【海外試乗記】フォルクスワーゲン・ポロGTI(FF/6AT)

フォルクスワーゲン・ポロGTI(FF/6AT)【海外試乗記】
フォルクスワーゲン・ポロGTI(FF/6AT)

これぞ“GTI”のあるべき姿

間もなく日本に導入される6代目「フォルクスワーゲン・ポロ」。そのハイパフォーマンスバージョンである「GTI」に、フランスのニースで試乗した。ライバルに肩を並べる高い動力性能と、日常性を犠牲にしない洗練されたドライブフィールをリポートする。

稀有な存在だった従来モデル

「GTI」といえばフォルクスワーゲン伝統のスポーツグレードだが、「ポロ」に設定されたのは1998年から。今回のモデルは「ポロGTI」としては4世代目にあたる。
「GTI」といえばフォルクスワーゲン伝統のスポーツグレードだが、「ポロ」に設定されたのは1998年から。今回のモデルは「ポロGTI」としては4世代目にあたる。
インテリアは、ブラック、レッド、グレーの3色によるコーディネートと、各部に施されたクローム装飾が特徴。オプションでBeats製の300Wサウンドシステムも用意されるなど、装備も充実している。
インテリアは、ブラック、レッド、グレーの3色によるコーディネートと、各部に施されたクローム装飾が特徴。オプションでBeats製の300Wサウンドシステムも用意されるなど、装備も充実している。
ボディーサイズは欧州仕様で全長×全幅×全高=4067×1751×1438mmと、従来モデルより全長、全幅がひとまわり拡大している。
ボディーサイズは欧州仕様で全長×全幅×全高=4067×1751×1438mmと、従来モデルより全長、全幅がひとまわり拡大している。
もうすぐ日本でも正式にデビューする新型ポロは、今日的なBセグメントのど真ん中のサイズ、つまり日本的にいうところの3ナンバーサイズへと成長する。これによって後席居住性や積載能力などは激変。そして走りのクオリティーも強烈に洗練されたものとなった。

が、それを知るほどにあらためて思うのは、間もなく旧型となるポロのダイナミクスの素晴らしさだ。低速域ではちょっと粗いところもあるけれど、速度が乗ると共に伝わってくるクルマの動きの安定ぶりたるや、「トヨタ・ヴィッツ」や「ホンダ・フィット」に近い車寸とはにわかには信じがたいほどだった。多少狭かろうがにぎやかだろうが、5ナンバー寸にして破格の安心感という魅力は何にも代えがたい。そういう気持ちでポロを選んできた向きもいるだろう。

そこにスポーティネスへの期待値が加われば、小さいことはさらに意味を持つことになる。すなわち先代ポロGTIは5ナンバーサイズにして192psのハイパワーエンジンを積んだ、市中を見回せば意外や稀有(けう)なキャラクターを持つホットハッチだった。

新型のポロGTIはまず基準車の拡大化に準じて車格はBセグメントのど真ん中に入っている。そして搭載されるエンジンは2リッターに拡大……と、裏返せば「ルノー・クリオ(日本名:ルーテシア)R.S.」辺りとガチで比較をされても言い訳はできないパッケージになったわけだ。その中でこのクルマが供してくれる個性は、長きにわたるGTIの歴史に照らしてもまったくブレのないものだった。

「GTI」といえばフォルクスワーゲン伝統のスポーツグレードだが、「ポロ」に設定されたのは1998年から。今回のモデルは「ポロGTI」としては4世代目にあたる。
「GTI」といえばフォルクスワーゲン伝統のスポーツグレードだが、「ポロ」に設定されたのは1998年から。今回のモデルは「ポロGTI」としては4世代目にあたる。
インテリアは、ブラック、レッド、グレーの3色によるコーディネートと、各部に施されたクローム装飾が特徴。オプションでBeats製の300Wサウンドシステムも用意されるなど、装備も充実している。
インテリアは、ブラック、レッド、グレーの3色によるコーディネートと、各部に施されたクローム装飾が特徴。オプションでBeats製の300Wサウンドシステムも用意されるなど、装備も充実している。
ボディーサイズは欧州仕様で全長×全幅×全高=4067×1751×1438mmと、従来モデルより全長、全幅がひとまわり拡大している。
ボディーサイズは欧州仕様で全長×全幅×全高=4067×1751×1438mmと、従来モデルより全長、全幅がひとまわり拡大している。

