【ランドローバー ディフェンダー90 新型試乗】高級、高性能、タフネスの狭間にいる…中村孝仁
◆高級・高性能志向に変貌したランドローバーから生まれた
1948年にランドローバー社はローバー内のオフロード車を扱う部門として設立され、1951年には早くも英国王室御用達の称号を得るまでに成長した。
その際作られていたのは武骨で快適さや高級感の欠片もない「ランドローバー1」というモデルで、以後長くランドローバー社の屋台骨を支えるモデルとして活躍した。その系譜を受け継いで誕生するのが『ディフェンダー』なのだが、この名前が与えられたのは以外にも1990年とかなり新しい。そもそもはホイールベースの長さが車名になっていて「ランドローバー90」と呼ばれたモデルが「ディフェンダー90」となったもので、そのランドローバー90の誕生は1984年まで遡る。
その初代ディフェンダーはお世辞にも高級とも高性能ともいえないタフネスだけが売りのモデルであって、ただ鉄板の上にメーターやスイッチ類が無秩序に並べられたインパネなど、当時はエルゴノミクスを考慮しているのか疑問に思うほど雑然としたものであった。しかし、その高い走破性能は重宝され、ほとんど姿形を変えずに2016年まで32年間も生き永らえたのである。
次、即ち現行ディフェンダーが再登場するまでに4年のブランクがあった。この時代になるとランドローバー社はジャガーランドローバーと社名を変えて、ラインナップも明確に高級、高性能志向の強いブランドに変貌していたから、新たに誕生したディフェンダーもその方向性に則ったモデルチェンジが施されたことは言うまでもない。
今やランドローバー社が送り出す各モデルはいずれも高級で、高性能、しかし秘めたタフネスは昔のランドローバーを彷彿させるものとなっている。かつてランドローバーの故郷であるソリハルのプルービンググランドで『レンジローバー』に試乗したことがある。あまりの道無き道状態だったので、ここを走りきるクルマは他にあるのか(もちろん他銘柄)?と聞いたところ、答えは「無い!」であった。高級なレンジローバーですらそれだけの高い走破性能を備えているのである。
◆まるで背の高いジャガーFタイプのような加速
今回試乗した「カルパチアン エディション」と呼ばれるのは、2024年モデルの限定車とした登場したもので、搭載されるエンジンはAJ133と呼ばれる(ランドローバーの場合はLR-V8と呼ばれるそうだ)、ジャガーがトヨタ『セルシオ』の4リットルV8を参考の開発したエンジンの最新版で第3世代のものである。
排気量は5リットル。スーパーチャージャーを装備したそのパワーは525psに達するから、無類の高性能と言って過言ではない。このエンジン、元々ジャガー『Fタイプ』などにも採用されていたもので、改めて力強く加速させると、まるで背の高いジャガーFタイプと言っても過言ではないような走りを見せるのである。
限定のカルパチアンと呼ばれる名前の由来は、外装色カルパチアングレーから来るもので、いわゆる艶消しのグレーに塗装されてかなり無機質な印象と同時に冷たさと孤高な印象を与えるのだが、むしろそれがこのクルマの性格には合っている印象すら窺える。
ホイールベースは90インチ。正確には2585mmだが、若干チョロQ的なユーモアさもあって、うまい具合のミックスとなっている。リアサイドウィンドーにはそれを何と呼ぶのかは知らないが、ランドローバーのエンブレムをあしらった四角いプレートが付く。オプションだそうで、これをつけることで視覚的な車両全体のバランスが取れるのだというが、後席の住人にとっては迷惑なもので、おかげで外がほとんど見えない。
ホイールサイズはついに22インチだが、それを履いていてもやや小さめのホイールに見えるほどだから、短いとはいえ如何にクルマが巨大かを物語る。
◆高級、高性能、タフネスの狭間にいる
