【試乗記】スバルXV【開発者インタビュー】

【試乗記】スバルXV【開発者インタビュー】

■マニアにもマニア以外の方にも

スバルXV【開発者インタビュー】
SUBARU
商品企画本部
プロジェクト ジェネラル マネージャー(PGM)
井上正彦(いのうえ まさひこ)さん

新世代プラットフォームを得て、全方位的な進化を遂げた「スバルXV」。新型に込めた思いを、開発を率いたスバルの井上正彦プロジェクト ジェネラル マネージャーに聞いた。

■最初から車高の高さを織り込んだ“本丸”モデル

スバルが言う新型「XV」のイメージは“スポカジ”(スポーツカジュアル)。「『インプレッサ』より広いフィールドで、アクティブに楽しみたい方に応えるモデルです」と井上氏。
スバルが言う新型「XV」のイメージは“スポカジ”(スポーツカジュアル)。「『インプレッサ』より広いフィールドで、アクティブに楽しみたい方に応えるモデルです」と井上氏。
新型「XV」の最低地上高は200mm。「インプレッサスポーツ」より70mmも余裕がもたされている。
新型「XV」の最低地上高は200mm。「インプレッサスポーツ」より70mmも余裕がもたされている。
新プラットフォーム・SGP(スバルグローバルプラットフォーム)のイメージ図。(写真=スバル)
新プラットフォーム・SGP(スバルグローバルプラットフォーム)のイメージ図。(写真=スバル)
新型「XV」にもFF仕様は用意されない。全モデルAWD(全輪駆動。4WDと同義)となる。
新型「XV」にもFF仕様は用意されない。全モデルAWD(全輪駆動。4WDと同義)となる。
「Xモード」の採用は「XV」としては今回が初。エンジン、トランスミッション、AWD、VDCを統合制御して、悪路での走破性を高める。
「Xモード」の採用は「XV」としては今回が初。エンジン、トランスミッション、AWD、VDCを統合制御して、悪路での走破性を高める。
<プロフィール>	1990年入社。内装設計部門でエアバッグのシステム開発に携わる。1995~99年は米国のSIA(スバル オブ インディアナ オートモーティブ)の技術駐在員として現地調達化を担当。2004年、内装設計2課長として空調およびインストゥルメントパネル設計を担当。2008年から設計品質管理部でスバル車全体の開発の取りまとめに携わり、2014年に商品開発本部PSM(プロジェクト シニア マネージャー)、続いてPGMに就任、新型「インプレッサ」および「XV」の開発を率いる。
<プロフィール> 1990年入社。内装設計部門でエアバッグのシステム開発に携わる。1995~99年は米国のSIA(スバル オブ インディアナ オートモーティブ)の技術駐在員として現地調達化を担当。2004年、内装設計2課長として空調およびインストゥルメントパネル設計を担当。2008年から設計品質管理部でスバル車全体の開発の取りまとめに携わり、2014年に商品開発本部PSM(プロジェクト シニア マネージャー)、続いてPGMに就任、新型「インプレッサ」および「XV」の開発を率いる。
――新型XVは新世代プラットフォームのSGP(スバルグローバルプラットフォーム)を採用した第2弾ということですが、パワートレインやプラットフォームを共用する、いわばベース車の「インプレッサ」とは、ずばりどこがどのように違うのか説明してもらえますか?

井上正彦氏(以下、井上):インプレッサはハッチバックの「スポーツ」と「G4」セダンそれぞれのスタイルに、クルマとしての基本性能、走る楽しさと機能性を備えています。それに加えてXVは、もっと広いフィールド、行動範囲でアクティブに楽しみたいという方に応えるモデルです。“スポカジ”とはそういう意味です。XVはAWDである上にXモードが備わり、さらに地上高はインプレッサより70mm高い200mmを確保しています。他のメーカーだといかにもSUVの格好でも140mmというものもありますが、スバルとしてはそういうわけにはいきません。それと同時に立体駐車場にも対応したコンパクトなサイズで使いやすさにも配慮しています。

――AWDモデルはインプレッサにも設定されています。また車高が高くなって走破性が向上すると、その代わりにやはりオンロードの楽しさ、機敏さについては多少我慢しなければいけないかもしれません。

井上:まさにそこがSGPを採用した理由です。しっかりとスポーツセダンと同じパフォーマンスを確認しています。もちろんインプレッサと直接比較すれば、やや重くなり、車高が高い分、旋回性能が若干落ちるのは事実ですが、それでもスラロームの通過速度で数km/h程度です。

――スバルの場合はすべてAWDモデルを前提に開発すると聞いています。SGPもそもそも車高の高いSUVを作ることを考えてあったということですか?