ライバルに比肩する動力性能を獲得

外観では「GTI」おなじみのハニカムグリルや、リップスポイラー一体型のフォグランプ付きフロントバンパー、赤くペイントされたブレーキキャリパー、各所に施された「GTI」のエンブレムなどにより、他のグレードとの差別化が図られている。
外観では「GTI」おなじみのハニカムグリルや、リップスポイラー一体型のフォグランプ付きフロントバンパー、赤くペイントされたブレーキキャリパー、各所に施された「GTI」のエンブレムなどにより、他のグレードとの差別化が図られている。
タイヤサイズは215/45R17が標準だが、オプションで215/40R18サイズも用意。後者には「GTI」専用デザインの18インチアルミホイールが組み合わされる。
タイヤサイズは215/45R17が標準だが、オプションで215/40R18サイズも用意。後者には「GTI」専用デザインの18インチアルミホイールが組み合わされる。
パワープラントには従来の1.8リッター直4ターボエンジンに代えて、2リッター直4ターボエンジンを採用。320Nmの最大トルクは従来のままだが、最高出力は8psアップの200psを実現している。
パワープラントには従来の1.8リッター直4ターボエンジンに代えて、2リッター直4ターボエンジンを採用。320Nmの最大トルクは従来のままだが、最高出力は8psアップの200psを実現している。
トランスミッションは今のところ6段DSGのみだが、追って6段MTも追加される予定だ。
トランスミッションは今のところ6段DSGのみだが、追って6段MTも追加される予定だ。
新型ポロGTIのサスは形式的には基準車と同じくマクファーソンストラット&トーションビームをベースとするが、ロアAアームやトレーリングアーム、ブッシュやサブフレームマウントなどはパワーアップに合わせて強化され、前後にはスタビライザーが装着されている。

サスのセットアップは2種類が用意される。専用レートのスプリングやガス封入ダンパーが採用され、基準車に対して車高が15mm低くなるスポーツサスが標準仕様となるほか、オプションとして2段階のレート変更が可能となるアダプティブダンパーの採用に加え、前アンチロールバーやステアリングロッド、リアアクスルのコントロールロッドなどが強化されたスポーツセレクトサスが選択可能だ。試乗車はこのスポーツセレクトサスに加えてオプションの18インチタイヤ&ホイールを履いていたが、標準仕様は17インチとなる。ちなみに、日本仕様は今年後半の導入予定ということもあって、仕様詳細は未定だという。

搭載されるエンジンは2リッターの4気筒直噴ターボで、ミラーサイクルの燃焼概念を採り入れた第3世代の「EA888」系となる。その圧縮比は11.65とターボエンジンとしてはかなり高く、最高出力は200psとやや控えめながら最大トルクは320Nmを1500rpmから発生。そして燃費は欧州複合モードで5.9リッター/100km、CO2排出量は134g/kmと、環境性能との折衷点も非常に高いところにあるといえるだろう。

ちなみに、搭載されるトランスミッションは当初は6段DSGのみ。来年には6段MTも追加される予定とのことだが、取りあえず6段DSGの側で公表された動力性能を挙げると、0-100km/h加速が6.7秒、最高速が237km/hとなっている。これはルノー・クリオR.S.や「フォード・フィエスタST」といったライバルと拮抗(きっこう)するもので、「ゴルフGTI」になぞらえれば6代目のそれよりも速い。

外観では「GTI」おなじみのハニカムグリルや、リップスポイラー一体型のフォグランプ付きフロントバンパー、赤くペイントされたブレーキキャリパー、各所に施された「GTI」のエンブレムなどにより、他のグレードとの差別化が図られている。
外観では「GTI」おなじみのハニカムグリルや、リップスポイラー一体型のフォグランプ付きフロントバンパー、赤くペイントされたブレーキキャリパー、各所に施された「GTI」のエンブレムなどにより、他のグレードとの差別化が図られている。
タイヤサイズは215/45R17が標準だが、オプションで215/40R18サイズも用意。後者には「GTI」専用デザインの18インチアルミホイールが組み合わされる。
タイヤサイズは215/45R17が標準だが、オプションで215/40R18サイズも用意。後者には「GTI」専用デザインの18インチアルミホイールが組み合わされる。
パワープラントには従来の1.8リッター直4ターボエンジンに代えて、2リッター直4ターボエンジンを採用。320Nmの最大トルクは従来のままだが、最高出力は8psアップの200psを実現している。
パワープラントには従来の1.8リッター直4ターボエンジンに代えて、2リッター直4ターボエンジンを採用。320Nmの最大トルクは従来のままだが、最高出力は8psアップの200psを実現している。
トランスミッションは今のところ6段DSGのみだが、追って6段MTも追加される予定だ。
トランスミッションは今のところ6段DSGのみだが、追って6段MTも追加される予定だ。

