【試乗記】日産セレナNISMO(FF/CVT)
マイルド亭主関白宣言
日産セレナNISMO(FF/CVT)
ファミリー層に人気の「セレナ」に、威厳とスポーティーさを備えた「セレナNISMO」が登場。専用サスペンションで15mm車高を下げ、排気音にもこだわったヤル気系ミニバン、その走りとは? 日産のテストコース「グランドライブ」で試乗した。
ファミリー層に人気の「セレナ」に、威厳とスポーティーさを備えた「セレナNISMO」が登場。専用サスペンションで15mm車高を下げ、排気音にもこだわったヤル気系ミニバン、その走りとは? 日産のテストコース「グランドライブ」で試乗した。
そこそこ威厳のあるオトーサンに
自動車メーカーが自社のモータースポーツ部門や関係会社と連携して、高級スポーティー仕様を開発するのは世界的な流れだ。メルセデス・ベンツとAMGやBMWとM社の関係は言うに及ばず、スバルはSTIブランドを前面に打ち出し、トヨタもGRというブランドを立ち上げた。
確かに、「F1直系の技術」とか、「WRCで得たノウハウを注入」といったうたい文句にクルマ好きは弱い。ちょいとばかり高くてもつい財布を開いてしまう傾向は、自分にも思い当たるフシがある。
日産にも以前からNISMOモデルが存在したけれど、さらに連携を強化するために2017年4月にNISMO CARS事業部を立ち上げた。ここに日産、NISMO、オーテックジャパンのスタッフが集まり、モータースポーツで培った技術やノウハウを生かしたスポーティー仕様を開発することになる。
今回試乗したセレナNISMOは、NISMOブランドの魅力をファミリー層にまで広く伝えるために企画されたモデルで、2016年8月にフルモデルチェンジを受けた現行セレナがベースとなる。
パワートレインにはセレナの主力であるマイルドハイブリッドシステム「S-HYBRID」を搭載。外観は「ハイウェイスター」を基に、前後バンパーやリアスポイラー、フロントグリルがNISMO専用デザインとなっている。
日産のテストコース「グランドライブ」で試乗をスタート。オプションのレカロ製シートは、乗降性を考慮してサイドサポートの張り出しを控え目にした専用タイプで、実際に乗り込みは容易。アルカンターラと本革を組み合わせた専用ステアリングホイールは握り心地がよく、スエード調のドアトリムの内装と相まって、高級な雰囲気を醸す。
走り出してみると、勾配のある比較的タイトなコーナーをスムーズにクリアしたことに好印象を持つ。ロールはよくチェックされていて、グラッと傾くことなく、ステアリングホイールを切れば切った分だけ素直に曲がる。
これは、後に中高速コーナーを組み合わせたS字カーブでも同じ印象を得たが、そう感じた理由はいくつか挙げられる。
まず、車体の各部にクロスバーやサブメンバーなど、合計で15カ所の補強をしている。補強によってボディーのねじれが減り、結果的に足(サスペンション)がよく動くように調教されている。そのサスペンションは車高を15mmダウンした専用セッティングで、これが姿勢変化を少なくすることに貢献している。
タイヤがどの方向を向いているかをくっきりと伝える、手応えのしっかりしたステアリングホイールのフィーリングも好ましく感じたが、果たしてパワステのセッティングも専用にチューニングされているとのこと。
コース内には首都高速のつなぎ目のような段差や、洗濯板状の荒れた路面も用意されていたけれど、乗り心地も悪くない。
レスポンス重視のセッティングが施されたエンジンとCVTがもたらす加速がシャープに感じたのは、専用のマフラーからのヌケのよい音によるところも大きいだろう。
日産のホームグラウンドでの試乗だからいいところばかりが見えたのかもしれない。けれどもスポーティーかつ、濾紙(ろし)で濾(こ)したように雑味を取り除いた洗練を感じさせた……、という結論で終わろうとしていたけれど、最後に後席に乗ってちょっと印象が変わった。
運転席ではあまり感じなかった路面からの突き上げを、後席ではかなり感じる。それから、レカロ装着の前席と違って後席は平板な形状だから、横Gがかかると体をホールドするのが難しい。動きがシャープになってオトーサンは楽しく、後席も快適で家族円満、というマジックはなかなか難しいものだ。
『巨人の星』の星 一徹とまではいかないまでも、『サザエさん』の波平さんぐらいの亭主関白にふさわしいと思う。マスオさんだとちょっと難しい。
(文=サトータケシ/写真=阿部昌也/編集=大久保史子)
【スペック】
全長×全幅×全高=4805×1740×1850mm/ホイールベース=2860mm/車重=1720kg/駆動方式=FF/エンジン=2リッター直4 DOHC 16バルブ(150ps/6000rpm、200Nm/4400rpm)/モーター=交流同期電動機(2.6ps/48Nm)/トランスミッション=CVT/燃費=--km/リッター/価格=341万9280円
確かに、「F1直系の技術」とか、「WRCで得たノウハウを注入」といったうたい文句にクルマ好きは弱い。ちょいとばかり高くてもつい財布を開いてしまう傾向は、自分にも思い当たるフシがある。
日産にも以前からNISMOモデルが存在したけれど、さらに連携を強化するために2017年4月にNISMO CARS事業部を立ち上げた。ここに日産、NISMO、オーテックジャパンのスタッフが集まり、モータースポーツで培った技術やノウハウを生かしたスポーティー仕様を開発することになる。
今回試乗したセレナNISMOは、NISMOブランドの魅力をファミリー層にまで広く伝えるために企画されたモデルで、2016年8月にフルモデルチェンジを受けた現行セレナがベースとなる。
パワートレインにはセレナの主力であるマイルドハイブリッドシステム「S-HYBRID」を搭載。外観は「ハイウェイスター」を基に、前後バンパーやリアスポイラー、フロントグリルがNISMO専用デザインとなっている。
日産のテストコース「グランドライブ」で試乗をスタート。オプションのレカロ製シートは、乗降性を考慮してサイドサポートの張り出しを控え目にした専用タイプで、実際に乗り込みは容易。アルカンターラと本革を組み合わせた専用ステアリングホイールは握り心地がよく、スエード調のドアトリムの内装と相まって、高級な雰囲気を醸す。
走り出してみると、勾配のある比較的タイトなコーナーをスムーズにクリアしたことに好印象を持つ。ロールはよくチェックされていて、グラッと傾くことなく、ステアリングホイールを切れば切った分だけ素直に曲がる。
これは、後に中高速コーナーを組み合わせたS字カーブでも同じ印象を得たが、そう感じた理由はいくつか挙げられる。
まず、車体の各部にクロスバーやサブメンバーなど、合計で15カ所の補強をしている。補強によってボディーのねじれが減り、結果的に足(サスペンション)がよく動くように調教されている。そのサスペンションは車高を15mmダウンした専用セッティングで、これが姿勢変化を少なくすることに貢献している。
タイヤがどの方向を向いているかをくっきりと伝える、手応えのしっかりしたステアリングホイールのフィーリングも好ましく感じたが、果たしてパワステのセッティングも専用にチューニングされているとのこと。
コース内には首都高速のつなぎ目のような段差や、洗濯板状の荒れた路面も用意されていたけれど、乗り心地も悪くない。
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運転席ではあまり感じなかった路面からの突き上げを、後席ではかなり感じる。それから、レカロ装着の前席と違って後席は平板な形状だから、横Gがかかると体をホールドするのが難しい。動きがシャープになってオトーサンは楽しく、後席も快適で家族円満、というマジックはなかなか難しいものだ。
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