【試乗記】スバル・インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight(4WD/CVT)

【試乗記】スバル・インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight(4WD/CVT)

■これでいいじゃないか!

スバル・インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight(4WD/CVT)
新世代のプラットフォームを採用した「スバル・インプレッサ」の1.6リッターモデルに、清水草一が試乗。その走りや乗り心地を、2リッターモデルとの比較も交えながら詳しくリポートする。

■2リッターモデルは高すぎる!?

今回試乗したのは、ハッチバックモデルの「インプレッサスポーツ」。ほかにセダン型のボディーを持つ「インプレッサG4」がラインナップされる。
今回試乗したのは、ハッチバックモデルの「インプレッサスポーツ」。ほかにセダン型のボディーを持つ「インプレッサG4」がラインナップされる。
オプションの「ブラックレザーセレクション」を選択したテスト車のシートは、なめらかな触感を特徴とする本革仕立て。前席(写真)にはシートヒーターも備わる。
オプションの「ブラックレザーセレクション」を選択したテスト車のシートは、なめらかな触感を特徴とする本革仕立て。前席(写真)にはシートヒーターも備わる。
運転席まわりの様子。本革巻きのステアリングホイールやシフトノブは「ブラックレザーセレクション」に含まれる。
運転席まわりの様子。本革巻きのステアリングホイールやシフトノブは「ブラックレザーセレクション」に含まれる。
1.6リッター水平対向4気筒エンジンは、最高出力115psを発生。JC08モードの燃費値は、今回テストした4WD車で17.0km/リッター。FF車では18.2km/リッターとなる。
1.6リッター水平対向4気筒エンジンは、最高出力115psを発生。JC08モードの燃費値は、今回テストした4WD車で17.0km/リッター。FF車では18.2km/リッターとなる。
筆者は新型インプレッサについて懐疑的な方だった。2リッターモデルに乗った限り、新しいシャシーは確かにいいが、それ以外の部分は物足りなかった。

具体的には、

その1:あまりにもエンジンがフツー
その2:電子スロットルのセッティングがガバチョ(早開き)気味
その3:やっぱりカーマニア的にCVTは「ありえない」
その4:でもタイヤは18インチで、実用車としては乗り心地がそれなりにハードというのがちょっとチグハグ
その5:街乗りでリッター10kmを割る燃費
その6:悪くはないが、どこかのメーカーを参考にしました的無個性なスタイリング

こんなところですが、これらの根底には価格があった。

2リッター自然吸気で154psという、ごく普通の動力性能を持つ実用車が、4WDモデルだとなんだかんだで300万円近くなる(「インプレッサスポーツ2.0i-S EyeSight」の4WD車で車両本体259万2000円)。

安全装備その他もろもろでクルマが全体的に高くならざるを得ないのはわかっているが、インプレッサ2.0は特に高性能でもなく高級でもなくファッショナブルでもないのは間違いなく、そういうフツーのクルマが300万円近いというのは精神的にツライ。

ならば全モデルターボ付きの「レヴォーグ」や、これをベースに開発されるであろう次期「WRX STI」系モデルをフンパツした方がシアワセになれるのではないか? と思えたのだ。
今回試乗したのは、ハッチバックモデルの「インプレッサスポーツ」。ほかにセダン型のボディーを持つ「インプレッサG4」がラインナップされる。
今回試乗したのは、ハッチバックモデルの「インプレッサスポーツ」。ほかにセダン型のボディーを持つ「インプレッサG4」がラインナップされる。
オプションの「ブラックレザーセレクション」を選択したテスト車のシートは、なめらかな触感を特徴とする本革仕立て。前席(写真)にはシートヒーターも備わる。
オプションの「ブラックレザーセレクション」を選択したテスト車のシートは、なめらかな触感を特徴とする本革仕立て。前席(写真)にはシートヒーターも備わる。
運転席まわりの様子。本革巻きのステアリングホイールやシフトノブは「ブラックレザーセレクション」に含まれる。
運転席まわりの様子。本革巻きのステアリングホイールやシフトノブは「ブラックレザーセレクション」に含まれる。
1.6リッター水平対向4気筒エンジンは、最高出力115psを発生。JC08モードの燃費値は、今回テストした4WD車で17.0km/リッター。FF車では18.2km/リッターとなる。
1.6リッター水平対向4気筒エンジンは、最高出力115psを発生。JC08モードの燃費値は、今回テストした4WD車で17.0km/リッター。FF車では18.2km/リッターとなる。