何かをガマンする必要はない

「GTI」おなじみの、チェック柄のデザインが目を引くスポーツシート。オプションでブラックのレザーシートも用意されている。
「GTI」おなじみの、チェック柄のデザインが目を引くスポーツシート。オプションでブラックのレザーシートも用意されている。
「ポロGTI」としては今回が初採用となるフルデジタルのメーターパネル。インフォテインメントシステムにも、最新世代のものが装備される。
「ポロGTI」としては今回が初採用となるフルデジタルのメーターパネル。インフォテインメントシステムにも、最新世代のものが装備される。
新型「ポロGTI」には、高速コーナーなどでトラクション性能を高める「XDSディファレンシャルロックシステム」が標準装備される。
新型「ポロGTI」には、高速コーナーなどでトラクション性能を高める「XDSディファレンシャルロックシステム」が標準装備される。
テーマカラーである赤を差し色にした内外装のしつらえは、メーターまわりのオーナメントパネルにややうるささを感じるが、総じて派手すぎない常識的な範囲に収まっており、かつその質感は猛烈に高い。インフォテインメント系やADAS(先進運転支援システム)系装備の充実度も含め、スタティックな商品力はライバルに対して一頭地を抜いている。シートはサポートの盛り上がりが穏やかで乗降性も妨げず、掛け心地もストロークが効いており……と、日常性をいじめていないのもフォルクスワーゲンのGTIらしいところだ。

試乗車は足まわり的に最もハードな仕様となっているはずだが、低速域からの乗り心地はそれをにわかには感じさせないほどに洗練されている。目に見えるほど大きな凹凸や左右輪が同時に通過する目地段差でも、足元がバタつくような動きや鋭い入力は奇麗に丸められており、小さなホットハッチというところから想像するがさつさはみじんもない。

と、そういう乗り方をしていてふと気づくのは静粛性の高さだ。パーシャルスロットルで負荷を掛けずに走っている限りはエンジン側やエキゾースト側からの音量も適切で、大径低偏平のタイヤを履いていながらロードノイズもしっかり抑えられている。湿式クラッチを用いるDSGの変速マネジメントも洗練されており、加減速時のシフトショックもとても滑らか……と、常識的な速度域で走るに不快さを感じる事態はおよそ考えられない。

「GTI」おなじみの、チェック柄のデザインが目を引くスポーツシート。オプションでブラックのレザーシートも用意されている。
「GTI」おなじみの、チェック柄のデザインが目を引くスポーツシート。オプションでブラックのレザーシートも用意されている。
「ポロGTI」としては今回が初採用となるフルデジタルのメーターパネル。インフォテインメントシステムにも、最新世代のものが装備される。
「ポロGTI」としては今回が初採用となるフルデジタルのメーターパネル。インフォテインメントシステムにも、最新世代のものが装備される。
新型「ポロGTI」には、高速コーナーなどでトラクション性能を高める「XDSディファレンシャルロックシステム」が標準装備される。
新型「ポロGTI」には、高速コーナーなどでトラクション性能を高める「XDSディファレンシャルロックシステム」が標準装備される。

