【試乗記】ホンダ・フィット ハイブリッドS Honda SENSING(FF/7AT)

ホンダ・フィット ハイブリッドS Honda SENSING(FF/7AT)【試乗記】

軽やかなハイブリッド

ホンダ・フィット ハイブリッドS Honda SENSING(FF/7AT)

モデルライフ半ばのテコ入れが実施された、「ホンダ・フィット ハイブリッド」に試乗。目玉となる運転支援システムの使い勝手や実際に計測した燃費データも含め、売れ筋コンパクトカーの実力を報告する。

ガソリン価格は大きな決め手

2013年9月にデビューした、第3世代の「ホンダ・フィット」。2014年6月のマイナーチェンジでは、安全装備が強化されるとともに、デザインや乗り心地、静粛性が見直された。
2013年9月にデビューした、第3世代の「ホンダ・フィット」。2014年6月のマイナーチェンジでは、安全装備が強化されるとともに、デザインや乗り心地、静粛性が見直された。
ブラックを基調に仕立てられた「フィット ハイブリッドS」のインテリア。ダークな色彩で“大人の空間”が演出されている。ステンレス製のスポーツペダルも特徴的な装備のひとつ。
ブラックを基調に仕立てられた「フィット ハイブリッドS」のインテリア。ダークな色彩で“大人の空間”が演出されている。ステンレス製のスポーツペダルも特徴的な装備のひとつ。
速度計を中央に据えた計器盤。左側にはパワーメーターが、右側にはマルチインフォメーションディスプレイがレイアウトされる。
速度計を中央に据えた計器盤。左側にはパワーメーターが、右側にはマルチインフォメーションディスプレイがレイアウトされる。
トランスミッションは、デュアルクラッチ式の7段AT。「ハイブリッドS Honda SENSING」には、シフトパドルも備わる。
トランスミッションは、デュアルクラッチ式の7段AT。「ハイブリッドS Honda SENSING」には、シフトパドルも備わる。
フィットがマイナーチェンジした。このカタチにフルチェンジしたのは2013年夏。過去4年間の販売実績を聞いて、驚いた。1.5リッターハイブリッドとただのガソリンエンジン(1.3および1.5リッター)との比率は、半々だという。4年前の登場直後は、7割以上がハイブリッドだったはずである。

今回、マイチェン後1カ月の受注はやはりハイブリッドが優勢だが、55%にとどまる。この差は何か。理由は簡単だ。4年前、「アクア」をしのぐ好燃費で鳴り物入りのデビューを飾ったときは、ここ5年間で最もガソリン価格が高騰していた。全国平均160円台後半(レギュラー)を超すなか、もっぱらハイブリッドに注目が集まり、売れたのである。

しかしその後、ガソリン価格は下降に転じ、ノンハイブリッドモデルが盛り返し、ならすと半々というわけだ。そういえば、筆者の身近にひとりいる現行フィットオーナーも、一番安い1.3リッターのMTである。アクアはハイブリッド専用車だが、フィットは、イコール、ハイブリッドというわけではないのだ。

という話の流れだと、今回の試乗車はガソリンモデルになりそうだが、乗ったのはやっぱりハイブリッド。220万5360円のシリーズ最上級モデル「S Honda SENSING(ホンダセンシング)」である。

2013年9月にデビューした、第3世代の「ホンダ・フィット」。2014年6月のマイナーチェンジでは、安全装備が強化されるとともに、デザインや乗り心地、静粛性が見直された。
2013年9月にデビューした、第3世代の「ホンダ・フィット」。2014年6月のマイナーチェンジでは、安全装備が強化されるとともに、デザインや乗り心地、静粛性が見直された。
ブラックを基調に仕立てられた「フィット ハイブリッドS」のインテリア。ダークな色彩で“大人の空間”が演出されている。ステンレス製のスポーツペダルも特徴的な装備のひとつ。
ブラックを基調に仕立てられた「フィット ハイブリッドS」のインテリア。ダークな色彩で“大人の空間”が演出されている。ステンレス製のスポーツペダルも特徴的な装備のひとつ。
速度計を中央に据えた計器盤。左側にはパワーメーターが、右側にはマルチインフォメーションディスプレイがレイアウトされる。
速度計を中央に据えた計器盤。左側にはパワーメーターが、右側にはマルチインフォメーションディスプレイがレイアウトされる。
トランスミッションは、デュアルクラッチ式の7段AT。「ハイブリッドS Honda SENSING」には、シフトパドルも備わる。
トランスミッションは、デュアルクラッチ式の7段AT。「ハイブリッドS Honda SENSING」には、シフトパドルも備わる。