井上:今回はXVありき、これが“本丸”ということで並行して開発しました。従来型は標準車からの派生モデルということで、やはり途中からではできなかったこともあります。ジオメトリーやロールセンターなど多少我慢しなければならないこともありました。それに対して今回のXVは、あるべき姿を考えて、初めから織り込んで作ったモデルです。

――従来型のXVもおよそ1000台/月は売れていました。4WD専用車種としては悪くない成績だと思いますが、新型XVの目標は2200台です。いっぽう他のメーカーのコンパクトSUVの売れ筋は実はFWD(前輪駆動)モデルです。いわゆるスバルファン以外の層も狙うとしたら、FWDをラインナップすることは考えなかったのでしょうか?

井上:スバルのSUVはやはりAWDでなければいけないと思います。インプレッサの1.6FFは特に九州地域などで好評をいただいていますが、XVに関してはFWDモデルは話題に上りませんでした。他社のFWDが売れていることはもちろん知っていますが、われわれが同じことを目指してもいいのか、安全安心と楽しさを提供できるのはやはりAWDではないか、と考えた結果です。

スバルが言う新型「XV」のイメージは“スポカジ”(スポーツカジュアル)。「『インプレッサ』より広いフィールドで、アクティブに楽しみたい方に応えるモデルです」と井上氏。
スバルが言う新型「XV」のイメージは“スポカジ”(スポーツカジュアル)。「『インプレッサ』より広いフィールドで、アクティブに楽しみたい方に応えるモデルです」と井上氏。
新型「XV」の最低地上高は200mm。「インプレッサスポーツ」より70mmも余裕がもたされている。
新型「XV」の最低地上高は200mm。「インプレッサスポーツ」より70mmも余裕がもたされている。
新プラットフォーム・SGP(スバルグローバルプラットフォーム)のイメージ図。(写真=スバル)
新プラットフォーム・SGP(スバルグローバルプラットフォーム)のイメージ図。(写真=スバル)
新型「XV」にもFF仕様は用意されない。全モデルAWD(全輪駆動。4WDと同義)となる。
新型「XV」にもFF仕様は用意されない。全モデルAWD(全輪駆動。4WDと同義)となる。
「Xモード」の採用は「XV」としては今回が初。エンジン、トランスミッション、AWD、VDCを統合制御して、悪路での走破性を高める。
「Xモード」の採用は「XV」としては今回が初。エンジン、トランスミッション、AWD、VDCを統合制御して、悪路での走破性を高める。
<プロフィール>	1990年入社。内装設計部門でエアバッグのシステム開発に携わる。1995~99年は米国のSIA(スバル オブ インディアナ オートモーティブ)の技術駐在員として現地調達化を担当。2004年、内装設計2課長として空調およびインストゥルメントパネル設計を担当。2008年から設計品質管理部でスバル車全体の開発の取りまとめに携わり、2014年に商品開発本部PSM(プロジェクト シニア マネージャー)、続いてPGMに就任、新型「インプレッサ」および「XV」の開発を率いる。
<プロフィール> 1990年入社。内装設計部門でエアバッグのシステム開発に携わる。1995~99年は米国のSIA(スバル オブ インディアナ オートモーティブ)の技術駐在員として現地調達化を担当。2004年、内装設計2課長として空調およびインストゥルメントパネル設計を担当。2008年から設計品質管理部でスバル車全体の開発の取りまとめに携わり、2014年に商品開発本部PSM(プロジェクト シニア マネージャー)、続いてPGMに就任、新型「インプレッサ」および「XV」の開発を率いる。