■“走りの軽さ”が印象的

「インプレッサスポーツ」には、テスト車の「ピュアレッド」を含む、全7色のボディーカラーが用意される。
「インプレッサスポーツ」には、テスト車の「ピュアレッド」を含む、全7色のボディーカラーが用意される。
ステアリング連動型のLED式ヘッドランプ。セットオプション「ブラックレザーセレクション」に含まれる。
ステアリング連動型のLED式ヘッドランプ。セットオプション「ブラックレザーセレクション」に含まれる。
メーターはオーソドックスな2眼タイプ。中央には、液晶のマルチインフォメーションディスプレイがレイアウトされる。
メーターはオーソドックスな2眼タイプ。中央には、液晶のマルチインフォメーションディスプレイがレイアウトされる。
歩行者に対する安全装備として、「インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight」には歩行者エアバッグが標準で搭載される。
歩行者に対する安全装備として、「インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight」には歩行者エアバッグが標準で搭載される。
で今回は、昨年末に追加されたインプレッサ1.6を試させていただくというわけです。

価格は、試乗したインプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight(4WD)で213万8400円。先述の2.0i-S EyeSight(4WD)より約45万円安い。ただし、同グレード同士を比べると、価格差は24万円ほど。排気量が400cc違うということは、昔の感覚だと価格差は40万円なので、1.6を選ぶ理由はないような気もするが、実際はどんなもんでしょうか。

個人的にはズバリ、「1.6の方が断然買い」だと思いました!

まず、1.6の方が軽い。車両重量は50kgの差だが、ノーズが軽いしエンジンの回転フィールも軽い。パワーは1.6が115ps、2.0が154ps。それなりの差はあるが、しかし2.0はインプレッサのトップモデルということでおのずと期待値が高まり、その分期待外れ感を生みやすかった。

しかし1.6は最廉価グレード。最初から大きな期待はないので、「けっこう走るじゃないか!」となったのです。アクセルのガバチョ(早開き)感も、トルクが小さいせいか1.6の方が穏やかで好印象でした。

もちろん、アクセルを床まで踏み込んだ時のパワーには差があるわけですが、絶対パワーを追い求める人には、前述のようにほかの選択肢もある。フランス車には「最廉価グレードが最良グレード」的な法則があったりするが、インプレッサにも今のところそれが当てはまる感じがするのである。
「インプレッサスポーツ」には、テスト車の「ピュアレッド」を含む、全7色のボディーカラーが用意される。
「インプレッサスポーツ」には、テスト車の「ピュアレッド」を含む、全7色のボディーカラーが用意される。
ステアリング連動型のLED式ヘッドランプ。セットオプション「ブラックレザーセレクション」に含まれる。
ステアリング連動型のLED式ヘッドランプ。セットオプション「ブラックレザーセレクション」に含まれる。
メーターはオーソドックスな2眼タイプ。中央には、液晶のマルチインフォメーションディスプレイがレイアウトされる。
メーターはオーソドックスな2眼タイプ。中央には、液晶のマルチインフォメーションディスプレイがレイアウトされる。
歩行者に対する安全装備として、「インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight」には歩行者エアバッグが標準で搭載される。
歩行者に対する安全装備として、「インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight」には歩行者エアバッグが標準で搭載される。

■全体のバランスがいい

トランスミッションは、「リニアトロニック」と名付けられたCVTのみ。パーキングブレーキは電動式となる。
トランスミッションは、「リニアトロニック」と名付けられたCVTのみ。パーキングブレーキは電動式となる。
ダッシュボード上部の6.3インチマルチファンクションディスプレイ(写真)には、運転支援システムの状態や燃費を含む、さまざまな車両情報を表示できる。
ダッシュボード上部の6.3インチマルチファンクションディスプレイ(写真)には、運転支援システムの状態や燃費を含む、さまざまな車両情報を表示できる。
「インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight」には、16インチのアルミホイールが与えられる。今回のテスト車は冬用タイヤの「ブリヂストン・ブリザックVRX」を装着していた。
「インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight」には、16インチのアルミホイールが与えられる。今回のテスト車は冬用タイヤの「ブリヂストン・ブリザックVRX」を装着していた。
トランスミッションは、1.6も2.0同様、CVTのリニアトロニックだ。なにせスバルにはこれ以外のATミッションはないのだから当然だが、2.0だと「ナシ」と感じたCVTが、1.6だと「アリ」になった。「これでいいじゃないか!」になったのです。