昔の「シビック」を思わせる

	テスト車「フィット ハイブリッドS Honda SENSING」の燃費値は、JC08モードで31.8km/リッター。最も燃費に優れる「フィット ハイブリッド」は、同37.2km/リッターを記録する。
テスト車「フィット ハイブリッドS Honda SENSING」の燃費値は、JC08モードで31.8km/リッター。最も燃費に優れる「フィット ハイブリッド」は、同37.2km/リッターを記録する。
「フィット ハイブリッドS Honda SENSING」のスポーツシート。表皮のファブリックはブラック×グレーのツートンカラーとなっている。
「フィット ハイブリッドS Honda SENSING」のスポーツシート。表皮のファブリックはブラック×グレーのツートンカラーとなっている。
「ハイブリッドS Honda SENSING」には、ガソリン車のスポーティーモデル「RS Honda SENSING」と同じ大型テールゲートスポイラーが与えられる。
「ハイブリッドS Honda SENSING」には、ガソリン車のスポーティーモデル「RS Honda SENSING」と同じ大型テールゲートスポイラーが与えられる。
「ハイブリッドS Honda SENSING」のFF車に装着される16インチアルミホイール。同グレードの4WD車は15インチとなる。
「ハイブリッドS Honda SENSING」のFF車に装着される16インチアルミホイール。同グレードの4WD車は15インチとなる。
アクアと違って、フィットのハイブリッドは1モーター式である。アトキンソンサイクルの1.5リッター4気筒エンジンにモーター内蔵の7段DCT(デュアルクラッチ式変速機)を組み合わせている。

アクアがJC08モードで40km/リッターを超えてきたら、ウチも2モーター式を考えなくてはいけないかもしれない。かつてフィットのエンジニアがそう言っていたが、現在、フィットをわずかにリードしているアクアのカタログ燃費は最良38.0km/リッター。大台には達していない。マイチェンした新型フィットも、パワートレインは基本、キャリーオーバーである。

EV走行も可能なシステムで、EVボタンも備わるが、アクアほどEVっぽくない。カラカラ楽しいエンジンに、電動アシストが付いている感じだ。かつての「シビック」のポジションは、フィットが引き継いでいると、今度のシビックお披露目のときにホンダの役員が言っていたが、たしかにそのとおりだ。あらためて乗ると、昔のシビックのような、ホンダ車本来の“軽さ”を感じて、好感が持てた。

ハイブリッドSは、シリーズで唯一、16インチホイールを履く。そのせいか、乗り心地は多少、ゴツゴツしている。7段DCTもアクアの変速機のようにシームレスではないが、クルマ全体のキャラクターのなかでは気にならない。

	テスト車「フィット ハイブリッドS Honda SENSING」の燃費値は、JC08モードで31.8km/リッター。最も燃費に優れる「フィット ハイブリッド」は、同37.2km/リッターを記録する。
テスト車「フィット ハイブリッドS Honda SENSING」の燃費値は、JC08モードで31.8km/リッター。最も燃費に優れる「フィット ハイブリッド」は、同37.2km/リッターを記録する。
「フィット ハイブリッドS Honda SENSING」のスポーツシート。表皮のファブリックはブラック×グレーのツートンカラーとなっている。
「フィット ハイブリッドS Honda SENSING」のスポーツシート。表皮のファブリックはブラック×グレーのツートンカラーとなっている。
「ハイブリッドS Honda SENSING」には、ガソリン車のスポーティーモデル「RS Honda SENSING」と同じ大型テールゲートスポイラーが与えられる。
「ハイブリッドS Honda SENSING」には、ガソリン車のスポーティーモデル「RS Honda SENSING」と同じ大型テールゲートスポイラーが与えられる。
「ハイブリッドS Honda SENSING」のFF車に装着される16インチアルミホイール。同グレードの4WD車は15インチとなる。
「ハイブリッドS Honda SENSING」のFF車に装着される16インチアルミホイール。同グレードの4WD車は15インチとなる。

