【試乗記】レクサスLC500h(FR/CVT)
■「500」の車名が意味するところ
レクサスLC500h(FR/CVT)
「レクサスLC」の真価が、まずはこの流麗なスタイリングにあることは誰もが認めるだろう。しかし、3.5リッターV6ハイブリッドの「LC500h」と、5リッターV8ガソリンの「LC500」のどちらが主役なのか、という議論については意見が割れそうだ。LC500hに試乗して「500」の車名が意味するところを考えた。
「レクサスLC」の真価が、まずはこの流麗なスタイリングにあることは誰もが認めるだろう。しかし、3.5リッターV6ハイブリッドの「LC500h」と、5リッターV8ガソリンの「LC500」のどちらが主役なのか、という議論については意見が割れそうだ。LC500hに試乗して「500」の車名が意味するところを考えた。
■こんな日本車を待っていた
生産台数やメーカー数を基準に考えれば、日本は間違いなく世界屈指の自動車大国。けれども、そんな星の数ほど存在する日本車に、“楽しめるクルマ”がどれほど存在するかと振り返ると、そこでは急に心もとないことになってしまうのも、また現実だ。
そもそも、戦後復興に際しての道具にフォーカスし、その品質と価格面で世界から一目を置かれる存在になれたからこそ、前述の“大国”というタイトルを獲得するに至ったというのが日本車の歴史。
となれば、あくまでも道具としての品質に優れたモデルを、大量に手がけることでコストを抑えるというやり方で成長と発展を遂げてきたこの国発のクルマが、ある面それとは対極に位置する“趣味のモデル”を苦手とするのは半ば当然でもありそうだと、思わず納得がいきそうにもなる。
とはいえ、自動車が日本の一般家庭に深く根を下ろすようになってからすでに半世紀以上。かくも長い歴史にもかかわらず現実には、海外に出掛けた折に立ち寄る自動車博物館などで、「価値アリ」と認められて所蔵された日本車に出会うことができる機会など、メッタにないというのはやはり何とも寂しい限り。
そんなことを感じながら日々自動車生活(?)を送っていたら、どうやら久々に溜飲(りゅういん)を下げられそうなモデルに出会うことができた。それこそが、今回のここでの主役であるLCというレクサス発のブランニューモデルなのだ。
そもそも、戦後復興に際しての道具にフォーカスし、その品質と価格面で世界から一目を置かれる存在になれたからこそ、前述の“大国”というタイトルを獲得するに至ったというのが日本車の歴史。
となれば、あくまでも道具としての品質に優れたモデルを、大量に手がけることでコストを抑えるというやり方で成長と発展を遂げてきたこの国発のクルマが、ある面それとは対極に位置する“趣味のモデル”を苦手とするのは半ば当然でもありそうだと、思わず納得がいきそうにもなる。
とはいえ、自動車が日本の一般家庭に深く根を下ろすようになってからすでに半世紀以上。かくも長い歴史にもかかわらず現実には、海外に出掛けた折に立ち寄る自動車博物館などで、「価値アリ」と認められて所蔵された日本車に出会うことができる機会など、メッタにないというのはやはり何とも寂しい限り。
そんなことを感じながら日々自動車生活(?)を送っていたら、どうやら久々に溜飲(りゅういん)を下げられそうなモデルに出会うことができた。それこそが、今回のここでの主役であるLCというレクサス発のブランニューモデルなのだ。
■主役はどちら?
