【メルセデスベンツ Eクラス 新型試乗】ガソリンはCクラス、PHEVはSクラスのよう? その違いの理由…諸星陽一
2024年1月に発表された新型の6代目メルセデスベンツ『Eクラス』。従来同様にプラグインハイブリッドモデル「E350e」が設定された。
プラグインハイブリッドモデルはセダンのガソリンエンジンモデルにのみ設定。ワゴンには設定がない。パワーユニット構成は2リットル4気筒のガソリンエンジン(150kW/320Nm)とモーター(95kW/440N)の組み合わせ。バッテリーはメルセデス・ベンツが開発したパウチタイプで、25.4kWhの容量。一充電走行距離は112km(WLTCモード)となっている。
走らせはじめてすぐに感じるのがどっしりとして重厚感にあふれるフィールであること。セダンのプラグインハイブリッドに乗る前にステーションワゴンのガソリンエンジンに乗ったのだが、この2車の印象はずいぶん異なっていた。
◆エアサスが実現した重厚感ある走り
ガソリンエンジンのステーションワゴンは軽快でキビキビした印象でEクラスでありながら、『Cクラス』のようなヒラリ感のあるハンドリング。対してセダンのプラグインハイブリッドは重厚感にあふれ『Sクラス』に近い印象を持っていた。同じEクラスでもけっこう違うものだなというのが私の第一印象である。
その大きな要因が「ドライバーズパッケージ」と呼ばれる40万9000円のオプション。ドライバーズパッケージの内容はエアマチックサスペンションとリア・アクスルステアリング。つまりエアサス+4WS(4輪操舵)だ。エアサスについてはネガティブな印象を持っている方も多いが、それは古いタイプのエアサスに対する印象のままアップデートされていない方。現代のエアサスはじつにしっかりとしたフィーリングである。
エアサスのいいところは圧縮初期が柔らかく、圧縮が進むに従って非線形に硬くなっていくこと。乗り心地領域では柔軟に動き、走行安定性領域ではしっかり踏ん張る特性となるので、クルマにはピッタリの性格。今回の試乗でもシチュエーション違い、路面違い、ドライビングスタイル違いのいずれでもいい印象を与えてくれた。
◆クルマに任せてしまったほうがいい
試乗車を受け取った時点でのバッテリー残量は約50%。この残量でもWLTCモードで50km強走れる計算なので、試乗レベルなら十分だろう。まずはEV走行となるELモードで走る。EV状態でも十分な加速力を維持。発進時、普通の運転感覚でアクセルペダルを踏んでもしっかりとした加速を示し不満はない。中間加速も十分に力強く、高速道路の流入(それも都市高速のように加速区間が短くても)も問題なく行えるレベルが確保されている。巡航時の静粛性も高くEVらしさを十分に披露してくれる。
試乗車には、B(バッテリーホールド)、EL(エレクトリック)、H(ハイブリッド)、S(スポーツ)、I*(インデビディアル)の5つの走行モードが用意されていた。このうちSを除く、B、EL、Hのモードではステアリングコラムに取り付けられたパドルスイッチにより回生量の選択が可能(I*は自分好みの設定とするモードなので設定によっては不可)。
調整はもっとも回生が強いD-、自動のD、コースティングに近いD+の3段階が選択可能。Dモードはさまざまな道路状況を考慮して回生量を調整してくれるが、より効率よくエネルギー回収するには、マニュアルで回生量を調整したい。そのためには5段階程度の回生調整があるといいのだが、このクルマではそれもちょっと難しい。
一般的なEVは変速機を持たず、ギヤ比は一定である。そのため回生量を細かめに調整して速度と回生量をバランスさせるのだが、試乗車のE350eは9段のATも組み合わされ、回生ブレーキ作動時にはクルマ側がATのギヤ段数を自動調整し効率のいいギヤを選択してくれるのだ。であれば、あれこれ考える必要はなく、クルマに任せてしまったほうがいいだろう。
◆サイズを変えずに、広さと安全性確保ができてこそ
4WSの採用によって全長で20mm、全幅で30mm大きくなったボディも取り回しは悪くない。しかし、ボディの拡大については相変わらず反対というのが私の立場。ボディサイズを変えずに、広さと安全性確保ができてこそ、技術の勝利と言えるのではないだろうか? もちろん価格も上げずにである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。
