【試乗記】マツダCX-3 20Sプロアクティブ(6AT/FF)
弛まず倦まずブラッシュアップ
マツダCX-3 20Sプロアクティブ(6AT/FF)
これまでディーゼル専用だった「マツダCX-3」にガソリンエンジン搭載車が登場した。それに加えて、「WLTC」燃費モードの認可をいち早く取得したり、「i-アクティブセンス」を全車標準化したりと、最近のマツダは話題に事欠かない。倦(う)まず弛(たゆ)まずブラッシュアップは続く。「20Sプロアクティブ」グレードに試乗した。
これまでディーゼル専用だった「マツダCX-3」にガソリンエンジン搭載車が登場した。それに加えて、「WLTC」燃費モードの認可をいち早く取得したり、「i-アクティブセンス」を全車標準化したりと、最近のマツダは話題に事欠かない。倦(う)まず弛(たゆ)まずブラッシュアップは続く。「20Sプロアクティブ」グレードに試乗した。
着々と積み上げる
この夏はマツダが熱かった。トヨタとの提携強化、次世代エンジン「スカイアクティブ-X」の発表と、立て続けに記者会見を開いて世間を驚かせた。とはいっても、ぐずついた天気のまま終わってしまったような夏とは違って、マツダの話題は過去形ではなくこれからが本番だ。今秋の東京モーターショーではもっと詳しい技術的特徴も明らかにされることだろう。もっとも、間を置かずに会見が開かれたことを別にすれば、われわれクルマ好きにとっては、発表された内容はそれほど驚きではないというか、予想通りと言えるだろう。次世代エンジン「スカイアクティブ-X」についても、すでに昨年、HCCI(予混合圧縮着火)技術を取り入れた新エンジンを今年秋ごろに新型車(おそらく新型「アクセラ」)に搭載して発表することを明らかにしている。要するに、マツダは以前から宣言していたビルディングブロック戦略にしたがって、自分たちの計画を着々と有言実行しているというわけだ。
またスカイアクティブ・テクノロジーの導入以降、マツダがブランドの方針として実行しているのがいわゆるマイナーチェンジのタイミングにこだわらないランニングチェンジである。新しい機能や装備を、2年ごとといった時期を選ばずにできるだけ早く順次投入する方針を採っており、今回改良を受けたCX-3についても、この2年半で早くも4回目ということになる。今回は2015年2月にディーゼルエンジン専用のコンパクトSUVとして発売されたCX-3に、新たに4気筒2リッターガソリンエンジン仕様が追加設定されたことが最大のトピックである。
またスカイアクティブ・テクノロジーの導入以降、マツダがブランドの方針として実行しているのがいわゆるマイナーチェンジのタイミングにこだわらないランニングチェンジである。新しい機能や装備を、2年ごとといった時期を選ばずにできるだけ早く順次投入する方針を採っており、今回改良を受けたCX-3についても、この2年半で早くも4回目ということになる。今回は2015年2月にディーゼルエンジン専用のコンパクトSUVとして発売されたCX-3に、新たに4気筒2リッターガソリンエンジン仕様が追加設定されたことが最大のトピックである。
2リッターガソリンモデルを追加
これまで全モデル1.5リッターディーゼルターボを積んでいたCX-3にガソリン車が追加されたのは、ユーザー層を広げたい意向があるようだ。ディーゼルエンジンの力強いトルクと優れた燃費は明らかな長所であり、振動・騒音面についても今では気になるレベルではないとはいえ、それでもディーゼルに二の足を踏む人がいるのも事実。特にそれほど距離を乗らないユーザーにとってはディーゼルのメリットは小さくなる。マツダによれば、CX-3では女性ユーザー比率が当初の2割から4割へ倍増しているというデータがあるらしく、まさにそんなユーザーを取り込みたい狙いがあるようだ。
またディーゼルエンジンはガソリンに比べてどうしても割高になるのが課題だ。マツダのスカイアクティブ・ディーゼルはコストのかかるSCR触媒などの後処理装置を装着せずにエミッション規制に適合させていることが特徴だが、それでも相対的に高いことに変わりはない。聞くところによれば、ガソリンエンジンとは文字通りけた違いの高圧に耐える燃料ポンプやコモンレールなど燃料噴射系の部品だけで、小型ガソリンエンジンの半分ぐらいのコストがかかるともいう。もともと高いエンジンなのである。CX-3に追加されたガソリンモデルでもっともベーシックな「20S」のFWDは210.6万円、同じくディーゼルの「XD」は約240万円なので、価格差はおよそ30万円。ガソリンエンジンならその差額で4WDモデルを選ぶこともできるというわけだ(20SのAWDは233.2万円)。