1.6には3つのモードを選べるSI-DRIVEは搭載されないが、これもイイ。2.0はSI-DRIVEが標準なれど、あの程度の動力性能で3つのモードから選ぶというのも逆に難しく、宝の持ち腐れ感だけが残ったのです。

1.6には面倒くさいモードはナシ! ただしアクセルを深く踏み込んだ時は自動的にステップ変速になる「オートステップ変速」は付いている。わざわざパドルをスコスコ操作するのもモテないカーマニアっぽく感じるクルマなので、深くアクセルを踏むと勝手に段付きになるというのは実にちょうどいい。もちろんDレンジから横に倒してMレンジにすれば、オートではない固定のステップ変速モード(7段)になる。

16インチタイヤとのマッチングもいい。冬季につき試乗車はスタッドレスタイヤを履いており、ステアリングが軽めだったが、サマータイヤにすればもう少し落ち着くはず。近年のスタッドレスは、乗り心地に関してはサマータイヤより逆に硬く感じることも多いが、いずれにせよ18インチの2.0より当たりはソフトだ。
トランスミッションは、「リニアトロニック」と名付けられたCVTのみ。パーキングブレーキは電動式となる。
トランスミッションは、「リニアトロニック」と名付けられたCVTのみ。パーキングブレーキは電動式となる。
ダッシュボード上部の6.3インチマルチファンクションディスプレイ(写真)には、運転支援システムの状態や燃費を含む、さまざまな車両情報を表示できる。
ダッシュボード上部の6.3インチマルチファンクションディスプレイ(写真)には、運転支援システムの状態や燃費を含む、さまざまな車両情報を表示できる。
「インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight」には、16インチのアルミホイールが与えられる。今回のテスト車は冬用タイヤの「ブリヂストン・ブリザックVRX」を装着していた。
「インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight」には、16インチのアルミホイールが与えられる。今回のテスト車は冬用タイヤの「ブリヂストン・ブリザックVRX」を装着していた。

■アイサイトにおトク感

ステアリングホイールのスポーク部には、クルーズコントロールやカーオーディオの操作スイッチが並ぶ。
ステアリングホイールのスポーク部には、クルーズコントロールやカーオーディオの操作スイッチが並ぶ。
運転支援システム「アイサイト」は、駆動方式に関わらず「インプレッサ」全車に備わる。写真は、その一部機能のオンオフスイッチ。
運転支援システム「アイサイト」は、駆動方式に関わらず「インプレッサ」全車に備わる。写真は、その一部機能のオンオフスイッチ。
荷室の開口幅は、最大1039mm。5人乗車時で820mmの奥行きは、後席を倒すことで1631mmにまで拡大できる。
荷室の開口幅は、最大1039mm。5人乗車時で820mmの奥行きは、後席を倒すことで1631mmにまで拡大できる。
今回は、高速道路を主体に170kmほどの距離を試乗。燃費は満タン法で13.5km/リッターを記録した。
今回は、高速道路を主体に170kmほどの距離を試乗。燃費は満タン法で13.5km/リッターを記録した。
ワインディングを軽く飛ばす程度なら1.6で何の不足も感じず、シャシーの良さを実感するのみ。ガンガン攻めれば2.0との差もあるでしょうが、2.0だって、ワインディングやサーキットをガンガン攻めるクルマじゃない。CVTだし。

とどめは「アイサイト(Ver.3)」だ。アイサイトの性能に1.6と2.0の差別はない。アイサイトのありがたみを日常的に実感するのは、アダプティブクルーズコントロールを使っている時だが、お安い1.6でも2.0と同じアイサイト性能があることを、とってもおトクに感じるのです。「なんかいい買い物したな!」って。買ってないのでたぶんですが。

ということで私としては、「インプレッサは2.0より1.6がオススメ!」という結論になったのですが、それをスバリストのマリオ高野にぶつけたところ、「私なら絶対2.0です! 足まわりをはじめとして、あらゆる面で2.0の方が少しずつ勝っています! 価格差を考えても、どうせなら2.0であります!」とのことでした。ディープなスバリストほど2.0を推す傾向が強いとか。なるほど~。やっぱり私はまだ全然スバリストじゃないってことか。

