【BMW X5 xDrive 40d 新型試乗】直6ディーゼルターボの魅力満載…中村孝仁
現行BMW『X5』はコードネーム「G05」を持ち、2019年にデビューしたモデルである。つまり誕生からすでに5年が経過している。
しかし、今回お借りした「xDrive 40d」が登場したのは2022年。そして2023年4月にはX5そのものにマイナーチェンジが施され、内外装の意匠変更とシステム総出力352ps、720Nmを発揮する6気筒ターボディーゼルが搭載された。
外見は昨年12月に発表された最新モデルと比べて今回試乗したモデルではフロント周りの造形が異なり、一クラス下の『xDrive 35d』との差別化が図られたのか、フロント周りは上級ガソリンモデルと同じ顔つきにされている。また、リアも22年に登場した時とは異なる意匠に変更された。インテリアは最近のBMW同様に、大型のカーブドディスプレイを持つダッシュボードに変更されている。
時間が経過しているモデルを敢えてお借りしたのは(半年ちょっとだが)、改めて今、日本で買える6気筒ターボディーゼルモデルを検証するためだった。もっとも安価に入手できるマツダ『CX-60』の3.3リットルを筆頭に、インジニウムの名を持つランドローバーの3リットルターボディーゼル、そして文句なく上質で一頭地抜きんでているメルセデスの3リットルターボディーゼルOM652。それは最近になってさらにパフォーマンスを増してライバルを引き離しにかかった。
そして今回お借りしたM57のコードネームを持つBMWの直6ターボディーゼルである。これら4種類が日本で購入できる直列6気筒ターボディーゼルである。これ以外にはアウディが3リットルのV6ターボディーゼルを『Q7』及び『Q8』に設定しているが、今回は直6に絞って話をしようと思う。
◆「直6への回帰現象」の理由
直列6気筒というエンジンは構造上もっともバランスに優れたエンジンで、スムーズさという点ではピカイチだったが、どうしてもエンジン長が長くならざるを得ず、多くのメーカーはV6に移行した歴史がある。そんな中で直6を捨てなかった唯一のメーカーが、BMWだ。
最近他メーカーが直6に回帰している理由は元々のスムーズさに加え、排ガス処理をエンジンの片側バンクのみで完結できることで排ガス対策が有利になることや、従来エンジンの前に装備しなければならなかった補器類を別な場所に移してエンジンと補器類を含む全長を短くできるようになったことが、直6への回帰現象ではないかと思う。
とりわけディーゼルの場合、4気筒は爆発間隔の問題からどうしても排気量が大きくなると2次振動の問題が発生するため、6気筒と比べると特に見劣りするのだが、マツダの場合4気筒の出来が非常に良いことと、6気筒の熟成がイマイチなことから、必ずしも6気筒が優れているとは言い難い。他の海外メーカー3社のものと比べて、振動、回転フィール共に見劣りしていると言わざるを得ないのである。
そして前述したようにメルセデスのOM652エンジンは個人的に過去体験したどのディーゼルよりも優れていて、音対策をきっちりとやったモデルの場合は、室内にいてそれがディーゼルであると認識するのが難しいほど静かでスムーズである。
◆X5の運動性能は「ジキルとハイド」
ではランドローバーのインジニウムとBMWのM57はどうか。純粋に音と振動という点だけにスポットを当てた場合はBMWの勝ちだ。理由はいたって簡単でBMWには48Vマイルドハイブリッドシステムが装備され、発進時は電気が司るから。一方のランドローバーはこの装備がない。
純粋にエンジンだけのフィーリングを見た場合は正直なところ甲乙付け難い。いずれも場合もディーゼルのハミングは室内に届くものの、それが決して不快ではないし、3リットルのパフォーマンスはたとえ重量が2.4トン近い車重があっても、問答無用で加速していく様はランドローバーでも変わらなかった。
ただ、ランドローバーで試乗したのは『ディフェンダー』。そしてこちらはラグジャリーなX5であるから、静粛性に関して言えば当然割り引いて考える必要がある。それにしてもX5の運動性能は一体何と評すればよいのだろうか。このでかい図体でいとも簡単にワインディングを駆け巡る。それでいながら街中ではおしとやかで従順、快適で静かと来ているのだから、まさにその性格はジキルとハイドである。
地獄の沙汰は金次第とはよく言うが、自動車も今や地獄の沙汰になったようで、きちんと作られたものはそれなりに高いということだろうが、それにしても今や輸入高級車は完全に高嶺の花になっている。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
