【トヨタ クラウン RS 新型試乗】ドライバーズカーとして選ぶなら断然「RS Advanced」…中村孝仁
◆上級グレード「RS Advanced」に普段乗りしてみた
チョイスしたのは上級グレードの「RS Advanced」と呼ばれるもの。以前にも話したがハイブリッドのシステムが違う。これに乗ってしまうと、初めていわゆるスポーツ系ハイブリッドが登場したと痛感せざるを得ない。どうしても今までのハイブリッドはとにかく燃費を稼ぐことが主眼で、レスポンスだのダイレクト感だのは蚊帳の外的印象が強かったのだが、こいつは明確に違う。
性能面の話は試乗会の時にもしたので今回はほぼ割愛。で、日常的な使い勝手や足として使ってみての印象を記そうと思う。そうした意味で一番面白かったのはだいぶ数が増えてきたとはいえ、まだまだ路上で見かける数は以前のクラウンと比べると少なく、やはりというべきか、年齢層の高い潜在的にクラウンという名に憧れを持っていたであろう人々の反応が凄かった。
撮影時にとある駐車場を使って撮影をしていると、そこに付随している公園で和んでいた二人のまあ、60代と思しき男性がこちらに十分聞こえるような大声で、「あれが新しいクラウンだよ。中々いいねぇ」とこちらを見ながら話しているのが聞こえた。思わず「ご覧になりますか?」と声をかけようとしたが止めておいた。この一件だけでなく、信号などで止まっても注目度は非常に高い。これが実際オーナーとなって乗っているユーザーだときっとプライドが満たされるのではないかと感じた。
◆従来のクラウンとは明確に決別した2つのポイント
従来のクラウンとは明確に決別した点が二つある。その一つはスタイリングで、従来はセダン系スタイルと国内専用車ということもあって、全幅をきっちり1800mmで維持していたが、今回はグローバルでの販売を視野に入れて全幅がついに1840mmまで拡大したこと。細長かった以前からの印象とは打って変わって、バランスの取れたデザインとなっている。
もう一つの決別点は、これまで誕生以来守り通してきた縦置きエンジンとリアドライブというレイアウトを捨て、横置きエンジンと電動四駆の駆動方式に変えてきたこと。特に横置きエンジンはクラウンと名の付くモデルとしては初である。
もっとも、デザインの変化はともかくとして、エンドユーザーにとってエンジンを縦に置くか横に置くかなどどうでもいい話かもしれない。本来は横置きにしてキャビンスペースが増えたはずで、居住性が良くなると思っていたのだが、リアに座ってみても特段広くなった印象は受けず。着座位置が低くて、あまり視界も良く無い印象だったから、先代までのいわゆる法人ユース的な使い方には不向きである印象も受けた。まあ、ドライバーズカーになったということだろう。
そのドライバーズカーとしてチョイスするなら、このRS Advancedというグレードの方がお勧めである。「デュアルブーストハイブリッド」と名付けられた2.4リットルターボハイブリッドと、RS以外のグレードに搭載される2.5リットルエンジンと従来からあるTHSによるハイブリッドシステムとはそのダイレクト感が明確に異なっていて、走りを堪能するには文句なくRS系が良い。もちろん動力性能的にも「G」グレードや乗っていないが「X」グレードを圧倒するはずである。もっともそこまで尖ったユーザーがクラウンを選ぶのか?という話でもあるが。
◆「プロアクティブドライビングアシスト」の秀逸さ
安全性能は文句なく一級品。走り屋からすれば余計なお世話的に感じるかもしれないが、前方の信号が赤になって交通の流れが遅くなると、そこに調和して車速を落としたり、コーナー進入時にスピードが速いと判断するとクルマの方で減速するなど「プロアクティブドライビングアシスト」という機能が実に優れモノなのである。
とりわけ恐れ入ったのは路肩を歩く歩行者や自転車、さらには駐車しているクルマを確認して自動的に自車線内で車線を変更して歩行者、自転車、駐車中のクルマを回避するハンドル操作を行うというもので、思わず「ほぉ~」と声を上げてしまうものであった。
◆乗ればその違いを肌で感じられる
新しいクラウンは性格的にRS系とそれ以下では明確な違いが設けられているので、自分の走りのパターンに合わせてチョイスが可能である点もあり難い。誰もが乗ればその違いを肌で感じられるだろうし、クラウンという名のクルマの大変革も実感できると思う。勿論投資する金額もそれなりに異なるが…。
それにしてもパトカー仕様はどうなるのか気になるところだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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