【アルファロメオ ジュリア 新型試乗】これほど人の感性に訴えるクルマが他にあるか?…岡本幸一郎
2017年の日本導入当初には頻繁に乗る機会があったのに、思えば年単位で乗っていないなと思っていたところに、ちょうど仕様変更の情報が届いたので、さっそく借り出した。
『ジュリア』のことを大好きになったのは、なによりスタイリングがとても気に入ったからだ。ひとめでアルファロメオとわかる個性的なフロントはもちろん、流麗で妖艶ながらグラマラスでカタマリ感のある、他にはない色気のある容姿に惹かれた。
さらには、ドライブして他で味わったことのないほど俊敏なハンドリングに魅せられた。FRに回帰してアルファロメオらしさを追求した走りは、ひときわ異彩を放って感じられたものだ。
◆より先進的でスポーティなデザインになったジュリア
2023年6月に新しくなったジュリアは、内外装が若干変わった。外観はアルファロメオの特徴である「トライローブ」と呼ぶフロントグリルとテールランプに最新の意匠が施されたほか、フルLEDマトリクスヘッドライトを新たに採用し、より先進的でスポーティなデザインとされた。
インテリアには新たに12.3インチのフルデジタルクラスターメーターが装備され、インフォテイメントシステムの充実が図られた。
また、今回の変更で2022年の春に設定された「2.0 ターボ Ti」(※以下「Ti」)が廃止され、日本向けは「2.0 ターボ ヴェローチェ」(※以下「ヴェローチェ」)のみとされた。価格は655万円となる。
ご参考まで、「Ti」というのは「Turismo Internazionale」に由来し、スポーティな主力の「ヴェローチェ」に対し、スポーツ性と快適性を兼ね備えたグランドツアラーという位置づけのモデルとなり、本国では変更後もラインアップされている。
ただし、変更前には「ヴェローチェ」に対して最高出力が80ps減の200ps、最大トルクが70Nm減の330Nmに差別化されていた2リットルの直4ターボエンジンは、変更後には同じ280psとなり、価格差も小さくなったことから、「Ti」の導入が見送られ、売れ筋の「ヴェローチェ」のみの絞られたようだ。
一方、別格的な「クアドリフォリオ」も本国で7月に新しくなったことが報じられたので、おそらくもうしばらくすると日本にも導入されるはずだ。
◆5500rpmのレッドゾーンにもチューニングの妙
実は変更の直前に、件の「Ti」でコンセプトに則してロングドライブを試みたのだが、200psのエンジンは扱いやすく、動力性能的にも十分で不満を感じることはなく、乗り心地も快適だった。
それでも280psの「ヴェローチェ」に乗ると、やはりこちらが本命だとあらためて思う。2000rpmぐらいでパーシャルスロットから踏み増すと、ググッと力強く盛り上がる感覚こそこのエンジンの持ち味に違いなく、吹け上がりも伸びやかだ。
アルファロメオというと高回転まで吹け上がるエンジンこそ醍醐味というイメージがあるが、意外なことにタコメーターは5500rpmからレッド表示となっている。ところが、他のクルマだと5500rpmだと物足りないという話になりそうなところ、このエンジンは頭打ち感もなく、あまり物足りなさを感じさせないあたり、何かチューニングの妙があるようにも思えた。
独自の「D.N.A」ドライブモードシステムで、Dynamicを意味する「D」を選択すると、アクセルレスポンスが俊敏になるとともに低いギアを保持し、エキゾーストサウンドも高まり、足まわりもひきしまるなど、よりスポーツドライビングに適した走り味になる。
アルファロメオというと、かつて存在した3.2リットルV6のサウンドや加速フィールがとてもよかったと記憶しているが、それをちょっと思い出させる味わいがある。
一方で、Advanced Efficiencyを意味する「A」を選択すると高速巡行時に積極的にコースティングするようになる。アイドリングストップからの再始動もギクシャキしないよう巧く制御されている。
◆アルファロメオじゃないとこんなクルマは作れない