レクサスLCで誰もが目を奪われるのは、まずは当然、何とも思い切ったそのエクステリアデザインだろう。
長いノーズに、一瞬“2シーター”かと見紛(まが)うばかりの小さなキャビンを組み合わせたプロポーションは、何とも大胆で、見事なまでに流麗そのもの。前後のフェンダー付近を外側へと大きく張り出した“コークボトル”型のボディーや、そんなボディー幅よりもはるかに小さな幅でトランクリッドへ姿を消していくキャビン後端は、全幅にゆとりがあるモデルだからこそ採用が可能となったデザインテクニックであるはずだ。
そんなディメンションの持ち主だからこそ当初から予想と覚悟をしてはいたが、1.9m超の全幅と大きなドアというコンビネーションゆえ、狭いスペース内での乗降性は何ともきつい。
これでも、前出の“たる型ボディー”とサイドシル形状の工夫によって、小さな角度で開いたドアからの地面への足つき性は「かなり頑張った」とは開発陣のコメント。でも、かつて「トヨタ・ソアラ」が2ドアモデルの乗降性ハンディを解消するべく、マルチリンク機構を用いた“イージーアクセスドア”なる発明品を使っていた過去があるじゃない! と記憶をたどってみるも、「当時開発に携わっていた人は皆退職してしまい、技術の継承が行われてこなかったんです……」と、悲しい答えが返ってきた。
そんなLCは、全く異なる2つのパワーユニットを設定するのも特徴。ひとつは最高477psを発する5リッターV8エンジン+10段ステップAT。もうひとつは、システム出力が359psとされる3.5リッターV6エンジン+ハイブリッドトランスミッションという組み合わせだ。
ところが、そんな両者に与えられたパフォーマンスを象徴する数字が共に“500”で、かつ前者LC500が1300万~1400万円、後者LC500hが1350万~1450万円と価格が微妙にラップしているから、ハナシは少々ややこしくなる。「一体、どちらがLCのメインストリームであるのか!?」と……。
長いノーズに、一瞬“2シーター”かと見紛(まが)うばかりの小さなキャビンを組み合わせたプロポーションは、何とも大胆で、見事なまでに流麗そのもの。前後のフェンダー付近を外側へと大きく張り出した“コークボトル”型のボディーや、そんなボディー幅よりもはるかに小さな幅でトランクリッドへ姿を消していくキャビン後端は、全幅にゆとりがあるモデルだからこそ採用が可能となったデザインテクニックであるはずだ。
そんなディメンションの持ち主だからこそ当初から予想と覚悟をしてはいたが、1.9m超の全幅と大きなドアというコンビネーションゆえ、狭いスペース内での乗降性は何ともきつい。
これでも、前出の“たる型ボディー”とサイドシル形状の工夫によって、小さな角度で開いたドアからの地面への足つき性は「かなり頑張った」とは開発陣のコメント。でも、かつて「トヨタ・ソアラ」が2ドアモデルの乗降性ハンディを解消するべく、マルチリンク機構を用いた“イージーアクセスドア”なる発明品を使っていた過去があるじゃない! と記憶をたどってみるも、「当時開発に携わっていた人は皆退職してしまい、技術の継承が行われてこなかったんです……」と、悲しい答えが返ってきた。
そんなLCは、全く異なる2つのパワーユニットを設定するのも特徴。ひとつは最高477psを発する5リッターV8エンジン+10段ステップAT。もうひとつは、システム出力が359psとされる3.5リッターV6エンジン+ハイブリッドトランスミッションという組み合わせだ。
ところが、そんな両者に与えられたパフォーマンスを象徴する数字が共に“500”で、かつ前者LC500が1300万~1400万円、後者LC500hが1350万~1450万円と価格が微妙にラップしているから、ハナシは少々ややこしくなる。「一体、どちらがLCのメインストリームであるのか!?」と……。
■分かりやすいのは「LC500」の方だが……
ワイルドで豪快なV8エンジンを好む層と、プレミアムモデルだからこそ先進のパワーユニットを求める層は、完全に嗜好(しこう)が異なっているので競合することはあり得ない――実は、これがあえて、双方に“500”という数字を与え、価格も同等とした理由であるという。一見、紛らわしくも思えるこうした設定は、むしろそうすることで両者が異なるキャラクターとベクトルを携えることを詳(つまび)らかにしようという、確信犯的な方策であったということだ。
それでも、一般に「分かりやすい」のは、やはりLC500の方であろう。
最高出力や最大トルク値は明確により大きく、車両重量は明らかに軽い。となれば、より運動性能に優れるのも道理というもので、ものごと万事を即物的に捉える人とって、より分かりやすいLCは「こちらの方」と言ってよいはずだ。
一方で、この先の排ガスや燃費規制の強化によって、もはやモデルライフ途中でのディスコン(製造中止)の可能性すらうわさされるそんな旧態依然とした心臓を積むことを善しとしない人にとって、パフォーマンスを大幅に強化した最新のハイブリッドシステムを搭載することが、なるほど大きな魅力と映る可能性は小さくない。