ホットハッチとはこういうことさ

センターコンソールに備わるドライビングプロファイル機能のモード切り替えスイッチ。パワープラントなどの制御に加え、アクティブダンパー装着車ではダンパーの減衰力も切り替わる。
センターコンソールに備わるドライビングプロファイル機能のモード切り替えスイッチ。パワープラントなどの制御に加え、アクティブダンパー装着車ではダンパーの減衰力も切り替わる。
リアウィンドウのフレームやルーフスポイラーの後端部、ハニカム模様の施されたバンパーの底部など、各部に施されたブラックのアクセントが目を引くリアまわり。クローム仕上げのデュアルテールパイプも特徴となっている。
リアウィンドウのフレームやルーフスポイラーの後端部、ハニカム模様の施されたバンパーの底部など、各部に施されたブラックのアクセントが目を引くリアまわり。クローム仕上げのデュアルテールパイプも特徴となっている。
0-100km/h加速は6.7秒、最高速は237km/hという動力性能をかなえている新型「ポロGTI」。燃費については5.9リッター/100km(約16.9km/リッター、NEDCモード)と公称されている。
0-100km/h加速は6.7秒、最高速は237km/hという動力性能をかなえている新型「ポロGTI」。燃費については5.9リッター/100km(約16.9km/リッター、NEDCモード)と公称されている。
コーナリングのマナーは徹底的にニュートラルで、追い込んでいくほどにゆっくりとアンダー感が増していくというセオリー通りの作り込みだ。ESCの各輪ブレーキ制御を活用して旋回力を高めるXDSの制御も穏やかで、中高速コーナーではその介入をやすやすと感じることはない。とにかく際立つのは潔癖なまでに足まわりの接地や追従を突き詰めていることで、ライドフィールはこの車格にしてゴルフGTIをも食ってしまいそうな大物感がある反面、その小ささを利してのはじけるような快活さみたいなところは強く打ち出されてはいない。ドライブモードをスポーツの側にしてみても、ステアリングやアクセルのレスポンスは唐突感もなく常識的なところに収められている。

基準車に迫る静粛性、ほぼほぼ劣らぬ実用性、そして同等以上の動的質感を備えることを前提に、ドライビングファンを前面に押し出したライバルに劣らぬダイナミクスを実現する。GTIのセオリーに極めて忠実に仕立てられたポロGTIの魅力は、確かに刺激に富んだものではない。が、偏狭でも許されるスポーツカーとは違い、生活を共にするパッケージだからこそ日常と非日常がシームレスにつながっていなければ意味がないということをフォルクスワーゲンはよく知っている。ホットハッチのあり方とは、すなわちそういうことだということを、だ。

(文=渡辺敏史/写真=フォルクスワーゲン・グループ/編集=堀田剛資)

センターコンソールに備わるドライビングプロファイル機能のモード切り替えスイッチ。パワープラントなどの制御に加え、アクティブダンパー装着車ではダンパーの減衰力も切り替わる。
センターコンソールに備わるドライビングプロファイル機能のモード切り替えスイッチ。パワープラントなどの制御に加え、アクティブダンパー装着車ではダンパーの減衰力も切り替わる。
リアウィンドウのフレームやルーフスポイラーの後端部、ハニカム模様の施されたバンパーの底部など、各部に施されたブラックのアクセントが目を引くリアまわり。クローム仕上げのデュアルテールパイプも特徴となっている。
リアウィンドウのフレームやルーフスポイラーの後端部、ハニカム模様の施されたバンパーの底部など、各部に施されたブラックのアクセントが目を引くリアまわり。クローム仕上げのデュアルテールパイプも特徴となっている。
0-100km/h加速は6.7秒、最高速は237km/hという動力性能をかなえている新型「ポロGTI」。燃費については5.9リッター/100km(約16.9km/リッター、NEDCモード)と公称されている。
0-100km/h加速は6.7秒、最高速は237km/hという動力性能をかなえている新型「ポロGTI」。燃費については5.9リッター/100km(約16.9km/リッター、NEDCモード)と公称されている。

テスト車のデータ

フォルクスワーゲン・ポロGTI
フォルクスワーゲン・ポロGTI
フォルクスワーゲン・ポロGTI

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4067×1751×1438mm
ホイールベース:2549mm
車重:1355kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:200ps(147kW)/4400-6000rpm
最大トルク:320Nm(32.6kgm)/1500-4400rpm
タイヤ:(前)215/40ZR18 89Y/(後)215/40ZR18 89Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
燃費:5.9リッター/100km(約16.9km/リッター、NEDCモード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター


フォルクスワーゲン・ポロGTI
フォルクスワーゲン・ポロGTI

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