【メルセデスベンツ Eクラス 新型試乗】今も高級ドライバーズサルーンとしての存在感はあるか…渡辺慎太郎
メルセデスベンツの『190E』が1993年にフルモデルチェンジを受けて『Cクラス』を名乗るようになり、同時に当時のW124が『Eクラス』と正式に呼ばれるようになった。新型Eクラス(W214)はそこから数えて6代目にあたる。
◆どうにかして全長5m、全幅1.9m以内に収めたクラシック・プロポーション
プラットフォームはすでに『Sクラス』やCクラスでも共有されている“MRA II”。メルセデスは内燃機用のあらたなプラットフォーム開発はやらないと明言しているので、MRA IIはエンジンを縦置きにする後輪駆動ベースの最後のプラットフォームとなる可能性が高い。
「共有」といってもCとEとSではボディサイズもホイールベースも異なるので、まったく同じ車台をそっくりそのまま流用するのではなく、設計手法などの「概念的共有」と言ったほうが正しいだろう。いずれもフロントは4リンク、リヤは5リンクのサスペンション形式だが、もちろんそれぞれのモデルに合わせた専用設計となっている。
ボディサイズは全長4949mm、全幅1880mm、全高1468mm。現行型よりも9mm長く、30mm広く、13mm高くなり、ホイールベースも22mm長くなっている。例によってまた大きくなってしまったが、全長を5m以内、全幅を1900mm以内にどうにか収めつつ、室内スペースを拡げようとした努力の痕跡は窺える。
実際、前席のヘッドクリアランスが5mm、後席のニールームは10mm、レッグルームは17mm、それぞれ従来型よりも広くなった。ボンネットが長くフロントのオーバーハングは短く、キャビンを後方に寄せたスタイリングは“クラシック・プロポーション”とメルセデスが呼んでいて、セダン系は基本的にこれを踏襲する。
◆「EQ」系とは違う「MBUXスーパースクリーン」
インテリアでは「MBUXスーパースクリーン」がオプションで選べるようになった。『EQS』や『EQE』の“MBUXハイパースクリーン”との違いは、ダッシュボード全面ではなく一部がガラスで覆われている点にある。助手席前やセンターコンソール付近まではハイパースクリーンとほぼ同じ。しかし運転席前には独立した液晶パネルが設置され、そこにメーターや各種情報が表示される。
実は、MBUXスーパースクリーンよりも、そのオペレーションシステムである電子プラットフォームの刷新のほうが注目に値する。メルセデスは「今後、室内のさまざまな機能はハードウエアよりもソフトウエアのほうが重要」と語っていて、新型Eクラスで初導入となるこの電子プラットフォームは今後、他のモデルにも随時展開されていくだろう。
新しい電子プラットフォームは拡張性が高く、対応可能な社外アプリの数が増えたり、ひとり乗車であれば「ハイ、メルセデス」と言わなくても「ちょっと寒い」といきなり要望を伝えればすぐに反応してエアコンの温度設定を自動的に変更する。また、「室内温度が12度を下回ったらシートヒーターをオンにして、アンビエントライトを暖色系に変更」などのコマンドを、あらかじめ入力することもできるという。
◆8種類のICEパワートレイン
パワートレインは計8種類。そのうちの半分がプラグインハイブリッドという構成である。E200/E220d/E220d 4MATICはガソリンとディーゼルの4気筒ターボにモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドのISG仕様、E300e/E300e 4MATIC/E400e 4MATIC/E300deがプラグインハイブリッドで、EVモードでの航続距離は100km前後と公表されている。そしてE450 4MATICは唯一の6気筒エンジン搭載モデルである。
いずれも既存のユニットだが、ISG仕様のモーターの出力は従来の15kWから17kWへパワーアップが図られた。トランスミッションはすべて9Gトロニックである。日本仕様はまだ未定とのこと。導入時期は来年になる見通しらしい。
◆乗り味は高級ドライバーズサルーンとして唯一無二
試乗車はベースグレードのE200で、オプションのエアサスと後輪操舵が装着されていた。発進時にサポートしているであろうスターター・ジェネレーターの出力向上分はあまり感じられなかったけれど、重量の重いE220d 4MATICではアクセルペダルの動きに対するクルマの反応が従来型よりもわずかに早くなったように思えた。E200は204ps/320Nmという“地味”なスペックにしては快活でよく走る。9Gトロニックとのマッチングも良好で、まさしく熟成されたパワートレインである。
高速道路を走行中に、風切り音がほとんどしないことに気が付いた。新型EクラスのCd値は0.23。加えて、ボンネットやAピラー周りのシーリングを徹底したそうで、確かにフロントウインドウからサイドミラーにかけての風切り音が従来型と比較しても大幅に軽減されている。プラグインハイブリッドではEVモードがあるわけで、静粛性に関しては特に念を入れたようだ。
そして何より乗り心地に優れていた。エアサスの恩恵があるとはいえ、この乗り味はボディやシャシーの剛性など体幹全般がしっかりしていることと、サスペンション設計の妙に因るところが大きいと思われる。サスペンションがとにかくよく動き、路面のアンジュレーションに対してきっちり追従しながらも、ばね上の動きを最小限に抑え込み、上質な乗り心地をもたらす。Sクラスほど重厚ではないものの、Cクラスよりは明らかな上等な感じを見事に作り出していた。ハンドリングは例によって極めて正確、かつ抜群の安定感を示すものだった。
Cクラスのボディが大きくなり、さらにその下には『Aクラス』のセダンまで誕生し、Eクラスの存在感が薄れてきたようにも思っていたが、新型の乗り味は高級ドライバーズサルーンとして、唯一無二の存在感を放っていた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター
1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。