しかし、今回お借りした「xDrive 40d」が登場したのは2022年。そして2023年4月にはX5そのものにマイナーチェンジが施され、内外装の意匠変更とシステム総出力352ps、720Nmを発揮する6気筒ターボディーゼルが搭載された。
外見は昨年12月に発表された最新モデルと比べて今回試乗したモデルではフロント周りの造形が異なり、一クラス下の『xDrive 35d』との差別化が図られたのか、フロント周りは上級ガソリンモデルと同じ顔つきにされている。また、リアも22年に登場した時とは異なる意匠に変更された。インテリアは最近のBMW同様に、大型のカーブドディスプレイを持つダッシュボードに変更されている。
時間が経過しているモデルを敢えてお借りしたのは(半年ちょっとだが)、改めて今、日本で買える6気筒ターボディーゼルモデルを検証するためだった。もっとも安価に入手できるマツダ『CX-60』の3.3リットルを筆頭に、インジニウムの名を持つランドローバーの3リットルターボディーゼル、そして文句なく上質で一頭地抜きんでているメルセデスの3リットルターボディーゼルOM652。それは最近になってさらにパフォーマンスを増してライバルを引き離しにかかった。
そして今回お借りしたM57のコードネームを持つBMWの直6ターボディーゼルである。これら4種類が日本で購入できる直列6気筒ターボディーゼルである。これ以外にはアウディが3リットルのV6ターボディーゼルを『Q7』及び『Q8』に設定しているが、今回は直6に絞って話をしようと思う。
◆「直6への回帰現象」の理由
直列6気筒というエンジンは構造上もっともバランスに優れたエンジンで、スムーズさという点ではピカイチだったが、どうしてもエンジン長が長くならざるを得ず、多くのメーカーはV6に移行した歴史がある。そんな中で直6を捨てなかった唯一のメーカーが、BMWだ。
最近他メーカーが直6に回帰している理由は元々のスムーズさに加え、排ガス処理をエンジンの片側バンクのみで完結できることで排ガス対策が有利になることや、従来エンジンの前に装備しなければならなかった補器類を別な場所に移してエンジンと補器類を含む全長を短くできるようになったことが、直6への回帰現象ではないかと思う。
とりわけディーゼルの場合、4気筒は爆発間隔の問題からどうしても排気量が大きくなると2次振動の問題が発生するため、6気筒と比べると特に見劣りするのだが、マツダの場合4気筒の出来が非常に良いことと、6気筒の熟成がイマイチなことから、必ずしも6気筒が優れているとは言い難い。他の海外メーカー3社のものと比べて、振動、回転フィール共に見劣りしていると言わざるを得ないのである。
そして前述したようにメルセデスのOM652エンジンは個人的に過去体験したどのディーゼルよりも優れていて、音対策をきっちりとやったモデルの場合は、室内にいてそれがディーゼルであると認識するのが難しいほど静かでスムーズである。
◆X5の運動性能は「ジキルとハイド」
ではランドローバーのインジニウムとBMWのM57はどうか。純粋に音と振動という点だけにスポットを当てた場合はBMWの勝ちだ。理由はいたって簡単でBMWには48Vマイルドハイブリッドシステムが装備され、発進時は電気が司るから。一方のランドローバーはこの装備がない。
純粋にエンジンだけのフィーリングを見た場合は正直なところ甲乙付け難い。いずれも場合もディーゼルのハミングは室内に届くものの、それが決して不快ではないし、3リットルのパフォーマンスはたとえ重量が2.4トン近い車重があっても、問答無用で加速していく様はランドローバーでも変わらなかった。
ただ、ランドローバーで試乗したのは『ディフェンダー』。そしてこちらはラグジャリーなX5であるから、静粛性に関して言えば当然割り引いて考える必要がある。それにしてもX5の運動性能は一体何と評すればよいのだろうか。このでかい図体でいとも簡単にワインディングを駆け巡る。それでいながら街中ではおしとやかで従順、快適で静かと来ているのだから、まさにその性格はジキルとハイドである。
地獄の沙汰は金次第とはよく言うが、自動車も今や地獄の沙汰になったようで、きちんと作られたものはそれなりに高いということだろうが、それにしても今や輸入高級車は完全に高嶺の花になっている。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
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