【ホンダ アコード 新型試乗】“スポーティ”の次元を超えた気持ちよさがある…島崎七生人
ホンダ『アコード』にセダン(サルーン)が設定されたのは、初代ハッチバック登場の翌年、1977年10月のこと。それから今回の新型で47年弱、数えて実に11代目となり、4輪登録車としてはホンダでも『シビック』に次ぐ長い歴史を誇るメイクということになる。
新型の開発テーマは“相棒”。といっても、ティーポットを高く掲げてカップに紅茶を注ぐのが得意なあの人が主役のあのドラマの話ではなく、どんな時でもオーナーの手助けになるパートナー……そんな意味合いということのようだ。
開発責任者の横山尚希LPLによれば「ホンダのクルマは走りを大事にしている。各技術を含め、いい走りを提供したいというのが根本にある。そこでアコードに相応しい走りとは何か?と考えた」という。
実車は全体がスリークにまとめられ、眺めていて気持ちのいいスタイルが印象的。ファストバックを踏襲するところから、実車を見るまでは先代とどこが違うのか?とも思えたが、余分なキャラクター線がなく、従来まではこれでもか!と使われていたメッキの加飾が取り払われたフロントまわりなど、スッキリとしており、なかなかエレガントな仕上がりになっている。
◆上質な中にもさりげなく“少し違う感”
インテリアはセダンらしい居心地のいい空間となっている。アッパーフェイシア(からドアトリムのアッパー部分)にかけて表情の新しい表皮(シボ)を使うことで、上質な中にもさりげなく“少し違う感”を表現。眼前の10.2インチデジタルグラフィックメーター、中央の12.3インチディスプレイ、ボタンとレバー併用式のシフトスイッチなども、極力普通な佇まいでセットされ、昭和なアナログ世代のオジサン(=筆者)でも、圧倒されたり威圧感を感じたりしない。
中央の丸いダイヤルの中に時計(デジタル、アナログの多彩な表示に切り替え可能)が備わるアイデアも気が利いている。装備面ではGoogleアプリが搭載され、スマホでこれらを駆使しているユーザーなら車内でもシームレスに使えて便利だろう。
近年のSUVにすっかり慣らされた身体にはシートポジションは前後席とも低めに感じるも、実際に身を置くと「そうそう、これが上等なセダンの居心地だよね」と思い出させてくれた。とくに後席スペースは足元、頭上、肩口のいずれも十分なスペース。シートも座面前後長が十分あり、適度に起こされたトルソ角(背もたれの角度)もいい。また後部ドアの開口部形状、サイズも適切で、乗り降りがスムースに行なえるのもいい。セルフオープン式のリッドを備えるトランクスペースにも不満はなく、リッドの開閉も静かだ。
◆“スポーティ”の次元を超えた気持ちよさ
そして肝心の走りだが、実感したのはスポーティといった次元を超えた、安定感、安心感が走らせる気持ちよさを実現していること。
技術的には“モーションマネジメントシステム”と“アクティブダンパーシステム”の搭載が要で、さらにe:HEVハイブリッドシステムもメカニズム、制御ともに新機軸が投入されている。またパドル操作で減速度が調整可能であることも、ドライバーの意志にきわめて繋がった走らせ方を実現している。
そうした結果(または効果)だと思うが、ワインディング路面で4輪が均等にまるで路面に吸い付いているかのような安定感を実感。さらにサスペンションストロークは従来と変わらないとのことだが、路面の段差を通過したような場合にも(タイヤは18インチのミシュランe.PRIMACY)しっかりとダンピングの効いた快適な乗り味もモノにしている。
例のパドルで制動が効かせられるのも、ワンペダルならぬワンパドルといった風で、コーナーへの進入、脱出といった場面も実にスムースにクルマを走らせられ、姿勢変化もごく連続的。なので気持ちよく安心して走らせて(同乗者なら乗って)いられる。
それと日本仕様独自というほぼ自動で駐車が行なえる(カタログでは駐車や出庫時の運転をアシストと表記されている)Hondaパーキングパイロットも試してみたが、かなり上手に正確な駐車をやってのけることを確認。またホンダアクセスが用意する純正アクセサリーでは、“SPORT LINE”“TOURING LINE”と2通りに名付けられた、新型アコードの魅力を引き立てるエアロアイテム、19インチアルミホイールなどが用意されている。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
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