■先代踏襲のスタイリングに力強さを少し

SUVとして武骨さも大事。しかし新型では従来型が持つポップなキュートさも大切にした。「女性を含めたユーザーも意識しています」と井上氏。
SUVとして武骨さも大事。しかし新型では従来型が持つポップなキュートさも大切にした。「女性を含めたユーザーも意識しています」と井上氏。
新型ではアクティブな印象を際立たせる「サンシャイン・オレンジ」を新たに採用した。
新型ではアクティブな印象を際立たせる「サンシャイン・オレンジ」を新たに採用した。
リアデザインでは、コンビネーションランプを左右に張り出させて、ワイド感とシャープさを強調している。
リアデザインでは、コンビネーションランプを左右に張り出させて、ワイド感とシャープさを強調している。
インテリアでは質感を大切にしている。またオレンジステッチをアクセントとして随所に施し、遊び心やアクティブ感を表現している。
インテリアでは質感を大切にしている。またオレンジステッチをアクセントとして随所に施し、遊び心やアクティブ感を表現している。
――従来型XVはちょうどいい“道具感”とポップなカラーでも注目されました。新型のデザインもそれを踏襲したと考えていいでしょうか?

井上:はい、基本的にこれまでのモデルを正常進化させたものです。ただし、もうちょっと力強くカッコよく、特にリアまわりはもう少し男っぽくしたいと考えました。米国側からはもっと“ラギッド”(頑丈、武骨)で力強くという要望があったのは事実ですが、けれどこれまでのポップなキュートさも失いたくない。スバルには熱いマニアが多く、それは大変ありがたいことなんですが、やはりそれ以外にも、女性を含めたユーザーも意識しています。テレビCMでも表現しているようにアクティブな女性に乗ってもらいたいと考えています。ボディーカラーなどにそれを反映させています。

――ちょうどいいカジュアルさとスポーティーさはよく理解できるのですが、いっぽうでわれわれのような昭和の車好きは、スバルはずっとスバルでいてほしい、という思いもあります。あまりオシャレになり過ぎても何だか戸惑うという気持ちです。

井上:もちろん、スバルのコアユーザーを大切にしていることには変わりありません。その上で新型は、それ以外のお客さまにも広く受け入れてもらえると思います。いつでもどこにでも好きなところに出掛けられる実用性と、安心安全と走る楽しさなど、すべてを兼ね備えたパッケージングは、いわゆるスバリストにも理解していただけると考えています。

SUVとして武骨さも大事。しかし新型では従来型が持つポップなキュートさも大切にした。「女性を含めたユーザーも意識しています」と井上氏。
SUVとして武骨さも大事。しかし新型では従来型が持つポップなキュートさも大切にした。「女性を含めたユーザーも意識しています」と井上氏。
新型ではアクティブな印象を際立たせる「サンシャイン・オレンジ」を新たに採用した。
新型ではアクティブな印象を際立たせる「サンシャイン・オレンジ」を新たに採用した。
リアデザインでは、コンビネーションランプを左右に張り出させて、ワイド感とシャープさを強調している。
リアデザインでは、コンビネーションランプを左右に張り出させて、ワイド感とシャープさを強調している。
インテリアでは質感を大切にしている。またオレンジステッチをアクセントとして随所に施し、遊び心やアクティブ感を表現している。
インテリアでは質感を大切にしている。またオレンジステッチをアクセントとして随所に施し、遊び心やアクティブ感を表現している。

■軽快感なら2リッター、ハイブリッドはいつ?

