが潰され、走行はスムーズ。そしてマニュアル制御にすれば多少は運転が楽しめる。
マイルドハイブリッド仕様は2年前に試乗した。その時も小型車とは思えぬどっしり感と静粛性に満ちていたことで、高々3サイズ全長3790×全幅1645×全高1745mmのクルマとは思えない快適さを備えた乗り心地は、まさにDセグメント級のクルマに乗っている印象すら与えてくれた。
◆乗り心地はフルハイブリッドに軍配、だけどACCは…
基本的にサスペンションの味付けは相当にマイルドなセッティングとされていて、いわゆるNVH(騒音や振動)の侵入は非常に少ない。これをサイズのみならず僅か1050kgの車重で成立させているのだから大したものだ。因みに車重はマイルドハイブリッドよりも50kg重くなっていて、リアの車軸付近のリチウムイオンバッテリーを乗せている関係だと思うが、これによって前後バランスも向上したことが良い乗り心地をさらに良くした可能性がある。
動力性能的にはモーター駆動が入ったところで、それほど期待してはいけないレベルであるが、加速を試みてもエンジン音の室内進入は最小限で、静粛性の高いレベルでまとめられている。
一方でハンドリングは「まあこんなもの」と言っては失礼かもしれないが、あまり期待はしない方が良い。その期待とはシャープなキレッキレのハンドリングのことである。そもそもクルマの性格がそうしたものではないのだから、これで良し。むしろこれが良いという評価が正しいと思う。
ただ、不満がないわけではない。ACCを使ってみると高速の料金所付近で前車に追従して進入するとこれが切れてしまうこと。通常のACCはそれができるので、高速の料金所などでは重宝するのだが、ソリオのハイブリッド車は何故かいわゆる全車速追従機能が外されたもので、40km/h未満では作動しない。その文言はカタログにかなり入念に書かれている。しかし、マイルドハイブリッドの方は全車速追従機能付き。最上級モデルでこれを外す理由は何かあるのだと思うが、解せない点であった。
◆マイルドハイブリッドの方がコスパは上?
車両本体価格は229万3500円。マイルドハイブリッドの最上級車がFWD同士で209万4400円だから、ほぼ20万円ほどフルハイブリッドが高い。因みにマイルドハイブリッドには4WDの用意があるがフルハイブリッドにはそれがない。装備差はほとんどなく前述したように高いフルハイブリッドには全車速追従機能が付かないACCが装備される。
ということで、多少燃費はよくなるようだが正直上級モデルの方がコスパは悪い。しかし、高い静粛性やどっしり快適な乗り心地、上手い具合に制御されているAGSとのコンビネーションなどはグレード中最高の乗り味を提供してくれる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク :★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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