プラグインハイブリッドモデルはセダンのガソリンエンジンモデルにのみ設定。ワゴンには設定がない。パワーユニット構成は2リットル4気筒のガソリンエンジン(150kW/320Nm)とモーター(95kW/440N)の組み合わせ。バッテリーはメルセデス・ベンツが開発したパウチタイプで、25.4kWhの容量。一充電走行距離は112km(WLTCモード)となっている。
走らせはじめてすぐに感じるのがどっしりとして重厚感にあふれるフィールであること。セダンのプラグインハイブリッドに乗る前にステーションワゴンのガソリンエンジンに乗ったのだが、この2車の印象はずいぶん異なっていた。
◆エアサスが実現した重厚感ある走り
ガソリンエンジンのステーションワゴンは軽快でキビキビした印象でEクラスでありながら、『Cクラス』のようなヒラリ感のあるハンドリング。対してセダンのプラグインハイブリッドは重厚感にあふれ『Sクラス』に近い印象を持っていた。同じEクラスでもけっこう違うものだなというのが私の第一印象である。
その大きな要因が「ドライバーズパッケージ」と呼ばれる40万9000円のオプション。ドライバーズパッケージの内容はエアマチックサスペンションとリア・アクスルステアリング。つまりエアサス+4WS(4輪操舵)だ。エアサスについてはネガティブな印象を持っている方も多いが、それは古いタイプのエアサスに対する印象のままアップデートされていない方。現代のエアサスはじつにしっかりとしたフィーリングである。
エアサスのいいところは圧縮初期が柔らかく、圧縮が進むに従って非線形に硬くなっていくこと。乗り心地領域では柔軟に動き、走行安定性領域ではしっかり踏ん張る特性となるので、クルマにはピッタリの性格。今回の試乗でもシチュエーション違い、路面違い、ドライビングスタイル違いのいずれでもいい印象を与えてくれた。
◆クルマに任せてしまったほうがいい
試乗車を受け取った時点でのバッテリー残量は約50%。この残量でもWLTCモードで50km強走れる計算なので、試乗レベルなら十分だろう。まずはEV走行となるELモードで走る。EV状態でも十分な加速力を維持。発進時、普通の運転感覚でアクセルペダルを踏んでもしっかりとした加速を示し不満はない。中間加速も十分に力強く、高速道路の流入(それも都市高速のように加速区間が短くても)も問題なく行えるレベルが確保されている。巡航時の静粛性も高くEVらしさを十分に披露してくれる。
試乗車には、B(バッテリーホールド)、EL(エレクトリック)、H(ハイブリッド)、S(スポーツ)、I*(インデビディアル)の5つの走行モードが用意されていた。このうちSを除く、B、EL、Hのモードではステアリングコラムに取り付けられたパドルスイッチにより回生量の選択が可能(I*は自分好みの設定とするモードなので設定によっては不可)。
調整はもっとも回生が強いD-、自動のD、コースティングに近いD+の3段階が選択可能。Dモードはさまざまな道路状況を考慮して回生量を調整してくれるが、より効率よくエネルギー回収するには、マニュアルで回生量を調整したい。そのためには5段階程度の回生調整があるといいのだが、このクルマではそれもちょっと難しい。
一般的なEVは変速機を持たず、ギヤ比は一定である。そのため回生量を細かめに調整して速度と回生量をバランスさせるのだが、試乗車のE350eは9段のATも組み合わされ、回生ブレーキ作動時にはクルマ側がATのギヤ段数を自動調整し効率のいいギヤを選択してくれるのだ。であれば、あれこれ考える必要はなく、クルマに任せてしまったほうがいいだろう。
◆サイズを変えずに、広さと安全性確保ができてこそ
4WSの採用によって全長で20mm、全幅で30mm大きくなったボディも取り回しは悪くない。しかし、ボディの拡大については相変わらず反対というのが私の立場。ボディサイズを変えずに、広さと安全性確保ができてこそ、技術の勝利と言えるのではないだろうか? もちろん価格も上げずにである。
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