ましてや、LC500hに積まれたシステムは、「ドリフトできるハイブリッド」とさえ言われるもの。
今回は、そんな開発陣からの自信あふれるコメントを思い出しつつ、あらためてハイブリッドモデルのテストドライブを行ったのである。
それでも、一般に「分かりやすい」のは、やはりLC500の方であろう。
最高出力や最大トルク値は明確により大きく、車両重量は明らかに軽い。となれば、より運動性能に優れるのも道理というもので、ものごと万事を即物的に捉える人とって、より分かりやすいLCは「こちらの方」と言ってよいはずだ。
一方で、この先の排ガスや燃費規制の強化によって、もはやモデルライフ途中でのディスコン(製造中止)の可能性すらうわさされるそんな旧態依然とした心臓を積むことを善しとしない人にとって、パフォーマンスを大幅に強化した最新のハイブリッドシステムを搭載することが、なるほど大きな魅力と映る可能性は小さくない。
ましてや、LC500hに積まれたシステムは、「ドリフトできるハイブリッド」とさえ言われるもの。
今回は、そんな開発陣からの自信あふれるコメントを思い出しつつ、あらためてハイブリッドモデルのテストドライブを行ったのである。
■踏めば転じてスポーティーに
う~ん、でもやっぱりちょっと中途ハンパかな……。街中や郊外の一般道をわずかなアクセル開度で走行している限りは、正直それが第一印象だった。事前に耳にしていた「タイトな駆動力の伝達感」もさほどそうとは受け取れず、やはりある程度のラバーバンド感が気になってしまう。エンジンの存在感を増すべくあえて“聞かせる”ように設(しつら)えられた排気音も、EVモードからいきなり1500rpm付近での回転が立ち上がるたびに、むしろ「耳につく」印象も受けたのだ。
ところが、こうして「走りは“h”なしモデルの圧勝か!?」と思ったところでワインディングロードへと乗り入れ、アクセルペダルをより深く踏み込んでみると、それまでの印象は一変することに。特に、シフトセレクターで「M」のモードを選択し、シフトパドルを指先ではじきながら走ってみると、駆動力の伝達感がグンとタイトさを増し、なるほどこれまでのTHS(トヨタハイブリッドシステム)搭載車では得られなかった、エンジンパワーとモーターパワーのより直接的なコラボレーションの感覚を味わうことができるようになった。
それは、必ずしもエンジン回転数と車速の伸びが、完全にリンクをするわけではない。が、エンジン低回転域ではモーターがアシストしている感覚が明確で、さらにアクセルを踏み続けていくと今度は回転数が高まったエンジンパワーが主役へと移り変わっていく過程はなかなかの好印象。こうなると、耳に届くエンジン音も確かに走りの快感を一層高める要素と受け取れるようになってくる。
初代「プリウス」誕生以来のトヨタ独自のハイブリッドシステムであるTHS。それをベースに、その動力分割機構に4段変速機をつなげたことで、新たに「マルチステージハイブリッド」をうたうのがLCのシステムだ。そして、それが生み出す走りのテイストが、これまでの日本のハイブリッド車の中にあってダントツに“スポーティー”であることは、確かに間違いない。
ところが、こうして「走りは“h”なしモデルの圧勝か!?」と思ったところでワインディングロードへと乗り入れ、アクセルペダルをより深く踏み込んでみると、それまでの印象は一変することに。特に、シフトセレクターで「M」のモードを選択し、シフトパドルを指先ではじきながら走ってみると、駆動力の伝達感がグンとタイトさを増し、なるほどこれまでのTHS(トヨタハイブリッドシステム)搭載車では得られなかった、エンジンパワーとモーターパワーのより直接的なコラボレーションの感覚を味わうことができるようになった。
それは、必ずしもエンジン回転数と車速の伸びが、完全にリンクをするわけではない。が、エンジン低回転域ではモーターがアシストしている感覚が明確で、さらにアクセルを踏み続けていくと今度は回転数が高まったエンジンパワーが主役へと移り変わっていく過程はなかなかの好印象。こうなると、耳に届くエンジン音も確かに走りの快感を一層高める要素と受け取れるようになってくる。
初代「プリウス」誕生以来のトヨタ独自のハイブリッドシステムであるTHS。それをベースに、その動力分割機構に4段変速機をつなげたことで、新たに「マルチステージハイブリッド」をうたうのがLCのシステムだ。そして、それが生み出す走りのテイストが、これまでの日本のハイブリッド車の中にあってダントツに“スポーティー”であることは、確かに間違いない。
■二面性こそがその魅力