フルデジタルになったメーターに、よりいろいろな情報や機能を表示できるようになったのも今回の進化点のひとつだ。さらには、懸案だった先進運転支援装備も、車線維持機能やトラフィックジャムアシスト&ハイウェイアシストなどが備わり、日本車やドイツ勢に並んだとまではいわないが、ずいぶん追いついた。これまでそれを理由に購入に至らなかった人も、十分に許容できるレベルには達したかと思う。
インテリアも雰囲気のよさもジュリアならでは。登場から時間が経過してもあまり古さを感じさせることもない。エレガントに仕立てられた「Ti」もよかったが、「ヴェローチェ」のスポーティなテイストもよく似合う。
ステアリングホイールもあまり太すぎず、ラテン系は弱いと言われがちなエアコンも暑い中で長時間ドライブしてもちゃんと効くことも確認した。
持ち前の俊敏なハンドリングは、あらためてドライブしても快感だ。軽やかな身のこなしで、小さな舵角でピタッと正確に瞬間移動できるかのような感覚は、いつもながらジュリアならでは。しかも乗り心地もいたって快適なのだから恐れ入る。
このクラスでこれほど見た目も走りも人の感性に訴える力を持ったクルマはない。アルファロメオじゃないとこんなクルマは作れない。あらためてジュリアの魅力と価値を見直した次第である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
『ジュリア』のことを大好きになったのは、なによりスタイリングがとても気に入ったからだ。ひとめでアルファロメオとわかる個性的なフロントはもちろん、流麗で妖艶ながらグラマラスでカタマリ感のある、他にはない色気のある容姿に惹かれた。
さらには、ドライブして他で味わったことのないほど俊敏なハンドリングに魅せられた。FRに回帰してアルファロメオらしさを追求した走りは、ひときわ異彩を放って感じられたものだ。
◆より先進的でスポーティなデザインになったジュリア
2023年6月に新しくなったジュリアは、内外装が若干変わった。外観はアルファロメオの特徴である「トライローブ」と呼ぶフロントグリルとテールランプに最新の意匠が施されたほか、フルLEDマトリクスヘッドライトを新たに採用し、より先進的でスポーティなデザインとされた。
インテリアには新たに12.3インチのフルデジタルクラスターメーターが装備され、インフォテイメントシステムの充実が図られた。
また、今回の変更で2022年の春に設定された「2.0 ターボ Ti」(※以下「Ti」)が廃止され、日本向けは「2.0 ターボ ヴェローチェ」(※以下「ヴェローチェ」)のみとされた。価格は655万円となる。
ご参考まで、「Ti」というのは「Turismo Internazionale」に由来し、スポーティな主力の「ヴェローチェ」に対し、スポーツ性と快適性を兼ね備えたグランドツアラーという位置づけのモデルとなり、本国では変更後もラインアップされている。
ただし、変更前には「ヴェローチェ」に対して最高出力が80ps減の200ps、最大トルクが70Nm減の330Nmに差別化されていた2リットルの直4ターボエンジンは、変更後には同じ280psとなり、価格差も小さくなったことから、「Ti」の導入が見送られ、売れ筋の「ヴェローチェ」のみの絞られたようだ。
一方、別格的な「クアドリフォリオ」も本国で7月に新しくなったことが報じられたので、おそらくもうしばらくすると日本にも導入されるはずだ。
◆5500rpmのレッドゾーンにもチューニングの妙
実は変更の直前に、件の「Ti」でコンセプトに則してロングドライブを試みたのだが、200psのエンジンは扱いやすく、動力性能的にも十分で不満を感じることはなく、乗り心地も快適だった。
それでも280psの「ヴェローチェ」に乗ると、やはりこちらが本命だとあらためて思う。2000rpmぐらいでパーシャルスロットから踏み増すと、ググッと力強く盛り上がる感覚こそこのエンジンの持ち味に違いなく、吹け上がりも伸びやかだ。
アルファロメオというと高回転まで吹け上がるエンジンこそ醍醐味というイメージがあるが、意外なことにタコメーターは5500rpmからレッド表示となっている。ところが、他のクルマだと5500rpmだと物足りないという話になりそうなところ、このエンジンは頭打ち感もなく、あまり物足りなさを感じさせないあたり、何かチューニングの妙があるようにも思えた。
