【日産 セレナ 新型試乗】LUXIONで1000km走ったら「もう後戻りできない」…中村孝仁
やっとe-Powerの日産『セレナ』に試乗することができた。今回のモデルは新たに設定された最上級モデル、「LUXION(ルキシオン)」である。
当初は「ハイウェイスター」を借りる予定だったのだが、試したかったプロパイロット2.0搭載車はルキシオンのみということで、急遽変更してもらった。このクルマでほぼ高速道路の試乗を5日間1000km走ってみた。結論から言うと「もう後戻りできない」…である。
◆ACCとしても秀逸なプロパイロット2.0
日産のプロパイロット2.0を最初に試したのは『スカイライン』に搭載された時だから、もうだいぶ前の話。当時は、快適なことは今と変わらないが、道路の速度標識を読み取ってきっちりと法定速度に落としてしまうために、現実に即していないと感じたものだ。今回だいぶ進化したはずのプロパイロット2.0は、基本設定速度が優先されるようになっていて、ちゃんと交通の流れに乗れるようになっていたのは使い勝手が向上してよかった。
もっとも、ループコーナーのような減速を必要とするコーナーでは必要以上に減速してしまうため、先頭を走る場合などは交通の流れを阻害するし、従走の場合前車についていくことができないほど減速してしまうから、ドライバーがオーバーライドしてやる必要を感じた。
しかし総じて、出来の良さはACCとしても秀逸。とりわけ渋滞に嵌まったような場合の便利さは文句なく素晴らしい。渋滞のようなケースでは得てして速く進むレーンに割り込みをしてくることが多いが、その割込みに対してもかなりの確率でそれを認識してブレーキを踏んでくれる。もしかするとドライバーの我慢が足りなくてついブレーキを踏んでしまうケースがあったのかもしれないが、まあ事故るよりはましなのでそうしたケースではドライバーが介入したが、ほぼクルマ任せで走ることができる。
もっともまだレベル2だからよそ見は禁物である。調子に乗ってよそ見をすると、クルマの方から前を見るように警告が入る。
◆想像以上に解放感があるハンズオフ機能
プロパイロット2.0はハンズオフ機能があるから便利だと思ってお借りしたが、そのハンズオフは実際に使ってみると、やはり想像以上にドライバーが運転から解放される印象がある。とはいえ、条件から外れるとステアリングを持つように警告が入る。東京から新東名を使って伊勢湾岸道方面まで走ったが、例えばトンネルなどはハンズオフが使えないからその間はステアリングを握ることになる。
ハンズオフが可能なケースではヘッドアップディスプレイのハンドルマークが青の表示になり、ステアリングを握らなくてはならないケースではそれが緑に変わり、同時に警告音が出る。しかし、その逆、即ち再びハンズオフが可能になった時はこのハンドルの色が変わるだけで、ハンズオフできますよという音による案内はない。いつの間にやら表示が青に変わっていて、あっハンズオフできるんだ…ということになった。
いずれにしてもドライバーの疲労度は圧倒的に軽減されると言って過言ではない。他グレードにもオプションでよいからつけて欲しい装備の最右翼と感じた。
◆静粛性、安定感、乗り心地は十分。高速燃費は弱点か
e-Powerはオーバーサイズの1.4リットル直3エンジン(98ps)と最高出力163ps、315Nmのモーターが組み合わされたもの。流石に高速主体で走行すると燃費は伸び悩み、今回も1000km走行の結果は15.1km/リットルである。もっとも新東名は120km/h走行区間を流れに乗って走行していたため、やはり燃費的に不利に働いたのは否めない。本音を言えばもう少し高燃費を期待したところだった。
それでも静粛性も十分に高く、背が高く横風には影響を受けやすい形状でも、安定感は十分で乗り心地も相当に快適。特にキャプテンシートの2列目は実に快適だったとは同行者の弁である。
◆ドライビングプレジャーはあるか?
