【試乗記】スバルBRZ STI Sport(FR/6MT)

スバルBRZ STI Sport(FR/6MT)【試乗記】

さらにBRZらしく

スバルBRZ STI Sport(FR/6MT)

この秋「スバルBRZ」の最上級グレードとしてラインナップに加わった「STI Sport」。その名のとおりSTIの技術が注がれたこのフラッグシップモデルの走りは、一段とBRZらしい、ピュアでストレートな魅力に満ちたものだった。

主役は遅れてやってきた

「STI Sport」は走りだけでなく内外装の質感も併せて向上させたグレード。価格は353万1600円(6MT仕様)。
「STI Sport」は走りだけでなく内外装の質感も併せて向上させたグレード。価格は353万1600円(6MT仕様)。
室内は黒をベースに「STI Sport」専用のテーマカラーであるボルドーが用いられている。
室内は黒をベースに「STI Sport」専用のテーマカラーであるボルドーが用いられている。
FA20型2リッターボクサー4自然吸気エンジンは207ps(6MT仕様)を生み出す。ストラットタワーとバルクヘッドが“フレキシブルVバー”で結ばれている。
FA20型2リッターボクサー4自然吸気エンジンは207ps(6MT仕様)を生み出す。ストラットタワーとバルクヘッドが“フレキシブルVバー”で結ばれている。
18インチの黒いアルミホイールが「STI Sport」の目印。「GT」グレードも黒だが、あちらは17インチでデザインも異なる。
18インチの黒いアルミホイールが「STI Sport」の目印。「GT」グレードも黒だが、あちらは17インチでデザインも異なる。
BRZにもSTIスポーツが登場した。STI(スバルテクニカインターナショナル)がプロデュースする「ts」が、過去に何度か限定販売されたことがあるが、こんどのSTIスポーツは、もちろんシリーズ最上位の常備モデルである。

自然吸気2リッター水平対向4気筒のFRという基本形は変わらないが、すぐ下の「GT」と比較すると、STIスポーツは18インチタイヤを履き、専用チューニングのザックスダンパーとコイルスプリングを備え、フレキシブルVバー、フレキシブルドロースティフナーといったすでに他のSTIスポーツ仕様でおなじみの専用装備をまとう。外観に特別な派手さはないが、スポークの目の詰んだブラック塗装の18インチホイールを見れば、STIスポーツとわかる。

そのほかシートやステアリングホイールなどの内装パーツも専用品にアップグレードされる。それでGTとの価格差は21万6000円。出せば売れるといわれるSTIスポーツが、BRZでなぜこんなに遅れたのか、不思議なくらいである。

先の東京モーターショーにクールグレーカーキのSTIスポーツが展示されていた。以前から「XV」にもある水色系の塗色だが、ボディーの造形が異なると、色の印象もまたこれほど変わるのかと思うほど、BRZをひときわ魅力的に見せていた。でも、あれは100台限定の特別色でとっくに終了。今回試乗したのは、アイスシルバーのMTモデル(353万1600円)である。

「STI Sport」は走りだけでなく内外装の質感も併せて向上させたグレード。価格は353万1600円(6MT仕様)。
「STI Sport」は走りだけでなく内外装の質感も併せて向上させたグレード。価格は353万1600円(6MT仕様)。
室内は黒をベースに「STI Sport」専用のテーマカラーであるボルドーが用いられている。
室内は黒をベースに「STI Sport」専用のテーマカラーであるボルドーが用いられている。
FA20型2リッターボクサー4自然吸気エンジンは207ps(6MT仕様)を生み出す。ストラットタワーとバルクヘッドが“フレキシブルVバー”で結ばれている。
FA20型2リッターボクサー4自然吸気エンジンは207ps(6MT仕様)を生み出す。ストラットタワーとバルクヘッドが“フレキシブルVバー”で結ばれている。
18インチの黒いアルミホイールが「STI Sport」の目印。「GT」グレードも黒だが、あちらは17インチでデザインも異なる。
18インチの黒いアルミホイールが「STI Sport」の目印。「GT」グレードも黒だが、あちらは17インチでデザインも異なる。

第一印象は「かたッ」!