独自の「D.N.A」ドライブモードシステムで、Dynamicを意味する「D」を選択すると、アクセルレスポンスが俊敏になるとともに低いギアを保持し、エキゾーストサウンドも高まり、足まわりもひきしまるなど、よりスポーツドライビングに適した走り味になる。
アルファロメオというと、かつて存在した3.2リットルV6のサウンドや加速フィールがとてもよかったと記憶しているが、それをちょっと思い出させる味わいがある。
一方で、Advanced Efficiencyを意味する「A」を選択すると高速巡行時に積極的にコースティングするようになる。アイドリングストップからの再始動もギクシャキしないよう巧く制御されている。
◆アルファロメオじゃないとこんなクルマは作れない
フルデジタルになったメーターに、よりいろいろな情報や機能を表示できるようになったのも今回の進化点のひとつだ。さらには、懸案だった先進運転支援装備も、車線維持機能やトラフィックジャムアシスト&ハイウェイアシストなどが備わり、日本車やドイツ勢に並んだとまではいわないが、ずいぶん追いついた。これまでそれを理由に購入に至らなかった人も、十分に許容できるレベルには達したかと思う。
インテリアも雰囲気のよさもジュリアならでは。登場から時間が経過してもあまり古さを感じさせることもない。エレガントに仕立てられた「Ti」もよかったが、「ヴェローチェ」のスポーティなテイストもよく似合う。
ステアリングホイールもあまり太すぎず、ラテン系は弱いと言われがちなエアコンも暑い中で長時間ドライブしてもちゃんと効くことも確認した。
持ち前の俊敏なハンドリングは、あらためてドライブしても快感だ。軽やかな身のこなしで、小さな舵角でピタッと正確に瞬間移動できるかのような感覚は、いつもながらジュリアならでは。しかも乗り心地もいたって快適なのだから恐れ入る。
このクラスでこれほど見た目も走りも人の感性に訴える力を持ったクルマはない。アルファロメオじゃないとこんなクルマは作れない。あらためてジュリアの魅力と価値を見直した次第である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
最新ニュース
-
-
トヨタ『ハイラックスEVO』で過酷な8000km、ダカールラリー2025に挑戦
2024.12.27
-
-
-
「ミライース」をターボ&MT化!? ダイハツ、「東京オートサロン2025」に計7台出展へ
2024.12.26
-
-
-
トヨタ、東京オートサロン2025で「ニュルブルクリンクの精神」を再現へ
2024.12.26
-
-
-
フェラーリの1/64ミニカーがBburagoから登場、初のハイブリッド『ラ・フェラーリ』も製品化
2024.12.26
-
-
-
高速道路の深夜割引見直し延期へ…NEXCO3社が発表、2025年7月に
2024.12.26
-
-
-
名車『86』の歴史を体感、試乗もできる「86フェス」富士スピードウェイで開催へ…2025年2月
2024.12.26
-
-
-
アルファロメオ『トナーレ』と『ステルヴィオ』に「INTENSA」、新特別シリーズ世界初公開へ…ブリュッセルモーターショー2025
2024.12.26
-
最新ニュース
-
-
トヨタ『ハイラックスEVO』で過酷な8000km、ダカールラリー2025に挑戦
2024.12.27
-
-
-
「ミライース」をターボ&MT化!? ダイハツ、「東京オートサロン2025」に計7台出展へ
2024.12.26
-
-
-
トヨタ、東京オートサロン2025で「ニュルブルクリンクの精神」を再現へ
2024.12.26
-
-
-
フェラーリの1/64ミニカーがBburagoから登場、初のハイブリッド『ラ・フェラーリ』も製品化
2024.12.26
-
-
-
高速道路の深夜割引見直し延期へ…NEXCO3社が発表、2025年7月に
2024.12.26
-
-
-
名車『86』の歴史を体感、試乗もできる「86フェス」富士スピードウェイで開催へ…2025年2月
2024.12.26
-
MORIZO on the Road