世話を焼かない安全装備

マイナーチェンジを機に「フィット」の上位グレードには、ミリ波レーダーと単眼カメラを用いた安全運転支援システム「ホンダセンシング」が搭載された。
マイナーチェンジを機に「フィット」の上位グレードには、ミリ波レーダーと単眼カメラを用いた安全運転支援システム「ホンダセンシング」が搭載された。
「フィット」の中で最上級グレードとなる「ハイブリッドS Honda SENSING」。唯一、騒音を抑制するフロントウィンドウガラスやフロアアンダーカバーが採用されている。
「フィット」の中で最上級グレードとなる「ハイブリッドS Honda SENSING」。唯一、騒音を抑制するフロントウィンドウガラスやフロアアンダーカバーが採用されている。
リアコンビランプはLED式。ルーフ近くまで伸びた縦型のデザインで個性を主張する。
リアコンビランプはLED式。ルーフ近くまで伸びた縦型のデザインで個性を主張する。
LEDヘッドランプには、オートレベリング機能やオートライトコントロール機能が備わる。
LEDヘッドランプには、オートレベリング機能やオートライトコントロール機能が備わる。
今度のマイナーチェンジの要目は、上位グレードに安全運転支援システムの「ホンダセンシング」が標準装備されたことである。ハイブリッドでは、207万9000円の「L」以上、ガソリン車ではベーシックモデルの「13G-F」を除くすべてに搭載された。

単眼カメラとミリ波レーダーを使って行うのは、ACC(アダプティブクルーズコントロール)、レーンキープ、誤発進抑制、先行車発進お知らせ機能などをはじめとして8項目に及ぶ。

ただし、ACCの作動域は約30~100km/hで、ETCゲートを足操作フリーで通過することはできない。前走車をロックオンして停車や発進まで自動でやってくれる機能もない。

高速道路でレーンキープをオンにして、手放し運転を試みると、15秒ほどで警報が鳴り、ハンドルを操作せよというメッセージが出て、その後、アシストはキャンセルされた。最新の国の指針に沿ったシステムである。

スバルの「アイサイトver.3」ほど手厚くはないが、ガソリン車でいうと165万円のモデルから標準装備にしたことは、新型フィットの売りになるだろう。

マイナーチェンジを機に「フィット」の上位グレードには、ミリ波レーダーと単眼カメラを用いた安全運転支援システム「ホンダセンシング」が搭載された。
マイナーチェンジを機に「フィット」の上位グレードには、ミリ波レーダーと単眼カメラを用いた安全運転支援システム「ホンダセンシング」が搭載された。
「フィット」の中で最上級グレードとなる「ハイブリッドS Honda SENSING」。唯一、騒音を抑制するフロントウィンドウガラスやフロアアンダーカバーが採用されている。
「フィット」の中で最上級グレードとなる「ハイブリッドS Honda SENSING」。唯一、騒音を抑制するフロントウィンドウガラスやフロアアンダーカバーが採用されている。
リアコンビランプはLED式。ルーフ近くまで伸びた縦型のデザインで個性を主張する。
リアコンビランプはLED式。ルーフ近くまで伸びた縦型のデザインで個性を主張する。
LEDヘッドランプには、オートレベリング機能やオートライトコントロール機能が備わる。
LEDヘッドランプには、オートレベリング機能やオートライトコントロール機能が備わる。

「使えること」こそ美点

後席は60:40の分割可倒式。座面をチップアップさせて、背の高い荷物を積み込むこともできる。
後席は60:40の分割可倒式。座面をチップアップさせて、背の高い荷物を積み込むこともできる。
荷室の容量は318リッター。後席の背もたれを前方に倒すことで拡大できる。
荷室の容量は318リッター。後席の背もたれを前方に倒すことで拡大できる。
Apple CarPlayにも対応する、タッチパネル式の「Hondaインターナビ」。モニターのサイズは7インチ。
Apple CarPlayにも対応する、タッチパネル式の「Hondaインターナビ」。モニターのサイズは7インチ。
ボディーカラーは、写真の「ルナシルバー・メタリック」を含む全12色が用意される。
ボディーカラーは、写真の「ルナシルバー・メタリック」を含む全12色が用意される。
ふと忘れがちだが、フィットの大きな魅力は、人と物を載せる能力の高さである。後席の膝まわりの広さは、たまたま撮影に同行していた「カムリ ハイブリッド」よりも広い。