2023年に登場したレンジローバー系のモデルがあまりに秀逸な乗り心地を示すので、それから比べるとディフェンダーの乗り心地は一歩下がったところにあるが、それでも本来示すであろう(今回オフロードには分け入っていないので)走破性を鑑みれば十分な快適性を持っている。それにこれだけホイールベースが短いとやはり取り回しも楽だし、ワインディングなどの走りもかなり颯爽としている。
まあ、難点としてはあまりに床面までの高さが高くて乗降に苦労すること。特にリアシートに人を乗せたい時などは結構大変である。フロントシートを前に移動してスペースを作り、さらに背もたれを倒してという作業だが、これを考慮して助手席側のシートは手動で前に出せるようになっている。もう一つはやはりラゲッジスペースの狭いことだ。だからどのように使うかで90と110のチョイスが決まる。
現行のディフェンダーは先代と比べたら、比べ物にならないレベルで高級になった。そしてV8搭載モデルの高性能ぶりはリアルスポーツカーと比較できる爆発的な加速力を見せる。そして誕生当時から受け継いできた無類のタフネス。ディフェンダー90はまさにその狭間にいるクルマである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。
1948年にランドローバー社はローバー内のオフロード車を扱う部門として設立され、1951年には早くも英国王室御用達の称号を得るまでに成長した。
その際作られていたのは武骨で快適さや高級感の欠片もない「ランドローバー1」というモデルで、以後長くランドローバー社の屋台骨を支えるモデルとして活躍した。その系譜を受け継いで誕生するのが『ディフェンダー』なのだが、この名前が与えられたのは以外にも1990年とかなり新しい。そもそもはホイールベースの長さが車名になっていて「ランドローバー90」と呼ばれたモデルが「ディフェンダー90」となったもので、そのランドローバー90の誕生は1984年まで遡る。
その初代ディフェンダーはお世辞にも高級とも高性能ともいえないタフネスだけが売りのモデルであって、ただ鉄板の上にメーターやスイッチ類が無秩序に並べられたインパネなど、当時はエルゴノミクスを考慮しているのか疑問に思うほど雑然としたものであった。しかし、その高い走破性能は重宝され、ほとんど姿形を変えずに2016年まで32年間も生き永らえたのである。
次、即ち現行ディフェンダーが再登場するまでに4年のブランクがあった。この時代になるとランドローバー社はジャガーランドローバーと社名を変えて、ラインナップも明確に高級、高性能志向の強いブランドに変貌していたから、新たに誕生したディフェンダーもその方向性に則ったモデルチェンジが施されたことは言うまでもない。
今やランドローバー社が送り出す各モデルはいずれも高級で、高性能、しかし秘めたタフネスは昔のランドローバーを彷彿させるものとなっている。かつてランドローバーの故郷であるソリハルのプルービンググランドで『レンジローバー』に試乗したことがある。あまりの道無き道状態だったので、ここを走りきるクルマは他にあるのか(もちろん他銘柄)?と聞いたところ、答えは「無い!」であった。高級なレンジローバーですらそれだけの高い走破性能を備えているのである。
◆まるで背の高いジャガーFタイプのような加速
今回試乗した「カルパチアン エディション」と呼ばれるのは、2024年モデルの限定車とした登場したもので、搭載されるエンジンはAJ133と呼ばれる(ランドローバーの場合はLR-V8と呼ばれるそうだ)、ジャガーがトヨタ『セルシオ』の4リットルV8を参考の開発したエンジンの最新版で第3世代のものである。
排気量は5リットル。スーパーチャージャーを装備したそのパワーは525psに達するから、無類の高性能と言って過言ではない。このエンジン、元々ジャガー『Fタイプ』などにも採用されていたもので、改めて力強く加速させると、まるで背の高いジャガーFタイプと言っても過言ではないような走りを見せるのである。
限定のカルパチアンと呼ばれる名前の由来は、外装色カルパチアングレーから来るもので、いわゆる艶消しのグレーに塗装されてかなり無機質な印象と同時に冷たさと孤高な印象を与えるのだが、むしろそれがこのクルマの性格には合っている印象すら窺える。
