【ホンダ ヴェゼル 新型試乗】『WR-V』よりも“雰囲気”を求めたいユーザーに…島崎七生人
では実際にはどうか?というと、確かに、これまでに対してクルマとしての上質感が格段に高められたのを実感した。筆者の場合、何を置いても1番に気にしたいのが乗り心地だが、今回、FFの足回りの設定を従来の日本仕様からAWD(カタログの諸元表では4WDと表記されている)に揃えたことで、総じて、ヴェセルのキャラクターに見合った穏やかで心地いい乗り味をモノにしてくれた。
◆ヴェゼルらしく走らせるのに過不足ない動力性能
もちろんパワートレイン、グレード、車両重量(前後重量配分)、タイヤ(4銘柄を確認した)とその指定空気圧により個々の特性の違いも実感。この記事はプレス向けの試乗会で撮影を含め取材したものだが、その後にもう1台、個別に借り出したところ、この試乗車(e:HEV Z・AWD)の低速から減衰を効かせ細かな波状路面でも路面を均すように走る振るまいと、煽られ感のないフラットで心地いい乗り味が、筆者的にはツボにハマった。
スペック的には同車は車重1450kg(前:870kg/後:580kg)と都合4台の試乗車中もっともウエイトがあったが、装着タイヤ、ミシュラン・プライマシー4(225/50R18 95V、指定空気圧は前:220kPa/後:210kPa)のしなやかでサスペンションと完全に一体化した仕事振りも奏功して、スッと切り込めるなめらかで自然なステアリングフィールとともに、18インチタイヤながら極上のドライバビリティを味わわせてくれると感じた次第。
また自力での撮影を諦めたほどの雨にも見舞われたが、高速走行、一般路ともにAWDの心強い接地感、トラクション性能も味わえた。
e:HEVについても、冒頭の奥山LPLが制御に腐心したところだそうで、確かに、走行中にエンジンが“発動”するタイミングはかなり自然。さらに遮音などの手当てにより、エンジン回転が高まった場合の音量も気に障らないレベルに抑え込まれている。もちろん動力性能そのものも、ヴェゼルをヴェゼルらしく走らせたい場合に過不足がない。
◆『WR-V』よりもニュアンスや雰囲気を求めたいユーザー向き
外観はフロントグリルの輪郭が変わり、クリーンさはそのままに僅かだけ押し出し感を強めた。一方でリヤに回るとテールランプが変わった。従来の、道路地図の“開通予定区間の表示”のようだった点々の部分が水平の1本線になり、もともとスリークなヴェゼルのスタイルには、このほうが馴染みがいいと思う。
インテリアでは運転席まわりの、センターコンソールに沿って“半周”していた一種の加飾部分(PLaYはオレンジ色だったりした)が取り払われ、新たに実質重視の2段ポケットが作られ、利便性が向上。
ほかに後席ではヘッドレストが人の後頭部に接する面を大きくした新形状で頭がもたせかけやすくなったほか、センターアームレストには引き出し時に便利なベルトが付いた。またセンターコンソール後端のUSBソケットが2口であるのは変わらないが、従来のタイプAからタイプCに改められている。
現在は同じコンパクトSUVでは『WR-V』をラインアップするホンダ。このクルマも気になったので、ヴェゼルの試乗会後に改めて借り出して乗ったが、WR-Vが走りっぷりも機能性もより実利、実用性重視なのに対しコチラのヴェゼルはよりスカした……いや、クルマにさっぱりとしていながらもニュアンスや雰囲気を求めたいユーザー向き。
今回の改良では、そうしたユーザーの神経を逆撫でしない走りの環境がほぼぼぼ完璧に整えられた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
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