【メルセデスベンツ Eクラス 新型試乗】SUV全盛の今に、果たしてどのような人が選ぶのだろう?…河村康彦
ひと昔前までは『Cクラス』/『Sクラス』と並び、「このブランドの3本柱」と紹介してもおかしくない位置づけにあったメルセデスベンツの『Eクラス』。
けれども率直なところ、その存在感がこのところやや薄れたように思えたのは、他のラインナップが急速に増したことに加えてピュアEVである「EQシリーズ」のプロモーション活動が強力に進められていたこととも無関係ではなさそう。そうした中で、数えて7代目となった新型が日本に上陸。早速テストドライブを行った。
セダンながらCピラーからトランクへの繋がり具合がなだらかで、従来型以上に“4ドアクーペ”調の雰囲気が強く漂うのがそのスタイリング。それでも前輪からフロントドアまで距離が長く、全体のプロポーションはやはり典型的なFRレイアウトの持ち主のそれ。フロントマスクにはEQシリーズとの近似性も感じられるが、全体の佇まいでは敢えてエンジン車らしさを演じている感も窺える。
“デジタルインテリアパッケージ”をオプション装着したモデルのダッシュボードには“3Dコクピットディスプレイ”や“MBUXスーパースクリーン”が採用され、インテリアの未来感は兄貴分であるSクラスや弟分のCクラスを圧倒。それでも、そうしたタッチパネル部分とは別にセンターパネルの下部にドライブモード選択やハザードランプのスイッチが別建てで設けられているのは、操作性に配慮をした良心と受け取るべきだろうか?
◆PHEVの「E350e」とディーゼルの「E220d」に試乗
テストドライブを行ったのは2リットル4気筒のターボ付きガソリンエンジンを組み合わせたプラグインハイブリッドの『E350e スポーツ』と、2リットル4気筒ターボ付きディーゼルエンジンマイルドハイブリッド・システムをアドオンした『E220d』。
WLTCモードで112kmというEV航続距離を謳う前者は、バッテリー充電量に余裕がある限り当然ピュアEVとしての振る舞いを示す。車両重量は2.2トン超で同ユニットを積むエンジン仕様よりも400kgほどは重い計算になるが、モーターの最高出力が95kW(130ps)相当と大きく、低い回転数から大トルクを発するというモーターならではの特性ゆえに動きに鈍重さは感じない。
20インチのシューズを履く割にばね下の動きが軽快なフットワークは好印象。走行中ロードノイズが目立つ傾向となるのはEV走行が可能なモデルの「あるある」だが、ノイズ面にフォーカスするのであればエンジンが目覚めた際の4気筒音が意外に大きく感じられた事の方が車格的に気になるポイントであった。
◆誰にでも薦められるパーソナルセダン、とはもう言えない
そんな350eから乗り換えると実際に車両重量が300kg以上軽く、オプションのAMGパッケージに含まれる標準比で1インチ大径となる19インチのシューズを履いていたにも関わらず、なお全体的な走りの軽快さを強く感じたのが220dだった。
こちらは基本、走行中は常にエンジンが稼働しているもののその遮音性能は高く静粛性は上々。昨今欧州では支持率をグンと下げてしまっているディーゼルエンジン車だが、街乗りシーンでも粘り強く高速クルージング時には高いスピード性能と優れた燃費性能を両立させるこうしたモデルをこのまま闇に葬ってしまうのは、やはり余りに惜しいものだと考えを新たにする。
それにしても、1.5リットル(!)のターボ付きガソリンエンシンを積む最もベーシックな仕様でも価格は800万円に迫り、全長×全幅サイズが4960×1880mmというのでは控えめに言っても、日本ではもはや「誰にでも薦められるパーソナルセダン」という表現を遥かに逸脱する存在になってしまったことは残念。
それも含め、「SUV全盛の今に、果たしてどのような人が選ぶのだろう?」とフと思ってしまったEクラスである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
河村康彦|モータージャーナリスト
1960年生まれ、工学院大学機械工学科を卒業後、自動車雑誌「モーターファン」編集部員を経て、1985年からフリーランス・ジャーナリストとして活動。
