【ジープ アベンジャー 新型試乗】史上初のEVに「こんなジープは体験したことがない!」…中村孝仁
その名を『アベンジャー』という。サイズは『レネゲード』よりも小さい。ということは現行ジープ・ラインナップで最小…ということになる。
でも、そのスタイリングがトップモデルの『グランドチェロキー』から脈々と流れるジープ・スタイリングを纏っているからなのか、小さくても違和感は全く感じさせないし(むしろレネゲードに違和感を感じてしまう)、そもそもそれなりに堂々としている。3サイズは全長4105×全幅1775×全高1595mm。日本のライバルと比べても、ほぼ変わらないサイズである。アメ車はデカい…という近視眼的なモノの見方はもうできない。
それだけではない。このクルマは、少なくとも日本ではジープ史上初のBEVなのである。もっともそのメカニカルトレーンはと言えば、まんまフィアット『600e』のそれで、メータークラスターを除けば、ダッシュについているスイッチ類もほぼフィアット600eである。まあ正直言えば、室内に関しては「つまんねぇなぁ」と感じる向きもあるだろうし、事実試乗した私も、インテリアのデザインに関しては「つまんねぇなぁ」であった。でも、これが今の自動車産業のやり方。
とりわけブランドが14(だったか)もあるステランティスの場合、上手くやりくりしないとやっていけないし、事実ブランドの粛清が始まるとも噂される。まぁジープというブランドは、今や押しも押されもせぬ強力なアイデンティティーとブランド力を持ち、おまけに販売もステランティスの中では好調な方だろうから、無くなることはないと思う。
◆プジョーに乗っている気分にさせられる
さて、フィアット600と同じメカニカルトレーンと言っても、実際には電動トレーンなのだが、54.06kWhのバッテリーに156psのモーターをフロントに積む。ただし、可能走行距離はフィアットの493kmに対して486kmと若干劣る。まあ誤差の範囲ともいえるが。
メカニカルな部分でフィアットとの違いは、走行モード。フィアットがスポーツ、ノーマル、エコの3パターンだったのに対し、ジープにはこれに加えてスノー、サンド、マッドという3つのオフロードというか、滑りやすい路面も含めたモードが追加されている。ただし、このクルマは純然たるFWD車であって、4WDではない。だから必然的にそうした路面での走りには限界があり、他の4WDジープ兄弟たちのようにはいかないはずだ。
今回の試乗はもちろんオンロードのみ。フィアットの時にも感じていたのだが、このプラットフォーム、基本的には他にプジョー『2008』にも使われていると聞くが、デビューしたのは2018年の『DS 3』で初登場らしい。そしてモジュラー性が高く、2種のトレッド幅、3種のホイールベースと3種のリアモジュール、それに複数のホイール径に対応するそうで、いわゆるBセグメント程度のモデルに使われる。というわけで基本的にはPSA、中でもプジョーが中心となって開発したもの。だからだろうか、乗っていると何かプジョーに乗っている気分にさせられる。
具体的には、プジョーのようなたっぷりとしたストローク量を感じるサスペンションの動きや、そのフラットライド性などで、およそアメリカンの雰囲気は皆無。今さら、こんなコンパクトなクルマにアメリカンライドなんて言ってもそもそも似合わないし、正直欲しくもない。かといって、お国柄が感じられないと言えるかというと、やはりそのスタイルからジープはジープだと感じさせるので、今の世の中ではこれが正解なのだと思う。
◆こんなジープは体験したことがない
残念ながら「スノー」は使ってみたものの、「サンド」と「マッド」は使わなかった。もちろんエコとスポーツは堪能したが、スポーツにしていきなりキビキビ感が増すというよりも、ドンとパワフルになった感触の方が強かった。
とにかく、路面からの微振動を極力排し、良い路面ではまさに滑るように走る。こんなジープは体験したことがない。往復で280kmほどのドライブをしてみたが、電池残量26%、航続可能距離70km程度まで到達した。私はこの電池残量に極めて敏感というかチキンで、携帯も残量が70%ほどになるとソワソワし、50%を切るとヒヤヒヤする。そんなわけだから、通常だったらこの状況は確実にどこかに止めて、充電というパターンだった。
幸か不幸か、最後の充電施設だった首都高、大黒パーキングをスルーした結果こうなったのだが、最後はまだまだ行ける…と、電気自動車の航続距離にだいぶ自信が持てるようになったのはうれしい副産物であった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来47年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。