街乗りを中心とした日常シーンでは、モーターのみでほとんど無音でスタートをする“あの感覚”を筆頭として、極めて粛々と。一方で、パドルシフトを駆使しながら、あえてシステムの回転数を大きく上下させながら走るシーンでは、燃費一辺倒だったこれまでのハイブリッド車の常識を覆す活発さを味わわせてくれる。要は、そんな二面性こそが、どうやらLC500h独自の走りの魅力ということになりそうだ。
ある程度、アクセル開度が大きいシーンにまで踏み込まないと、そんな特徴を感じづらいのは、何ともゆっくりとした走りのテンポばかりが基本になる日本では難点と言えば難点。
しかし、少なくともことあるごとに「走りのパフォーマンスが物足りない」と指摘され続けてきた欧米地域に向けては、ようやくにして一矢を報いることができる初めての日本のハイブリッド車と言えそうな実力も秘めるのがこのモデル。
あえて“500”の文字が冠されたことは、きっとそんな開発陣の自信の表れ……と、なるほど最後に納得の一台でもあるわけだ。
(文=河村康彦/写真=小河原認/編集=竹下元太郎)
ある程度、アクセル開度が大きいシーンにまで踏み込まないと、そんな特徴を感じづらいのは、何ともゆっくりとした走りのテンポばかりが基本になる日本では難点と言えば難点。
しかし、少なくともことあるごとに「走りのパフォーマンスが物足りない」と指摘され続けてきた欧米地域に向けては、ようやくにして一矢を報いることができる初めての日本のハイブリッド車と言えそうな実力も秘めるのがこのモデル。
あえて“500”の文字が冠されたことは、きっとそんな開発陣の自信の表れ……と、なるほど最後に納得の一台でもあるわけだ。
(文=河村康彦/写真=小河原認/編集=竹下元太郎)
■テスト車のデータ
レクサスLC500h
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4770×1920×1345mm
ホイールベース:2870mm
車重:2000kg
駆動方式:FR
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:299ps(220kW)/6600rpm
エンジン最大トルク:348Nm(35.5kgm)/4900rpm
モーター最高出力:179ps(132kW)
モーター最大トルク:300Nm(30.6kgm)
システム最高出力:359ps(264kW)
タイヤ:(前)245/40RF21 96Y/(後)275/35RF21 99Y(ミシュラン・パイロットスーパースポーツZP)※ランフラットタイヤ
燃費:15.8km/リッター(JC08モード)
価格:1350万円/テスト車=1378万4040円
オプション装備:フロント245/40RF21+リア275/35RF21 ランフラットタイヤ&鍛造アルミホイール<ポリッシュ仕上げ+ブラック塗装>(16万2000円)/カラーヘッドアップディスプレイ(8万6400円)/ステアリングヒーター+寒冷地仕様<リアフォグランプ、ウインドシールドデアイサーなど>(3万5640円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2815km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:347.4km
使用燃料:36.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.6km/リッター(満タン法)/9.9km/リッター(車載燃費計計測値)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4770×1920×1345mm
ホイールベース:2870mm
車重:2000kg
駆動方式:FR
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:299ps(220kW)/6600rpm
エンジン最大トルク:348Nm(35.5kgm)/4900rpm
モーター最高出力:179ps(132kW)
モーター最大トルク:300Nm(30.6kgm)
システム最高出力:359ps(264kW)
タイヤ:(前)245/40RF21 96Y/(後)275/35RF21 99Y(ミシュラン・パイロットスーパースポーツZP)※ランフラットタイヤ
燃費:15.8km/リッター(JC08モード)
価格:1350万円/テスト車=1378万4040円
オプション装備:フロント245/40RF21+リア275/35RF21 ランフラットタイヤ&鍛造アルミホイール<ポリッシュ仕上げ+ブラック塗装>(16万2000円)/カラーヘッドアップディスプレイ(8万6400円)/ステアリングヒーター+寒冷地仕様<リアフォグランプ、ウインドシールドデアイサーなど>(3万5640円)
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