センタータンクレイアウトによる低床設計と、高めの全高のおかげで、荷室の容量も大きい。背もたれを倒せば、後席がダイブダウンして、低く平らな荷室になる。アクアにも「ゴルフ」にもないフィットのお家芸である。

約330kmを走って、満タン法で測った燃費は19.0km/リッター(満タン法)。2.5リッターのカムリ ハイブリッドに及ばなかった。ちなみに、車載燃費計も19.1km/リッターを示していた。

マイナーチェンジ前のフィット ハイブリッドでは、25km/リッター台を経験したことがある。今回、とくべつ燃費に悪い運転をした記憶はない。パワートレインとエアコンを省燃費制御にするECOモードは、特に不都合がないのでオンにしたままである。一度の計測でそのクルマの燃費をウンヌンすることはできないが、今回はこういう結果だった。

でも、フィットだと、こうした情報を参考に、安いガソリンモデルを選ぶこともできる。ハイブリッドを買わなくてもいいのは、アクアに対する絶対的アドバンテージである。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=菊池貴之/編集=関 顕也)

後席は60:40の分割可倒式。座面をチップアップさせて、背の高い荷物を積み込むこともできる。
後席は60:40の分割可倒式。座面をチップアップさせて、背の高い荷物を積み込むこともできる。
荷室の容量は318リッター。後席の背もたれを前方に倒すことで拡大できる。
荷室の容量は318リッター。後席の背もたれを前方に倒すことで拡大できる。
Apple CarPlayにも対応する、タッチパネル式の「Hondaインターナビ」。モニターのサイズは7インチ。
Apple CarPlayにも対応する、タッチパネル式の「Hondaインターナビ」。モニターのサイズは7インチ。
ボディーカラーは、写真の「ルナシルバー・メタリック」を含む全12色が用意される。
ボディーカラーは、写真の「ルナシルバー・メタリック」を含む全12色が用意される。

テスト車のデータ

ホンダ・フィット ハイブリッドS Honda SENSING
ホンダ・フィット ハイブリッドS Honda SENSING
「フィット ハイブリッドS」には、光沢のあるブラック塗装が施された「スポーツバンパー」が装着される。
「フィット ハイブリッドS」には、光沢のあるブラック塗装が施された「スポーツバンパー」が装着される。
センターコンソールには、USBやHDMIなどのポートが設けられている。
センターコンソールには、USBやHDMIなどのポートが設けられている。
ディフューザーが備わるリアバンパー(写真)も、「フィット ハイブリッドS」の専用装備のひとつ。
ディフューザーが備わるリアバンパー(写真)も、「フィット ハイブリッドS」の専用装備のひとつ。
ホンダ・フィット ハイブリッドS Honda SENSING

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4045×1695×1525mm
ホイールベース:2530mm
車重:1170kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:110ps(81kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:134Nm(13.7kgm)/5000rpm
モーター最高出力:29.5ps(22kW)/1313-2000rpm
モーター最大トルク:160Nm(16.3kgm)/0-1313rpm
タイヤ:(前)135/55R16 83V/(後)135/55R16 83V(ダンロップSP SPORT 2030)
燃費:31.8km/リッター(JC08モード)
価格:220万5360円/テスト車=246万6504円
オプション装備:Hondaインターナビ+リンクアップフリー+ETC車載器<ナビゲーション連動>(21万1680円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(2万1384円)/フロアカーペットマット<プレミアムタイプ>(2万8080円)

テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2626km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:334.0km
使用燃料:17.6リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:19.0km/リッター(満タン法)/19.1km/リッター(車載燃費計計測値)

ホンダ・フィット ハイブリッドS Honda SENSING
ホンダ・フィット ハイブリッドS Honda SENSING
「フィット ハイブリッドS」には、光沢のあるブラック塗装が施された「スポーツバンパー」が装着される。
「フィット ハイブリッドS」には、光沢のあるブラック塗装が施された「スポーツバンパー」が装着される。
センターコンソールには、USBやHDMIなどのポートが設けられている。
センターコンソールには、USBやHDMIなどのポートが設けられている。
ディフューザーが備わるリアバンパー(写真)も、「フィット ハイブリッドS」の専用装備のひとつ。
ディフューザーが備わるリアバンパー(写真)も、「フィット ハイブリッドS」の専用装備のひとつ。

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