◆どうにかして全長5m、全幅1.9m以内に収めたクラシック・プロポーション
プラットフォームはすでに『Sクラス』やCクラスでも共有されている“MRA II”。メルセデスは内燃機用のあらたなプラットフォーム開発はやらないと明言しているので、MRA IIはエンジンを縦置きにする後輪駆動ベースの最後のプラットフォームとなる可能性が高い。
「共有」といってもCとEとSではボディサイズもホイールベースも異なるので、まったく同じ車台をそっくりそのまま流用するのではなく、設計手法などの「概念的共有」と言ったほうが正しいだろう。いずれもフロントは4リンク、リヤは5リンクのサスペンション形式だが、もちろんそれぞれのモデルに合わせた専用設計となっている。
ボディサイズは全長4949mm、全幅1880mm、全高1468mm。現行型よりも9mm長く、30mm広く、13mm高くなり、ホイールベースも22mm長くなっている。例によってまた大きくなってしまったが、全長を5m以内、全幅を1900mm以内にどうにか収めつつ、室内スペースを拡げようとした努力の痕跡は窺える。
実際、前席のヘッドクリアランスが5mm、後席のニールームは10mm、レッグルームは17mm、それぞれ従来型よりも広くなった。ボンネットが長くフロントのオーバーハングは短く、キャビンを後方に寄せたスタイリングは“クラシック・プロポーション”とメルセデスが呼んでいて、セダン系は基本的にこれを踏襲する。
◆「EQ」系とは違う「MBUXスーパースクリーン」
インテリアでは「MBUXスーパースクリーン」がオプションで選べるようになった。『EQS』や『EQE』の“MBUXハイパースクリーン”との違いは、ダッシュボード全面ではなく一部がガラスで覆われている点にある。助手席前やセンターコンソール付近まではハイパースクリーンとほぼ同じ。しかし運転席前には独立した液晶パネルが設置され、そこにメーターや各種情報が表示される。
実は、MBUXスーパースクリーンよりも、そのオペレーションシステムである電子プラットフォームの刷新のほうが注目に値する。メルセデスは「今後、室内のさまざまな機能はハードウエアよりもソフトウエアのほうが重要」と語っていて、新型Eクラスで初導入となるこの電子プラットフォームは今後、他のモデルにも随時展開されていくだろう。
新しい電子プラットフォームは拡張性が高く、対応可能な社外アプリの数が増えたり、ひとり乗車であれば「ハイ、メルセデス」と言わなくても「ちょっと寒い」といきなり要望を伝えればすぐに反応してエアコンの温度設定を自動的に変更する。また、「室内温度が12度を下回ったらシートヒーターをオンにして、アンビエントライトを暖色系に変更」などのコマンドを、あらかじめ入力することもできるという。
◆8種類のICEパワートレイン
パワートレインは計8種類。そのうちの半分がプラグインハイブリッドという構成である。E200/E220d/E220d 4MATICはガソリンとディーゼルの4気筒ターボにモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドのISG仕様、E300e/E300e 4MATIC/E400e 4MATIC/E300deがプラグインハイブリッドで、EVモードでの航続距離は100km前後と公表されている。そしてE450 4MATICは唯一の6気筒エンジン搭載モデルである。
いずれも既存のユニットだが、ISG仕様のモーターの出力は従来の15kWから17kWへパワーアップが図られた。トランスミッションはすべて9Gトロニックである。日本仕様はまだ未定とのこと。導入時期は来年になる見通しらしい。
◆乗り味は高級ドライバーズサルーンとして唯一無二
試乗車はベースグレードのE200で、オプションのエアサスと後輪操舵が装着されていた。発進時にサポートしているであろうスターター・ジェネレーターの出力向上分はあまり感じられなかったけれど、重量の重いE220d 4MATICではアクセルペダルの動きに対するクルマの反応が従来型よりもわずかに早くなったように思えた。E200は204ps/320Nmという“地味”なスペックにしては快活でよく走る。9Gトロニックとのマッチングも良好で、まさしく熟成されたパワートレインである。
高速道路を走行中に、風切り音がほとんどしないことに気が付いた。新型EクラスのCd値は0.23。加えて、ボンネットやAピラー周りのシーリングを徹底したそうで、確かにフロントウインドウからサイドミラーにかけての風切り音が従来型と比較しても大幅に軽減されている。プラグインハイブリッドではEVモードがあるわけで、静粛性に関しては特に念を入れたようだ。
そして何より乗り心地に優れていた。エアサスの恩恵があるとはいえ、この乗り味はボディやシャシーの剛性など体幹全般がしっかりしていることと、サスペンション設計の妙に因るところが大きいと思われる。サスペンションがとにかくよく動き、路面のアンジュレーションに対してきっちり追従しながらも、ばね上の動きを最小限に抑え込み、上質な乗り心地をもたらす。Sクラスほど重厚ではないものの、Cクラスよりは明らかな上等な感じを見事に作り出していた。ハンドリングは例によって極めて正確、かつ抜群の安定感を示すものだった。
Cクラスのボディが大きくなり、さらにその下には『Aクラス』のセダンまで誕生し、Eクラスの存在感が薄れてきたようにも思っていたが、新型の乗り味は高級ドライバーズサルーンとして、唯一無二の存在感を放っていた。
■5つ星評価
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渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター
1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。
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