アルカンターラと本革(一部合皮)からなる、2トーンの専用シートが装着される。
アルカンターラと本革(一部合皮)からなる、2トーンの専用シートが装着される。
ドアトリムにもボルドーがあしらわれる。
ドアトリムにもボルドーがあしらわれる。
後席の表皮にもアルカンターラが用いられている。
後席の表皮にもアルカンターラが用いられている。
タイヤサイズは前後とも215/40R18。試乗車にはミシュランの「パイロットスポーツ4」が装着されていた。
タイヤサイズは前後とも215/40R18。試乗車にはミシュランの「パイロットスポーツ4」が装着されていた。
この試乗の1カ月前、北海道美深のテストコースでSTIスポーツにはチョイ乗りしていた。だが、平滑な路面の周回路を数ラップしたくらいでは、正直、なにもわからなかった。

今回はじっくり乗れた。いつものように拙宅の車庫で後ろから近づいてゆくと、あらためて“ガレージ映え”する素敵なクーペボディーだと感心したのだが、最初、恵比寿のスバル東京本社から走り始めた第一印象は、「かたッ」だった。

半年前に乗った「トヨタ86」の「GTリミテッド」より歴然と乗り心地が硬い。ステアリングも重い。STIスポーツ専用サスペンションと215/45R18タイヤのせいなのか、これまで乗ったBRZ/86のなかでも最も硬いスポーツ足である。ボディーも硬いのでつじつまは合っているのだが、ワインカラーと黒、ツートンのインテリアはけっこう大人の雰囲気なのに、デートカーとしてはギリかな、と感じた。とはいえ、“こういうの”が好きなら、キモチのいいクルマである。筆者も気力の充実している午前中はそう感じた。

アルカンターラと本革(一部合皮)からなる、2トーンの専用シートが装着される。
アルカンターラと本革(一部合皮)からなる、2トーンの専用シートが装着される。
ドアトリムにもボルドーがあしらわれる。
ドアトリムにもボルドーがあしらわれる。
後席の表皮にもアルカンターラが用いられている。
後席の表皮にもアルカンターラが用いられている。
タイヤサイズは前後とも215/40R18。試乗車にはミシュランの「パイロットスポーツ4」が装着されていた。
タイヤサイズは前後とも215/40R18。試乗車にはミシュランの「パイロットスポーツ4」が装着されていた。

ドーピングなしの操縦感覚が楽しい

サスペンションにはSTIが専用チューニングを施したショックアブソーバー(ZF製ザックスブランド)とスプリングが用いられている。
サスペンションにはSTIが専用チューニングを施したショックアブソーバー(ZF製ザックスブランド)とスプリングが用いられている。
今回は6MT搭載車に試乗したが、6AT仕様も用意されている。
今回は6MT搭載車に試乗したが、6AT仕様も用意されている。
メーターは3眼式。タコメーター(中央)のレッドゾーンは7400rpmから。
メーターは3眼式。タコメーター(中央)のレッドゾーンは7400rpmから。
テールエンドには「GT」グレードと同様に、リアスポイラーが標準で備わる。
テールエンドには「GT」グレードと同様に、リアスポイラーが標準で備わる。
撮影のため八ヶ岳の麓まで走ったときは、たまたま「シビック タイプR」が同道していた。向こうは2リッターターボの大柄な320psFFモンスター。価格も100万円近く高い。ガチンコライバルではない。でも、乗り換えるたびにBRZの個性があぶり出されておもしろかった。

電動ウエイストゲート付きターボやレブマッチシステムや電子制御ダンパーやらで武装したタイプRと比べると、BRZのドライブテイストはプレーンなアナログマシンそのものである。ボディーサイズも、運転操作の動線も、身のこなしも、コンパクト。絶対スピードではタイプRに及ばないが、ドーピングなしの操縦感覚がストレートに楽しい。そういえば、美深のテストコースを走ったときのインプレも、テストコースなのに「楽しかった」であった。

車重1250kg。206psのFRでもコーナリングに神経質なところはない。もともとBRZはヒリヒリするようなテールハッピーな挙動を見せないクルマだが、STIスポーツはさらにグリップ重視の印象を受ける。パワー製造直売のFFは無駄がなくて高効率だが、逆にFRはクルマを広く使って走る贅沢さが“味”である。ワインディングロードでタイプRと乗り比べながら、あらためてそう思った。こんなにカッコいいコンパクトなFRのクーペがある日本は幸せだ。