でも、そのスタイリングがトップモデルの『グランドチェロキー』から脈々と流れるジープ・スタイリングを纏っているからなのか、小さくても違和感は全く感じさせないし(むしろレネゲードに違和感を感じてしまう)、そもそもそれなりに堂々としている。3サイズは全長4105×全幅1775×全高1595mm。日本のライバルと比べても、ほぼ変わらないサイズである。アメ車はデカい…という近視眼的なモノの見方はもうできない。
それだけではない。このクルマは、少なくとも日本ではジープ史上初のBEVなのである。もっともそのメカニカルトレーンはと言えば、まんまフィアット『600e』のそれで、メータークラスターを除けば、ダッシュについているスイッチ類もほぼフィアット600eである。まあ正直言えば、室内に関しては「つまんねぇなぁ」と感じる向きもあるだろうし、事実試乗した私も、インテリアのデザインに関しては「つまんねぇなぁ」であった。でも、これが今の自動車産業のやり方。
とりわけブランドが14(だったか)もあるステランティスの場合、上手くやりくりしないとやっていけないし、事実ブランドの粛清が始まるとも噂される。まぁジープというブランドは、今や押しも押されもせぬ強力なアイデンティティーとブランド力を持ち、おまけに販売もステランティスの中では好調な方だろうから、無くなることはないと思う。
◆プジョーに乗っている気分にさせられる
さて、フィアット600と同じメカニカルトレーンと言っても、実際には電動トレーンなのだが、54.06kWhのバッテリーに156psのモーターをフロントに積む。ただし、可能走行距離はフィアットの493kmに対して486kmと若干劣る。まあ誤差の範囲ともいえるが。
メカニカルな部分でフィアットとの違いは、走行モード。フィアットがスポーツ、ノーマル、エコの3パターンだったのに対し、ジープにはこれに加えてスノー、サンド、マッドという3つのオフロードというか、滑りやすい路面も含めたモードが追加されている。ただし、このクルマは純然たるFWD車であって、4WDではない。だから必然的にそうした路面での走りには限界があり、他の4WDジープ兄弟たちのようにはいかないはずだ。
今回の試乗はもちろんオンロードのみ。フィアットの時にも感じていたのだが、このプラットフォーム、基本的には他にプジョー『2008』にも使われていると聞くが、デビューしたのは2018年の『DS 3』で初登場らしい。そしてモジュラー性が高く、2種のトレッド幅、3種のホイールベースと3種のリアモジュール、それに複数のホイール径に対応するそうで、いわゆるBセグメント程度のモデルに使われる。というわけで基本的にはPSA、中でもプジョーが中心となって開発したもの。だからだろうか、乗っていると何かプジョーに乗っている気分にさせられる。
具体的には、プジョーのようなたっぷりとしたストローク量を感じるサスペンションの動きや、そのフラットライド性などで、およそアメリカンの雰囲気は皆無。今さら、こんなコンパクトなクルマにアメリカンライドなんて言ってもそもそも似合わないし、正直欲しくもない。かといって、お国柄が感じられないと言えるかというと、やはりそのスタイルからジープはジープだと感じさせるので、今の世の中ではこれが正解なのだと思う。
◆こんなジープは体験したことがない
残念ながら「スノー」は使ってみたものの、「サンド」と「マッド」は使わなかった。もちろんエコとスポーツは堪能したが、スポーツにしていきなりキビキビ感が増すというよりも、ドンとパワフルになった感触の方が強かった。
とにかく、路面からの微振動を極力排し、良い路面ではまさに滑るように走る。こんなジープは体験したことがない。往復で280kmほどのドライブをしてみたが、電池残量26%、航続可能距離70km程度まで到達した。私はこの電池残量に極めて敏感というかチキンで、携帯も残量が70%ほどになるとソワソワし、50%を切るとヒヤヒヤする。そんなわけだから、通常だったらこの状況は確実にどこかに止めて、充電というパターンだった。
幸か不幸か、最後の充電施設だった首都高、大黒パーキングをスルーした結果こうなったのだが、最後はまだまだ行ける…と、電気自動車の航続距離にだいぶ自信が持てるようになったのはうれしい副産物であった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来47年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。
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