少し個人的にネガ要素だと思える部分についてお話をしよう。一つはドライブモードの切り替えが、本来つくべきシフトボタン周囲にないこと。操作系なのだからシフトがボタン式になったセンターコンソール付近につけておいて欲しかったのだが、日産の説明ではeペダルで代行できるので、優先順位がeペダルのスイッチより低く、結果としてダッシュ右下の位置になってしまったとのことである。
確かにエコ、ノーマル、Sモードの切り替えは滅多にしない。快適に走るにはスタンダードに放り込んでおけば十分である。流石にエコは少し加速がかったるい。
もう一つはありとあらゆる操作系が物理スイッチではなくタッチとなった結果、シートヒーターのスイッチの位置があまり良くなく、ベンチレーターの風向きを変えているうちに無意識に触ってしまうようで、この暑いのにいつの間にかシートが熱くなっているケースが多々あった。これは要改善。あとは電子ウィンカーの操作性があまりよくなく、ドライバー自身がウインカーを戻さなくてはならないケースで、戻し過ぎて反対方向に指示を出してしまうケースが多かった。やはりウィンカーにはクリック感が欲しい。
この快適さを味わってしまうと後戻りできない。ただし、ドライビングプレジャーがこのクルマにあるかと問われれば、それはほぼ皆無である。あくまでも移動のツール的存在である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
当初は「ハイウェイスター」を借りる予定だったのだが、試したかったプロパイロット2.0搭載車はルキシオンのみということで、急遽変更してもらった。このクルマでほぼ高速道路の試乗を5日間1000km走ってみた。結論から言うと「もう後戻りできない」…である。
◆ACCとしても秀逸なプロパイロット2.0
日産のプロパイロット2.0を最初に試したのは『スカイライン』に搭載された時だから、もうだいぶ前の話。当時は、快適なことは今と変わらないが、道路の速度標識を読み取ってきっちりと法定速度に落としてしまうために、現実に即していないと感じたものだ。今回だいぶ進化したはずのプロパイロット2.0は、基本設定速度が優先されるようになっていて、ちゃんと交通の流れに乗れるようになっていたのは使い勝手が向上してよかった。
もっとも、ループコーナーのような減速を必要とするコーナーでは必要以上に減速してしまうため、先頭を走る場合などは交通の流れを阻害するし、従走の場合前車についていくことができないほど減速してしまうから、ドライバーがオーバーライドしてやる必要を感じた。
しかし総じて、出来の良さはACCとしても秀逸。とりわけ渋滞に嵌まったような場合の便利さは文句なく素晴らしい。渋滞のようなケースでは得てして速く進むレーンに割り込みをしてくることが多いが、その割込みに対してもかなりの確率でそれを認識してブレーキを踏んでくれる。もしかするとドライバーの我慢が足りなくてついブレーキを踏んでしまうケースがあったのかもしれないが、まあ事故るよりはましなのでそうしたケースではドライバーが介入したが、ほぼクルマ任せで走ることができる。
もっともまだレベル2だからよそ見は禁物である。調子に乗ってよそ見をすると、クルマの方から前を見るように警告が入る。
◆想像以上に解放感があるハンズオフ機能
プロパイロット2.0はハンズオフ機能があるから便利だと思ってお借りしたが、そのハンズオフは実際に使ってみると、やはり想像以上にドライバーが運転から解放される印象がある。とはいえ、条件から外れるとステアリングを持つように警告が入る。東京から新東名を使って伊勢湾岸道方面まで走ったが、例えばトンネルなどはハンズオフが使えないからその間はステアリングを握ることになる。
ハンズオフが可能なケースではヘッドアップディスプレイのハンドルマークが青の表示になり、ステアリングを握らなくてはならないケースではそれが緑に変わり、同時に警告音が出る。しかし、その逆、即ち再びハンズオフが可能になった時はこのハンドルの色が変わるだけで、ハンズオフできますよという音による案内はない。いつの間にやら表示が青に変わっていて、あっハンズオフできるんだ…ということになった。
いずれにしてもドライバーの疲労度は圧倒的に軽減されると言って過言ではない。他グレードにもオプションでよいからつけて欲しい装備の最右翼と感じた。
◆静粛性、安定感、乗り心地は十分。高速燃費は弱点か
e-Powerはオーバーサイズの1.4リットル直3エンジン(98ps)と最高出力163ps、315Nmのモーターが組み合わされたもの。流石に高速主体で走行すると燃費は伸び悩み、今回も1000km走行の結果は15.1km/リットルである。もっとも新東名は120km/h走行区間を流れに乗って走行していたため、やはり燃費的に不利に働いたのは否めない。本音を言えばもう少し高燃費を期待したところだった。
それでも静粛性も十分に高く、背が高く横風には影響を受けやすい形状でも、安定感は十分で乗り心地も相当に快適。特にキャプテンシートの2列目は実に快適だったとは同行者の弁である。
◆ドライビングプレジャーはあるか?
少し個人的にネガ要素だと思える部分についてお話をしよう。一つはドライブモードの切り替えが、本来つくべきシフトボタン周囲にないこと。操作系なのだからシフトがボタン式になったセンターコンソール付近につけておいて欲しかったのだが、日産の説明ではeペダルで代行できるので、優先順位がeペダルのスイッチより低く、結果としてダッシュ右下の位置になってしまったとのことである。
確かにエコ、ノーマル、Sモードの切り替えは滅多にしない。快適に走るにはスタンダードに放り込んでおけば十分である。流石にエコは少し加速がかったるい。
もう一つはありとあらゆる操作系が物理スイッチではなくタッチとなった結果、シートヒーターのスイッチの位置があまり良くなく、ベンチレーターの風向きを変えているうちに無意識に触ってしまうようで、この暑いのにいつの間にかシートが熱くなっているケースが多々あった。これは要改善。あとは電子ウィンカーの操作性があまりよくなく、ドライバー自身がウインカーを戻さなくてはならないケースで、戻し過ぎて反対方向に指示を出してしまうケースが多かった。やはりウィンカーにはクリック感が欲しい。
この快適さを味わってしまうと後戻りできない。ただし、ドライビングプレジャーがこのクルマにあるかと問われれば、それはほぼ皆無である。あくまでも移動のツール的存在である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
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1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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