けれども率直なところ、その存在感がこのところやや薄れたように思えたのは、他のラインナップが急速に増したことに加えてピュアEVである「EQシリーズ」のプロモーション活動が強力に進められていたこととも無関係ではなさそう。そうした中で、数えて7代目となった新型が日本に上陸。早速テストドライブを行った。
セダンながらCピラーからトランクへの繋がり具合がなだらかで、従来型以上に“4ドアクーペ”調の雰囲気が強く漂うのがそのスタイリング。それでも前輪からフロントドアまで距離が長く、全体のプロポーションはやはり典型的なFRレイアウトの持ち主のそれ。フロントマスクにはEQシリーズとの近似性も感じられるが、全体の佇まいでは敢えてエンジン車らしさを演じている感も窺える。
“デジタルインテリアパッケージ”をオプション装着したモデルのダッシュボードには“3Dコクピットディスプレイ”や“MBUXスーパースクリーン”が採用され、インテリアの未来感は兄貴分であるSクラスや弟分のCクラスを圧倒。それでも、そうしたタッチパネル部分とは別にセンターパネルの下部にドライブモード選択やハザードランプのスイッチが別建てで設けられているのは、操作性に配慮をした良心と受け取るべきだろうか?
◆PHEVの「E350e」とディーゼルの「E220d」に試乗
テストドライブを行ったのは2リットル4気筒のターボ付きガソリンエンジンを組み合わせたプラグインハイブリッドの『E350e スポーツ』と、2リットル4気筒ターボ付きディーゼルエンジンマイルドハイブリッド・システムをアドオンした『E220d』。
WLTCモードで112kmというEV航続距離を謳う前者は、バッテリー充電量に余裕がある限り当然ピュアEVとしての振る舞いを示す。車両重量は2.2トン超で同ユニットを積むエンジン仕様よりも400kgほどは重い計算になるが、モーターの最高出力が95kW(130ps)相当と大きく、低い回転数から大トルクを発するというモーターならではの特性ゆえに動きに鈍重さは感じない。
20インチのシューズを履く割にばね下の動きが軽快なフットワークは好印象。走行中ロードノイズが目立つ傾向となるのはEV走行が可能なモデルの「あるある」だが、ノイズ面にフォーカスするのであればエンジンが目覚めた際の4気筒音が意外に大きく感じられた事の方が車格的に気になるポイントであった。
◆誰にでも薦められるパーソナルセダン、とはもう言えない
そんな350eから乗り換えると実際に車両重量が300kg以上軽く、オプションのAMGパッケージに含まれる標準比で1インチ大径となる19インチのシューズを履いていたにも関わらず、なお全体的な走りの軽快さを強く感じたのが220dだった。
こちらは基本、走行中は常にエンジンが稼働しているもののその遮音性能は高く静粛性は上々。昨今欧州では支持率をグンと下げてしまっているディーゼルエンジン車だが、街乗りシーンでも粘り強く高速クルージング時には高いスピード性能と優れた燃費性能を両立させるこうしたモデルをこのまま闇に葬ってしまうのは、やはり余りに惜しいものだと考えを新たにする。
それにしても、1.5リットル(!)のターボ付きガソリンエンシンを積む最もベーシックな仕様でも価格は800万円に迫り、全長×全幅サイズが4960×1880mmというのでは控えめに言っても、日本ではもはや「誰にでも薦められるパーソナルセダン」という表現を遥かに逸脱する存在になってしまったことは残念。
それも含め、「SUV全盛の今に、果たしてどのような人が選ぶのだろう?」とフと思ってしまったEクラスである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
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パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
河村康彦|モータージャーナリスト
1960年生まれ、工学院大学機械工学科を卒業後、自動車雑誌「モーターファン」編集部員を経て、1985年からフリーランス・ジャーナリストとして活動。
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