またディーゼルエンジンはガソリンに比べてどうしても割高になるのが課題だ。マツダのスカイアクティブ・ディーゼルはコストのかかるSCR触媒などの後処理装置を装着せずにエミッション規制に適合させていることが特徴だが、それでも相対的に高いことに変わりはない。聞くところによれば、ガソリンエンジンとは文字通りけた違いの高圧に耐える燃料ポンプやコモンレールなど燃料噴射系の部品だけで、小型ガソリンエンジンの半分ぐらいのコストがかかるともいう。もともと高いエンジンなのである。CX-3に追加されたガソリンモデルでもっともベーシックな「20S」のFWDは210.6万円、同じくディーゼルの「XD」は約240万円なので、価格差はおよそ30万円。ガソリンエンジンならその差額で4WDモデルを選ぶこともできるというわけだ(20SのAWDは233.2万円)。
軽快さが魅力
2リッター4気筒直噴ガソリンエンジンは、スペックは若干異なるものの「CX-5」などに積まれているものと同じで、CX-3では148ps(109kW)/6000rpm、192Nm(19.6kgm)/2800rpmを生み出す。トランスミッションはディーゼルとは異なり6段ATのみとなる。1.5リッターディーゼルターボの105ps(77kW)/4000rpmと270Nm(27.5kgm)/1600-2500rpmに比べるとそのキャラクターは想像できるが、ガソリンモデルは車重が軽いこともあり(「20Sプロアクティブ」は1240kg、同等グレードのディーゼルより30kg軽い)、動き出しの軽快さ、敏しょうさは明らかだ。もちろん吹け上がりの軽やかさ、滑らかな回転フィーリングといった点でもディーゼルとは比べ物にならないが、ブンブン回した場合の爽快感はアクセラなどに積まれる1.5リッターガソリンほどではなく、どちらかと言えば実用的なキャラクターを与えられているようだ。
ところで、CX-3のガソリンエンジン車はいち早く「WLTCモード」の認可を取得したことも注目される。WLTCとは「Worldwide-harmonized Light Vehicles Test Cycle」(世界統一試験サイクル)の略で、市街地/郊外/高速道路という3つのモードからなる国際的な試験方法であり、アイドリング時間比率の減少、エンジンが冷えた状態での走行時間の増加など、現行JC08モードよりも実際の使用状況に近い測定方式とされる。これは2018年10月以降に表示が義務化されるが、CX-3のガソリン車はそれに先駆けて「WLTCモード」の認可取得第1号車となった。ちなみに20SプロアクティブFWDのJC08モード燃費は17.0km/リッター、WLTCモードでは16.0km/リッターになる。
ところで、CX-3のガソリンエンジン車はいち早く「WLTCモード」の認可を取得したことも注目される。WLTCとは「Worldwide-harmonized Light Vehicles Test Cycle」(世界統一試験サイクル)の略で、市街地/郊外/高速道路という3つのモードからなる国際的な試験方法であり、アイドリング時間比率の減少、エンジンが冷えた状態での走行時間の増加など、現行JC08モードよりも実際の使用状況に近い測定方式とされる。これは2018年10月以降に表示が義務化されるが、CX-3のガソリン車はそれに先駆けて「WLTCモード」の認可取得第1号車となった。ちなみに20SプロアクティブFWDのJC08モード燃費は17.0km/リッター、WLTCモードでは16.0km/リッターになる。
16インチか18インチか
新しいCX-3には、自動ブレーキやレーンデパーチャーウォーニング、ブラインドスポットモニタリングなど、いわゆる先進安全技術の「i-アクティブセンス」が全車標準装備され、これによってすべてのモデルが「サポカーS・ワイド」に該当するという。これは経産省や国交省などが連携して普及啓発に取り組んでいる「安全運転サポート車」の最高ランクであるセーフティー・サポートカーSを縮めたネーミングだというが、屋上屋を架すような枠組み作りが大好きなお役所仕事らしく、高齢運転者に特に推奨するクルマが「S」付き、その中でも搭載機能によってベーシック/ベーシック+/ワイドと区別されるという具合に、正直言って非常に分かりにくい。ランクによって今後保険料が割引されるというが、もう少し整理しないとなかなか理解してもらえないのではないだろうか。
