【メルセデスベンツ Eクラスワゴン 新型試乗】今もワゴンに乗れる我々日本人はラッキーだ…諸星陽一
2024年1月に発表された新型の6代目メルセデスベンツ『Eクラス』。セダンはプラグインハイブリッドに試乗したが、ステーションワゴンはガソリンのマイルドハイブリッドに試乗。そのレポートをお届けする。
Eクラスのステーションワゴンは初代モデルから設定がある。Eクラスと呼ばれる前のW123にも“メルセデスベンツ製の”ワゴンが存在している。メルセデスベンツ製と書いたのは、それ以前のモデルにもコーチビルダーの手によるステーションワゴンがあったのだ。つまりセダンしかボディタイプがない時代にステーションワゴンを求める人が多くおり、そうした人々はコーチビルダーにワゴンボディをオーダーしていた。そのようなユーザーが多かったこともあり、メルセデスベンツ(当時の社名はダイムラー・ベンツ社)は、正規のボディタイプとしてEクラス(当初はミディアムクラスと呼ばれた)に、ステーションワゴンを設定した。ユーザーの要望に応えたわけである。
さて最新のEクラスステーションワゴンである。フルモデルチェンジ版のEクラスに用意されるボディはセダンとステーションワゴン。パワーユニットは、2リットルガソリン・マイルドハイブリッド、2リットル・ディーゼルマイルドハイブリッド、2リットル・プラグインハイブリッドの3種だが、ステーションワゴンにはマイルドハイブリッドは設定されず2タイプのパワーユニットとなる。
◆1.5Lから2.0Lになった「E200」
試乗車はガソリンエンジンのマイルドハイブリッド仕様。機能説明の前にパッケージングについて触れよう。ステーションワゴンの全長×全幅×全高は4960×1880×1470(mm)で先代よりも全長で5mm、全幅で30mm、全高で5mmサイズアップ。ホイールベースは2960mmで先代よりも20mm延長されている。
試乗車のグレード名は「E200ステーションワゴン・アバンギャルド」。先代モデルのE200は1.5リットル4気筒エンジンを使っていたが、新型は2リットルエンジンとなり、久しぶりにグレード名と排気量がシンクロしてわかりやすくなった。その2リットルエンジンのスペックは204馬力(150kW)/320Nm。1.5リットル時代は184馬力(135kW)/280Nmなので排気量アップに伴い、スペックも向上している。
1.5リットル、2リットル両タイプともにマイルドハイブリッドシステムを採用する。マイルドハイブリッドシステムについては、1.5リットル時代はBSGと呼ばれるベルトドライブ式のスタータージェネレーターが使われていたが、新型の2リットルではベルトレスダイレクト駆動のISGが採用された。BSGのスペックは10kW/38NmであったがISGは17kW/205Nmとトルクが圧倒的に引き上げられている。
◆ハンドリングはEクラスとは思えないヒラリ感
乗り出すと非常に軽快なフィーリングであることに驚かされる。先代のE200は十分にトルクがあって過不足ないフィーリングであったが、新型は「おおっ、軽快だなあ」と思わず声を上げてしまうよさ。ISGのアシストが上手に効いている印象で、エンジンのトルクを2段階くらい上積みしたようなしっかりとしたトルク感を感じられる。
組み合わされるミッションはメルセデス・ベンツではおなじみの9AT。多段化による各ギヤ間の変速比がクローズしているのはもちろんだが、ISGによるトルク調整も入るので変速ショックはないに等しくシームレスである。アクセルを踏めばグングン加速していくので、じつに気持がいい加速を楽しめる。
ハンドリングはいい意味でEクラスとは思えないヒラリ感があり、まるで『Cクラス』をドライブしているような軽快感がある。試乗車はパノラミックスライディングルーフなどのオプションが付き、“素”の1860kgに対して50kg重い1910kgの車重。さらに成人男性3人乗車という悪条件ながら、じつに軽快であった。
◆世界的に絶滅危惧種のステーションワゴン
さて、ボディサイズが大きくなったが荷室容量はどうだろう。先代モデルのメーカー公表値(VDA計測)では640~1820リットルであったものが、615~1830リットルとなった。つまり定員乗車時の容量は25リットルダウン、最大拡張時は10リットルアップということになる。
ラゲッジ寸法については詳しいデータを見つけられなかったが、全長が5mm延長されているにもかかわらず、リヤのオーバーハングは20mm短縮されている。ハンドリングやスタイリング、乗り心地などを重視すると、前後ともにオーバーハングは短縮傾向となるが、ステーションワゴンの最大の魅力である積載性を損なうのはあまり関心できない。
世界的にステーションワゴンは絶滅危惧種になりつつある。かつては、ステーションワゴンのパラダイスであったアメリカでもシェアは縮小。現在はEクラスのステーションワゴンも輸出されていないという。そうした世界情勢のなかでEクラスステーションワゴンに乗れるわれわれ日本人はラッキーな立場だ。しかし、このまま世界的なシェアが減っていけば、ふたたびEクラスはセダンのみになってしまうかもしれない。そうしたとき、現代のコーチビルダーは活躍してくれるかには、あまり期待できないだろう。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。