ホイールベースは90インチ。正確には2585mmだが、若干チョロQ的なユーモアさもあって、うまい具合のミックスとなっている。リアサイドウィンドーにはそれを何と呼ぶのかは知らないが、ランドローバーのエンブレムをあしらった四角いプレートが付く。オプションだそうで、これをつけることで視覚的な車両全体のバランスが取れるのだというが、後席の住人にとっては迷惑なもので、おかげで外がほとんど見えない。
ホイールサイズはついに22インチだが、それを履いていてもやや小さめのホイールに見えるほどだから、短いとはいえ如何にクルマが巨大かを物語る。
◆高級、高性能、タフネスの狭間にいる
2023年に登場したレンジローバー系のモデルがあまりに秀逸な乗り心地を示すので、それから比べるとディフェンダーの乗り心地は一歩下がったところにあるが、それでも本来示すであろう(今回オフロードには分け入っていないので)走破性を鑑みれば十分な快適性を持っている。それにこれだけホイールベースが短いとやはり取り回しも楽だし、ワインディングなどの走りもかなり颯爽としている。
まあ、難点としてはあまりに床面までの高さが高くて乗降に苦労すること。特にリアシートに人を乗せたい時などは結構大変である。フロントシートを前に移動してスペースを作り、さらに背もたれを倒してという作業だが、これを考慮して助手席側のシートは手動で前に出せるようになっている。もう一つはやはりラゲッジスペースの狭いことだ。だからどのように使うかで90と110のチョイスが決まる。
現行のディフェンダーは先代と比べたら、比べ物にならないレベルで高級になった。そしてV8搭載モデルの高性能ぶりはリアルスポーツカーと比較できる爆発的な加速力を見せる。そして誕生当時から受け継いできた無類のタフネス。ディフェンダー90はまさにその狭間にいるクルマである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。
最新ニュース
-
-
ついに1000万円超えた、トヨタ『アルファード』『ヴェルファイア』に初のPHEV…510万円からの入門車も
2024.12.21
-
-
-
初心者必見! エアクリーナーフィルター交換で失敗しないためのポイント~カスタムHOW TO~
2024.12.21
-
-
-
トヨタ『MIRAI』が動力源の水素キッチンカー、汐留クリスマスマーケットに出店へ…12月21-22日
2024.12.21
-
-
-
日産『キックス』旧型を「キックス プレイ」として併売へ
2024.12.21
-
-
-
マルチスズキ、『ワゴンR』発売25周年を祝う…3年連続インドベストセラー車に
2024.12.21
-
-
-
横浜ゴムはタイヤ/ホイールの2ブース出展、織戸茉彩選手の『MAAYA GR86』展示も…東京オートサロン2025
2024.12.21
-
-
-
マツダが8車種と最多、米IIHS最高の安全性評価「トップセーフティピック+」獲得
2024.12.21
-
最新ニュース
-
-
ついに1000万円超えた、トヨタ『アルファード』『ヴェルファイア』に初のPHEV…510万円からの入門車も
2024.12.21
-
-
-
初心者必見! エアクリーナーフィルター交換で失敗しないためのポイント~カスタムHOW TO~
2024.12.21
-
-
-
トヨタ『MIRAI』が動力源の水素キッチンカー、汐留クリスマスマーケットに出店へ…12月21-22日
2024.12.21
-
-
-
日産『キックス』旧型を「キックス プレイ」として併売へ
2024.12.21
-
-
-
マルチスズキ、『ワゴンR』発売25周年を祝う…3年連続インドベストセラー車に
2024.12.21
-
-
-
横浜ゴムはタイヤ/ホイールの2ブース出展、織戸茉彩選手の『MAAYA GR86』展示も…東京オートサロン2025
2024.12.21
-
MORIZO on the Road