こんな結論ですが、少しでも皆さまの参考になれば幸いです。

(文=清水草一/写真=荒川正幸/編集=関 顕也)
ステアリングホイールのスポーク部には、クルーズコントロールやカーオーディオの操作スイッチが並ぶ。
ステアリングホイールのスポーク部には、クルーズコントロールやカーオーディオの操作スイッチが並ぶ。
運転支援システム「アイサイト」は、駆動方式に関わらず「インプレッサ」全車に備わる。写真は、その一部機能のオンオフスイッチ。
運転支援システム「アイサイト」は、駆動方式に関わらず「インプレッサ」全車に備わる。写真は、その一部機能のオンオフスイッチ。
荷室の開口幅は、最大1039mm。5人乗車時で820mmの奥行きは、後席を倒すことで1631mmにまで拡大できる。
荷室の開口幅は、最大1039mm。5人乗車時で820mmの奥行きは、後席を倒すことで1631mmにまで拡大できる。
今回は、高速道路を主体に170kmほどの距離を試乗。燃費は満タン法で13.5km/リッターを記録した。
今回は、高速道路を主体に170kmほどの距離を試乗。燃費は満タン法で13.5km/リッターを記録した。

■テスト車のデータ

スバル・インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight
スバル・インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight
販売店オプションの「パナソニック ビルトインナビ」。室内の空気の質を改善する「ナノイー」機能も含まれる。
販売店オプションの「パナソニック ビルトインナビ」。室内の空気の質を改善する「ナノイー」機能も含まれる。
後席の定員は3人で、背もたれは6:4の分割可倒式となっている。
後席の定員は3人で、背もたれは6:4の分割可倒式となっている。
「インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight」には、急ブレーキをかけた際にハザードランプを点滅させて後続車の注意を促す「エマージェンシーストップシグナル」が標準装備される。
「インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight」には、急ブレーキをかけた際にハザードランプを点滅させて後続車の注意を促す「エマージェンシーストップシグナル」が標準装備される。
スバル・インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4460×1775×1480mm
ホイールベース:2670mm
車重:1360kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:115ps(85kW)/6200rpm
最大トルク:15.1kgm(148Nm)/3600rpm
タイヤ:(前)205/55R16/(後)205/55R16(ブリヂストン・ブリザックVRX)
燃費:17.0kmリッター(JC08モード)
価格:213万8400円/テスト車=286万7724円
オプション装備:ブラックレザーセレクション<本革シート フロントシートヒーター付き+運転席&助手席8ウェイパワーシート+スーパーUVカットフロントドアガラス+本革巻きステアリングホイール&セレクトレバー+キーレスアクセス&プッシュスタート+LEDハイ&ロービームランプ+ステアリング連動ヘッドランプ+クリアビューパック>+アドバンスドセーフティパッケージ(37万8000円) ※以下、販売店オプション フロアカーペット(3万0780円)/LEDアクセサリーライナー(3万0240円)/パナソニック ビルトインナビ<「ナノイー」付き 8インチ>(23万4360円)/リアビューカメラ(2万3760円)/ETC2.0車載器キット(3万2184円)

テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2191km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:170.3km
使用燃料:14.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:13.5km/リッター(満タン法)/12.3km/リッター(車載燃費計計測値)
スバル・インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight
スバル・インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight
販売店オプションの「パナソニック ビルトインナビ」。室内の空気の質を改善する「ナノイー」機能も含まれる。
販売店オプションの「パナソニック ビルトインナビ」。室内の空気の質を改善する「ナノイー」機能も含まれる。
後席の定員は3人で、背もたれは6:4の分割可倒式となっている。
後席の定員は3人で、背もたれは6:4の分割可倒式となっている。
「インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight」には、急ブレーキをかけた際にハザードランプを点滅させて後続車の注意を促す「エマージェンシーストップシグナル」が標準装備される。
「インプレッサスポーツ1.6i-L EyeSight」には、急ブレーキをかけた際にハザードランプを点滅させて後続車の注意を促す「エマージェンシーストップシグナル」が標準装備される。

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