ひとつ注文をつけたいのが乗り心地である。良路では問題ないが、段差などの不整を乗り越えた際だけ、ややむき出しの突き上げとタイヤのバタつきが気になるのだ。以前はグレードによっては16インチを履いていたが、今では全車18インチタイヤが標準装備(一部に16インチをオプション設定している点がマツダらしいが)される。CX-3の引き締まったクールなスタイルを際立たせるのはもちろん18インチホイールのほうだが、ちょっと持て余し気味かなというのが正直なところだ。マツダ車に対する期待レベルは以前よりもずっと高い。次のランニングチェンジまでには大入力でも顎を出さない強靭(きょうじん)でしなやかな、上質な足まわりを期待したい。
(文=高平高輝/写真=小河原認/編集=竹下元太郎)
ひとつ注文をつけたいのが乗り心地である。良路では問題ないが、段差などの不整を乗り越えた際だけ、ややむき出しの突き上げとタイヤのバタつきが気になるのだ。以前はグレードによっては16インチを履いていたが、今では全車18インチタイヤが標準装備(一部に16インチをオプション設定している点がマツダらしいが)される。CX-3の引き締まったクールなスタイルを際立たせるのはもちろん18インチホイールのほうだが、ちょっと持て余し気味かなというのが正直なところだ。マツダ車に対する期待レベルは以前よりもずっと高い。次のランニングチェンジまでには大入力でも顎を出さない強靭(きょうじん)でしなやかな、上質な足まわりを期待したい。
(文=高平高輝/写真=小河原認/編集=竹下元太郎)
テスト車のデータ
マツダCX-3 20Sプロアクティブ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4275×1765×1550mm
ホイールベース:2570mm
車重:1240kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:148ps(109kW)/6000rpm
最大トルク:192Nm(19.6kgm)/2800rpm
タイヤ:(前)215/50R18 92V/(後)215/50R18 92V(トーヨー・プロクセスR40)
燃費:17.0km/リッター(JC08モード)/16.0km/リッター(WLTCモード)、12.2km/リッター(市街地モード:WLTC-L)、16.8km/リッター(郊外モード:WLTC-M)、18.0km/リッター(高速道路モード:WLTC-H)
価格:228万4200円/テスト車=243万5400円
オプション装備:スマート・ブレーキ・サポート<SBS>&マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール<MRCC>(5万4000円)/ドライビング・ポジション・サポート・パッケージ<運転席10Wayパワーシート&シートメモリー[アクティブ・ドライビング・ディスプレイ連動]+運転席&助手席シートヒーター+ステアリングヒーター>(6万4800円)/CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万2400円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1784km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4275×1765×1550mm
ホイールベース:2570mm
車重:1240kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:148ps(109kW)/6000rpm
最大トルク:192Nm(19.6kgm)/2800rpm
タイヤ:(前)215/50R18 92V/(後)215/50R18 92V(トーヨー・プロクセスR40)
燃費:17.0km/リッター(JC08モード)/16.0km/リッター(WLTCモード)、12.2km/リッター(市街地モード:WLTC-L)、16.8km/リッター(郊外モード:WLTC-M)、18.0km/リッター(高速道路モード:WLTC-H)
価格:228万4200円/テスト車=243万5400円
オプション装備:スマート・ブレーキ・サポート<SBS>&マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール<MRCC>(5万4000円)/ドライビング・ポジション・サポート・パッケージ<運転席10Wayパワーシート&シートメモリー[アクティブ・ドライビング・ディスプレイ連動]+運転席&助手席シートヒーター+ステアリングヒーター>(6万4800円)/CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万2400円)
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