速さや軽快感では2リッターの方が際立っている。しかし1.6リッターでも「『XV』が目指す世界観を十分実感していただけると思います」と井上氏は語る。
速さや軽快感では2リッターの方が際立っている。しかし1.6リッターでも「『XV』が目指す世界観を十分実感していただけると思います」と井上氏は語る。
エンジンは2リッター(写真)と1.6リッターの水平対向4気筒。それぞれ154psと115psを発生する。
エンジンは2リッター(写真)と1.6リッターの水平対向4気筒。それぞれ154psと115psを発生する。
1.6リッターモデルはリーズナブルな価格設定が魅力。「1.6i EyeSight」(車両価格は213万8400円~)と「1.6i-L EyeSight」(同224万6400円~)の2機種が設定される。
1.6リッターモデルはリーズナブルな価格設定が魅力。「1.6i EyeSight」(車両価格は213万8400円~)と「1.6i-L EyeSight」(同224万6400円~)の2機種が設定される。
新型「XV」は「インプレッサスポーツ/G4」とともに、2016年度自動車アセスメント「衝突安全性能評価大賞」などを受賞した。特に歩行者保護性能については、「歩行者保護エアバッグ」(写真)の搭載が得点(過去最高の199.7点)の向上に寄与したという。(写真=スバル)
新型「XV」は「インプレッサスポーツ/G4」とともに、2016年度自動車アセスメント「衝突安全性能評価大賞」などを受賞した。特に歩行者保護性能については、「歩行者保護エアバッグ」(写真)の搭載が得点(過去最高の199.7点)の向上に寄与したという。(写真=スバル)
――今回は1.6リッターのリーズナブルなモデルも加えられました。PGMとしては2リッターと1.6リッターモデルのどちらがお薦めですか?

井上:1.6リッターでもXVが目指す世界観を十分実感していただけると思います。ただし私個人としては、加速感や軽快感の面で2リッターをお薦めしたいところです。もちろんリーズナブルな1.6リッターで興味を持っていただいて、まずスバルを知ってもらうためにもそれぞれにキャラクターを考えて作り上げたつもりです。

――雑味のないすっきりした上質な走行性能は1.6リッターでも十分に感じ取れました。となると、インプレッサに比べて10万円増しという価格設定は、ちょっと弱気過ぎるのではないかとも思うのですが?

井上:何というか、言いにくいですが私も同感な部分があります(笑)。正直お買い得だと思います。安売りするつもりはありませんが、価値に見合った価格設定でXVの存在感を強めていきたい。スバルの主力SUVとして価格まで含めての提案で、仲間を広げたいと考えています。

――今のところパワートレインはNA(自然吸気)エンジン+CVTに限られています。今後マイルドハイブリッドやMTモデル、あるいはこのシャシーならもっとパワフルなエンジンでもまったく問題ないはずですが、そんな声にはどう答えますか?

井上:ハイブリッドについてはそれほど長くはお待たせしないと思います。現在鋭意開発中です。ただし、アイサイトなどもそうなんですが、クルマは常に進化を続けていくものです。待ったほうがいいかというと、また待つことになるかもしれない。迷うよりも自分のタイミングで決めたほうがいいのではないか、とお答えさせてください。

(インタビューとまとめ=高平高輝/写真=田村 弥/編集=竹下元太郎)

速さや軽快感では2リッターの方が際立っている。しかし1.6リッターでも「『XV』が目指す世界観を十分実感していただけると思います」と井上氏は語る。
速さや軽快感では2リッターの方が際立っている。しかし1.6リッターでも「『XV』が目指す世界観を十分実感していただけると思います」と井上氏は語る。
エンジンは2リッター(写真)と1.6リッターの水平対向4気筒。それぞれ154psと115psを発生する。
エンジンは2リッター(写真)と1.6リッターの水平対向4気筒。それぞれ154psと115psを発生する。
1.6リッターモデルはリーズナブルな価格設定が魅力。「1.6i EyeSight」(車両価格は213万8400円~)と「1.6i-L EyeSight」(同224万6400円~)の2機種が設定される。
1.6リッターモデルはリーズナブルな価格設定が魅力。「1.6i EyeSight」(車両価格は213万8400円~)と「1.6i-L EyeSight」(同224万6400円~)の2機種が設定される。
新型「XV」は「インプレッサスポーツ/G4」とともに、2016年度自動車アセスメント「衝突安全性能評価大賞」などを受賞した。特に歩行者保護性能については、「歩行者保護エアバッグ」(写真)の搭載が得点(過去最高の199.7点)の向上に寄与したという。(写真=スバル)
新型「XV」は「インプレッサスポーツ/G4」とともに、2016年度自動車アセスメント「衝突安全性能評価大賞」などを受賞した。特に歩行者保護性能については、「歩行者保護エアバッグ」(写真)の搭載が得点(過去最高の199.7点)の向上に寄与したという。(写真=スバル)

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