サスペンションにはSTIが専用チューニングを施したショックアブソーバー(ZF製ザックスブランド)とスプリングが用いられている。
サスペンションにはSTIが専用チューニングを施したショックアブソーバー(ZF製ザックスブランド)とスプリングが用いられている。
今回は6MT搭載車に試乗したが、6AT仕様も用意されている。
今回は6MT搭載車に試乗したが、6AT仕様も用意されている。
メーターは3眼式。タコメーター(中央)のレッドゾーンは7400rpmから。
メーターは3眼式。タコメーター(中央)のレッドゾーンは7400rpmから。
テールエンドには「GT」グレードと同様に、リアスポイラーが標準で備わる。
テールエンドには「GT」グレードと同様に、リアスポイラーが標準で備わる。

今が乗りどき

ボディーカラーは全6色。試乗車の色はアイスシルバー・メタリック。
ボディーカラーは全6色。試乗車の色はアイスシルバー・メタリック。
フロントフェンダーにはSTIを記された専用のオーナメントが装着される。
フロントフェンダーにはSTIを記された専用のオーナメントが装着される。
2ドアクーペらしからぬ、有用性の高いラゲッジルームも健在。後席の背もたれを前に倒すと、ご覧のとおり、フロアは真っ平らになる。
2ドアクーペらしからぬ、有用性の高いラゲッジルームも健在。後席の背もたれを前に倒すと、ご覧のとおり、フロアは真っ平らになる。
今回の試乗距離は約540km。燃費(満タン法)は10.9km/リッターとなった。燃料タンク容量は50リッター。
今回の試乗距離は約540km。燃費(満タン法)は10.9km/リッターとなった。燃料タンク容量は50リッター。
約540kmを走って、燃費は10.9km/リッター(満タン法)だった。一緒に走ったシビックタイプRも10km/リッター台をマークした。2WDでもスバル水平対向エンジンの燃費性能は平凡だ。

スバル/トヨタの本格的協業第一作としてBRZ/86が登場してから早6年がとうとしている。数売れる量販車なら、そろそろフルチェンジしてもいいころだが、このツインズは2016年夏に最高出力微増(MTのみ)を含むビッグマイナーチェンジで磨きをかけた。実際、あのマイナーチェンジですっかりバリが取れたような洗練を受けた。いまのBRZは、たとえば水平対向つながりで「ポルシェ911」のセカンドカーとして買われても、「ついついこっち乗っちゃうんだよね」とか言われながら主役を食うような魅力がある。

だから、足の硬いSTIスポーツよりも、17インチのふつうのモデルでいいと個人的には思った。でも、高いコスパでこれも売れるだろう。86に差をつけるためにも、クールグレーカーキを常備カラーにすることを希望したい。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=小林俊樹/編集=竹下元太郎)

ボディーカラーは全6色。試乗車の色はアイスシルバー・メタリック。
ボディーカラーは全6色。試乗車の色はアイスシルバー・メタリック。
フロントフェンダーにはSTIを記された専用のオーナメントが装着される。
フロントフェンダーにはSTIを記された専用のオーナメントが装着される。
2ドアクーペらしからぬ、有用性の高いラゲッジルームも健在。後席の背もたれを前に倒すと、ご覧のとおり、フロアは真っ平らになる。
2ドアクーペらしからぬ、有用性の高いラゲッジルームも健在。後席の背もたれを前に倒すと、ご覧のとおり、フロアは真っ平らになる。
今回の試乗距離は約540km。燃費(満タン法)は10.9km/リッターとなった。燃料タンク容量は50リッター。
今回の試乗距離は約540km。燃費(満タン法)は10.9km/リッターとなった。燃料タンク容量は50リッター。

テスト車のデータ

スバルBRZ STI Sport
スバルBRZ STI Sport
スバルBRZ STI Sport(FR/6MT)
スバルBRZ STI Sport(FR/6MT)
スバルBRZ STI Sport

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4240×1775×1320mm
ホイールベース:2570mm
車重:1250kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:207ps(152kW)/7000rpm
最大トルク:212Nm(21.6kgm)/6400-6800rpm
タイヤ:(前)215/40R18 85Y/(後)215/40R18 85Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
燃費:11.6km/リッター(JC08モード)
価格:353万1600円/テスト車=353万1600円
オプション装備:なし

テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:537.9km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:537.9km
使用燃料:49.3リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.9km/リッター(満タン法)/9.5km/リッター(車載燃費計計測値)

スバルBRZ STI Sport
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スバルBRZ STI Sport(FR/6MT)
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