Eクラスのステーションワゴンは初代モデルから設定がある。Eクラスと呼ばれる前のW123にも“メルセデスベンツ製の”ワゴンが存在している。メルセデスベンツ製と書いたのは、それ以前のモデルにもコーチビルダーの手によるステーションワゴンがあったのだ。つまりセダンしかボディタイプがない時代にステーションワゴンを求める人が多くおり、そうした人々はコーチビルダーにワゴンボディをオーダーしていた。そのようなユーザーが多かったこともあり、メルセデスベンツ(当時の社名はダイムラー・ベンツ社)は、正規のボディタイプとしてEクラス(当初はミディアムクラスと呼ばれた)に、ステーションワゴンを設定した。ユーザーの要望に応えたわけである。
さて最新のEクラスステーションワゴンである。フルモデルチェンジ版のEクラスに用意されるボディはセダンとステーションワゴン。パワーユニットは、2リットルガソリン・マイルドハイブリッド、2リットル・ディーゼルマイルドハイブリッド、2リットル・プラグインハイブリッドの3種だが、ステーションワゴンにはマイルドハイブリッドは設定されず2タイプのパワーユニットとなる。
◆1.5Lから2.0Lになった「E200」
試乗車はガソリンエンジンのマイルドハイブリッド仕様。機能説明の前にパッケージングについて触れよう。ステーションワゴンの全長×全幅×全高は4960×1880×1470(mm)で先代よりも全長で5mm、全幅で30mm、全高で5mmサイズアップ。ホイールベースは2960mmで先代よりも20mm延長されている。
試乗車のグレード名は「E200ステーションワゴン・アバンギャルド」。先代モデルのE200は1.5リットル4気筒エンジンを使っていたが、新型は2リットルエンジンとなり、久しぶりにグレード名と排気量がシンクロしてわかりやすくなった。その2リットルエンジンのスペックは204馬力(150kW)/320Nm。1.5リットル時代は184馬力(135kW)/280Nmなので排気量アップに伴い、スペックも向上している。
1.5リットル、2リットル両タイプともにマイルドハイブリッドシステムを採用する。マイルドハイブリッドシステムについては、1.5リットル時代はBSGと呼ばれるベルトドライブ式のスタータージェネレーターが使われていたが、新型の2リットルではベルトレスダイレクト駆動のISGが採用された。BSGのスペックは10kW/38NmであったがISGは17kW/205Nmとトルクが圧倒的に引き上げられている。
◆ハンドリングはEクラスとは思えないヒラリ感
乗り出すと非常に軽快なフィーリングであることに驚かされる。先代のE200は十分にトルクがあって過不足ないフィーリングであったが、新型は「おおっ、軽快だなあ」と思わず声を上げてしまうよさ。ISGのアシストが上手に効いている印象で、エンジンのトルクを2段階くらい上積みしたようなしっかりとしたトルク感を感じられる。
組み合わされるミッションはメルセデス・ベンツではおなじみの9AT。多段化による各ギヤ間の変速比がクローズしているのはもちろんだが、ISGによるトルク調整も入るので変速ショックはないに等しくシームレスである。アクセルを踏めばグングン加速していくので、じつに気持がいい加速を楽しめる。
ハンドリングはいい意味でEクラスとは思えないヒラリ感があり、まるで『Cクラス』をドライブしているような軽快感がある。試乗車はパノラミックスライディングルーフなどのオプションが付き、“素”の1860kgに対して50kg重い1910kgの車重。さらに成人男性3人乗車という悪条件ながら、じつに軽快であった。
◆世界的に絶滅危惧種のステーションワゴン
さて、ボディサイズが大きくなったが荷室容量はどうだろう。先代モデルのメーカー公表値(VDA計測)では640~1820リットルであったものが、615~1830リットルとなった。つまり定員乗車時の容量は25リットルダウン、最大拡張時は10リットルアップということになる。
ラゲッジ寸法については詳しいデータを見つけられなかったが、全長が5mm延長されているにもかかわらず、リヤのオーバーハングは20mm短縮されている。ハンドリングやスタイリング、乗り心地などを重視すると、前後ともにオーバーハングは短縮傾向となるが、ステーションワゴンの最大の魅力である積載性を損なうのはあまり関心できない。
世界的にステーションワゴンは絶滅危惧種になりつつある。かつては、ステーションワゴンのパラダイスであったアメリカでもシェアは縮小。現在はEクラスのステーションワゴンも輸出されていないという。そうした世界情勢のなかでEクラスステーションワゴンに乗れるわれわれ日本人はラッキーな立場だ。しかし、このまま世界的なシェアが減っていけば、ふたたびEクラスはセダンのみになってしまうかもしれない。そうしたとき、現代のコーチビルダーは活躍してくれるかには、あまり期待できないだろう。
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